テストエンジニアに将来性がないと危惧される5つの理由
インターネット上などで「テストエンジニアは将来性がない」という声が度々見られます。
そう考えられている理由として、AIの急速な普及が挙げられます。AIを利用した開発支援ツールやテストケース自動生成などによって、今までテストエンジニアが行ってきた仕事が奪われるという不安があります。そのため、テスト工程だけに特化したエンジニアの需要は少なくなるでしょう。
本記事ではテストエンジニアとしてこの先も生き残るための方法をご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
1. AI技術の発展によりテスト工程だけの人材の需要は縮小
システム開発のテスト工程の作業については、今後はAIが多くの仕事を担当すると考えられています。
テストケース作成やテスト実行などは、決まったルールに基づいた比較的単純な作業であり、AIにとって得意な種類のタスクです。特にAIを利用した開発支援ツールの導入やテストケース自動作成などが進められています。
実際に大規模開発の現場では、大手ベンダー製、あるいはグループ企業の開発支援ツールを取り入れていることがとても多いです。
これまでは、規模が大きい案件ほど、テストエンジニアを必要としてきましたが、テストを自動化・効率化するツールが普及し、開発支援アプリケーションの性能も日々進歩していることから、テスト工程だけに特化したテストエンジニアの需要は減少するとみられています。
2. 開発支援ツールにテスト業務を奪われる恐れ
今までテストエンジニアが行ってきたテスト工程の多くの作業は、開発支援ツールに置き換わると予想されています。
開発支援ツールはテストエンジニアの代わりにテストコードを自動的に生成したり、テスト対象のソースコードを解析してテストケースを自動生成したりすることができ、成果物の精度も非常に高いです。
そのため、テスト工程の作業の多くが開発支援ツールによって行われるようになると考えられます。
3. IoTの普及でIT業務が変化していくため
IoTはInternet of Thingsの略です。あらゆるものをインターネットに接続する技術で、最近は家電などをインターネットに接続するのが一般的になっています。IoTの普及は人々の生活にも当然影響を与えていますが、IT業務にも変化を与えています。IoTを活用することで遠隔地からIT業務を行うことができるため、特にテストなどの比較的単純な業務を行う人材は需要が減少するという見方もできるでしょう。
4. 仕事をしながらスキルアップするのが難しいため
テストエンジニアの仕事は単純作業だけではありませんが、単純作業も多いです。そのため、スキルは身に付きにくいと言えるでしょう。テストのスキルは身に付きますが、たとえばその後プログラマーを目指している場合などは、テストの仕事をしていてもプログラミングスキルは身に付きにくいです。
5. ITエンジニアと比べて給料が低いため
テストエンジニアはITエンジニアほどのスキルは求められないため、給料は低い傾向があります。単純作業が多めですが、業務が楽なわけではありません。作業量が多く、厳しい労働環境になる場合も多いでしょう。そうすると、仕事内容と給料が割に合わないということになります。
今後も需要のあるテストエンジニアでいるためのポイント
「AIに取って代わられる」という声も挙がっているテストエンジニアですが、本当にそうなのでしょうか?
現状、AIだけではカバーしきれない領域なども多数あるため、テストエンジニアとしての需要はまだまだ続くと考えられています。そのなかでもテストエンジニアとして今後、数年~数十年単位で活躍していくための方法をご提案します。
「情報力」と「コミュニケーション力」を磨く
これからのテストエンジニアには「情報力」と「コミュニケーション力」が強く求められます。
テスト工程は、設計や開発工程よりも早い段階でAIに代替されていく工程だと言われています。ただし、完全に人工知能がテストの工程を担当することはまだ先の話であり、特に人間の「集団知」やコミュニケーション能力の重要性は依然として高いです。
例えば、Google社のテックブログ「Google Testing Blog」では、テストに重点をおいた役割のエンジニアに対しては、「開発担当よりも広い視野を持つこと」、「テストに関する知識や環境の共有」が求められると述べられています。(※)
今後テスト工程の多くの作業がツールにより自動化されていきます。しかしながら、テストエンジニアには依然として需要があり、高い情報力とコミュニケーションスキルがテストエンジニアというポジションにとって非常に重要なスキルになっていることがうかがえます。
※ Google Testing Blog By James Whittaker 「How Google Tests Software - Part One」より。(2024年1月19日確認)
プラスアルファのスキルを身につける
今後、テストエンジニアとして活躍するには、テストエンジニアとしてのスキルに加えてプラスアルファのスキルを身につける必要があります。
開発現場では、テスト工程だけを担当するエンジニアはあまり多くないのが現状です。プログラマーがテスト工程を兼ねていることも少なくありません。プラスアルファのスキルを身につけることで、より広範な業務に対応できるようになります。
例えば、コミュニケーション能力が高いエンジニアであれば、開発エンジニアやプロジェクトマネージャーと連携して問題を早期に解決することができます。また、担当しているシステムのフレームワークやアーキテクチャを熟知しているエンジニアであれば設計者や開発担当者から助言を求められることも多いでしょう。
したがって、今後は「テストエンジニアとしてのスキル+α」を持っているエンジニアが高い市場価値を持つようになります。長年現場でシステムに携わり、幅広い知識のあるベテランメンバーや、チームリーダーとしてマネジメント経験のあるメンバー、さらにはテスト以外の工程も担当可能な専門知識を持っているエンジニアは、今後も活躍し続けられるでしょう。
AIに置き換えができない人材を目指す
テストエンジニアはAIに置き換えられる可能性があるということなので、AIに置き換えができない人材を目指すことが生き残りのポイントです。具体的には、専門スキルの幅を広げつつ、マネジメントやコミュニケーションといった対人業務にも力を入れる必要があるでしょう。専門スキルの種類としては、プログラミング、インフラ関連、セキュリティなどが挙げられます。
テストエンジニアに求められるスキル・知識
テストエンジニアとして活躍し続けるためには、テストエンジニアとしてのスキルを高めていく必要があります。また、テストエンジニアからのステップアップとして、別のエンジニアを視野に入れる選択肢も有効です。特にプログラマーやシステムエンジニアは最適でしょう。
テスト計画の立案スキル
多くの現場ではシステム設計、開発(コーディング)を経てテスト工程へと順番に進んでいく「ウォーターフォール型」という開発手法が取り入れられています。
この開発手法では、一つの工程の遅れが後続にまで影響が出てしまうことから、スケジュール通りに進めていくことが重要とされています。
一般的にテストと呼ばれる工程は「単体テスト」、「結合テスト」、「総合テスト」など、いくつかの段階に分かれており、全体の工程として見るとテストが占める割合は少なくありません。
これらの理由から、テストエンジニアにはテストだけでなく全体のスケジュールを意識し、システムを俯瞰的に捉えた上で立案や提案をしていくスキルも求められます。
そして、テストの実施においては対象となるシステムの要件、要求レベルに応じて必要なテストの種類や具体的な実施手順などを提案する必要があります。
セキュリティ要件として代表的なのはSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングへの対策、パフォーマンス要件では応答時間や処理件数、最大同時接続数などが挙げられます。
以上の例以外にも様々な要求をされるため、テストエンジニアは要件を把握したうえでテスト実施工数やリソースの見積もりを出し、テストがスケジュール通り円滑に進められるように計画するためのスキルが求められます。
テスト結果の分析スキル
テストで確認をするのはバグが出なかったという結果だけではありません。実施するにあたり「テスト項目」というものが設けられています。
「設計通りの動作をしているか」、「想定している操作パターンでも正常に動くか」、「求められている性能に達しているか」などが試験仕様書などで細かく定められているため、テストエンジニアはこれらを正確に実施しエビデンス(証跡)をまとめます。
バグを発見し原因箇所の特定や情報共有を速やかに行うことができれば、デバッグ作業やテスト以前の工程の見直しがあったとしてもスムーズに進めやすくなります。
バグを報告する際には、「ただバグを発見した」という報告だけでなくバグ同士の関連性やバグ発生条件の仮説などの分析を添えることでその後のバグの改修作業を円滑にできることがあります。
口頭での報告やテキストだけでなく、ログや画面キャプチャーなども合わせて共有することでより有意義な情報になるでしょう。
このような場面でもプロジェクトへの貢献をすることができるため、テスト結果の分析はテストエンジニアにとってやりがいのある業務のひとつと言えます。
マネジメントスキル
大規模開発の現場に限ったことではありませんが、テスト工程では業務が膨大な量になることもしばしばあります。そうなったとき、テストエンジニアチームのリーダーや経験値の高いメンバーにはマネジメントスキルも求められてきます。
ミーティングなどで全体の意識合わせやスケジュール確認を定期的に実施していたとしても、一番チームを把握できているのはチームリーダーやベテランメンバーです。たとえば、最初に割り振られている各担当者の作業量が膨大であったり、難易度が高く、時間や工数がかかることもあります。そういった場合、スケジュール調整をしていく必要があります。
テスト工程では一見簡単そうに見えるテストであってもテスト環境の構築や必要な操作やデータがわからないことも起こり得るため、知識の共有や環境整備なども合わせてマネジメントしていけるスキルは大きな強みとなってきます。
プログラミングの知識
テストエンジニア自身がプログラミングを行う必要はありません。しかし、ある程度プログラミングを理解できた方が効率的かつ安全性の高いテストを実施できます。そのため、テストエンジニアも特にテスト対象になっているコードは読めるように学習した方が良いです。
また、テストエンジニアがプログラミングを学ぶことでプログラマーやシステムエンジニアに転身することも可能です。プログラミングはテストよりも上の工程なので、上流工程へのステップアップということになります。
テストエンジニアとしてキャリアを積んでいく選択肢もありますが、将来性を考えるとプログラマーやシステムエンジニアも視野に入れた方が安全性は高いと言えます。
コミュニケーションスキル
テストエンジニアに限らず、システム開発プロジェクトに参画するメンバーにはコミュニケーションスキルが求められます。プロジェクトでは、複数のメンバーが協力して作業を進めていくためです。また、クライアントとコミュニケーションを取る機会もあるでしょう。
テストエンジニアはシステム開発の中でも下流工程なのでクライアントとの接点は少ないのですが、それでもクライアントと関わる機会はゼロではありません。上流工程のメンバーと一緒にクライアントとミーティングを行うような場合もあります。
ソフトウェア開発スキル
テストエンジニアがテストするのは一般的にはソフトウェアの方なので、ソフトウェアの開発スキルがあると業務に役立ちます。またプログラマーやエンジニアなどを目指す場合にも身に付けるべきスキルです。ハードウェアのスキルはあればトラブル対応や作業端末、サーバーの改良などができるので、ソフトウェアとハードウェアどちらも扱えた方がより良いでしょう。
オフィスソフトの知識
オフィスソフトとは、MicrosoftのWord、Excel、PowerPointなどを指します。IT業務全般オフィスソフトを使用する機会が多いです。そのため、一定のオフィスソフトの知識は必須でしょう。ツールを使いこなすことはもちろん、VBAが扱えるとより良いでしょう。テストにおける事務業務を一部自動化できます。
問題解決力
テストを含むシステム開発の工程では、必ずと言って良いほど問題が発生します。納期に間に合わない、想定取りに作業が進まない、クライアントから仕様変更が入った、メンバーが体調不良により離脱してしまった、といったものが挙げられます。これらの問題の解決策を考えて迅速に対処するためには、問題解決力が欠かせません。問題解決力は日々問題を見つけて解決を繰り返すことで磨かれるはずです。
テストエンジニアとは
テストエンジニアとは、文字通りソフトウェアやシステムのテストを行うエンジニアのことです。アプリケーションやシステムをさまざまな観点で検証し、プログラムロジックの誤りやデータの設計ミスなどが無いか確認します。
IT業界の中で、テストエンジニアはシステムやソフトウェアの品質を担保するための重要な役割を担っています。
テストエンジニアの仕事内容
テストエンジニアの仕事は、開発プロジェクトのテスト工程を担当し、システムのテスト・検証を行うことです。テストを実施する前に、どのような観点のテストをどれくらいの期間で行うのか計画を立てる必要があります。
また、十分な品質を保証するにはテストケースを漏れなく洗い出しテスト条件と想定結果を明確にしなければなりません。このテスト計画はテスト工程で最も重要なプロセスです。
テストの実施は、最小の単位(モジュール)をテストする単体テストから始まって、モジュール間のインターフェースを検証する結合テスト、システム全体を確認する総合テスト(システムテスト)と工程が進んでいきます。
テスト結果は、分かり易い資料として作成し、開発者やプロジェクトマネージャーに報告します。プロジェクトによってはテストエンジニアが改善案の提案まで行うことがあります。
関連記事:テストエンジニアとは?仕事内容ややりがいについて解説
テストエンジニアとテスターの違い
テストエンジニアは、開発プロジェクトのテスト工程を担当するエンジニアですが、その役割によって「テストエンジニア」と「テスター」に分けて呼ぶ場合もあります。明確に決まった定義はありませんが、一般的には次のように理解されています。
テスターは、あらかじめ作成されたテスト仕様書と手順書にしたがってテストを実施し、結果を記録します。主に総合テスト工程を担当します。
テストエンジニアはテスト計画・設計を含め、開発側への改善提案など、より幅広い業務を担当します。単体テストや結合テスト、改善提案はテストエンジニアが担当する場合が多いようです。
テストエンジニアとQAエンジニアの違い
テストエンジニアは単体テスト、結合テスト、システムテストなどのテスト工程でテストを計画し実施します。一方、QAエンジニアは完成した製品が実運用に耐えられる品質であることを保証します。
テストエンジニアの仕事はテスト工程にスコープが当たっているのに対して、QAエンジニアの仕事は製品の品質管理全体にスコープが当たっています。また、品質管理にはテストテスト計画の策定やテストケースの作成、テスト実施、テスト結果の分析の他に品質方針や品質基準の策定、プロジェクトマネジメント、プロセス改善などが含まれます。
テストエンジニアはテスト工程に関わり、QAエンジニアは品質管理全体に関わります。ただし、テストエンジニアとQAエンジニアの仕事には重なる部分もあるため、両者を明確に区分していない企業もあります。
テストエンジニアの年収
テストエンジニアの平均年収は、450万円程度で、350~450万円程度がボリュームゾーンと考えられます。ボリュームゾーンに対して平均年収が少し高いのは、一部スキルが高く収入の高いテストエンジニアが存在するためです。
また、エンジニアとしてのスキルがあまり高くなく、テスターやデバッグエンジニアとして働いているケースもあります。その場合は平均年収が下がり、300~400万円程度になります。未経験からスタートする場合は、250~300万円程度になるでしょう。
関連記事:テストエンジニアの平均年収は?収入を上げるためのポイントも解説
テストエンジニアの求人例
テストエンジニアの具体的な求人例としては以下のようなものがあります。
システム開発会社のテストエンジニア求人
・必須要件:システムテストの業務経験
・歓迎要件:PHP / Ruby / AWSの知識・経験
・待遇:正社員、年収312〜476万円
ゲーム開発会社のテストエンジニア求人
・必須要件:Webアプリ・モバイルアプリの開発経験、テストコード実装・運用経験
・歓迎要件:テスト設計から運用まで一貫して担当できる方
・待遇:正社員、年収360〜700万円
AI・組み込みサービス会社のテストエンジニア求人
・必須要件:ソフトウェア開発経験、各テストフェーズ経験3年以上
・歓迎要件:テスト技法導入における指導経験を持つ方
・待遇:正社員、年収580万円〜
業務系組み込みメーカーのテストエンジニア求人
・必須要件:ソフトウェア評価あるいは開発経験3年以上
・歓迎要件:テストエンジニアのスペシャリストを目指す方
・待遇:正社員、年収300万円〜
テストエンジニアはあらゆる開発で必要になります。どのシステムも必ずテストを行うからです。また、テストの工程はどのシステム開発でも類似しています。そのため、テストエンジニアは他のエンジニアに比べて携われる案件の幅は広くなるでしょう。
関連記事: 未経験からテストエンジニアになるには【求人例あり】
テストエンジニアが「きつい」「やめとけ」といわれる理由
テストエンジニアの仕事はきつい、やめとけと言われることがあります。ではなぜそのように言われることがあるのか、理由を紹介します。
納期が厳しく追われていると感じやすい
システム開発には納期があります。設計変更などで設計工程や実装工程に遅れが発生すると、テスト工程にしわ寄せが来ることになります。最終的な納期を後ろ倒しにすることが難しいからです。そうなると、必然的に業務が忙しくなり残業が多く発生することになります。
単調な作業にストレスを感じることがある
テストエンジニアの仕事はテスト仕様書通りに、ひたすら単純な作業を繰り返して行うというものです。本来、エンジニアはクリエイティブで自由なイメージですが、テストエンジニアには自分で考えてものを創り出すというよりも、指示された通りに動くことが求められます。単純作業が苦にならないという人には向いていますが、自分の裁量で仕事をしたい人には苦痛に感じるかもしれません。
ただし、テストスキルが身についてくると自分でテストパターンを考えたり、より効率的かつ安全性を担保できるテストケースを提案するようなこともあります。テストに特化して高いスキルを持つテストエンジニアも存在します。
裁量権が小さい
テストエンジニアは上流工程から流れてきたシステムをある程度決まった型に合わせてテストします。テストの内容などを考える作業もありますが、裁量権が大きいわけではありません。あくまでも下流工程の範囲内での裁量と言えるでしょう。
テストエンジニアのやりがい
テストエンジニアはデメリットも多いですがやりがいもあります。具体的にどのようなやりがいがあるのか紹介します。何にやりがいを感じるかは人それぞれなので、あくまでもよくあるやりがいということです。
社会貢献している実感を得やすい
世にリリースするシステムは品質が重要です。特にバグによる社会的影響が大きいようなシステムは、エラーが許されません。このバグ、エラーを防ぐためにはテストの工程が必須です。テストエンジニアがしっかりテストすることでシステムの品質が担保されているので、社会貢献している実感を得やすいでしょう。
自分の仕事が製品に反映される
テストエンジニアがシステムを開発するわけではありませんが、テストエンジニアが発見したバグはプログラマーやエンジニアが修正します。つまりテストエンジニアの仕事は製品に反映されるということです。
テストエンジニアのキャリアパス
テストエンジニアに必要なスキルを確認したうえで、こちらでは、テストエンジニアのキャリアパスについて解説します。
経験を活かしたキャリアアップ
ひとつの現場でベテランとなったテストエンジニアは、テスト工程だけでなくシステム全体の知見があるため重要なメンバーとしてテスト工程を任されることもあるでしょう。逆に様々な現場を経験している場合は、デバッグツールやテストパターン、開発環境などに関する幅広い知識やテスト経験を持った即戦力として期待されます。
以下に挙げているのはそういった高いスキルを要求されるテストエンジニアのポジションです。
スペシャリスト
製品が期待した動作、パフォーマンスを発揮しているかなどをチェックするには、精度の高いテスト計画の作成や分析を行うことで、検査すべき項目に漏れがないようにする必要があります。初級のテストエンジニアはテストを実行する立場ですが、スペシャリストではテストの設計やテスト方法の提案、結果の判定、報告といった業務を担当します。
テストマネージャー
テストは多くの場合、個人ではなくチームとして行います。マネージャーは、テストチーム全体を統括、管理し、設計したテスト計画に基づいて業務が遂行されるよう監督する仕事です。
また、テストを行う上で、顧客への利用ケースのヒアリングや協力要請なども大切な仕事に含まれます。ヒアリングは重要な業務で、顧客やエンドユーザーには、開発担当のエンジニア側と違った観点からアプローチしなくてはいけません。想定外の操作をきっかけにリリース後のバグが発生することもあるため、テストマネージャーにはそういったバグなどを未然に防ぐための確認、検討をするスキルが求められます。
テストマネージャーは、一般的に、テスターを経てからキャリアアップで就く職種です。
テストアナリスト
テストアナリストは、製品の仕様や環境を深く理解している必要があります。その上で、どのようなテストが必要か定義したり、テスターが作成したテスト計画やテストケースを分析したりします。
品質を担保するには、テストケースに漏れがないことが大前提となりますし、テスト方法が不適切でも品質を担保できません。テストアナリストは、深い知識と豊富な経験をもとに分析や改善計画の立案などを行います。
テストアナリストは顧客やエンドユーザーが求める機能や性能を把握する必要があるため、いわゆる上流工程で必要となる設計関連の知識も必要となってきます。要件や設計の内容を踏まえた上でテスト計画を立てたり結果の分析を進めていくようなスキルが必要です。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは開発プロジェクト全体を管理・統括する役割を担います。一方、テストマネージャーはテスト工程を管理する役割を持ちます。したがって、テストエンジニアからのキャリアパスとしては、テストマネージャーとしてマネジメントの経験を積んでから、プロジェクト全体を統括するプロジェクトマネージャーに就くケースが多いでしょう。
テストマネージャーとして培ったマネジメント能力やコミュニケーション能力、顧客との関係性をプロジェクトマネージャーの業務に活かすことができます。また、テストエンジニアとしての経験を活かして、設計工程や開発工程でシステムの品質を高めるための取り組みを行うことができます。
品質管理コンサルタント
品質管理コンサルタントはQAエンジニアと呼ばれることの多い職種です。QAはQuality Assuranceの略です。つまりシステムの品質を管理するエンジニアということです。テストエンジニアに近い部分がありますが、品質管理コンサルタントは開発段階ではなく完成した製品、サービスの確認を行います。
プログラマーへの転職
設計や製造工程に携わりたくなったとしても同じ職場や現場でテストエンジニアから職域変更できる場合は多くありません。しかし転職を視野に入れることで上流工程のキャリアを積める可能性が高まります。
テストエンジニアの実務経験があったとしてもプログラマーへ転職する場合は業界未経験者同様に書籍やプログラミングスクールなどでスキルを身につける必要がありますが、昨今は書籍やスクールだけでなく学習サイトも充実しているためパソコンさえあれば基礎から学習をすることができます。
また、「実際の開発現場でソースコードに触れている」「独自ソフトや開発ツールを扱ってきた」というテストエンジニア時代に培った経験は全く無駄にならないため、プログラミングスキルを身につければ転職活動は未経験者に比べて非常に有利になります。
テスト工程はプログラマーが担当することが多いためテストエンジニアの経験を活かしやすい、というのがプログラマーへの転職における一番の強みですが、個人では扱えない高価なソフトウェアやミドルウェア、データベースなどを扱った開発経験や、金融系、勘定系、物流系などで多く存在する業界特有の用語や言い回しの知識もあればさらにアピールできます。
プログラマーへの転職をより有利に進めるため、プログラミング学習と合わせて資格を取得できれば効率的です。学習に役立つのは勿論、習得レベルの目安となったり学習意欲のアピールができます。
プログラマー以外の業種への転職
プログラマーへの転職は実務経験をアピールして生かせる一方、テストエンジニアとしての経験を生かせる異業種というのは非常に少ないです。
しかし、VBAのスキルであったりコミュニケーションスキル、スケジュール管理やミスの少ない作業を得意としているのであればデスクワーク系、営業事務などの業務に適性があるかもしれません。
全く異なる業種からの転職が現代では珍しくないため、テストエンジニアの経験がありPCを扱うことへの苦手意識などがなければ選択肢は豊富にあります。
テストエンジニアのキャリアパスの実現に役立つ資格
テストエンジニアとしてキャリアアップする場合とプログラマなどの他の職種へ転職する場合に分けて、それぞれの場合に役立つ資格を紹介します。テストエンジニアに必須の資格はなく経験やスキルの方が評価されやすい傾向ですが、資格取得も一定のメリットはあります。
キャリアアップに役立つ資格
テストエンジニアとしてキャリアアップする際に役立つ資格をご紹介します。
JSTQB認定テスト技術者資格
テストエンジニアの技術や知識を認定する国際的な資格で、テスト技術者資格認定組織であるJSTQBが実施しています。基礎的な内容を問われる「Foundation Level」と分析など高度な内容まで問われる「Advanced Level」に分かれています。
IT検証技術者認定試験
テストエンジニアの技術を認定する資格で1から7までのレベルに分けられている試験です(現時点ではレベル5まで受験が可能)。基礎レベルから段階的にスキルアップできる構成となっているため、ぜひ活用したい資格制度です。
ソフトウェア品質技術者資格認定
テストエンジニアリングの基礎内容を中心に出題される資格試験です。試験時間60分、出題数40問で、前述したその他の資格試験より優しい内容となっています。テストエンジニアの基礎スキル習得を目指す人はこの資格から受験してみても良いでしょう。
そのほかのエンジニア職のキャリアパス実現に役立つ資格
テストエンジニアから別のエンジニアに転職する場合に役立つ資格をご紹介します。
基本情報技術者試験
PA(情報処理推進機構)が運営する国家資格試験で、ITエンジニアに求められる基礎スキルが幅広く出題されます。プログラミングの基礎、システム開発理論、ハードウェア、ネットワーク、セキュリティ、プロジェクトマネジメントなど幅広い領域を学習できるため、他のエンジニア職を目指す際に有効です。
Microsoft認定資格
「Microsoft認定資格プログラム」は、マイクロソフト社が提供する認定資格の総称です。中でも「MCSA(Microsoft Certified Solution Associate)」は、Windowsサーバーの基礎機能や操作に関する知識が身につきます。ほかにもクラウドサービスのAzureやデータベースのSQL Serverなど、さまざまな製品に関する資格があり、インフラエンジニアを目指す際に活躍するでしょう。
LinuC
特定非営利活動法人エルピーアイジャパン(LPI-JAPAN)が運営している、Linuxの資格です。Linuxは、Windows Serverと並んで多用されているサーバーOSであり、インフラエンジニアの必須スキルの1つです。
シスコ技術者認定
ネットワーク製品において世界的なシェアを持つシスコシステムズ社の資格試験です。ネットワーク技術の基礎から応用、ネットワークセキュリティまでさまざまな資格が提供されています。ネットワークエンジニアやインフラエンジニアを目指す際に有効です。
Oracle認定Javaプログラマ
Oracle社が定めている、ベンダー資格です。Javaの資格では最も有名で、OCJPやOCJPシルバーなどと略されています。難易度はBronze、Silver、Goldの3種類ですが、難易度にはかなり幅があります。
合格率は非公表とされていますが、Bronzeの合格率は高いと言われています。しかし難易度が低いことから取得したとしても評価されないことは多く、可能であればSilverを取得することをおすすめします。プログラミングだけでなくJavaの体系的な学習も必要となりますが、Silverに合格できていれば基礎的な部分は理解できているというアピールができます。
PHP技術者認定
PHP技術者認定機構という団体が定めた資格で、協賛企業は日本マイクロソフトなど複数の大手IT企業です。
初級と上級/準上級の2種類がありますが、後者は開発経験者向けのため初心者だと難易度は高いでしょう。そのため、おすすめは初級の取得です。
実務未経験であってもPHPの理解度の目安となるため、これからPHPの開発をしていきたい場合は取得をしておきたい資格です。
関連記事: テストエンジニアに役立つ資格4選|取得のメリットも解説
テストエンジニアに関するよくある質問
テストエンジニアに関するよくある質問について、回答をまとめました。テストエンジニアの業務内容、キャリアパス、資格やスキルなどに関してよく質問されます。自分自身が疑問に思っていることに近い質問があれば、ぜひ参考にしてみてください。
Q1. テストエンジニアの主要な業務内容は?
テストエンジニアの仕事は大きく分けて以下の4つです。
-
1.テスト計画の策定2.テストの設計、実施、結果確認
3.レビュー用資料の作成
4.テスト結果に基づいた開発部門への品質改善提案
Q2. テストエンジニアにはどんなキャリアパスがある?
主なキャリアパスとして挙げられるのは、スペシャリスト、テストマネージャー、テストアナリストです。さらに、プログラマーに転職することもテストエンジニアのキャリアパスの一つです。
Q3. テストエンジニアはどんな資格を取得するべき?
エンジニアの基礎となる「基本情報技術者試験」のほか、「JSTQB認定テスト技術者資格」というテストエンジニアの専門性を証明できる資格もおすすめです。他のおすすめ資格について確認したい方は「テストエンジニアに役立つ資格」もご参照ください。
Q4. 活躍し続けるために身につけるべきスキルは?
テストエンジニアが今後も活躍し続けるために、テスト計画の立案スキル、テスト結果の分析スキル、マネジメントスキルが求められます。
Q5. 未経験でもテストエンジニアを目指せる?
未経験でもテストエンジニアを目指すことは可能です。むしろ、プログラマーやシステムエンジニア未経験の方が、テストエンジニアを目指す場合が多いでしょう。未経験からテストエンジニアになって、その後プログラマーやシステムエンジニアを目指すイメージです。未経験からテストエンジニアを目指す場合、ITの基本知識やExel、Wordなどパソコンの基本ソフトを扱えると良いです。
関連記事: テストエンジニアになるには?仕事内容や求められるスキルを紹介
まとめ
この記事では、テストエンジニアの将来性や今後求められるスキルに加え、キャリアパスやスキルアップに役立つ資格について解説しました。昨今は企業のシステム投資が盛んなことから、テストエンジニアは一定の需要を維持していますが、中長期的には一部の作業がAIなどのツールに代替される可能性があります。大切なのは、AIに代替される領域、今後も人間が担う領域を見極めた上で、求められるスキルを習得し続けることです。
IPAや経済産業省、各種資格の運営機関は、必要なスキルや将来展望に関する情報を随時発信しています。日々これらの情報を得て将来設計をしていきましょう。
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