TypeScriptとは
TypeScriptは、JavaScriptを拡張して開発されたプログラミング言語です。2012年頃にMicrosoftによって開発、リリースされました。2017年にGoogleの標準開発言語に採用され、2ヶ月に1度のサイクルでリリースが行われています。
JavaScriptの「大規模な開発に適さない」という欠点を解決するために開発されたのがTypeScriptです。JavaScriptの欠点を補い、使いにくさを改善して、大規模開発でもエラーが起こりにくいよう設計されています。
関連記事：TypeScriptとは？JavaScriptとの違いなどを解説
TypeScriptの特徴
TypeScriptはJavaScriptと共存しながら人気を高めているプログラミング言語です。人気の理由として、「JavaScriptとの互換性が高い」「型定義が可能」などのTypeScriptが持つ特徴に起因していると考えられます。
以下では、これらのTypeScriptの特徴について詳しく解説していきます。
JavaScriptとの互換性が高い
TypeScriptはライブラリを含めてJavaScriptとの高い互換性を持っています。記述したコードをコンパイルすると、JavaScriptのコードに変換されます。
現行のJavaScriptで記述されたプログラムは、すべてTypeScriptのプログラムとして実行可能です。JavaScriptの開発環境があれば簡単に導入でき、JavaScriptファイルをTypeScriptから呼び出して使用することもできます。
また、TypeScriptはクラスを生成できるため、JavaScriptよりも短くて読みやすいコードで実装可能です。同じ機能を実装する場合、TypeScriptのほうがコードは簡潔になります。TypeScriptエディタのコード補完機能を使用すれば、よりスムーズに記述できます。
型定義が可能
TypeScriptは、静的型付けが可能な言語です。対して、JavaScriptは動的型付けを行います。
動的型付けはデータ型の宣言が不要で、プログラムが自動的に型を決定するため、コードの記述量を少なくできます。しかし、プログラムの実行時に、型の整合性チェックを行うため、処理が遅いというデメリットがあります。そのため、型の変動が激しい状況や、規模の小さいプログラムの実装に適しています。JavaScriptのほかには、RubyやPythonなどが動的型付け言語です。
一方、静的型付けであるTypeScriptは、データ型を明示的に指定する必要があります。静的型付けの代表的な言語には、JavaやC言語、COBOLなどのコンパイラ言語があります。型定義ができることから、変数に定義した型と、割り当てた値の型が異なる場合にコンパイルエラーが発生するため、バグのチェックに有効です。
TypeScriptに関連する資格4選
TypeScriptの習得を検討するのであれば、資格取得を目指すのがおすすめです。TypeScriptに関連する資格を目指して勉強することで、体系的な知識を身につけられるでしょう。
また、TypeScriptは、JavaScriptと互換性のある言語です。そのため、JavaScriptに関する資格もTypeScriptの学習に役立ちます。以下では、TypeScriptエンジニアを目指す方におすすめの資格を4つ紹介します。
CIW JavaScript Specialist
CIW JavaScript Specialistは、ベンダーに依存しない、インターネット技術者のための国際IT資格で、JavaScriptのスペシャリストの創出を目的としています。世界的に認知されており、広範な知識が求められる資格のため、一定の知識とスキルを持っていることをアピールできます。
TypeScriptはJavaScriptとの互換性が高いため、JavaScript関連の資格も学習に有効です。
| 試験時間 | 90分 |
| 出題数 | 55問 |
| 受験料 | $175 |
| 難易度 | 中級以上 |
| 勉強方法 | CIWが提供する「CIW JavaScript Specialist Self-Study Kits」を活用できます |
| 出題範囲 | ・JavaScriptの基礎知識・JavaScriptでの変数とデータの操作 ・JavaScriptの関数、メソッド、イベント ・JavaScriptのデバッグとトラブルシューティング ・JavaScriptでプログラムフローを制御する ・JavaScriptドキュメントオブジェクトモデル（DOM） ・JavaScript言語オブジェクト ・カスタムJavaScriptオブジェクト ・JavaScriptを利用したHTMLの変更 ・JavaScriptを使用したインタラクティブフォームの開発 ・JavaScriptのセキュリティ ・JavaScriptライブラリとフレームワーク ・JavaScriptとAJAX・WebAPIの概要 |
HTML5プロフェッショナル認定試験
HTML5プロフェッショナル認定試験は、LPI-JapanがHTML5、CSS3、JavaScriptなど最新のマークアップに関する技術力と知識を認定する資格です。難易度別に2つのレベルが提供されています。
レベル2からJavaScriptを出題範囲に含んでいるため、TypeScriptの学習に役立てるのであればレベル2に挑戦すると良いでしょう。ただし、レベル2を受験するためには、レベル1の認定が必要です。
HTML5プロフェッショナル認定資格の試験では、知識よりも、実践的な能力を持っているかが重視されます。最新技術を持っていることを証明できるため、Web関連のシステムに関わるエンジニアは持っておきたい資格の一つです。
| レベル | レベル1 | レベル2 |
| 試験時間 | 90分（試験後のアンケート回答時間も含む） | |
| 出題数 | 約60問 | 40～45問 |
| 受験料 | 16,500円（税込） | |
| 難易度 | ITSSにおけるレベル2に該当 | ITSSにおけるレベル3に該当 |
| 勉強方法 | 公式サイトにて、解説やサンプル問題が提供されています | |
| 出題範囲 | ・Webの基礎知識 ・CSS ・要素 ・レスポンシブWebデザイン ・APIの基礎知識 |
・JavaScript ・WebブラウザにおけるJavaScript API ・グラフィックス／アニメーション ・マルチメディア ・ストレージ ・通信 ・デバイスアクセス ・パフォーマンスとオフライン ・セキュリティモデル |
Webクリエイター能力認定試験
Webクリエイター能力認定試験は、Web開発において必要なマークアップスキルを図る試験です。静的なWebサイト制作のスキルを測る「スタンダード」と、スクリプトを用いた動きのあるWebページのコーディング能力まで評価する「エキスパート」があります。
JavaScriptについて問われるのはエキスパート試験からです。TypeScriptの習得に向けて取り組むのであれば、エキスパート試験を受験するのが良いでしょう。受験資格に制限はないため、いきなりエキスパートに挑戦することが可能です。
| レベル | スタンダード | エキスパート |
| 試験時間 | 随時試験の場合 テキストエディター使用：70分 Webページ作成ソフト使用：60分 公開試験の場合60分 |
随時試験の場合 知識問題20分＋実技問題 テキストエディター使用：110分 Webページ作成ソフト使用：90分 公開試験の場合 知識問題20分＋実技問題90分 |
| 出題数 | 実技問題1テーマ | 知識問題20問＋実技問題1テーマ |
| 受験料 | 6,100円（税込） | 7,700円（税込） |
| 難易度 | 合格に必要な学習時間は24時間 とされており、比較的易しい |
合格に必要な学習時間は38時間 とされており、スタンダードより レベルは上がるものの、比較的易しい |
| 勉強方法 | 公式サイトにて、サンプル問題や学習プランが紹介されています | |
| 出題範囲 | ・制作環境に関する知識 ・Webサイトの構成と設計 ・HTMLの知識 ・CSSの知識 |
・スタンダードの試験範囲 ・JavaScript・ビジュアルデザインと配色 |
TypeScript Certificate
Web技術のオンライン学習サイトW3SchoolsのTypeScript Certificateは、TypeScriptに関する知識、スキルを証明できる資格です。日本での知名度はあまり高くありませんが、試験を提供しているサイトは歴史が長く一定の信頼度があります。ただし、2024年6月時点で英語試験のみの提供であるため注意が必要です。
| 試験時間 | 60分 |
| 出題数 | 約60問 |
| 受験料 | $95 |
| 難易度 | 基礎レベル（JavaScriptの中級経験を前提としています） |
| 勉強方法 | W3Schools.comの提供する学習コンテンツを利用できます |
| 出題範囲 | ・TypeScriptの構文の基礎 ・TypeScriptがJavaScriptに追加する機能 |
TypeScriptに関する資格を取得するメリット
TypeScriptエンジニアに資格の取得は必須ではありません。しかし、資格の取得に向けた学習は体系的な知識を得ることができ、資格を保有することで一定のスキルの証明にもなるため有用です。客観的なスキルの証明は、転職活動や社内での評価につながる場合があります。さらにそこから資格手当や年収アップにつながる可能性もあります。
また、TypeScriptは世界的に使われており、需要が高まっているプログラミング言語の一つです。TypeScriptの知識やスキルを身につけていることが対外的に示せれば、自分の市場価値も高まるでしょう。
以下では、TypeScriptやJavaScriptに関する資格を取得するメリットについて解説します。
転職に役立つ
資格を取得することによって、客観的な知識とスキルの証明になり、社内外での信頼を獲得できます。また、転職時には、志望先の企業に能力を効果的にアピールできるため、良い評価につながる可能性があります。TypeScriptやJavaScriptに関する求人は増加傾向にあるため、資格を持っていればキャリアアップにつながるでしょう。
TypeScriptの需要が高まっている
TypeScriptは、JavaScriptのスーパーセットということもあり、非常に注目されているプログラミング言語です。RedMonkが公開しているプログラミング言語人気ランキングによると、2023年は7位だったTypeScriptですが、2024年には6位と順位を上げています。
また、2024年6月時点でレバテックキャリアに掲載されているTypeScriptを扱う案件数は2,421件です。希望に合う求人を探すには困らないほど多くの案件があることが分かります。
TypeScriptの求人・転職情報＞
関連記事：TypeScriptの将来性は？特徴やメリット、習得方法を解説
世界中で使われている言語のため海外での活躍も期待できる
TypeScriptは、規模や地域にかかわらず世界中のあらゆるシーンで活用されています。ゲームやスマホアプリなどの開発にも用いられており、ほかのプログラミング言語と組み合わせて使用することも可能です。TypeScriptやJavaScriptに関する資格を取得することで、活躍の場を国内だけではなく海外にも広げられるでしょう。
体系的な知識を得られる
資格取得を通じて、TypeScriptやJavaScriptに関する体系的な知識を得られます。TypeScriptは、JavaScriptを改良して開発された言語です。JavaScriptはこれまで機能の拡張が繰り返し行われており、複雑化しているため、エンジニアにとって必要な知識を体系的に学習することが難しい言語です。しかし、資格試験では、要点をおさえての学習が必要になるため、知識を整理してスキルアップする良い機会となるでしょう。
資格手当や年収アップにつながる
企業によっては、資格の保有に対し資格手当を支給している場合があります。対象となる資格は各企業で異なるため、TypeScriptやJavaScript関連の資格があるか確認すると良いでしょう。また、資格の保有はスキルの評価にもつながるため、昇給する場合もあります。
TypeScriptエンジニアが身につけておきたいスキル
TypeScriptエンジニアに興味がある人、転職を検討している人にとって、必要なスキルは知っておきたい一つの要素です。TypeScriptエンジニアが身につけておきたいスキルとして、TypeScriptの開発スキルはもちろん、フレームワークやライブラリの使用スキルなども必要です。また、サーバーサイドの知識や経験、UI・UXに関するスキルなどがあると良いでしょう。
ここでは、TypeScriptエンジニアに必要なスキルについて解説します。
フレームワークやライブラリを使用した開発スキル
TypeScriptは、JavaScriptと同様にさまざまなフレームワークやライブラリを使用できます。TypeScriptを扱う業務範囲は多岐にわたるため、フレームワークやライブラリを使用した開発スキルを習得しておくと、活躍の場が広がるでしょう。また、複数のフレームワークやライブラリを習得しておくと、ほかのエンジニアとの差別化につながります。
以下では、よく使用されるフレームワークについて解説します。
Vue.js
Vue.jsは、Webアプリケーション開発において、UIを構築するためのフレームワークです。ユーザから見えている画面部分をシンプルかつ高速に処理できます。今後はTypeScript+Vue.jsで開発を行う場面が増えると想定されるため、Vue.jsでの開発経験があれば、TypeScriptエンジニアとして重宝されるでしょう。
React
ReactはUIを作ることに特化したJavaScriptのライブラリです。Facebook社（現meta社）によって開発されました。コーディングコストが少なく、規模の大きい開発でも管理が容易であることから、日本でも人気が高まっています。今後は、TypeScriptと併せて使用する機会が増えていくと予想されます。
Angular
Angularは、Googleが提供しているTypeScript上に構築された開発プラットフォームです。JavaScript向けに作成されたAngularJSを見直し、TypeScriptで作り直されています。
その需要の高さと、TypeScriptでの利用を前提としたフレームワークであることから、Angularでの開発経験を積めばTypeScriptエンジニアとしての市場価値を高めることができるでしょう。
TypeScriptの開発スキル
TypeScriptエンジニアになるには、もちろんTypeScriptを用いた開発スキルが必要です。TypeScriptの文法や概念の理解、操作スキルや開発経験が求められます。具体的には、2〜3年以上の実務経験があることが望ましいです。
サーバーサイドの知識や経験
TypeScriptエンジニアには、JavaScriptを使用したサーバーサイドの開発経験や知識も求められます。サーバーサイドの開発では、Node.jsというJavaScriptランタイム環境を使用します。Node.jsを使用することによってJavaScriptをサーバーサイドで使用できます。サーバーサイドの開発や基礎から応用まで学んでおくと、現場で即戦力として活躍できるでしょう。
UI・UX関連スキル
TypeScriptやJavaScriptを用いたUI・UXの開発には、jQueryやBoot strapなどのライブラリを使用します。これらのライブラリを使用することで、デザインやレスポンシブデザインを簡単に実装できます。また、デザイン思考やユーザビリティテストなどの手法を身につけると、ユーザに優しいWebアプリケーション開発が可能です。
TypeScriptエンジニアの平均年収
TypeScriptエンジニアへの転職を検討する上で非常に気になるのが年収です。レバテックキャリアに掲載されている求人・転職情報をもとに、TypeScriptに関する求人の想定年収の下限平均と上限平均の中間値を算出しました。
上記の算出方法によると、TypeScriptエンジニアの平均年収は、約838万円となります。想定年収1000万円を超える求人も多く存在し、高年収が期待できるでしょう。
TypeScriptエンジニアの求人例
TypeScriptエンジニアを目指すのであれば、掲載されている求人実例をチェックすることで実際の仕事内容や年収、必要なスキルなどが把握できます。以下では、レバテックキャリアに掲載されているTypeScriptの求人を紹介します。
飲食業向けモバイルオーダーシステムのフロントエンド開発
【業界】
飲食業界
【想定年収】
400万～800万円
【業務内容】
フロントエンド開発。個社のtoC画面や管理画面の開発、BFFなど
【必須条件】
・Webフロントエンド開発の業務経験
・TypeScriptを用いた開発経験
・AngularもしくはReact を使用した経験
TypeScriptエンジニアになるための転職活動のポイント
TypeScriptエンジニアに限らず、効率的に転職したいのであれば、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。転職活動のポイントとしては、転職する目的を明確にすることと情報収集が非常に重要です。また、一人で転職活動をすることに不安がある人は転職エージェントの活用がおすすめです。
以下では、TypeScriptエンジニアへ転職する際に押さえておきたい転職活動のポイントを解説します。
情報収集と転職する目的を明確にする
自身の望む転職をするためには、転職の目的を明確にすることが重要です。年収を上げたいのか、もっと大きなプロジェクトに携わりたいのか、職域を変えたいのかなど、転職後にやりたいことを整理しましょう。
目的が明確になったら、情報収集を行います。情報収集の際は、事業内容や待遇が自分の目的とマッチしているか、その企業が転職者に求めているレベルを満たしているかを留意することがポイントです。
転職エージェントを活用する
特別な人脈がなければ、転職サイトや転職エージェントの活用がおすすめです。転職サイトの場合は、求人を探して直接応募することになります。転職エージェントでは、自分の希望に合う求人を紹介してもらえるほか、応募後のサポートも受けられます。そのため、迷いがある方や業界未経験の方は、転職エージェントの活用がおすすめです。
TypeScriptの資格に関するよくある質問
TypeScriptの知識の習得やスキルアップを目指して資格取得を検討する際、さまざまな疑問や悩みが浮かぶでしょう。TypeScriptに関するよくある質問として、「TypeScriptとはどのような言語か？」「難易度はどれくらいか？」などが挙げられます。また、関連する資格についての疑問も多いです。
以下では、TypeScriptと関連する資格について、よくある質問と回答をまとめました。参考にしてみてください。
Q1. TypeScriptはどのような言語ですか？
TypeScriptは、JavaScriptの「大規模開発に適さない」という課題を解決するために作られたプログラミング言語です。Webのフロントエンド開発を中心に利用されており、静的型付けなどのJavaScriptにはない機能を持つことから、JavaScriptの代替言語として期待されています。
Q2. CIW JavaScript Specialistとはどのような資格ですか？
CIWは米国Certification Partner社によって運営されるインターネット技術者の認定資格です。JavaScript Specialistは、Web開発者の中でもJavaScriptを用いるスペシャリスト向けで、試験内容はJavaScriptの概念に重点をおいています。
Q3. TypeScriptの習得難易度を教えてください
TypeScriptの習得難易度はJavaScriptと比較するとやや高めです。JavaScriptよりも機能が多く、覚えることが増えるからです。しかし、JavaScriptを習得している人であれば、比較的短時間で習得できるでしょう。
まとめ
TypeScriptは、JavaScriptの「大規模開発に適さない」という弱点を克服するためにMicrosoft社によって作られたプログラミング言語です。JavaScriptと強い互換性を持ち、静的型付けなどの機能が追加されていることにより、Webのフロントエンドの次の中心的な言語となることが期待されています。
TypeScriptのスキルを示せる資格には、W3SchoolsのTypeScript Certificateが挙げられます。また、JavaScript関連の資格もTypeScriptエンジニアのスキル習得・証明に有用です。
TypeScriptエンジニアは需要が高く、高い年収の望める将来性の高いエンジニア職種です。Webアプリの開発に携わるエンジニアは、ぜひTypeScriptの習得や関連する資格の取得によるキャリアアップを目指してみてください。
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