- ITアーキテクトの役割
- ITアーキテクトへの転職で役に立つ資格
- ITアーキテクトの資格を取得するメリット
- ITアーキテクトに役立つ資格を選ぶ際のポイント
- ITアーキテクト3種とそれぞれの仕事内容
- ITアーキテクトに求められる知識・スキル・経験
- ITアーキテクトの年収
- ITアーキテクトの資格に関するよくある質問
- まとめ
ITアーキテクトの役割
ITアーキテクトの役割は、どのような役割があるのでしょうか。ITアーキテクトの役割としては「要求モデリング」と「アーキテクチャ設計」を通じて、顧客に最適なシステムを提示することです。本章では、ITアーキテクトの役割である要求モデリングとアーキテクチャ設計について解説します。
関連記事:ITアーキテクトとは?求められるスキル・資格などをご紹介
要求モデリング
要求モデリングとは、顧客のビジネス(ビジネスモデルや業務フロー、業務で扱うデータなど)を理解した上で、システムに対する要求を吸い上げ、分析することを指します。さらに、分析結果をもとにアーキテクチャ要件の構成を行います。顧客の目的は「ITを使ってビジネスを遂行すること」です。
しかし、顧客自身がITシステムのあるべき姿を具体的に想像できていないことも多々あります。つまり、顧客要求は抽象的な「思い」であることが多いのです。要求モデリングでは、この「思い」を後続作業(アーキテクチャ設計)の要件としてまとめます。
アーキテクチャ設計
要求モデリングで作成したアーキテクチャ要件をもとに、コンポーネント構造(ソフトウェアの構造)の設計や設計者への指導、顧客との合意を行い、アーキテクチャを確定させます。アーキテクチャ設計では、要求モデリングで定義した要件に従いながら、「システムの構成要素とふるまい」を定義します。要素ごとに設計を行いつつも、最終的に全体的な整合性が取れていることが重要です
ITアーキテクトへの転職で役に立つ資格
ITアーキテクトを目指す際に役立つ資格としては、情報処理推進機構(IPA)が実施する「システムアーキテクト試験」があります。冒頭でも述べたように、ITアーキテクトに必須の資格は存在しません。ただし、高度なスキル・知識が必要なことや、企業の経営層と密接にかかわる職種であることから、ITアーキテクトの養成を想定した資格は存在します。
システムアーキテクト試験
システムアーキテクト試験では、提案依頼書(RFP)の作成に必要な知識、プロジェクト計画立案支援、システム化計画支援、システム要件の識別、システム開発の準備、要件定義、システム方式設計などの知識が問われます。
試験の構成 | 午前・午後それぞれ2部の計4部 |
出題形式 | 午前:多肢選択式(四肢択一) 午後:記述式・論述式 |
試験会場 | 全国の試験会場 |
受験料 | 7,500円 |
難易度 | ITスキル標準V3 2011のレベル4 |
合格率 | 10~15%程度 |
システムアーキテクト試験の勉強方法
システムアーキテクト試験の勉強方法は、大きくわけて書籍とスクールがあります。書籍にもスクールにも複数の種類がありますが、ここでは一例としておすすめのものを紹介します。
【書籍】
システムアーキテクト 合格論文の書き方・事例集 第5 (情報処理技術者試験対策書)(岡山 昌二 、樺沢 祐二、鈴木 久、長嶋 仁、北條 武、満川 一彦、アイテック)
午後試験のうち、特に論文試験に関する対策が充実している書籍です。過去問題やオリジナル問題を使って、時間内に合格レベルの論文を仕上げる技術を学びます。また、専門家による論文が36本も掲載されているため、論文のひな型を入手できるという意味でも有効な書籍といえます。
【スクール】
TAC システムアーキテクト 本科生
システムアーキテクト試験対策を目的とした、全10回の講義を受講できます。特に午後試験全般の対策が充実しており、公開模試を通じた模擬演習も設けられています。記述式、論文式の資格試験を受験した経験がない方にとっては、時間配分や答案作成のテクニックを学べる良い機会になるでしょう。
CCNP・CCIE
CCNP、CCIEとは、ネットワーク機器メーカー「シスコシステムズ社」が提供する技術者認定試験です。CCNA試験の上位資格と位置付けられており、CCNPは中級者向け、CCIEは上級者向けの難易度となっています。
出題内容はネットワークに関する知識全般が問われ、筆記試験と実技試験で構成されています。難易度は非常に高いですが、転職や昇給査定に効果的です。
CCNP・CCIEの勉強方法
CCNP、CCIEはいずれも難易度の高い資格ですので、合格するには入念な対策が必要です。ここからはおすすめの学習方法を紹介します。
【書籍】
・シスコ技術者認定教科書 CCNP Enterprise 完全合格テキスト&問題集(林口 裕志 (著), 川島 拓郎 (著), 中道 賢 (読み手) )
CCNP合格に向けた試験認定の参考書です。CCNPの参考書は英語で書かれたものが多いですが、こちらの書籍は日本語で作成されています。
各章の章末に確認問題が掲載されているため、インプットからアウトプットまで学習でき、知識を定着させられます。合格するための基礎知識を身につけたい方は確認してみましょう。
・徹底攻略 Cisco CCIE Routing & Switching 筆記試験対策問題集 (ITプロ/ITエンジニアのための徹底攻略)
CCIEの筆記試験対策におすすめの書籍です。実際の試験に向けて問題文は英語で記載されていますが、解説部分は日本語で記載されています。また、問題文の和訳や要約も記載されているため、英語が苦手な方が知識を身につける際に最適な1冊です。
【Webコンテンツ】
CCNP、CCIEはシスコシステムズ公式のイーラーニングが提供されています。一部は日本語対応していますが、基本的に英語での学習になるため、英語に自信のある方は使用してみてはいかがでしょうか。
CCIEについては、の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:CCIEの難易度は高い?試験対策や取得者の将来性を解説
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、プロジェクト全体を統括し、計画から実行、管理までを行うプロジェクトマネージャを対象とした試験です。予算管理やスケジュール管理、品質管理など、プロジェクトマネジメントに必要な知識が問われます。
プロジェクトマネージャ試験も、ITアーキテクトにおすすめの資格試験です。ITアーキテクトだけでなく、プロジェクトマネージャーを目指す人が取得することも多い資格です。
試験の構成 | 午前・午後それぞれ2部の計4部 |
出題形式 | 午前:多肢選択式(四肢択一) 午後:記述式・論述式 |
試験会場 | 全国の試験会場 |
受験料 | 7,500円 |
難易度 | ITスキル標準V3 2011のレベル4 |
合格率 | 13~15%程度 |
プロジェクトマネージャ試験の勉強方法
プロジェクトマネージャ試験の勉強方法は、大きくわけると独学、講座受講、オンライン学習の3つがあります。いずれにしても、基本的な知識を身につけた後に過去問を解いていく流れになります。
3つのうちどれを選択するかは好みや環境によるでしょう。時間があってじっくり腰を据えて学習したい方は講座受講、隙間時間に自分のペースで学習したい方や比較的勉強が得意な方は独学、自分のペースで学習を進めたいが動画で講師が説明してくれたほうが頭に入りやすいといった方はオンライン学習、といったイメージです。
プロジェクトマネージャ試験を受ける方の多くは応用情報技術者資格を所有しているかと思うので、そのときの勉強方法を思い出して参考にすると良いでしょう。
そのほかデータアーキテクトへの転職で役に立つ資格
データアーキテクトへの転職に資格は必須ではありませんが、紹介したもの以外にも資格を所有していることで一定の知識証明になります。余力があれば取得しておくとメリットがあるでしょう。具体的には、情報処理技術者試験や統計士がおすすめです。
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験は、全部で13種類あります。13種類もあるとどれを受ければ良いか迷うかもしれません。最初の情報処理技術者試験としては基本情報技術者試験がおすすめです。もともとの知識に自信のある方は、応用情報技術者試験から受けても良いかもしれません。以下に基本情報技術者試験と応用情報技術者試験の概要をまとめました。
試験名 | 基本情報技術者試験 | 応用情報技術者試験 |
試験の構成 | 科目Aと科目Bの2部構成 | 午前と午後の2部構成 |
出題形式 | 科目A:多肢選択式(四肢択一) 科目B:多肢選択式 ※全てCBT方式で実施 |
科目A:多肢選択式(四肢択一) 科目B:記述式 |
試験会場 | 全国の試験会場(随時実施) | 全国の試験会場 |
受験料 | 7,500円 | 7,500円 |
難易度 | ITスキル標準V3 2011のレベル2 | ITスキル標準V3 2011のレベル3 |
合格率 | 56.4%(2023年4月) | 20%前後 |
その上のレベルにはスペシャリスト試験が複数あり、紹介したシステムアーキテクトやプロジェクトマネージャもそのうちの1つです。スペシャリスト試験の中でどれを選択するかは、応用情報技術者試験に合格した後に考えても遅くはないでしょう。ちなみに、情報処理技術者試験は国家試験です。
統計士
統計士は一般財団法人実務教育研究所が主催する認定資格です。文部科学省認定の「現代統計実務講座」を修了することで資格取得が可能です。そのため初心者から統計にまつわる基礎知識を身につけることができます。統計の知識があるとデータの活かし方がわかるので、データアーキテクトの仕事に役立ちます。
ITストラテジスト試験
ITストラテジスト試験は、経営戦略とIT戦略を結びつけ、ITを活用した事業革新や業務改革を推進する能力を評価する試験です。難易度の高い試験ですが、資格を取得することでデータアーキテクトへの転職で役立ちます。
試験の構成 | 午前・午後それぞれ2部の計4部 |
出題形式 | 午前:多肢選択式(四肢択一) 午後:記述式・論述式 |
試験会場 | 全国の試験会場 |
受験料 | 7,500円 |
難易度 | ITスキル標準V3 2011のレベル4 |
合格率 | 14~15%程度 |
ITアーキテクトの資格を取得するメリット
ITアーキテクトの資格を取得することで、どのようなメリットを得ることができるのでしょうか。具体的には、ITアーキテクトの資格を取得することで、スキル・知識を客観的に証明でき、転職で有利になります。また、資格取得の勉強を通してスキル・知識が身につきます。
本章では、ITアーキテクトの資格を取得するメリットについて、詳しく解説します。
スキル・知識を客観的に証明できる
ITアーキテクトの資格を取得することで、スキル、業界知識、マネジメント能力などを客観的に証明できます。資格よりも実務経験のほうが重要視される傾向はあるのですが、資格の場合はより客観的です。実務経験を書類や口頭で説明するよりも、信用力という点では資格のほうが上でしょう。
資格を取得して、さらに実務経験もあればより良いということになります。実務経験があまりない方はもちろん、実務経験がある場合も資格の取得メリットは大きいです。
転職に有利になる
ITアーキテクト資格を取得するとスキル・知識を客観的に証明できます。スキルと知識を客観的に証明できれば評価が上がり、転職に有利になります。転職時の採用試験に合格しやすくなるだけでなく、採用条件が有利になる可能性もあるでしょう。
会社やプロジェクトによっては、資格を保有していることで単価に上乗せすると明言している場合があります。その場合、資格を保有していれば確実に報酬がアップします。
資格取得の勉強を通してスキル・知識が身につく
資格を取得することで得られるメリットは、周囲からの評価だけではありません。自分自身のスキル、知識習得にも役立ちます。資格試験の内容がすべて実務に直結しているわけではありませんが、資格を取得することで基礎知識が身につきます。
実務で使用するスキルは基礎知識に上乗せしたものなので、資格取得を通して土台をしっかりしておけばその後の応用が利きやすくなります。長期的に見れば、資格を通して身につけたスキル、知識は汎用性が高く役立ちます。
ITアーキテクトに役立つ資格を選ぶ際のポイント
ITアーキテクトはアプリケーション開発からインフラ周りの知識まで要求されるため、関連資格が非常に多いです。そのため、効率的に適切な資格を取得していかなければなりません。ここからは、ITアーキテクトが挑戦すべき資格を選ぶ際に確認するべき3点を紹介します。紹介するポイントは以下の3つです。
-
・自分のキャリアプランや目的に合っている・自分のスキルレベルを見直す
・認知度と評価を確認する
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
自分のキャリアプランや目的に合っている
資格は取得が目的ではなく、取得する過程の学習や、取得した事実による転職・昇給の可能性を上げることが目的です。そのため、取得する前に自身のキャリアプランや目的を振り返り、目的に適している資格か確認しましょう。
逆説的に考えると目的が明確でない場合、適切な資格を選択できません。まずは自身の目的やキャリアプランを振り返り、どの資格を取得すべきか考えると良いでしょう。
自分のスキルレベルを見直す
自身のレベルより大幅に低い資格は取得しても意味がなく、反対に非常に高いレベルの資格に挑戦すると失敗する可能性が高いです。そのため、資格に挑戦する前は自身のスキルレベルを見直し、どのレベルの資格が適しているか確認しましょう。
ITスキルの場合は、経済産業省の公開しているITSSレベルを確認してはいかがでしょうか。ITパスポートを1、基本情報技術者を2としてさまざまな国家資格やベンダー資格のレベルが一覧化されています。自身の取得している、取得できるレベルの資格以上の試験に挑戦することで、学習過程が有意義になるでしょう。
認知度と評価を確認する
資格取得の目的が転職や昇給など、周りの評価を上げることの場合、資格の認知度や評価は必ず確認しましょう。その資格が業界でどの程度認知されているのか、どのような評価を得ているのかを調べずに挑戦すると時間が無駄になる可能性が高いです。
一方で資格の認知度や評価が高ければ必ず自身に最適な試験というわけではありません。あくまで目的にあった資格選びが大切です。
ITアーキテクト3種とそれぞれの仕事内容
ITアーキテクト職には大きく分けて、以下の3種類があります。
-
・アプリケーションアーキテクチャ・インテグレーションアーキテクチャ
・インフラストラクチャアーキテクチャ
本章では、これら3種類のITアーキテクト職の概要とそれぞれの仕事内容について、詳しく解説していきます。
1.アプリケーションアーキテクチャ
アプリケーションアーキテクチャは、アプリケーションやソフトウェアの設計などをメインで行うITアーキテクト職です。「ユーザビリティ」「ファンクショナリティ」「データ」の要素について設計を行います。
「ユーザビリティ」「ファンクショナリティ」「データ」のそれぞれの設計要素については、以下で解説します。
ユーザビリティ
アプリケーションアーキテクチャは、システム利用者の視点をベースに、アクセスのしやすさやシステムの使いやすさに関する設計を行います。これらの要素は「ユーザビリティ」と呼ばれ、特定の使用状況、ユーザー、および目標を明確に定義する必要があります。ユーザビリティを最適化することで、ユーザーにとって直感的で効率的なシステムになり、ユーザーエクスペリエンスが向上します。
ファンクショナリティ
アプリケーションアーキテクチャは、ビジネスプロセスの最適化や業務効率の向上、品質改善を目指す設計を行います。これは、業務遂行の観点から考えられ、システムが提供する機能やサービスが、ユーザーの業務をどのように支援し、その結果としてどのように業務効率や品質が向上するかを明確にすることを目指します。
データ
アプリケーションアーキテクチャは、システムが扱うデータの範囲、体系、品質、共有化、管理方式についての設計を行います。これらの設計は、システム全体の性能や信頼性、保守性に大きく影響を与えるため、非常に重要な役割を果たします。
2.インテグレーションアーキテクチャ
インテグレーションアーキテクチャは、複数のシステムやアプリケーション間の連携や統合を専門とするITアーキテクト職です。インテグレーションアーキテクチャの主な仕事内容は、「フレームワーク」と「インターオペラビリティ」の設計を行うことです。
以下では、フレームワークとインターオペラビリティについて解説します。
フレームワーク
フレームワークとは、システムやアプリケーションの基本的な構造や設計パターンを示すものです。インテグレーションアーキテクチャは、情報システムをいかに効率よく、かつ高品質に実現できるかという視点をベースに、既存システムの再利用や開発方法論の検討と標準化、ソフトウェア資産の整備などを行います。
インターオペラビリティ
インターオペラビリティとは、異なるシステムやアプリケーションが互いに効率的に通信・協調動作する能力を指します。インテグレーションアーキテクチャは、異なるシステム、アプリケーション間でデータ制御・連携がうまく稼働するように、システムの連携指針や基板設計、共通プロトコルの策定などを行います。
3.インフラストラクチャアーキテクチャ
インフラストラクチャアーキテクチャは、システムを支える基盤となる部分の設計を担当します。具体的には、ハードウェアやネットワーク、データベースなどのプラットフォームの選定や設計、そしてそれらを効率よく管理・運用するためのシステムマネジメントの設計を行います。これらの要素は、システムの安定性やパフォーマンス、セキュリティなどに直結するため、非常に重要な役割を果たします。
プラットフォームとネットワーク
インフラストラクチャアーキテクチャは、統合的なITアーキテクチャ実現のための技術基盤について、ハードウェア、ネットワーク、基盤ソフトウェアなどの計画・調達・開発・運用を行います。これらの要素を最適に組み合わせ、システムの安定性、拡張性、セキュリティを確保する役割を果たします。
システムマネジメント
会社全体の情報システムの可用性・信頼性・保守性を実現するため、アプリケーション実行制御(システム稼働時間の制御など)とシステム監視、データバックアップ、システムリカバリなどの設計を行います。
このように、ITアーキテクトは「経営的視点を持った各技術分野のスペシャリスト」といえます。実装を見据えた設計という意味では、上流工程を担当するSEと仕事内容が類似しているかもしれません。しかし、経営的な視点や企画・デザインの要素が加わるため、より広範な視点が求められるのです。
ITアーキテクトに求められる知識・スキル・経験
組織形態によって、ITアーキテクトはSEやプログラマーといったITエンジニアを束ねる職種でもあります。そこには多くのスキルが必要となります。
ITアーキテクトに求められる知識・スキル
ITアーキテクトに求められる技術に関するスキル、知識は以下の通りです。
-
・アーキテクチャ設計スキル
・設計技法に関するスキル
・標準化とリソース再利用の知識
・多様な知識とデザイン力
また、ITスキル標準では以下のように定められています。(※3)
-
・アーキテクチャ設計
・設計技法
・標準化と再利用
・コンサルティング技法の活用
・知的資産管理(Knowledge Management)活用
・テクノロジ
・インダストリ(ビジネス)
・プロジェクトマネジメント
・リーダーシップ
・コミュニケーション
・ネゴシエーション
上記それぞれの分野で以下のスキル項目を設定しています。
-
・アプリケーションアーキテクチャ設計・インテグレーションアーキテクチャ設計
・インフラストラクチャアーキテクチャ設計
以降では、本見出し冒頭で挙げたシンプルな項目でそれぞれについて解説していきます。
※3 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「職種の概要と達成度指標(4) ITアーキテクト」
アーキテクチャ設計スキル
アーキテクチャ設計スキルは、ユーザ要求を要件に分解し、実現可能なITアーキテクチャとして再構成するスキルです。また、設計されたアーキテクチャが実現可能であるかを評価し、問題点や代替案を考える能力も必要とされます。アーキテクチャ設計スキルは、システムやアプリケーションの開発において、業務効率化や経営課題の解決を実現するために不可欠です。
設計技法に関するスキル
設計技法に関するスキルは、ITアーキテクチャの設計と実現のために不可欠です。設計技法に関するスキルとは、開発標準(プロセス、ドキュメント体系、WBS、開発技法)として最適な理論やモデリング技法を選択し設計に役立てるスキルのことです。
システムの標準化とリソース再利用の知識
ITアーキテクトには、システムの標準化とリソース再利用の知識も求められます。システムの標準化とリソース再利用の知識は、効率的で高品質なITアーキテクチャを設計する際に必要となります。
コンサルティング技法に関するスキル
ITアーキテクトには、コンサルティング技法に関するスキルも必要になります。コンサルティング技法に関するスキルとは、最適なコンサルティング技法の選択と適用、プロセスの定義と実践、成果物の定義と作成を行い、ITアーキテクチャ設計に役立てる能力のことです。
プログラミングスキル
ITアーキテクトが直接プログラミングをしてシステムを構築することは少ないのですが、プログラミングができないと良い設計を考えるのが難しいです。また、トラブル対応などでソースコードを修正することはあるでしょう。
プログラミングスキルがあればより良いということではなく、ITアーキテクトにとってある程度のプログラミングスキルは必須と言えます。実際、プログラミングの工程を経験してからITアーキテクトになっている人が多いです。
システム全般の知識
ITアーキテクトは幅広い視点から最善策を検討し、設計を考えていきます。つまり、システム全般の知識が必要になるということです。特定の開発環境しか知らない状態だと、プロジェクトごとの最適解が出せません。具体的には、OS、ネットワーク、サーバー、プログラミング言語、などに関する幅広い知識が必要になります。
コミュニケーションスキル
ITアーキテクトはシステム開発チームとクライアントの橋渡し業務を行う必要があります。ITアーキテクトが設計の中心になっていて、プロジェクトに大きく影響するためです。全体設計に関しては一番把握していて、それを的確に伝えられる人材である必要があります。
下流工程を担当しているエンジニアにもコミュニケーションスキルは必要ですが、ITアーキテクトはプロジェクト全体にもたらす影響が大きい分、よりコミュニケーションスキルが重要です。
マネジメントスキル
ITアーキテクトは設計を通して、プロジェクト全体をマネジメントする必要があります。プロジェクトマネージャーのようにマネジメントに特化しているわけではありませんが、設計を一番把握している以上、各開発メンバー、全体の状況を適切な方向に導く役割も求められます。
システム開発チームやクライアントから随時要望が上がってくることもあるので、全体がうまくまわるようにコミュニケーションや事務処理を行う必要もあります。
ITアーキテクトに求められる経験
ITアーキテクトには、システム開発で上流工程に携わった経験が求められます。アプリケーション分野でITアーキテクトになりたい場合はアプリケーション分野、インフラ分野でITアーキテクトになりたい場合はインフラ分野での上流工程経験が求められます。
最近は特に、ビッグデータ、AI、クラウドなどの経験を持っているとより重宝される傾向にあります。これらの設計ができると活躍の場が広がります。また、設計だけでなく、クライアントとコミュニケーションを取った経験が豊富だと評価が高くなる傾向です。
ITアーキテクトの年収
レバテックキャリアにて2024年1月時点で掲載中のITアーキテクトの求人・転職情報より、ITアーキテクトの平均年収を算出しました。
該当の求人・転職情報より30件を抽出し、年収の最低値と最高値平均から、ITアーキテクトの想定年収相場は540~870万円でした。
この結果からITアーキテクトは、ITエンジニア職の中でも高い平均年収の職種であるといえます。また、想定年収が2,000万円台の求人もあり、キャリアや知識・スキルによっては大幅な年収アップも期待できます。
ITアーキテクト求人例
実際の求人を確認することでどのような知識を求められるかを逆算できます。以下は実際にレバテックキャリアで募集されているITアーキテクトの求人例です。
【想定年収】
850~1,050万円
【働き方】
一部リモート
【主な仕事内容】
・社内システムの構築、解析、運用、保守(自身の開発を含みます)
・ソリューションの選定、検証(自身の設定/検証を含みます)
・業務アプリケーションの導入支援
・業務設計、業務フローの可視化
・事業部やベンダーとの調整
・各種プロジェクト運営、ファシリテーション
【求められる経験・スキル】
<経験>
・現状分析から課題を特定し、解決に向けて自ら戦略立案〜実行した経験がある方
・正確な現状分析と適切なアウトプットで、チームや組織に正しい認識を与えた経験がある方
・多様なステークホルダーとの折衝経験がある方
・エンジニアとしてシステムの設計、開発、運用保守を10年程度担当した経験がある方
・SaaS製品の比較検討、設計、導入、運用定着を主導し安定運用まで推進した経験がある方
・マネジメント経験あり、メンバとして若しくは自ら手を動かして構築した経験がある方
ITアーキテクトの資格に関するよくある質問
ITアーキテクトに興味があるエンジニアにとって、ITアーキテクトの資格に関する質問は多くあります。本章では、ITアーキテクトの資格に関するよくある質問にお答えします。
Q1.実務未経験でもシステムアーキテクト試験は受けられますか?
実務未経験でもシステムアーキテクト試験は受けられます。実際、学生が受験して合格するケースもあります。また、システムアーキテクト試験の前に応用情報技術者試験に合格していると、試験の一部が免除になります。そのため、応用情報技術者試験に合格した後に、システムアーキテクト試験を受ける人も多いでしょう。
Q2.システムアーキテクト試験合格者の平均年齢はどれくらいですか?
IPAが公表している統計データによると、令和4年度におけるシステムアーキテクト試験合格者の平均年齢は36.6歳です。このことから、合格者の多くはすでにIT業界でキャリアを積んでいる人が多いと推測できます。
Q3.システムアーキテクト試験の受験料はいくらですか?
令和5年度システムアーキテクト試験の受験料は、7,500円(税込)となっています。以前は受験料は5,700円でしたが、2021年7月に情報処理推進機構(IPA)が受験料の改定を行いました。
まとめ
この記事では、ITアーキテクトに興味があるエンジニアに向けて、ITアーキテクトの仕事内容と役割、求められるスキル・経験を解説した上で、役立つ資格としてシステムアーキテクト試験についても紹介しました。ITアーキテクトは、システムだけでなく経営に関する知識など広範な視点・知識が求められる高度IT人材です。
システムアーキテクト試験では、特に難易度が高い午後試験(記述、論文試験)を中心に、入念な事前対策が必須です。応用情報技術者試験に合格していると試験が免除になり、また基本的な知識も身につきます。そのため、まずは基本情報技術者試験、応用情報技術者試験から受験してみるのがおすすめです。
ITエンジニアの転職ならレバテックキャリア
レバテックキャリアはIT・Web業界のエンジニア職を専門とする転職エージェントです。最新の技術情報や業界動向に精通したキャリアアドバイザーが、年収・技術志向・今後のキャリアパス・ワークライフバランスなど、一人ひとりの希望に寄り添いながら転職活動をサポートします。一般公開されていない大手企業や優良企業の非公開求人も多数保有していますので、まずは一度カウンセリングでお話してみませんか?(オンラインでも可能です)
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また、「初めての転職で、何から始めていいかわからない」「まだ転職するかどうか迷っている」など、転職活動に何らかの不安を抱えている方には、無料の個別相談会も実施しています。キャリアアドバイザーが一対一で、これからのあなたのキャリアを一緒に考えます。お気軽にご相談ください。
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