SREエンジニアとは?DevOpsとの違いや役割について解説

最終更新日:2024年4月18日

SREとは、「Site Reliability Engineering」の略称です。Googleが提唱したシステム管理とサービス運用に対する概念であり、信頼性をシステムの重要な機能の1つと位置付けているのが特徴です。SREエンジニアはSREを担うエンジニアのことです。Webサービスの開発・運用スキルに加え、サーバーやネットワーク、データベースに関するスキルも求められます。本記事では、SREの基本概念やSREエンジニアの仕事内容、求められるスキル、キャリアパス、将来性について解説します。

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この記事のまとめ

  • SREエンジニアは、サイトやシステムを最適に運用するためのエンジニアで、開発と運用の両方の実務経験とスキルが求められる
  • システムの自動化や運用業務の環境整備などを行い、SREを実行する
  • SREエンジニアは関わる領域が広いため、技術職だけでなく、経営職のキャリアパスも存在する

SREエンジニアとは

SREとは、「Site Reliability Engineering(サイト・リライアビリティ・エンジニアリング)」を略した言葉です。サイトやシステムの信頼性を向上させるための取り組みを行うことを指します。

SREエンジニアは、サイトやシステムを最適に運用するエンジニアです。システムやアプリの開発と運用、両方の実務経験やスキルが求められます。プロジェクトではSREエンジニアが数人のチームを組み、チーム単位で参画します。

たとえば、新機能を追加する際は、運用面も考慮し、変更を加えてもサービスの稼働に問題がないかを確認します。また、本番環境の運用に問題がないかを常にチェックし、問題があれば改善するのも業務です。

SREの目的

サイトやシステムの信頼性を向上させることがSREの目的です。たとえば、システムの運用業務において自動化や効率化を図ります。これらを通して、サービスやシステムのダウンタイムでのバッファを最小限に抑制する、システム改善や新機能の追加を継続的に実施するなどが実現します。このような安定した運用の実現により、サイト・システムの信頼性を高めることが目的です。

従来、開発チームと運用チームの連携がとれておらず衝突が起きることがありました。その原因は、運用時のサービスの安定した稼働への考慮が二の次になっていたことです。
1日でも早いサービスのリリースを優先するあまり、運用視点での考慮がされていませんでした。しかし、運用後の体制やトラブルの早期改善、安定した稼働、ダウンタイムを最小限に抑えることの重要性が再認識され、SREの概念が登場しました。

DevOpsとの違い

DevOpsは、開発を意味するDevelopmentと運用を意味するOperationsを組み合わせた造語です。SREとDevOpsはどちらも、開発チームと運用チームが連携をとる共通点がありますが、以下のように目的が異なります。

SRE

インフラの整備や自動化ツールの開発を通じて、サイトやシステムの信頼性を高める

DevOps

開発チームと運用チームの連携により、リリースサイクルの短縮化を図る

SREはサービスの信頼性の向上に重点を置き、DevOpsは開発と運用プロセスの自動化に重点を置いた方法論であることが分かります。
SREを提唱したGoogleは、SREとDevOpsの関係性について「class SRE implements DevOps(DevOpsの概念を実現する方法がSRE)」としています。

SREエンジニアの仕事内容

SREやSREエンジニアについてより深く知るには、仕事内容を把握しておくことが欠かせません。就職や転職を考える際にも、仕事内容を知らなければ自分に向いている職種なのか分からないでしょう。どのような仕事を行っているのか、詳しい内容を紹介します。

システムやクラウドの開発・運用

安定したシステムやクラウドを開発し運用することが主な業務です。これにより、開発チームに安定した開発環境を提供します。ミドルウェアのパフォーマンスが向上しているか、サーバーが最適化されているかといった面も注視しながら進めます。

システムの自動化

システムを自動化し、開発チームの手作業分の負担が軽減できるようにします。目的は、開発効率の向上です。自動化の具体例としては、ログの自動解析ツールやスプレッドシートの自動更新ツールがあります。

ただし、SREエンジニアの仕事は、信頼性向上に向けたシステム運用の最適化です。開発チームがSREエンジニアに依存する事態は避ける必要があります。開発チームが自立しつつも、スムーズに動ける仕組みを提供することが重要です。

運用業務の環境整備

運用業務を安定して行えるよう、環境を整備します。運用業務そのもののやりやすさはもちろん、不具合発生時のスムーズな対応などについても考慮します。たとえば、使用するOSやミドルウェア、セキュア情報保護、脆弱性に関するチェックをし、どういった対応が必要かを洗い出し備えておくといった作業です。

システム問題が発生したときの対応

何らかの問題が発生した際の対応も行います。完成したWebサイトやサービスがある場合、公開前に想定されるトラブルがあれば解消しなければなりません。

たとえば、アクセス集中によりサービスが応答できなくなるなど、リリース後にシステムが利用できなくなれば、大きな損失が生まれます。

そのため、SREエンジニアはリリース前に検知できる不具合をできる限り取り除きます。不具合発生時には、即座に対応し障害を取り除けるように備えておきます。

SREエンジニアに求められるスキル

SREエンジニアとして仕事をする上では、開発と運用についての幅広い知識と経験が必要です。もしも習得していない知識やスキルがあれば、これから身につけていくと良いでしょう。具体的なスキルは以下の通りです。

Webサービス開発・運用スキル

SREエンジニアの業務には、Webサービスのシステム運用を最適化することが含まれます。そのため、Webサービスの開発と運用スキルが必要です。

Java、PHP、RubyなどWebサービス開発で使用される主要なプログラミング言語や、SQLなどのデータベース言語をはじめ、OSに関するスキルも必要です。また、SREエンジニアになるためには、開発や運用の実務経験が必要とされるケースも多いです。

クラウドサーバーの構築・運用スキル

クラウドサーバーを適切に使用することでWebサービスの品質向上に貢献できるため、クラウドサーバーの構築や運用のスキルが必要です。具体的には、AWSやAzure、GCPなどのクラウドサービスに関するスキルです。

近年では、システム開発にクラウドサービスを導入する企業が増加しています。そのため、SREエンジニアに限らず、クラウドの知識は非常に価値があります。たとえば、AWSのEC2やRDSを使用し可用性の高いシステムを構築した経験や、GCPのBigQueryを使用して大量のデータを高速で分析した経験は、市場価値を高めるでしょう。

ネットワーク・IP・データベースに関する知識

SREエンジニアはWebサービスを構築・改善するため、ネットワーク設定やIP、データベースの知識も必要です。たとえば、運用時にトラブルが発生した場合、発生した原因はネットワークなのかミドルウェアなのか問題を切り分ける必要があります。ネットワークについては、ネットワークプロトコルに関する知識や LAN構成、パフォーマンス改善などの知識が必要です。

セキュリティに関する知識

SREエンジニアの業務内容には、サービスの保守は含まれていません。しかし、Webサービスは、基本的にネットワークを経由します。そのため、Webサービスの最適化を役割とするSREエンジニアは、サイバー攻撃や情報漏洩などのリスクに関しても理解が必要です。

また、セキュリティの信頼性が高いシステムを構築する方法を提案することが業務に含まれることもあります。

パフォーマンスチューニングの経験

SREエンジニアの役割の中でも特に重要なスキルの1つとして位置付けられています。パフォーマンスチューニングを行うためには、システムやアプリケーションの動作速度を最適化するための技術や手法を熟知していることが求められます。

パフォーマンスチューニングは、応答速度や処理能力を向上させ、ユーザーにとっての利便性や満足度を高めます。具体的には、システムのボトルネックを特定し、適切なミドルウェアの設定変更やリソースの再配分を行うことで、システム全体のパフォーマンスを向上させます。

オペレーションの自動化や効率化の経験

SREエンジニアは、ルーティンワークや手動のオペレーションを減らすことが仕事です。たとえば、Terraformなどを使用してインフラのコード化や自動デプロイを行った経験、Jenkinsなどを使用してCI/CDパイプラインを構築した経験などは、SREエンジニアとして効率的な運用を実現するための重要なスキルです。

SREエンジニアのキャリアパス

現在は「SREエンジニアになりたい」と思っていても、将来はそのスキルや経験を活かして別の働き方をしたいと考える可能性もあるでしょう。SREエンジニアから目指せるキャリアを知っておけば、将来の選択肢は広がります。SREエンジニアは、関わる領域が幅広いからこそ、キャリアとしての魅力も多いです。SREエンジニアには以下のようなキャリアパスがあります。

クラウドエンジニア

クラウド領域の専門家がクラウドエンジニアです。クラウド領域のアーキテクチャとツールに精通しています。SREエンジニアは実務経験で、クラウドを通じた自動化やコスト効率化を図ることがあります。この経験を活かせば、クラウドのスペシャリストとして、活躍できるでしょう。

経営職

SREエンジニアには、技術だけでなく経営視点も必要です。そのため、CxOやそれに近いポジションへのキャリアパスもあります。サービスの信頼性向上と効率化を追求し、リスク管理に優れた洞察力を持つSREエンジニアは、CEOやCFO、CTOなどのCxOへの適性があります。

ITアーキテクトやITコンサルタント

SREエンジニアは、システムアーキテクチャや自動化、およびベストプラクティスについての深い洞察を持っています。そのため、ITアーキテクトやITコンサルタントへのキャリアパスもあります。

SREエンジニアの経験を活かし、組織をまとめたり、他組織と繋げたりするポジションを目指せるでしょう。SREエンジニアとしての実務経験があれば、組織やクライアントに対して、信頼性向上に向けた戦略的なアドバイスを提供できます。

ITアーキテクトとしては、システム設計と運用の最適化に貢献できます。

フリーランス

SREエンジニアの需要は高いため、フリーランスも向いています。異なる企業や業界でさまざまなプロジェクトに参画できるので幅広く経験を積め、自己成長に繋げられます。また、フリーランスは本人とクライアントの合意により報酬を決めます。そのため、本人のスキルや実績次第で高い報酬を獲得できるのも魅力です。

SREエンジニアの将来性

クラウドの普及やDX推進によって、信頼性の高いサービスの需要は高まっています。SREの仕事は、サービスなどの信頼性を上げることです。業界における高い需要が見込めるでしょう。ここでは平均年収・募集状況から将来性について解説します。

平均年収

公的機関などでは、SREエンジニアに限定した平均年収の調査が行われていません。ここでは、SREの業務は広い意味でエンジニアの業務に含まれると考えて平均年収を紹介します。

総務省の「日本標準職業分類」によると、プログラマーやエンジニアはソフトウェア作成者に分類されています。厚生労働省が公表している「令和4年賃金構造基本統計調査」の企業規模計(10人以上)の「きまって支給する現金給与額」によると、ソフトウェア作成者の平均給与は377.1万円でした。1,000人以上では446.9万円です。

また、2017年に経済産業省が発表した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」には、IT企業で働くエンジニアの職種やスキルレベルごとの平均年収が掲載されています。
「高度SE・ITエンジニア(基盤設計担当・ITアーキテクト)」の平均年収は、778.2万円です。「SE・プログラマ(ソフトウェア製品の開発・実装)」の平均年収は568.5万円です。

この結果から、SREに限らず高度なスキルを持ち合わせているほど高い年収を狙えるといえるでしょう。これらはSREエンジニアとしての平均年収が掲載されているわけではありませんが、SREエンジニアの平均年収の相場を考える上で参考にすると良いでしょう。

求人の募集状況

SREエンジニアという職種の重要性を考えると、需要は今後高まることが予想されます。ただし、現時点のSREの求人数は、プログラマーやSEなどの一般的なエンジニアと比較すると少数です。

これはSREが認知されてからの期間が長くないためです。SREエンジニアは幅広い分野で活躍できる可能性を持つ職種です。そのため、SREエンジニアの求人数が今後増加していくことは十分に考えられるでしょう。

求人内容の例

SREエンジニアの募集内容はさまざまです。たとえば、ゲーム会社で働くSREエンジニアと医療システム開発を行うSREエンジニアでは、必要なスキルが大きく異なります。募集の内容に注目すると、以下のような条件が共通している傾向です。

  • ・TCP/IPに関するネットワークの知識

    ・AWSまたはGCPでのサービス運用経験2年以上

    ・Terraformを用いたインフラの構築/運用経験

ただし、未経験可の求人もあるため、全ての求人で即戦力としての貢献が期待されるわけでもないことがわかります。

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この記事の監修

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