UXデザインとは?
UXデザインを理解するためには、まずUXとは何かを知っておきましょう。
UXはUser Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略でユーザー体験という意味です。
ユーザー体験とは、オフライン・オンライン関係なくサービス全般を利用した顧客が受ける体験を指します。たとえば「ECサイトで商品を購入する」「メッセージアプリで連絡をとる」などの行動が、ユーザー体験にあたります。
UXデザインとは、こうしたユーザー体験をユーザーにとって「心地良い」「使いやすい」と思えるように設計することを指します。優れたUXデザインがあれば、競合他社との差別化になったりユーザーの評価が上がったりして、プロダクトを成功に近づけられます。
「デザイン」という言葉が使われているため、芸術性や個性などを発揮してデザインをする華やかな印象がありますが、UXデザインは顧客視点に立った経営戦略という側面が強いです。
身近なUXデザインを例にあげてみましょう。
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・メッセージアプリLINEは、吹き出しで表示するUIを用いて、まるで会話しているようなUXを提供している・スターバックスはおしゃれなインテリア、バリスタのいるカウンターなどでくつろげる店内を作り、本格的なコーヒーを楽しむUXを提供している
以上のように、UXはプロダクトにさまざまな特徴を持たせることができます。
関連記事:UXとは?UIとの違いや関係性、学習方法を分かりやすく解説
UXとUIの違い
UXとUIはよく並べて使われる言葉です。「UI/UXデザイナー」のように、二つの要素をデザインする職業も存在します。しかし、UXとUIは同じ意味ではなく、違いがあります。
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UI…ユーザーに見える範囲、触れる表層部分のこと
UX…UIによってユーザーが体験すること
「LINE」の例でいうと、「吹き出しのようなメッセージのやりとり画面」はUIです。このUIによって「まるで会話するようにメッセージを受送信できる」のがUXといえます。UIデザイナーは必然とUIによって起こる効果、体験も設計に組み込むため、UI/UXデザイナーと表すことも多いです。
UXとCXの違い
UXは顧客体験、ユーザー体験を指しますが、同じ意味として使われる言葉に「CX」も存在します。CXとはカスタマーエクスペリエンスの略であり、「顧客体験の価値を表す言葉」です。
CXと比較すると、UXはUIによって得られる一時的な体験です。サービスを利用した印象や感覚がUXであるのに対し、CXはどのような経緯で商品を知り購入に至ってその後どう行動したかといった一連の流れすべてを指します。
たとえば商品購入後のサポートやアフターケアはUXではなくCXです。プロジェクトによってはUXと同じくらいCXが重要な要素になることもあります。
UXデザインを重要視する理由
UXデザインの重要性は次第に高まりつつあります。理由の一つとして、ユーザーの目的が実態のある商品や価値のあるものだけでなく、体験や経験を求めるようになったことがあげられます。多くの商品であふれる現在では、ものを所有するだけでなく、ものを通じて楽しい体験や貴重な体験をしたいユーザーニーズが強まっています。
また、商品やサービスなどは競合他社も多いのが実情です。他社との差別化や独自のユニークな手法であるUXを意識しないと手に取ってもらうことも難しいといえるでしょう。こうした業界の流れを汲んで、今UXデザインの重要性が見直されています。
UXデザイン作成の流れ
UXデザインをするには、個人のデザイン技量や裁量だけでは完成しません。クライアントと同じ視点でユーザーを理解し、企業の抱える課題とも向き合いながら解決手段を考えデザインするといった、マーケティング視点も欠かせないのが特徴です。
そのため、UXデザインは制作に即取り掛かるわけではないことを頭に入れておきましょう。
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・アクセス解析やユーザーインタビュー、アンケートなどの市場調査
・顧客像(ペルソナ)の定義、カスタマージャーニーマップの作成
・仕様書や遷移図の作成
・プロトタイプの作成
・デザイン制作、開発
・ユーザビリティテストの実施、改善など
仕事の流れを見ると、UXデザインはデザイン制作業務以外の分野を受け持つことが分かります。
UXデザインを作成するにはUIデザインスキルも求められ、同職種であるWebデザイナーとは異なる専門性も必要だといえるでしょう。
UXデザイナーの仕事内容
UXデザインでは「デザイン制作業務以外の分野も受け持つ」と説明しました。デザイン関連の業務の流れはなんとなくイメージできても、それ以外の分野となると分からない方も多いでしょう。実際にはUXデザイナーの業務にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは仕事内容をいくつかの項目にわけて紹介します。UXデザイナーの職業を理解するためにもチェックしておきましょう。
UXリサーチの実施
UXリサーチとは、ユーザーの体験に関する調査です。現在のユーザーはどんな状況であり、何を求めているのかを調査します。表面的に見えているユーザーのニーズは「顕在ニーズ」と呼ばれ、プロダクトの市場価値を決める根本になります。
一方で、表面には見えないものの求められているニーズもあり、これを「潜在ニーズ」と呼びます。潜在ニーズは、プロダクト開発の改善やリニューアルの基本となる要素です。
UXリサーチの手法はさまざまですが、ユーザーアンケートやインタビューなどで調査することが多いです。
カスタマージャーニーの作成
カスタマージャーニーとは、ユーザー(カスタマー)がプロダクトを通してどう行動し思考するのかを可視化する作業です。
検索する→アクセスする→興味を持つ→アクションを起こす
上記のようにステージごとに分けてユーザーの行動を予測することで、分析しやすくなります。
ワイヤーフレームの作成
ワイヤーフレームとは、具体的なデザイン要素を加える前のWebサイトやWebサービスの骨格です。ここではUXを完成するために最適なUIを考慮して設計します。そのため、UXデザインをするには「UIデザインのスキルも必要」といえます。
ワイヤーフレームの作成後、クライアントとのすり合わせやユーザビリティテストを経てプロトタイプを作成します。プロトタイプの動作確認で問題点を見つけたら改良を繰り返し、実用に近づけるのがUXデザイナーの仕事です。
関連記事:UXデザイナーとは?年収や適性、UIデザイナーとの違いも解説
UXデザイナーに求められるスキル
UXデザイナーは、デザインだけでなくユーザーの行動分析やブランディングもできなければなりません。UXデザイナーに求められるスキル、身につけておきたいことを紹介します。いずれも後天的に身につけ、磨いていけるスキルです。UIデザイナーになりたい方・興味のある方は、事前に身につけておきましょう。
分析力
UXデザイナーは分析ツールを使用し、数値化されたユーザーの行動から最適なUXを選定します。Googleアナリティクスやヒートマップなどの分析ツールを使う技術や知識が求められるでしょう。
市場の実態だけでなく、何がユーザーにとって届きやすいのかといった予測力も大切な要素です。マーケティングスキルがあると、UXデザイナーの中でも重宝されやすいです。
関連記事:Webデザイナーとは?仕事内容や他職種との違い、未経験からの目指し方も紹介
ユーザー視点で考える力
UXデザインには顧客ニーズの理解や顧客の立場を考える力が欠かせません。作り手であるUXデザイナーにとって基本的なスキルですが、意外と制作側がこの視点を持ち続けるのは難しいといわれています。
クライアントの要望に答えるのも大切な要素ですが、同時に市場調査やユーザビリティテストなども重要視しておきましょう。ユーザーへの共感力が高いと、プロダクトの満足度やリピーターの増加につながりやすいです。
コミュニケーションスキル
UXデザイナーにはコミュニケーションスキルも必要です。UXデザイナーはデザイナーと名前が付いているため、デザインだけを行うイメージをもたれやすいです。しかし、実際の仕事内容を見るとクライアントやプロジェクトメンバー、ユーザーなど社内外でのやり取りが必要だと分かります。
立場の異なる人と関わることに苦手意識を持たない人、意思疎通を問題なくできる社会的なコミュニケーションスキルがある人は、UXデザイナー向きです。
優れたUXデザインを作成するための6つのポイント
UXデザインをするにはさまざまな要素・スキルを使用する必要がありますが、よりユーザーに届くUXにするには考えておきたいポイントがあります。ここでは、優れたUXデザインを設計するための6つのコツを紹介します。これらの要点をおさえてUXデザインをすれば、ユーザーがより魅力に感じる体験を提供できるようになるでしょう。
良いUXデザインの定義を意識する
UXとは目に見えない部分であるため、参考となるものが存在しません。そのため今一度何が「良いUXデザインなのか」を意識しておきましょう。
情報アーキテクチャ開拓者の一人であるピーター・モービルは良いUXデザインを7つの要素で定義しています。
Usable | 使いやすい |
Findable | 見つけやすい |
Useful | 役に立つ |
Desirable | 魅力がある |
Valuable | 価値がある |
Credible | 信頼できる |
Accessible | 手に入れやすい |
この要素が満たされていると良いUXデザインになるため、商品やサービスのブラッシュアップを行う場合は一つずつ検証することがおすすめです。独自にUXデザインを行う場合も、この7点を意識すると目標やゴールが分かりやすくなります。
顧客満足度を意識した目的やゴールを明確にする
目的やゴールとは「クライアントが抱える課題を解決する」「ユーザーが求める体験をしてもらう」などです。プロジェクトの最初に提示するものですが、今一度、顧客満足度を意識し検証と改善を繰り返すとより洗練されたUXになるでしょう。
目的やゴールを明確にすると、多数の課題が出ます。課題に対して優先順位を付け、解消することでより良いUXを目指せるでしょう。
ユーザーの課題を明確にし、その原因を調査する
ユーザー理解のためには、ユーザーが持つ課題にも着目する必要があります。ユーザーの課題は以下の2つの分析方法でより明確になるといわれています。
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・定量分析…アクセス数など数値化してユーザーを分析すること
・定性分析…インタビューなどで意見を募り、数値以外でユーザーを分析すること
課題が見つかったら、その原因を調査しましょう。調べることで現状のUXが持つ課題や改善点が見つかります。
実際に設計する
UXデザインスキルを身につけるには、実際の設計経験が大切です。製品やサービスの設計を行うと、カスタマージャーニーマップの問題点や考慮すべきポイントも見えてくるでしょう。
ただし、すべて制作を完了させるのではなく、試作品であるプロトタイプまでの作成が重要です。設計を終えた段階で課題が見つかると、作り直すコストや時間が余計に必要となります。
少ないコストとリソースでUXデザインの質を高めるため、まずは骨組みとプロトタイプを作成して分析と改良を繰り返しましょう。
ユーザビリティテストなどでユーザーの意見を収集する
UXデザインを考えたときに頻出するユーザビリティテストとは、ユーザーにプロトタイプを試してもらうテストを指します。このテストではユーザーからのリアルな意見が得られるため、制作にあたっていると気付けない「第三者からの意見」が集まるチャンスです。
UXデザインの設計段階で想定したUXを、実際にユーザーが体験できているか、想定からぶれていないかをチェックします。良い評価の部分はそのまま取り入れ、悪い評価は改良点として対処しましょう。
PDCAサイクルを回す
PDCAとは知名度の高いビジネスフレームワークの一つです。
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・Plan(計画)
・Do(実行)
・Check(評価)
・Action(改善)
上記4つのプロセスを繰り返すことで、さまざまなプロジェクトの完成度を高めます。
UXデザインはPDCAサイクルとの関連性が強く、試行と実行、検証を繰り返すPDCAサイクルを常に回している状態といえるでしょう。また、UXデザインには完成がなく再構築の際にも役立てられます。
UXデザインに活かせる資格
UXデザインはデザイン業務以外の範囲も広く、専門的な知識・技術も求められます。とはいえ就職するために必須の資格はない職業です。転職やキャリアアップの際には、スキルを備えていることを証明するための資格が重要になるのが実情です。どういった資格がUXデザインのスキルを持っていることの証明になるのか、UXに関する資格を紹介します。
ウェブデザイン技能検定
ウェブデザイン技能検定とは、Webデザイン系資格でも珍しい国家検定として有名です。3〜1級のグレードに分かれており、1級は難易度も高く専門性の高い試験が含まれます。初学者は3級からの受験がおすすめですが、UXデザインに活かすためには高グレードの受験を検討すると良いでしょう。
ユニバーサルデザインコーディネーター(UDC)認定資格
ユニバーサルデザインコーディネーター(UDC)認定資格とは、ユニバーサルデザインの視点でモノづくりやサービス、接客を効果的に改善する知識・スキルを実証するものです。
資格では3級〜1級のグレードに分かれており、すべての人に使いやすいUXを提供し、ユーザー視点を持つための意識が身につきます。UXデザイナーとして活躍したい人にとって有効な資格の一つといえるでしょう。
未経験からUXデザインを身につけるための勉強方法
UXデザインを行うには、ある程度のデザイン技術と基礎知識が前提として必要です。ただし、デザイン能力があればUXの知識を学び、実践できれば未経験でも目指すことは不可能ではありません。
デザイナーとしてのキャリアアップや、他業界からUXデザイナーに転職する際に役立つ勉強方法をいくつか紹介します。それぞれの手段を用いるメリット・デメリットも押さえておきましょう。
関連記事:Webデザイナーの勉強方法は?必要な時間数や独学の方法
オンラインサービスや書籍で独学する
UXデザインを学ぶオンラインサービスや書籍は多数公開されています。自分の求める範囲を選定し、独学で知識を身につけるのもおすすめです。独学のメリットは、時間に縛られることなく、隙間時間で自分のペースで進められることです。また、比較的費用もかからないため、副業としてUXを学ぶ人にも適しています。
一方で初心者だと「自発的に学ぶ姿勢」に頼りきるために、解消できない問題や課題にあたると挫折しやすいデメリットがあるでしょう。習得するために時間がかかるのも独学の特徴であるため、ある程度業界に慣れた人におすすめです。
セミナー・勉強会に参加する
オフライン・オンラインに限らずUXデザインを学ぶセミナーや勉強会が開かれています。形式はセミナーによってさまざまですが、幅広い知見を得るために活用できる手段です。
セミナーや勉強会は、その場で質問して疑問を解消しやすい環境であることがメリットです。社内外の人間関係も構築できるため、独立を視野に入れている人にもおすすめできます。
通信講座で学ぶ
通信講座でUXデザインを学ぶ方法もあります。オンライン講座だと自分のタイミングで学習を進められるため、働きながら学びたい人にとってもメリットが大きいです。カリキュラムが組まれているため、体系的にUXデザインの基礎を身につけられるのもメリットの一つです。特に初心者にとっては参入障壁を下げるため、独学ではうまくいかなかった人などにおすすめです。
一方である程度デザインスキルや知識、実務経験がある人にとっては物足りないと感じることもあるでしょう。より専門的な知識は独自の学習で補うシーンも出てきます。
スクールで学ぶ
現在認知の広まるUXデザインは、専門学校などのスクールで学ぶこともできます。スクールに通うメリットは、最新の知識やスキルを効率的に学べる点です。講師がいるためフィードバックや疑問の回答を得やすく、挫折しにくいのも特徴でしょう。
ただし、カリキュラムが組まれている以上時間の制約がかかります。専門学校では必ず費用が必要となるため、信頼のおける知識が得られる代わりに、ある程度の予算と時間を準備しなくてはなりません。
UXデザインに関するよくある質問
体験をデザインするのがUXデザインです。抽象的な意味合いにも捉えられやすく「形のないものをデザインする」という概念は理解するのに難しい側面もあります。UXデザインの概要を理解するためにも、よくある質問と回答をまとめました。UXデザインの重要性や仕事の概要、UXデザイナーになるための方法を知りたい方は特に役立つでしょう。
Q1. UXデザインはなぜ必要なのですか?
ものであふれる現在において、製品やサービスを利用するユーザー(顧客)は、それからしか得られない体験に重きを置く風潮にあります。また、ユニークで貴重な体験であるUXは競合他社との差別化にもなるでしょう。ユーザーから選ばれるため、自社のブランディングやプロジェクト目標達成のためにUXデザインは必要です。
Q2. UIデザイナーとUXデザイナーの違いは何ですか?
UIデザイナーとはプロダクトの表面部分をデザイン設計する仕事です。UXデザイナーはUIによってどのような体験を与えるかを設計する立場であり、両者は異なる職種であるものの互いの業務内容をしっかり把握する必要があります。プロジェクトによってはUIデザイナーとUXデザイナーが兼任することもあります。
関連記事:デザイナーとして就職するためには?職種と必要なスキルを解説
Q3. UXデザイナーになるためには何が必要ですか?
UXデザイナーになるには以下のスキルが必要です。
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・グラフィック、Webなどのプロダクトに関連するデザインスキル
・顧客理解を深めるユーザー分析やマーケティングスキル
・社内外の人とやり取りしながらプロジェクトを進めるコミュニケーションスキル
専門性の高い仕事ですが未経験から目指すのも不可能ではありません。
まとめ
UXデザインとは「ユーザーが得る体験をデザインすること」です。デザインという言葉が付随していますが、デザイン業務以外を担当することも多い専門性の高い職業です。
多数の商品やサービスであふれる現在において、差別化やブランディングのために欠かせない要素です。責任のある仕事で任される範囲も広く、活躍できる分野は広がります。キャリアステップの一つとして目指してみるのもおすすめです。
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