グラフィックデザイナーの仕事内容とは?目指し方や他職種との違い

最終更新日:2024年3月11日

グラフィックデザイナーの仕事内容は、広告、雑誌、ポスター、Webページなどのデザインを行うことです。ゲーム業界においては、キャラクターや背景などのデザインを担当します。いずれの場合においても、ディレクターやクライアントの意向に沿いつつデザインを制作することが多い仕事です。

創造力を思う存分に活かせる仕事であり、多くの人に自分の制作物を見てもらう機会もある魅力的な仕事といえます。また、スキルを向上させることでキャリアアップも可能です。

この記事では、これからグラフィックデザイナーを目指す未経験者の方に向けて、仕事内容や必要なスキル、やりがい、役立つ資格、年収などを詳しく解説します。

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この記事のまとめ

  • グラフィックデザイナーは広告、雑誌や紙媒体、Webサイトなどのデザインを行う職種
  • 業務の流れは顧客へのヒアリング、デザイン制作、デザイン修正、納品となっており、顧客との間で調整を行いながら進めていく
  • グラフィックデザイナーに必要なスキルは、レイアウト、色彩などのデザインに関するスキルと、Photoshopなどのソフトウェアを扱うスキル
  • グラフィックデザイナーのキャリアパスにはアートディレクター、クリエイティブディレクター、ブックデザイナーなどがある
  • 紙媒体では発行部数などの減少がみられるが、グラフィックデザイナーはWebなども視野に入れれば今後も需要がある

グラフィックデザイナーの仕事内容を分かりやすく解説

グラフィックデザイナーの主な仕事は、紙媒体やWeb媒体で掲載される広告や雑誌、ポスターなどのデザインです。また、ゲーム業界ではキャラクターやアイテム、背景も担当するなど、社会のあらゆるデザインをグラフィックデザイナーが手掛けています。

グラフィックデザイナーの一般的な仕事の流れは「ヒアリング→デザイン制作→デザイン修正→納品」です。顧客の意向に沿って制作していき、必要であれば修正を繰り返しながら制作物の納品を目指します。

ここでは、広告におけるDTPデザイン制作を例に挙げ、グラフィックデザイナーの仕事内容を工程ごとに詳しく説明します。

ヒアリング

グラフィックデザイナーがデザイン制作の依頼を受け最初に行うことは、ヒアリングです。まずはクライアントからプロモーションする製品やサービスの詳細について説明を受け、どのようなデザインにしたいかクライアントの要望を聞き出します。その内容をもとに、デザインコンセプトや広告のターゲット層、制作物の仕様、納期、予算などを明確にします。

この段階でお互いの認識が違うと、後の工程で大きな修正が発生する場合があるので、ヒアリング結果を要件定義書などの書面にまとめ、認識に相違がないか確認をとることが非常に重要です。また、要望が明確でないクライアントに対しては、こちらからデザインを提案できるよう準備しておく必要があります。

デザイン制作

ヒアリングでクライアントの要望を明確にした後、要件定義書に沿ってデザインの制作に移ります。まず、デザインを制作する前の概略図として作成するのが「ラフ」です。「おおまかな」という言葉の意味どおり、ラフ作成時点ではダミーの文章や画像を用意し、簡単なレイアウトを作成します。ラフの段階でクライアント確認を行うかどうかは場合によりますが、擦り合わせをしてラフのブラッシュアップをしておくと、後々の手戻りは少なくなるでしょう。

その後、ロゴやキャッチコピーなどの素材を準備します。企業ロゴはクライアント、文章はライター、写真はフォトグラファーなどに依頼して素案を作ってもらうことが一般的です。クライアントが準備したデザイン素材を使用する場合は、デザイン制作に入る前にクライアントから支給されます。

写真やイラストなどの素材は、Photoshop®やIllustrator®、InDesignといったツールを用いてさまざまな加工を行いながらデザインしていきます。クライアントに提出するときには、色やレイアウトが異なるいくつかのパターンを用意します。

デザイン修正

デザイン制作が完了したら、クライアントにチェックしてもらいます。デザインの最初のバージョンのことを、「初校」といいますが、クライアントに初校の確認を依頼し、修正や変更箇所を指摘してもらいます。

指摘された箇所を修正し、修正した箇所を確認してもらうという作業を数回繰り返してクライアントの理想のイメージに近づけていくのがデザイン修正です。

クライアントはデザインに関する知識を持っていないことも多く、制作物を実際に確認した結果、デザインの方向性を大きく変えるケースもあります。場合によっては1から作り直しになることもあるでしょう。そういった手戻りをできるだけ減らすために、工程ごとに書面にまとめて、責任者の合意を取っておくと良いです。

納品

提出したデザインに対してクライアントの合意が取れたら、印刷会社にデータを入稿します。本刷りの前に制作物の色味や発色具合を確認することを「色校正」と呼び、色校正で制作物の最終的な仕上がり確認をします。問題がなければ校了となり、本印刷に移ります。

デザイン修正に思いのほか時間がかかった場合、印刷納期の短縮でスケジュールを調整することも可能です。その場合、本印刷で追加費用が発生することがあります。本印刷に移る前に費用について必ずクライアントと相談しましょう。

本印刷の完了後、クライアントに制作物を納品します。納品方法は、印刷会社から直接クライアントに制作物を発送してもらうか、デザイン会社まで制作物を送ってもらい、チェック後にデザイン会社からクライアントに納品することもあります。

グラフィックデザイナーとは

グラフィックデザイナーとは、クライアントのニーズに従ってWebサイトや紙媒体に掲載する広告やパッケージの制作をしたり、ゲーム内のキャラクターや背景などのデザインを手掛ける職種のことです。クリエイティブな仕事というイメージですが、クライアントの要望をしっかりとヒアリングした上で業務を進める必要があるため、コミュニケーションスキルやスケジュール管理能力などが必要です。

大型の看板広告やポスター、Webサイトなどで、自分が手掛けた作品を多くの人に見てもらえることもあり、この点に魅力ややりがいを感じるグラフィックデザイナーも多くいます。

Webデザイナーとの違い

クライアントワークであることはグラフィックデザイナーと同様ですが、WebデザイナーはWebを専門とする点が大きな違いです。Webデザイナーは、コーポレートサイトやランディングページといったWebサイトのデザインやレイアウトを制作する職種です。見た目の美しさだけでなく、動きやアニメーションなどを含めたWebサイト自体の使い勝手も考慮する必要があります。

Webデザインは比較的習得しやすく、現在ではオンラインでWebデザインを学べるスクールなども充実しています。デザインに加えて、コーディングやディレクションなどのスキルも身につけると、収入を大きく上げられる可能性があります。

イラストレーターとの違い

グラフィックデザイナーがデザイン全般を担う仕事であることに対し、イラストレーターはイラストを描くことに特化した仕事です。印刷物の表紙や挿絵、ゲームのキャラクター、Webサイトなどイラストが使われる場面は多種多様です。それだけイラストレーターの門戸は広そうですが、成功するには狭き門であり、イラストレーターの仕事のみで生計を立てられる人は、それほど多くないといわれています。

DTPデザイナーとの違い

グラフィックデザイナーは制作物全般のデザインを作り上げることが主な仕事ですが、DTPデザイナーは、DTPソフトを使用して紙媒体の印刷物のデザインを組み上げ、レイアウトしていくのが特徴です。DTPデザイナーが作成したレイアウトによって、読者の心を動かしたり、情報を適切に伝達したりとさまざまな効果をもたらします。

DTPソフトは紙媒体の書籍やポスター、パンフレットなどの印刷物のデータ作成に用いられるアプリケーションソフトの総称です。DTPソフトはパソコンで使用するため、DTPデザイナーはパソコン操作ができることに加えてDTPソフトを扱えなければいけません。

アートディレクターとの違い

アートディレクターは、グラフィックデザイナーが制作したデザインなどの確認と修正を行い、制作物を完成させる職種です。制作物のディレクションやマネジメントを行います。

アートディレクター自身は手を動かしてデザイン制作を行うことは少ないですが、グラフィックデザイナーに対して的確な指示を与えるためには、デザインに関するスキルやコミュニケーション能力が求められます。そのため、グラフィックデザイナーとして経験を積んだ人がアートディレクターになることが多いです。

ゲームグラフィックデザイナーとは

グラフィックデザイナーの中でも、ゲームに特化しているのがゲームグラフィックデザイナーです。ゲームグラフィックデザイナーによって、キャラクター、背景、モーション、エフェクトなど得意分野が異なり、分業していることが多いです。ゲームグラフィックのスキルを身につければ、そのほかの業界のグラフィックデザインでも役立ちます。

グラフィックデザイナーに向いている人の特徴

グラフィックデザイナーにはどのような人が向いているのでしょうか。デザインの才能があればもちろん良いですが、才能さえあれば向いているというわけでもありません。また、人によって得意な領域や性格は異なるため、グラフィックデザイナーを生業とするには向き不向きがあるでしょう。

グラフィックデザイナーとして活躍しやすいのは、以下の5つの特徴を持っている人です。

クリエイティブセンスが高い人

デザインに関する知識やスキルが必要なのはいうまでもありませんが、まだ世の中に存在しない独創的なデザインを制作するためには、クリエイティブセンスが必要です。クリエイティブセンスとはデザインの感性のことであり、発想力や創造力も含まれます。感性を養うためには、さまざまなデザインに触れたり、自分でデザインを考えたりする習慣があると良いでしょう。

センスは生まれつきの才能という人もいますが、デザインを学ぶことによって身につくものともいわれています。自分にはデザインのセンスがないと思う人でも、デザインを学び、直感的なクリエイティブセンスを養うことは十分に可能です。

流行や最新技術を積極的にキャッチアップできる人

デザイン業界のみならず多くの業界の流行は変化していきます。グラフィックデザイナーにおいては、最新の流行に合わせたデザインを求められる機会もあるため、デザイン業界の動向や社会全体の流行の変化は注視しておかなければいけません

また、仕事内容に活かせるよう最新技術を積極的に取り入れる姿勢も価値を高めていくためには必要です。普段から流行に敏感で、好奇心旺盛な人であれば、デザイン業界の流行や最新技術にも問題なくついていけるでしょう。

新しいアイディアを提案できる人

グラフィックデザイナーとしての仕事を進める上で、自分の意見や考えを伝える提案力は大切です。顧客の意向に沿うことは大前提ですが、デザインを担当する者として、製作物をより良いものにするためのアイディアは積極的に提案していく必要があります。顧客の意向だけを尊重するとデザインの可能性を狭めてしまう可能性があるため、躊躇なく提案していけるマインドを持つ人が向いています。

さまざまな課題をデザインで解決したい人

デザインは誰かのニーズで成り立ち、誰かの目に触れたときに効果を発揮します。デザイン依頼の背景には「来客者数を増やしたい」「新商品をアピールしたい」などのさまざまなニーズや課題が存在します。そのようなニーズや課題に沿うように、デザインによって人の興味を引いたり、一定の印象を与えたりすることができるのがグラフィックデザイナーです。ニーズや課題解決のためにデザインしたいという熱意を持てる人は、やりがいを感じやすく成果も出しやすいです。

人とのコミュニケーションが好きな人

グラフィックデザイナーは顧客の意図をデザインに反映させるために顧客とのコミュニケーションが必須です。修正や提案をする上で顧客との意思疎通がうまくとれないと、時間がかかりスムーズに作業が進みません。顧客の意図やデザインの目的をコミュニケーションによって汲み取ることが必須となるので、コミュニケーションが苦手な人は仕事がしにくいと感じる場面が多いでしょう。

未経験からグラフィックデザイナーになるには

グラフィックデザイナーは専門学校などでデザインについて学んだあとに就職するパターンが一般的です。そのほか、関連職を経てグラフィックデザイナーになる人もいれば、独学もしくは未経験でも目指す人はたくさんいます。
しかし、未経験の場合は経験者に比べてさまざまなハードルがあるため、デザインの知識やスキルを身につける努力が最低限必要でしょう。

ここでは、未経験者からグラフィックデザイナーになる方法について解説します。

関連記事:
未経験でグラフィックデザイナーになるには?求められるスキル
グラフィックデザイナーの志望動機!未経験向けの例文も紹介

専門学校や大学で学ぶ

専門学校や大学でグラフィックデザインを学びスキルを習得して、グラフィックデザイナーになるのがベーシックな方法です。

専門学校に進学した場合は、デザイン制作における実務的な内容を短期間で学べます。一方、大学なら芸術系学部の美術学科やデザイン学科に進学すれば、デザインに関する幅広い知識について時間をかけてじっくりと学べるでしょう。

どちらもデザインの基本的なスキルやアドビのソフトウェアの操作方法などを学習します。有名な専門学校や大学でデザインを学び卒業したことをアピールすれば、デザイン会社への就職に有利になるでしょう。

独学で勉強する

グラフィックデザイナーとなるためのスキルを独学で習得することも可能です。デザインの基本的なスキルやアドビのソフトウェアの使い方は、書店で販売されている書籍で学ぶことができるほか、インターネット上でもデザインを学べる講座などが充実しています。

また、書籍やWebサイトで学ぶだけでなく、実際に制作物を作りながら理解を深めることが重要です。いろいろなデザインを模写したり、自分で変更を加えるなどの工夫をしたりしながら実践的なスキルを身につけると良いでしょう。

独学でグラフィックデザイナーを目指すには、実務経験が全くないため、知識やスキルを示すポートフォリオが重要視されます。しっかりとポートフォリオを作り込みアピールすれば、就職活動時に評価されるポイントとなります。ポートフォリオは、デザインの目的やターゲット、制作にかかった時間など、単純にデザインを見せるだけではなく、しっかりとコンセプトを決めて制作することが重要です。

アシスタントとして経験を積む

まずは、グラフィックデザイナーの近くで働けるアシスタントを目指すのも1つの手段です。アシスタントになれれば、仕事内容は違えどグラフィックデザイナーのすぐそばで実務に触れたり見たりできます。また、デザインの過程におけるさまざまなタスクを任せてもらえる機会も多く、デザイン業界での経験を積めることは大きなメリットでしょう。

たとえば、ちょっとした写真の加工や人物などのトリミング、原稿の誤字脱字チェックなど、経験の浅いグラフィックデザイナーでもできる仕事はたくさんあります。このような仕事のサポートを続けながら、先輩デザイナーの仕事ぶりをよく観察して、自分のスキルアップにつなげていきましょう。

グラフィックデザイナーに必要なスキル

グラフィックデザイナーの仕事をする上で必要になるスキルはいくつかあります。デザインの依頼を受けてから納品に至るまでには、知識やスキル、ソフトウェアなどを駆使しながら進めていく必要があります。これらを知っておけば、就職・転職活動のアピールの際にも役に立つでしょう。

ただし、仕事内容によっては求められるスキルが異なる場合があります。希望する企業の仕事内容に合わせて必要なスキルを判断することも大切です。

デザインスキル

グラフィックデザイナーに求められる主なデザインスキルは、レイアウト、色彩、タイポグラフィの3つです。デザインスキルがなければ、顧客の意図に沿うより効果的なデザインやレイアウトを作成することはできません。ここではデザインスキルについて1つずつ説明していきます。

レイアウトスキル

見る人の視点に立ち、制作物の内容が伝わるレイアウトを構成するためにはレイアウトスキルが必要です。レイアウトを構成するには、近接・整列・コントラスト・反復と呼ばれる以下のデザインの基本原則を守ることが大切です。

  • ・近接(同じグループの要素を近くに配置する)

    ・整列(左揃え、中央揃えなどの整列を統一する)

    ・コントラスト(重要な要素を大きくするなどメリハリをつける)

    ・反復(円や四角などの同じ要素を繰り返し使い、統一感を出す)

色彩に関するスキル

色が人に与える印象は大きく、かつ、特定のイメージを与えやすいといえます。たとえば、暗い印象を与えるなら暗い色を選択し、明るい印象では明るい色を選択するのが一般的でしょう。このように、デザインをする上で最適な色彩を選択するスキルは大切です。色の3要素「色相、明度、彩度」、色の配置を決める「配色」をよく学び、人に与える心象などの原則を理解しておく必要があります。

タイポグラフィに関するスキル

タイポグラフィは文字の体裁に関することで、大きさ、行間、フォントの種類などを決定し、読みやすく配置することを意味します。見やすいものや読みやすいもののほうが人の目につきやすいです。文字の大きさや行間が読み手に与える影響を理解し、フォントを適切に選択するスキルが求められます。

ソフトウェアを扱うスキル

多くのデザインはソフトウェアを使って作成されます。せっかくデザインが頭の中にあっても、そのイメージを形にするためには決められたソフトウェアを適切に扱えなければいけません。デザインに必要なソフトウェアはいくつかありますが、一般的に多く使われているのは以下のソフトウェアです。

Illustrator®

Illustrator®はロゴやイラスト、ポスターやグラフなどさまざまなデザインを作成できるアドビ製のソフトウェアです。デザイン業界の標準ソフトとして使用されているため、Illustrator®を扱うスキルは必須といえます。

Illustrator®で扱う画像はベクタ形式とよばれます。これは画像を構成する図形の位置や色、大きさの情報を数値として持つ画像形式です。「ai」や「svg」などの拡張子を持ちます。データ量が少なく変形などの編集に強い画像形式ですが、複雑な画像の編集には不向きです。

Photoshop®

Photoshop®もIllustrator®同様、写真や画像の編集を行えるアドビ社製のソフトウェアで、デザインの業界標準とされているほどに普及しています。画像編集だけでなく、文字や図形を組み合わせてデザインのパーツを作ることも可能です。広告やポスターなど画像を扱う際には必須のソフトといえるでしょう。

Photoshop®で扱う画像はラスタ形式とよばれます。これは色の情報を持つ1ピクセルの点の集合で表現された画像形式です。「psd」や「jpg」、「gif」、「png」などの拡張子を持ちます。複雑な画像の編集に強い反面、拡大縮小などサイズ変更には適しておらず、拡大すると画像の品質が落ちてしまいます。

InDesign

InDesignは、Illustrator®やPhotoshop®で作成した素材などを配置してレイアウトを作成するアドビ社ソフトウェアです。印刷物とデジタルメディアのどちらにも使用でき、DTPでは必須のソフトウェアになっています。

InDesignは複数のページを持つ冊子やカタログなどのデザインの制作に向いています。複数のページで共通のデザインを適用させるためのページレイアウト機能や、大量の文章を効率良く配置するための機能が充実しています。

ヒューマンスキル

グラフィックデザイナーはクライアントワークであるため、人との関わりは避けて通れません。ヒューマンスキルに長けている人ほど、さまざまな場面で仕事がしやすく、余計なトラブルも起きにくいといえます。では、ヒューマンスキルにはどのようなものがあるのか、具体的に見ていきましょう。

論理的思考力

グラフィックデザイナーには論理的思考力も求められます。デザイン制作時に顧客の要望を正確にとらえ、論理的に考えて整理できるスキルが論理的思考力です。グラフィックデザイナーらしい創造力を働かせる右脳的なスキルだけでなく、物事を論理的にとらえられる左脳的なスキルも必要です。

スケジュール管理力

グラフィックデザインの仕事は、複数のクライアントからの依頼を並行して進めることもあります。そのため、しっかりとしたスケジュール管理ができないと、仕事の進捗に悪影響が及びかねません。決められた納期から逆算して段取りをし、柔軟にスケジュール調整できるような管理力が重要です。

グラフィックデザイナーの仕事には、小さな納期がいくつもあります。企画提出の納期、初稿提出の納期、修正稿提出の納期、入稿データの納期などさまざまです。とにかく納期については、必ず守らなくてはなりません。クライアントからの信頼を失わないためにも、スケジュール管理を徹底する習慣が必要です。

プレゼンテーションスキル

グラフィックデザイナーとしてクライアントに企画やデザインを提案できるスキルも必要です。クライアントの主観に偏ったデザインや、デザイナーの好みだけで制作したデザインは必ずしも良いものとはいえないからです。

グラフィックデザイナーはクライアントのニーズを把握し目に見える形にまとめて、デザインの方向性を提案しなければなりません。成果を上げクライアントの満足させられるデザインを提案するためのプレゼンテーションスキルが必要不可欠です。

グラフィックデザイナーの活躍の場

社会のあらゆるところで、グラフィックデザイナーのデザインが活かされていますが、実際にグラフィックデザイナーはどのような場で活躍しているのでしょうか。多いケースとしては企業に雇われて働く選択肢が挙げられますが、実力と営業力があればフリーランスとして生計を立てることも可能です。

働く企業や部署によっては仕事内容が異なる場合があるので、その点は注意が必要です。グラフィックデザイナーの活躍の場について具体例を挙げながら解説します。

デザイン事務所、制作会社

グラフィックデザイナーが活躍している職場として、デザイン事務所や制作会社が挙げられます。クライアントの注文を受け付け、あらゆるデザインを行う企業です。大手企業から小規模なところまでさまざまな特色を持った会社が存在します。

広告制作会社や広告代理店

広告制作会社は、広告代理店やメーカーから広告の制作の依頼を受けて広告を制作します。そのため、グラフィックデザイナーは主に広告のデザインやレイアウトを担当します。広告代理店はクライアントと連携して、広告戦略の立案や広告制作を行います。

これらの企業では複数のデザイナーや別の職種の社員と協力しながら仕事を進めることが一般的です。そのため、仕事を円滑に進めるためのコミュニケーション能力が重要です。

また、印刷物やインターネット媒体だけでなく、テレビやラジオ、新聞などさまざまなメディアで使われるデザイン制作に携わる機会があれば、業務を通じて幅広いスキルを身につけることも可能です。

インハウスデザイナーとして働く

企業の広告宣伝部などに所属するインハウスデザイナーとして活躍する人もいます。自社商品のデザイン業務や、自社の宣伝広告の制作などを行います。自分のデザイナーとしてのスキルが自社の売上に直接影響することもある重要な仕事です。

規模の小さい会社の場合、デザイン制作だけでなく企画を含めた全ての工程を一手に引き受けることもあります。中にはデザイナーが少人数もしくは自分1人だけという会社もあるでしょう。その場合、仕事で発生した悩みや課題などを相談できる相手も限られてくるため、自力で解決する粘り強さも必要です。

フリーランスとして働く

フリーランスのグラフィックデザイナーとして独立する人もいます。フリーランスの仕事はデザイン制作だけでなく、営業や経理など多岐に渡りますが、自分の裁量で仕事を進められることがフリーランスの魅力の1つです。クラウドソーシングや、フリーランス向けのエージェントなどの普及に伴い、案件を効率良く獲得できるようになってきています。

一方、収入面では不安定になりやすい働き方です。また、クライアントとのトラブル発生時の対応や修正依頼が重なることも考えられるため、それらを乗り越えていく覚悟が必要でしょう。

さらに、フリーランスの場合、会社員のように勤務時間が決まっていないため、延々と仕事をしてしまう人もいます。不規則な生活にもなりがちなので、仕事とプライベートをしっかりと線引きするなどの工夫が必要です。

グラフィックデザイナーの面接対策

グラフィックデザイナーとして就職・転職するためには、ほかの職種同様、自己分析や企業研究が重要です。自分のデザイン表現だけでなく企業やクライアントの要望に従ってデザインを作ることが多いので、ニーズに沿ったデザインができるというアピールは必須でしょう。

またグラフィックデザイナーの場合、ポートフォリオがスキルや知識を証明する根拠になります。どのようなデザインができるのか、いかにニーズに応えられるのかといった根拠を示せるポートフォリオを作成しなければいけません。ポートフォリオを提出した上で、なぜそのようなデザインにしたのか、どのようなスキルを有しているのか、などをあわせて伝えると企業側に自分の有益性をアピールしやすいでしょう。

グラフィックデザイナーとしてのやりがいと大変なこと

グラフィックデザイナーの仕事内容から見ても、デザインの効果によって誰かの心を動かしたり、課題を解決したりできることは大変魅力的です。デザインスキルやさまざまなスキルがあってこそ成り立つ仕事であり、やりがいを感じられる場面は多くあるでしょう。もちろん仕事なので、やりがいだけではなく時にはつらいことや苦しいこともあります。

ネガティブな部分は確かにありますが、良い印象だけをイメージしたままグラフィックデザイナーを目指すのは理想的ではありません。良い部分もそうでない部分も、どちらも理解した上でグラフィックデザイナーについて考えていきましょう。

グラフィックデザイナーのやりがい

グラフィックデザイナーを目指す理由は、人によってさまざまです。その中でもデザインが好きだったり、昔からセンスが秀でていたりと、デザインに愛着がある人ほど、グラフィックデザイナーとしてのやりがいを感じやすいといえます。 実際にグラフィックデザイナーのやりがいとして、よく挙げられるものを紹介します。

目に見える成果物がある達成感

自分で制作したデザインが、商品の広告やポスター、カタログなどの目に見える形となって世界に発信されることで、大きな達成感を得られます。また達成感が得られるだけでなく、クライアントからも感謝されることも、グラフィックデザイナーにとっての大きなやりがいとなります。

クリエイティブの楽しさ

グラフィックデザインはデザイナーのセンスと経験を活かして生み出されるため、クリエイティブなもの作りが好きな人にとっては、仕事が趣味と言い切れるくらい魅力のある仕事です。1つの仕事を終えるたび新しい知識やデザインの技術を身につけられ、そのスキルを次の仕事に活かせるサイクルは、クリエイティブな仕事ならではです。

また、デザイン制作にはフォトグラファーやディレクターなどのほかの職種と連携することもあります。チームを組んで大きな仕事を成功させたときには、何ものにも代えられない満足感が得られます。

グラフィックデザイナーとしてつらいこと

やりがいあふれるグラフィックデザイナーですが、つらいと感じることもあります。ネガティブな面はなるべく知りたくないと思う人は多いかもしれませんが、転職後に「こんなはずじゃなかった」と損をするケースはたくさんあります。グラフィックデザイナーを目指すのであれば、自分にとってネガティブな側面も知っておき、客観的に捉えた意見なども参考にすると良いでしょう。

アイディアの行き詰まり

仕事としてデザイン制作を行うことは、自由に制作できることとは異なります。ゼロから価値のあるグラフィックデザインを生み出すにも、何も思い浮かばず、苦労を感じることもあるでしょう。クライアントの要望に応じてデザイン制作する過程では、デザイナー自身の創造力とアイデアをフル活用することが必要です。

スケジュール管理

グラフィックデザイナーは基本的に納期のある仕事なので、スケジュール管理で手一杯になることも考えられます。予定通り仕事を進めようとしても、クライアントから予期せぬ変更を依頼されて、残業が発生したり、ほかの仕事に影響がでたりすることもあります。

クライアントとの折衝

場合によっては、自分が良いと思うデザインと、クライアントが求めるデザインが大きく異なることもあります。うまくコミュニケーションがとれないとクライアントとの折衝がつらく感じるかもしれません。このようなときは、仕事と割り切ることも必要ですが、心の中で思い通りの仕事ができないことで葛藤することも多々あります。

グラフィックデザイナーに役立つ資格

仕事内容や求められるスキルについて説明したように、グラフィックデザイナーには専門的なスキルや知識が欠かせません。グラフィックデザイナーになるためには、そのような専門知識があることをアピールできるとより効果的です。

専門学校や大学などでデザインについて学んだ場合でも、資格がない人よりはある人のほうが優位といえます。また、実務にも活かせられれば仕事の質も高まるため、資格取得は仕事上でのメリットも大きいです。

ここで紹介する資格を取得することでスキルのアピールにつながるでしょう。

Illustrator®クリエイター能力認定試験

Illustrator®クリエイター能力認定試験は株式会社サーティファイが主催している、Illustrator®の活用能力を評価する資格です。「スタンダード」と「エキスパート」の2つのレベルがあり、実力に応じて選択できます。試験ではドキュメントデザイン技術に関する知識が問われ、実際にIllustrator®を操作し提示されたテーマ・素材から、仕様に従ってコンテンツを制作します。

Photoshop®クリエイター能力認定試験

Photoshop®クリエイター能力認定試験は株式会社サーティファイが主催している、Photoshop®の画像編集スキルを評価する資格です。こちらも「スタンダード」と「エキスパート」の2つのレベルがあり、実力に応じて選択できます。試験では実際にPhotoshop®を操作し、提示されたテーマ・素材から、仕様に従ってコンテンツを制作します。

アドビ認定プロフェッショナル

アドビ認定プロフェッショナルは、アドビ社が主催する国際認定資格です。Adobe Creative Cloudに対応した試験となっており、Illustrator、Photoshop、Premiere Proの3つのアプリケーションごとに試験が設けられています。

アプリケーションごとの使い方だけでなく、デザイン原則などデザイナーの基礎知識も問われるため、やや難易度が高い資格といわれています。取得することでイラスト作成や画像編集の基本が身につき、対外的にスキルを証明できます。

DTPエキスパート

DTPエキスパートは公益社団法人日本印刷技術協会が主催する認定資格で、グラフィックアーツに関わるすべての人の必須知識として広く認知されています。「DTP」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーションと印刷ビジネス」の5つの分野から出題されます。DTPの総合的なスキル習得、およびその証明に役立つでしょう。

色彩検定

色彩検定は公益社団法人色彩検定協会による、色に関する幅広い知識や技能を評価する検定です。3級から1級までのスキルに応じた分類と、UC級と呼ばれる色のユニバーサルデザインに関する区分があります。グラフィックデザインだけでなく、ファッションやインテリア、プレゼン資料までさまざまな分野で活かせるスキルを証明できるでしょう。

関連記事:グラフィックデザイナーの資格おすすめ6選|勉強法やコツを解説

グラフィックデザイナーの年収

グラフィックデザイナーの年収は一体いくらなのか、気になる人は多いでしょう。レバテックキャリアの求人だけに絞って見てみると、年収は290万円から1,400万円と低い場合と高い場合で大きく開きがあります。平均年収を算出すると約576万円になります。ただし、求人情報はリアルタイムで更新されるため、あくまで参考として捉えてください。

グラフィックデザイナーとしての経験やスキルによって年収は異なり、業界・企業規模によっても差がありますが、未経験から入社した場合は低めの年収であることが多いです。一方で特定の業界に特化していたり、複数のスキルや豊富な実績があったりする場合は年収が高くなりやすい傾向があります。

グラフィックデザイナーの需要と将来性

Webメディアの需要が高まる一方、雑誌や書籍、新聞などの紙媒体の販売数が減り、店舗型の本屋も減少するなど、紙媒体のメディアに衰退の兆しが見られています。グラフィックデザイナーの仕事でも、紙媒体向けのデザイン業務に関しては減少していくことが予測されます。しかしながら、広告やパンフレット、商品外装などへのデザインは今後も一定規模で残ると考えられ、急激にグラフィックデザイナーの仕事がなくなることにはつながりません。

業界動向に伴い、グラフィックデザイナーの仕事内容も変化していく可能性がありますが、Web媒体の仕事は増加していくと想定されるため、今後は対象範囲を広げることで将来性を高められるといえそうです。

グラフィックデザイナーとして市場価値を上げるためのポイント

グラフィックデザイナーが継続的に活躍し続けるためには、自ら活躍の場を広げていく必要があるでしょう。デザインスキルだけでなく、ほかの得意分野や興味のある分野のスキルも活かすことで、1人のグラフィックデザイナーとしての魅力や価値を高められます。現状に満足せず、「個」の力を磨く努力を惜しまない姿勢が大切です。

Webのマーケティングスキルを身につける

グラフィックデザイナーはWeb媒体に関わることも多いため、マーケティングスキルなどのWeb関連のほかのスキルも習得できれば活躍の場が広がりそうです。また、マーケティングスキルはデザインにも活かせるスキルであり、同じグラフィックデザイナーでも、Web関連の知識が豊富な人のほうが重宝されます。デザイン以外の付加価値をつけることで差別化を図れ、自信にもつながっていきます。

ディレクションの実戦経験を積む

市場価値を高めていくには、与えられた仕事だけをただ淡々とこなすのではなく、ディレクション能力を高める姿勢も必要です。企画力やコミュニケーション能力が求められるディレクションの役割をこなせれば、グラフィックデザイナーとして頼りにされる場面も増え、キャリアアップにもつながりやすいといえます。ディレクションの実務経験も積んでいきながら自分の価値を高めていきましょう。

グラフィック以外の専門性も身につける

スキルの掛け合わせができれば、希少価値をより高められます。たとえば、英語が得意なグラフィックデザイナーであれば、日本のみならずグローバルで活躍できる可能性が考えられます。ほかにも、プログラミングスキルやマネジメントスキルなど、デザイン以外の専門スキルを身につけることで活躍の場が広がりやすくなります。

グラフィックデザイナーのキャリアパス

グラフィックデザイナーになったあと、将来的にはキャリアアップを望む人がほとんどでしょう。キャリアパスはいくつか考えられますが、当然、キャリアアップの過程で仕事内容や環境などが変化します。自分の手でデザインを手掛けることも少なくなる場合もあるでしょう。グラフィックデザイナーのキャリアパスについて、今のうちから知っておき、今後のキャリアプランを考える参考にしてください。

アートディレクター

アートディレクターは広告やWebサイト、商品パッケージ、ゲームグラフィックなどのデザイン制作において、チームをまとめて成果物の完成に導く責任者のポジションです。デザイナーはデザインの実務がメインの業務ですが、アートディレクターはデザイナーなどの仕事をまとめてチームでの完成に導くディレクションやマネジメント色の強い職種となります。

クリエイティブディレクター

クリエイティブディレクターは広告の制作物に関するチームの統括を行う仕事です。アートディレクターと同様に、ディレクションやマネジメントが重要な職務となります。広告を制作対象とするため、クライアントとのやり取りも重要で、成果に対する責任なども問われる仕事となります。

ブックデザイナー

ブックデザイナーは装丁家とも呼ばれ、本の表紙などの外観についてのデザインを行う仕事です。紙の種類や帯などもデザインの対象とし、仕事によっては書籍内のデザインにも関わる場合があります。グラフィックデザイナーも本のデザインに関わることがありますが、ブックデザイナーはより専門色の強い職種です。

グラフィックデザイナーに関するよくある質問

グラフィックデザイナーは、同じくデザインを手掛けるWebデザイナーやDTPデザイナー、イラストレーターなどの関連職との区別がつきにくいこともあり、特に仕事内容に関する質問が多いです。ほかにも多くの質問が寄せられますが、分からない部分が多い状態では転職活動をスムーズに進めることはできません。疑問がある場合は,
早めに解消しておくことをおすすめします。

ここでは、グラフィックデザイナーに関するよくある質問とその回答を紹介します。

Q1.グラフィックデザイナーの仕事内容は?

グラフィックデザイナーの仕事内容は、紙媒体やWeb媒体全般のグラフィックデザインです。具体的には、広告、雑誌、ポスター、ウェブページ、ゲームなどが挙げられます。どのような媒体であっても、独自にデザインするというよりかは、クライアントや企業の意向に沿ってデザインを作っていくことが多いです。

Q2.グラフィックデザイナーになるには?

グラフィックデザイナーになるには、専門学校や大学で学ぶ、独学で勉強する、アシスタントとして経験を積む、といった方法があります。いずれの方法でも、基本知識を身につけ、実際に手を動かしてデザイン制作していくことが重要です。また、日頃からデザインの感性を磨く意識や努力をすることも大切です。

Q3.グラフィックデザイナーにはどんな人が向いている?

クリエイティブセンスがあり、デザインによってさまざまな課題を解決したいと思う人にとっては適職です。ただし、それだけでは足りず、クライアントの意向に沿って意思疎通を図りながらデザインを制作するため、人とのコミュニケーションが好きで折衝能力に長けている人はより向いてるといえます。

Q4.グラフィックデザイナーに求められる能力は?

デザインスキルはもちろんのこと、デザインを制作するためのソフトウェアを扱えることも重要です。また、グラフィックデザイナーは人と関わる場面も多く、制作を円滑に進めていくためにはクライアントに提案する際のプレゼンテーション能力や折衝能力も求められます。また、納期を意識したスケジュール管理も適切に行わなければいけません。

まとめ

グラフィックデザイナーの仕事内容や必要なスキルに加え、役立つ資格、平均年収について解説しました。さまざまなデザインを手掛けるグラフィックデザイナーは、多くの場面で活躍しており、特にWeb媒体においては今後も将来性がある職種といえます。

グラフィックデザイナーは技術職であり、スキルや過去の実績が重視される業界です。また、専門性が高いため、デザインスキルやソフトウェアを駆使したデザインができるようになるには、それなりの時間と努力が必要です。

グラフィックデザイナーを目指すのであれば、地道な努力を重ね、より魅力的なポートフォリオを作り込むことでスキルをアピールしましょう。また、スキルを身につける過程では資格制度を積極的に活用すると効率的です。

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