ITアーキテクトとは?仕事内容や役割、資格、年収などを紹介

最終更新日:2024年12月4日

ITアーキテクトとは、経営戦略やビジネスプロセスに基づきシステム全体を設計する職種で、ITとビジネスを結びつける「橋渡し」の役割を担います。経営戦略に基づいたIT企画の立案から、システムの基盤や構築手順などの共通化などの開発の基底となる部分での実務、運用・保守要件の提示まで担うため、ITエンジニアを束ねる上級職ともいわれる職種です。

本記事ではITアーキテクトという職種に興味がある方、キャリアアップ先として目指しているエンジニアに向け、仕事内容や役割、求められるスキルなどを解説します。キャリアパスの選択肢として検討するためにご活用いただければ幸いです。

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この記事のまとめ

  • ITアーキテクトは企業のビジネス課題を解決するために、システムの土台から設計を行う職種
  • ITアーキテクトには、広い視野と実践的なITスキルの両方が求められる
  • ITアーキテクトとして経験は、ITコンサルタントやプロジェクトマネージャーの仕事にも役立つ

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ITアーキテクトとは

ITアーキテクトとは、企業の経営ビジョンに沿ったITシステムの全体像を描き、効率的なシステム環境の設計を担う職種です。企業のデジタル戦略とシステム開発の架け橋となり、システム開発プロジェクト全体の成功に大きく影響を与える専門職といえます。

具体的には、経営戦略やビジネス戦略において重要となるITシステム化の企画・構想やシステムのグランドデザイン、それを実現するためのシステム全体を形作る構造の設計を行います。もう一つの側面として、システム構築における開発効率や品質を高めてプロジェクトを支援することもITアーキテクトの仕事となります。

ITアーキテクトの役割

ITアーキテクトの役割の一つは、顧客経営層やITコンサルタントが導き出した経営戦略・ビジネス戦略をもとに、ITシステムの企画を立案し、ITシステムとしての技術的な実現に向けた全体像をデザイン・設計することです。クライアントのニーズをシステムに反映し、必要に応じて業務のシステム化を推進していくポジションになります。

また、もう一つの側面である開発効率や品質の向上においては、システムに適したフレームワークの選定、構築作業の手順化、テンプレートの作成など、一作業者としてだけではなくチーム全体のものづくりを推進することが必要になります。

システムや開発の規模が大きくなり、関わる人数が増えるほど責任とやりがいも大きくなるポジションです。ITアーキテクトの詳細な役割について、下記で説明します。

システムの骨組みを支える

ITアーキテクトはその名の通り、システム開発プロジェクトにおいて骨格となる構造を作り上げる役割があります。ITを用いたシステム開発では、技術的な裏付けは必須です。システム全体に向けて安定した技術的なベースを作り上げることが、ITアーキテクトにとって一つの重要なミッションです。

また、規模の大きなプロジェクトになればなるほど、大人数の開発者が携わることになります。ソフトウェアやインフラのシステム開発標準を定めることにより、開発効率、品質を高めることもITアーキテクトの重要な役割です。また、多くのエンジニアを導いて、チームとしての開発成果を上げることもミッションとなります。

ビジネスとシステムの橋渡し

ITアーキテクトは、ビジネスとITの両方の視点からシステム設計に携わることが求められます。これまでのシステム開発は、戦略・要件定義までの領域をITコンサルタントが仕切り、システム設計・開発の領域をプロジェクトマネージャーに渡すことが一般的でした。

しかし、戦略・要件定義までの思想がシステムに反映されないという弊害が、しばしば起こっていました。そのためITアーキテクトには、この問題を解決するべく両方の視点を理解し的確に結びつける「橋渡し」の役割も期待されています。

運用フェーズまでもトータルにカバー

情報処理推進機構(IPA)が発表しているITスキル標準(ITSS)によると、ITアーキテクトが担当する業務は以下の通りです。


  • ・ビジネス及びIT上の課題を分析し、ソリューションを構成する情報システム化要件として再構成

    ・ハードウェア、ソフトウェア関連技術を活用し、顧客のビジネス戦略を実現するために情報システム全体の品質を保ったITアーキテクチャを設計する

    ・設計したアーキテクチャが課題に対するソリューションを構成することを確認するとともに、後続の開発、導入が可能であることを確認する

    ・ソリューションを構成するために情報システムが満たすべき基準を明らかにする

    ・実現性に対する技術リスクについて事前に影響を評価する


要約すると、ビジネスやITの広い視点から課題を分析し、システムで解決するということです。システムの大枠設計やシステムによって何を解決するか、リスクなどの事前予測なども当然考える必要があります。

主に担うのは上流工程ですが、クラウド化の推進により運用の労力が少なくなっているため、ITアーキテクトが運用のフェーズまで担うケースも増えています

ITアーキテクトの労働環境

ITアーキテクトの労働環境については、自社のITに対しての業務を担当する場合とクライアントのITに対して業務を行う場合で大きく異なります

自社のITアーキテクトとして働く場合は、企業内で一定のポジションを持っていることが想定でき、ある程度のコントロールを自身でできる立場といえます。

一方で、クライアント向けにITアーキテクトを担当する場合には、顧客内のビジネス側とIT側の間に立ち、緊密な連携をとることが求められるでしょう。この場合には、顧客先に常駐するなどの労働形態が想定できます。

いずれの場合も、ITアーキテクトの活躍によりITに携わるメンバーのスムーズな労働環境を確保する役割が求められます。自身の活動により、労働環境を整えられる立場とも言えるでしょう。

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ITアーキテクトの3つの業務分野と各仕事内容

一言でITアーキテクトといっても、業務範囲が多岐にわたるため、3つの専門分野に分類されます。

ITスキル標準では、ITアーキテクトが活躍する業務分野として「アプリケーション分野」「インテグレーション分野」「インフラストラクチャ分野」が挙げられます。

それぞれの仕事内容について確認しておきましょう。

アプリケーション分野

アプリケーション分野では、ITシステム内におけるソフトウェア(アプリケーション)のアーキテクチャを定める役割を担います。論理データモデルやアプリケーションコンポーネントの構成などのソフトウェア全体の基底となる設計、実現可能性の評価などが主な責務です。

また、アプリケーション開発における標準化を行い、ソフトウェア全体の品質やユーザインタフェースなどに統一感をもたらすことも重要な役割です。

インテグレーション分野

インテグレーション分野では、複数のアプリケーションシステムの統合および連結に関するアーキテクチャを定める役割を担います。インテグレーションとは「統合」という意味で、ネットワークシステムなどを組み合わせてシステムを構築する手法は「システムインテグレーション」と呼ばれます。

特に規模の大きな企業においては、複数のシステムが存在し、企業内での部署をまたがった複数のアプリケーションでの連結が必要です。インテグレーションアーキテクチャはシステム間において、システム標準を定め、企業全体でのシステムの統一性を持たせる役割を果たします。

また、アプリケーション間、システム間、部門間、さらには顧客とのあいだなどさまざまな利害関係や制約などを考慮し、インタフェースを形作ることも重要な職務です。

インフラストラクチャ分野

インフラストラクチャ分野ではシステム、アプリケーション、ソフトウェアを支えるシステム基盤の構成の設計を担当します。サーバーなどのハードウェア、ネットワーク、OS、ミドルウェア、仮想化環境、クラウドサービスの利用などトータルなITインフラ環境を作り上げる役割です。

インフラストラクチャは、企業のシステムの根幹に関わる重要な役割であるため、ITインフラに関する知識にくわえ、セキュリティに関する知識も必要となります。

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ITアーキテクトの年収

経済産業省による調査『我が国におけるIT人材の動向(2021年)』では、建設業のDX銘柄企業で、ITアーキテクトのオファー年収は700万円〜900万円が水準となっています。

また、2024年11月14日時点でレバテックキャリアにて、職種「ITアーキテクト」で検索した求人情報をもとに平均年収を算出しました。30件を抽出し、年収の最大値と最小値の中間の値の平均値から算出した結果、ITアーキテクトの平均年収は約780万円と想定できます。

ITエンジニアの中でも上位職のITアーキテクトは比較的高い年収が望める職種であることを示すデータといえます。

ITアーキテクトの求人例

クライアントのビジネスゴールをサポートするITアーキテクトの求人例は以下の通りです。

【想定年収】
650~1,100万円

【業務内容】
クライアントのビジネスゴール達成を技術的な側面からサポートするポジションです。
・個別のプロジェクトでの現状分析と将来像検討
・プロジェクトメンバーを指導し、実装フェースをリード
・クライアント企業の全体アーキテクチャデザイン
・内製化支援、DevOps導入支援の顧客プロジェクトにおける支援業務

【求められる経験・スキル】
<経験>
・Java、C#、Python、Go、Scalaなどの言語への精通
・Webによる業務システムのアーキテクチャ設計、リード経験

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ITアーキテクトになるには

ITアーキテクトはシステムを全体的に俯瞰しアーキテクチャを考案する立場であるため、幅広い知識と経験が必要になります。一般的には、システムエンジニアが経験やスキルを積んでキャリアアップした結果ITアーキテクトになるケースが多いです。

詳しくは次項で紹介しますが、リーダーシップを執って案件を推進していくポジションの性質上、システム周りの知識のほかに、コミュニケーション能力や問題解決能力など、汎用的なビジネススキルを求められます。ITアーキテクトを目指す場合は、キャリアアップの過程で意識してこれらのスキルを身につけていくと良いでしょう。

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ITアーキテクトに求められるスキルとは

ITアーキテクトはITシステムの構造設計や品質向上、ビジネスとシステムの橋渡しなどさまざまな役割があり、仕事内容は多岐にわたります。また、組織形態によっては、ITアーキテクトはSEやプログラマーなどのITエンジニアを束ねる職種でもあります。

そのため、求められるスキルや知識も膨大です。ちなみに、『ITスキル標準職種の概要と達成度指標(4) ITアーキテクト』では以下のように定められています。

スキル項目 概要
アーキテクチャ設計 要件の分析と定義を行い、設計方針を明確にします。
設計技法 各モデリング技法の理解と、
それぞれの技法の適切な適用を行います。
標準化と再利用 開発における標準の策定と、その標準の再利用を図ります。
コンサルティング技法の活用 分析ツールの理解を深め、それらを効果的に活用します。
知的資産管理
(Knowledge Management)
活用
独自のノウハウを適切に管理し、
状況に応じて柔軟に活用します。
テクノロジ IT業界の最新動向を継続的に把握します。
インダストリ(ビジネス) 関連業界の動向を継続的に把握し、
情報を最新の状態に保ちます。
プロジェクトマネジメント プロジェクトの全体を統括し、
総合的なマネジメントを行います。
リーダーシップ 指導者として、他のメンバーを効果的に指導します。
コミュニケーション 必要な情報を的確に伝達します。
ネゴシエーション クライアントや経営層と効果的な交渉を行います。
アプリケーション
アーキテクチャ設計
機能要件の定義、機能アーキテクチャの設計、
およびその実現可能性の評価を行います。
インテグレーション
アーキテクチャ設計
統合要件の定義、統合アーキテクチャの設計、
およびその実現可能性の評価を行います。
インフラストラクチャ
アーキテクチャ設計
インフラストラクチャ要件(主に非機能要件)の定義、
インフラストラクチャアーキテクチャの設計、
およびその実現可能性の評価を行います。

技術に関するスキル・知識

ITアーキテクトに求められる技術的なスキルと知識の中でも、まず重要なのはアーキテクチャ設計スキルです。また、設計技法に関するスキルや標準化とリソース再利用の知識も求められます。

さらに、多様な知識とデザイン力もITアーキテクトには必要です。以下では、ITアーキテクトに求められる技術に関するスキル・知識について解説します。

アーキテクチャ設計スキル

ITアーキテクトにとってアーキテクチャ設計スキルは必要不可欠です。アーキテクチャ設計スキルとは経営課題から派生する業務課題をIT技術によるシステムなどを使って解決するため、システムにどんな機能が必要かを考案し、実装を検討していくスキルです。

課題に関することや業務フローなどを正しくヒアリングし、要件定義書や基本設計書としてアウトプットをまとめられるレベルのスキルが必要となります。

設計技法に関するスキル

システムの企画設計を業務とするため、設計技法に関するスキルも必要です。設計の技法には、システムの全体像を俯瞰するためのモデリング技法が挙げられます。

モデリングの対象は業務プロセスやデータの流れなど多岐に渡り、案件に応じて必要なものを正確に作成する必要があります。こうして作成されたモデリングは、開発そのもののみならず、クライアントとのコミュニケーションでも大きく役立つものです。

標準化とリソース再利用の知識

標準化とは、開発手法や設計手法にルールを定め、統一することです。システム開発は多くのメンバーが参画して作業しますが、それぞれが好きなように仕事をしてしまうと、設計書やソースコードなどのアウトプットの品質にバラつきが生じます。

これらのバラつきは開発効率の低下を招いたりバグの温床となったり、メンテナンス性能の低下などを招くため避ける必要があります。品質のバラつきを防ぐためにシステム開発に設けるルールがシステム標準などと呼ばれるもので、高品質なシステム構築には標準を定める標準化スキルは欠かせません。

リソース再利用とは、システム開発の際、すべてを一から構築するのではなく、既存の資産を流用ないしカスタマイズして再利用することを指します。既存資産やその資産で実現している機能をリソースとして管理し、必要なときにすぐに利用できるようにしておくことで、効率の良いシステム開発が実現できます。また、再利用したリソースはすでにテストが行われており一定の品質が見込めることもメリットです。

多様な知識とデザイン力

IT業界は日々目まぐるしく進歩していますが、ITアーキテクトにはこうした知識を絶えず収集し、必要に応じて活用することが求められます。

また、業務や開発に際して発生する問題解決もITアーキテクトの仕事となるため、ITに関する知識だけでなく携わる業務に関する知識も必要になります。多様な知識を管理し、ニーズが生じた際に引き出して組み合わせるデザイン力も重要です。

コンサルティングに関するスキル

ITアーキテクトは高品質なシステムを構築することが重要なミッションです。それと同時に、経営層のビジネス戦略としてシステムを利用した課題解決を図ることも求められます。

顧客のビジネスや業界の流れを把握し、業務を改善するためのITの有効な利用方法を提案、実現するというコンサルティングに関する能力も必要です。

プロジェクトマネジメントスキル

ITアーキテクトはプロジェクトにおいてシステム開発のエンジニアを導く立場です。開発現場を束ねるためには、プロジェクトマネジメント技法を用いてチームの成果をあげることも必要となってきます。

また、システム開発の際、クライアントの要求すべてをシステム上で再現できれば問題ありませんが、すべてを再現するのは難しいこともあります。そんな場合には、双方の意見から開発の着地点を見つけ導いていくことも求められます。

周囲の意見に流されず技術的な視点で状況を判断し、システム開発を成功に導くことはプロジェクトマネージャーの仕事と重なる部分も多いです。さらには、開発メンバーとコミュニケーションを深め、信頼関係を築くことも必要です。

折衝・交渉力

ITアーキテクトは、経営などのビジネス側とIT側の間に入り、最適なアーキテクチャを提案して合意を得ることが重要な責務です。また、クライアントに向けてITアーキテクチャを提供する立場の場合には、クライアント内の各事業部の間や自社の上層部などの意向までもが調整対象となります。

ITアーキテクトは多方面の利害関係者と折衝・交渉して、それぞれにメリットをもたらすネゴシエーション能力も必要となります。ビジネス側とIT側の両方の視点を持つITアーキテクトとしての本領を発揮する上で重要なスキルといえるでしょう。

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ITアーキテクトへの転職に役立つ資格

ITアーキテクトの役割は幅広く、さまざまなスキルが必要であることを解説してきました。必要なスキルと知識を体系的に身につけるためには、資格取得を目指すことをおすすめします。また、資格を取得することで客観的なスキルの証明も可能です。

以下ではITアーキテクトを目指す上で、学習の過程で必要なスキルが身につく資格について紹介します。

関連記事:ITアーキテクトに役立つ資格とは?仕事内容や役割もあわせて解説

システムアーキテクト試験

システムアーキテクト試験は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営し、経済産業省が認定する国家資格「情報処理技術者試験」の中でも高度区分に分類される難易度の高い試験です。

システム開発の上流工程を主導・監督する立場として必要なスキルを持っているかどうかが評価されます。問われる内容については非常に幅広く、多肢選択にくわえ記述式や論述式の問題が出題されます。

プロジェクトマネージャ試験

プロジェクトマネージャ試験はシステム開発の責任者として、プロジェクトを管理する能力を有しているかどうかを問う試験です。

こちらも情報処理技術者試験のなかでも高度区分に分類されている難関試験です。ITアーキテクトの仕事の中にはプロジェクトマネジメントが必要とされる場面も多々あるので、持っておくと役に立つでしょう。

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ITアーキテクトのやりがいと厳しさ

ITアーキテクトは高いスキルを持ったエンジニア向けの仕事であり、重要な職務を果たしていることはここまでに説明してきた通りです。これからITアーキテクトを目指すのであれば、厳しさとやりがいも知っておいたほうが良いでしょう。理解しておくと、転職後に想像とのギャップによる早期退職を防げます。

ITアーキテクトはシステム開発において重要なポジションであるため、責任もやりがいも大きいといえるでしょう。以下ではITアーキテクトの仕事の厳しさとやりがいについて詳しく説明します。

ITアーキテクトのやりがい

ITアーキテクトのやりがいとしては、自分が設計したシステムが稼動することによる達成感のほか、そのシステムがコスト削減や生産性向上など、事業に大きな影響を与えることが挙げられます。担当する業務もエンジニアとして最も上流にあたるため、達成できる成果も最大級です。

シニアエンジニアにとっては、これまでのキャリアで培ってきたものを総動員して業務にあたるので、このポジションに就くまで努力してきた人であればあるほど、やりがいは大きなものになるでしょう。

ITアーキテクトの厳しさ

ITアーキテクトは扱う範囲がとても広いポジションです。そのため、新技術含めあらゆる分野の知識を習得しておく必要があり、常に知識や情報をアップデートしていかなければいけない大変さがあります。

また、クライアントと現場の板挟みになるポジションでもあり、中立な立場での折衝が厳しいと感じる方も多いようです。時には自社の上層部やクライアントの経営層ともやり取りをする必要があり、技術者よりもビジネスパーソンとしての立ち振る舞いや考え方によらなければならない点も、現場主義のエンジニアとしては厳しいところです。

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ITアーキテクトの将来性

IT人材不足が深刻になる中、ITアーキテクトは将来性も高く、今後も重要視される職種です。ITアーキテクトが重要視される背景として、IT技術の発展によるシステムの複雑化、高度化があります。

なぜ、IT技術の発展が進む状況下で、ITアーキテクトの将来性が高まっているのか。以下では、その関係についてより詳しく説明します。

企業のDXに伴い需要増

企業にとって、デジタル技術を自社業務と融合させて新たな価値を生み出すDXの実現は経営上の重要課題です。しかし、むやみにIT技術を導入するだけではDXは実現できず、新規技術の導入と既存資産との統合、業務との一体化まで、DXの実現に向けてはITおよび業務の全体を見通した施策が重要となります。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した『DX動向2024』によると、2023年における企業のDX取り組み状況では、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答した割合が37.5%でした。この数字は2022年に調査したアメリカの値(35.5%)を上回っています。

企業のDX化は今後も進む見込みです。そのため、DX推進に欠かせないITアーキテクトの需要も高まっていくでしょう。

IoT市場とともに需要は拡大する見込み

IT専門調査会社 IDC Japan株式会社は2023年11月に発表した『国内IoT市場は物流や医療の分野で需要が高まる ~ 国内IoT市場 産業分野別テクノロジー別予測アップデートを発表 ~』で、国内IoT市場の2022年~2027年の年間平均成長率は8.6%成長し、2027年には9兆1,877億円に達すると予測しています。

IoT市場の急速な拡大に比例して、システム設計を担うITアーキテクトの需要も拡大すると見込まれています。このことが、ITアーキテクトの将来性が高いといわれる要因のひとつです。

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ITアーキテクトのキャリアパス

ITアーキテクトになるには、システムエンジニアとして経験を積んで目指すキャリアパスが一般的です。ITアーキテクトからのキャリアパスには、ITコンサルタントやCTO、CIOなどがあります。ITアーキテクトとしての経験やスキルは特に上流工程で活かせるでしょう。

以下ではITアーキテクトからのキャリアパスについて紹介します。キャリアアップを目指す方は参考にしてみてください。

ITコンサルタント

ITコンサルタントとは、企業の経営戦略をヒアリングし、IT戦略を提案・策定する職種です。ITコンサルタントはITアーキテクトよりもさらに上流工程の職種ですが、ITアーキテクトはクライアントの意向に沿って、システムの土台から設計を考えるので、経験が活かせるでしょう。

ITアーキテクトとしてやってきたことをIT知識がない人にも分かるように噛み砕いて伝えられるスキルもITコンサルタントとして必要です。

CTO・CIO

CTO(Chief Technology Officer)は最高技術責任者、CIO(Chief Information Officer)は最高情報責任者という意味です。いずれも企業のIT戦略を考える役職になります。ITアーキテクトは上流工程からシステム設計を考える職種なので、培った経験がCTOやCIOの仕事であるIT戦略の策定にも役立つでしょう。

プロジェクトマネージャー

ITアーキテクトからプロジェクトマネージャーになるケースもあります。プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体の監督者であり責任者です。

プロジェクトマネージャーは開発計画を作成したり予定を調整したりするため、ITアーキテクトの業務と重なる部分があります。そのため、ITアーキテクトとして積んだ経験が大いに活かせるでしょう。

フリーランス

ITアーキテクトからフリーランスとして独立することも可能です。ただし、ITアーキテクトという形で案件を募集していることは少なく、またクライアントに対してITアーキテクトとして交渉してもクライアントは理解しにくいでしょう。

そのため、ITコンサルタントというカテゴリーで提案を行ったり、プロジェクトマネージャーやエンジニアとして主に上流工程を担当するのが現実的です。ITアーキテクトとしてのスキルがあれば、複数のポジションでフリーランス案件を獲得できる可能性があります。

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ITアーキテクトに関するよくある質問

ITアーキテクトと一言にいっても、結局どのような仕事であるのかは捉えづらいところがあります。ITアーキテクトを目指す方、転職を検討中のエンジニアには、ITアーキテクトの仕事内容やSEとの違い、年収についてなどが気になるポイントといえます。

これらのポイントを捉えやすいよう、ITアーキテクトに関するよくある質問と回答をまとめました。類似の疑問を持つ方は参考にしてみてください。

Q1. ITアーキテクトとはどのような仕事ですか?

ITアーキテクトとは、ITシステムの土台を設計する職種です。一般的な設計としては基本設計や詳細設計が挙げられますが、ITアーキテクトが担当する設計は基本設計よりも根本的な部分です。クライアントやコンサルタントが作成した経営戦略をITシステムに落とし込み、設計を進めます。

Q2. ITアーキテクトとSEの違いを教えてください

ITアーキテクトはビジネス要件を満たすためにどのようなシステムを導入すべきか考案し、設計します。SEはすでに方向性が固まったプロジェクトの中で設計やプログラミング、テストなどを担当します。つまりITアーキテクトのほうが上流工程を担当しており、上流工程から流れてきた要件をもとにSEは仕事をします。

Q3. ITアーキテクトの平均年収はいくらですか?

経済産業省の『我が国におけるIT人材の動向(2021年)』では、ITアーキテクトのオファー年収は700〜900万円が水準です。2024年11月14日時点のレバテックキャリアの求人によると、ITアーキテクトの平均年収は約780万円でした。エンジニアの年収としては高い水準にある職種といえます。

Q4. ITアーキテクトとITコンサルタントの違いは何ですか?

ITコンサルタントとは、クライアントの課題を解決するための改善案などを提案する職種です。一方でITアーキテクトは、システムの設計を担当する職種です。ITアーキテクトには、システム設計に関する知識やスキルが求められます。

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まとめ

ITアーキテクトは企業や組織のIT基盤やITシステムを統合的にデザインし、構築に導くITエンジニア職種です。システム開発プロジェクトにおいては、システムの基礎となる構造を設計し、高品質かつ高い生産性のソフトウェア開発によりプロジェクトの成功を支援します。

ITエンジニアを導く重要なポストであるため、高い技術力、経営層の視線からシステムによる課題解決を図る力、システムの関係者を繋ぐコミュニケーション能力などさまざまなスキルが必要です。

今後もDX実現に向けてITシステムの重要性は増すばかりの状況下、ITアーキテクトは将来性も高く、高い年収も見込めるエンジニア職種です。ITエンジニアのキャリアアップ先として有望なため、計画的に必要となるスキルを磨いて目指しましょう。

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この記事の監修

レバテックキャリア編集部

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