SQLとは?概要や種類などを初心者にもわかりやすく解説

最終更新日:2024年4月8日

SQLは世界で最も普及しているデータベース言語です。商用、非商用を問わずITシステム、アプリケーション開発に利用されているRDB(リレーショナルデータベース)の操作を行うため、SQLの知識は広くITエンジニアに必要とされています。

データ活用の重要性が高まり続ける今、SQLの習得により、業務改善を図る用途や、データベースエンジニア、データサイエンティストといったキャリアパスの幅を広げることに繋がっています。

基本的なSQLは独学でも身に着けやすく、インターネットが普及した今なら学習するハードルも決して高くはありません。

本記事では、SQLの習得の必要性やメリットについて確認したいエンジニアに向けて、SQLの基礎知識、IエンジニアにSQLが求められる理由、メリット、学習方法、キャリアアップや年収アップの図り方、将来性のある先端IT人材になるためのキャリアパスまで詳しく解説します。

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この記事のまとめ

  • SQLはデータベース言語の中で、最も普及している言語の一つであり、DBMS(データベース管理システム)上でデータやデータベースを制御するための言語
  • SQLのスキルを身に着けることで、ITエンジニアとしてキャリアパスの幅を広げることが可能
  • SQLの知識を活かせる職種として、データベースエンジニア、データサイエンティスト、Webエンジニア(サーバーサイドエンジニア)などがあります

SQLとは

SQLとは「Structured Query Language」の頭文字であり、「構造化された問い合わせ言語」と翻訳されます。SQLを使うことでデータベースを操作し、格納されたデータを取得したり、更新したりできます。また、他のプログラミング言語と組み合わせてデータベースを操作することも可能です。SQLとは一体どのような言語なのか、概要と種類について解説します。

SQLの基礎知識

SQLは特定の処理を行う「コマンド」を発行することで、データベースにあるデータの取得や追加・削除などを行います。言語の特性としては対話型であるため、コンパイルする必要はありません。大規模なデータベースで大量のデータを操作する場合でも、簡単な命令文で実行できるので非常に扱いやすい言語です。

またSQL文は標準化が進んでおり、種類が異なってもメジャーなデータベース管理システムであれば記述方法はほぼ同じです。SQLの知識を一度身に着けてしまえば、汎用性の高いスキルとなるでしょう。

データベースとは

データベースとはデータの検索や蓄積を容易にするため、一定のルールに従って整理された情報の集まりを指します。例えばAmazonなどの通販サイトを例に挙げると、商品情報から注文情報、購入者情報や取引先、物流業者といった数多くのデータベースが存在していると想定できます。このような膨大な情報を操作するために、SQLは欠かせない存在なのです。

またデータベースは以下の画像のように「階層型データベース」「ネットワーク型データベース」「リレーショナル型データベース(RDB)」の3種類に分類できます。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

階層型データベース

階層型データベースは、ツリー状に構成されたデータデータベースです。会社の組織図のように、1つのデータが複数のデータと親子関係で関連付けられ、上層(親ノード)から下層(子ノード)に分岐する形でデータが整理されています。

階層型データベースの利点は、下層のデータにアクセスするためのルートが1つだけであるため、他のデータベースと比較してデータの検索や集計が迅速に行えることです。この特性により、データの操作や解析が効率的に行えます。

しかしながら、階層型データベースのデメリットとしては、下層に複数の上層データを紐づけることができないため、柔軟かつ簡潔なデータ管理が難しいという点が挙げられます。

ネットワーク型データベース

ネットワーク型データベースは、網状に構成されたデータ構造を持っています。関連のあるデータが互いに結びついています。階層型データベースとの違いは、下層から上層への分岐もできることです。

ネットワーク型データベースの利点は、下層データを複数の上層データに紐づけられるため、データの重複を避けることができるという点です。これにより、効率的なデータの管理と冗長性の排除が実現します。

一方で、ネットワーク型データベースは複雑なデータベース構造を持つため、高度な知識やスキルが必要です。

リレーショナル型データベース

リレーショナル型データベースは、データとデータの関係性(リレーショナル)を管理する方式で、ITシステムやアプリケーション開発で最も広く利用されるデータベースの種類です。

具体的には「行」と「列」によって構成された、表形式のテーブルを基本としたデータベースです。テーブルはExcelのワークシートに似たものと考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。

一般的によく使われるリレーショナル型データベースとしては、以下の5つが挙げられます。

・Oracle Database

・MySQL

・Microsoft SQLServer

・PostgreSQL

・SQLite

SQLでデータベースの操作を行うのはこの方式のデータベースです。リレーショナル型データベースを利用したシステム開発プロジェクトは非常に一般的であるため、SQLが利用できれば多くの開発案件に対応することが可能です。

データベース言語とプログラミング言語

データベース言語はコンピュータに対する命令文という点ではプログラミング言語と似ていますが、命令文を複数積み重ねることのできるプログラミング言語よりはデータの登録、検索などできることが限られています。また、プログラミング言語のインタプリタ言語と同じく、SQLは実行時にコードが評価されます。

SQLを構成する4種類の言語

SQLのコマンドは、以下の4種類があります。

・DDL(データ定義言語)

・DML(データ操作言語)

・DCL(データ制御言語)

・TCL(トランザクション制御言語)

それぞれで用途・処理内容が異なりますので、違いを正しく理解しましょう。

DDL(データ定義言語):テーブル作成、設定変更

DDLはData Definition Languageの略で、データを格納する表(テーブル)の作成や削除、設定の変更など、データではなくテーブルを操作するために利用する言語です。代表的なものとしては以下が挙げられます。

・CREATE(テーブルの作成)

・ALTER(テーブルの設定変更)

・DROP(テーブルの削除)

・TRUNCATE(テーブル内のデータの削除)

テーブル以外にも、ビューや索引(インデックス)、シノニムなどのデータベースオブジェクトの作成や設定変更、削除を行う場合でも使用します。

DML(データ操作言語):データ検索、追加、更新、削除

DMLはData Manipulation Languageの略で、テーブルに保存されたデータの追加や更新・削除など、レコードごとのデータを細かく操作するための言語です。データを加工するために最も多く使用するため、SQLの中でも基本的な言語です。

・SELECT(データ検索、選択、抽出)

・INSERT(データ追加、挿入)

・UPDATE(データ更新)

・DELETE(データ削除)

DCL(データ制御言語):権限付与・剥奪

DCLはData Control Languageの略です。DCLはデータベースに格納したデータにアクセスするための権限付与、権限剥奪を管理します。セキュリティの観点からも重要な言語です。例えば、特定のテーブルにアクセスする権限を付与すれば、そのテーブルに格納されたデータはアクセス権限を持ったユーザーしか操作することができません。

・GRANT(権限付与)

・REVOKE(権限剥奪)

TCL(トランザクション制御言語):コミット、ロールバック

TCLはTransaction Control Languageの略です。データベース内でデータを更新する際は、複数の処理をまとめたトランザクションで制御します。TCLはトランザクション内で行われた処理の確定またはロールバック(取り消し)を行います。例えば、INSERT(データ追加、挿入)やDELETE(データ削除)等の処理は、コミットするまでは確定されません。ロールバックを実行して取り消すことも可能です。

・COMMIT(トランザクションの確定)

・ROLLBACK(トランザクションのロールバック)

DMLの基礎的なSQL文

初心者はまずDML(データ操作言語)の主要な文法の習得から着手しましょう。いずれも実際の開発作業で頻繁に使用されるため、必ず使いこなせるようになりましょう。

SELECT文(データ検索、選択、抽出)

例:指定するテーブルのレコードを選択する

SELECT 列名 FROM テーブル名 WHERE 条件


この例では、指定したテーブルから条件に合致したレコードにおいて、指定した列の値を取得します。条件を指定しない場合はテーブル内の全レコードが表示されます。

INSERT文(データ追加、挿入)

例:指定するテーブルの任意の列に値を設定したレコードを追加する

INSERT INTO テーブル名(列名) VALUES (値) ※設定する列の数だけ指定する

UPDATE文(データ更新)

例:指定するテーブルの任意の列にある値を更新する

UPDATE テーブル名 SET 列名1 = 値1 [,列名2 = 値2]※更新する列の数だけ指定する WHERE 条件


この例では、指定したテーブルから条件に合致したレコードにおいて、指定した列の値を更新します。条件を指定しない場合はテーブル内の全レコードが対象になります。

DELETE文(データ削除)

例:指定するテーブルにある、条件に合致するレコードを削除する

DELETE FROM テーブル名 WHERE 条件


DELETE文は、指定したテーブルから条件に合致したレコードを削除します。条件を指定しない場合はテーブル内の全レコードが対象になります。データを削除するコマンドはDELETE以外にDDLのTRUNCATEがあります。

TRUNCATEは、WHERE条件の指定ができず、テーブル内のデータを全削除します。また、DDLであるため、TCLによるコミットやロールバックで制御できません。実行すると必ず削除を行います。
DELETE文は条件を指定することで一部のレコードのみ削除も可能です。また、実行後もTCLによる制御ができるため、ロールバックも可能です。

JOIN(内部結合・外部結合)

内部結合:複数のテーブルを指定した列の値が一致するものだけを結合する
例:テーブルAとテーブルBで結合する条件に一致する値をもとに結合する

SELECT 列名1, 列名2, ... FROM テーブルA INNER JOIN テーブルB ON 結合する条件


外部結合:内部結合に加えて、どちらかのテーブルにしか存在しないもので取得する
例:テーブルAにしか存在しない値をもとに結合する

SELECT 列名1, 列名2, ...,FROM テーブルA LEFT(RIGHT) OUTER JOIN テーブルB ON 結合条件

サブクエリ生成

サブクエリはSQL文の中にさらにSELECT文を埋め込むことで、複雑な抽出条件をシンプルな構文で実現します。WHERE句で指定する条件に、SELECTの結果を利用するようなイメージです。

例:テーブルAの抽出条件に、テーブルBで値2の抽出結果を指定する(IN以降がサブクエリです)

SELECT 値1 FROM テーブルA WHERE 値2 IN (SELECT 値2 FROM テーブルB WHERE 値3 = 50)

SQLでできること・活用例

SQLがWebアプリケーション開発で広く利用される理由には、ECサイトやSNSなどで膨大なデータを保管しておく必要があるためです。SNSの場合ならユーザーごとの情報を保管しつつ、いつでも変更や削除ができるようにしておかなくてはいけません。

またSQLは規模の大きい開発現場だけではなく、身近な業務であるエクセルとも連携することが可能です。あらかじめ複雑な計算処理をSQLで作成しておけば、エクセルのデータを自動的に計算させることもできます。SQLによって計算などの業務が効率化されれば、統計やマーケティングなどに活用できるでしょう。

SQLの特徴

RDBMSを利用する上で、SQLの習得は欠かせません。SQLを上手に扱うには、特徴を理解することが大切です。本項では、RDBMSを使いこなすために必要となるSQLの特徴を紹介します。

命令文をデータベースへ送って処理させる

SQLは基本的に一文内に命令を完結させ、それをデータベースに送ります。データベース側では受け取ったSQLを解釈して、データベース上で実行し、結果を返します。対話型とも呼ばれる形式で、この繰り返しによりSQLを利用したデータベースへのアクセスは構成されます。

どのようなRDBMSを利用した場合にも、この流れは同じですので、意識しておきましょう。

SQLだけではアプリの作成・操作はできない

SQLはデータベース上のデータの操作に特化した言語です。画面の操作や処理の順序の制御などは行えず、SQLだけではアプリケーション構築には適していません。

ただし、アプリケーション内でのデータベースへのアクセス処理にはSQLが利用されます。アプリケーションからSQLを実行し、その結果をアプリケーション内で利用する形式です。その際には、別のプログラミング言語と組み合わせて利用されます。

SQLでデータベースを操作する方法は2種類ある

SQLでデータベースを操作するには、「対話型」と「埋め込み型」の2種類の方法があります。

対話型

SQLPlusやpSQLなど、対話型操作を行うツールを使い、コマンドを入力して直接操作をする方法です。1つ命令を実行する都度結果が表示されます。

埋め込み型

JavaやPHPなど他のプログラミング言語で記述したコードの中にSQLを埋め込み、実行する方法です。SQLでは条件分岐や繰り返しなどの制御ができませんが、他のプログラミング言語で制御した上でSQLを実行することで動的にデータベースを操作することが可能です。

セキュリティのために覚えておきたい「SQLインジェクション」とは?

SQLを理解する上でセキュリティ対策として覚えておきたいこととして「SQLインジェクション」があります。SQLインジェクションとは、アプリケーションの脆弱性から不当なSQL文が実行され、不正にデータベースのデータが読み取られたり、データが改ざんまたは削除されたりする攻撃のことです。その代表的な被害の事例としては、個人情報の漏えいやWebサイトの改ざんが挙げられます。

SQLインジェクションが発生する原因は、本来実行されるべきSQLの構文が変更されてしまう点にあります。対策としてはユーザから想定外の情報が入力されてもそのまま処理せず、正しくエラー処理を実施することが重要です。SQLインジェクションの脆弱性を作らない、セキュアプログラミングによる安全なWebアプリケーション開発の基本の一つです。

SQLを使うにあたって押さえておきたい基本用語

SQLを使うにあたって、覚えるべき用語がいくつかあります。SQLはリレーショナル型データベースで使用されるので、ここで紹介する用語はリレーショナル型データベースに関するものです。基本的な用語ですので、しっかり理解しておきましょう。

テーブル

テーブルは、リレーショナル型データベース内で項目ごとに集められた表の単位です。リレーショナル型データベースでは、データは項目別に整理され、表の形式で格納されます。データベースには複数のテーブルが含まれており、Excelで例えると、データベースはブックに相当し、テーブルはシートとなります。

レコード

レコードは、テーブルに保存された1行分のデータのことです。
したがって、データベースのテーブルにデータを登録することを「レコードを作成する」と表現することもあります。また、2件以上のデータのことを指して「複数」レコードということもあります。

カラム

カラムとはテーブルの「列」のことです。または、データベースに入っているデータの「項目」ということも言えます。
Excelで例えると、テーブルはシートに相当し、カラムはA列やB列などの「列」に相当します。

フィールド

フィールドとはデータベースにおけるデータの最小単位です。フィールドが集まったものがレコードやテーブルになります。Excelで例えると、フィールドはセルに相当します。

主キー(プライマリーキー)

主キーは、データベースにおいてデータの項目を一意に特定するための項目です。一意というのは「重複しない」という意味です。会社で言えば「社員番号」のようなイメージです。社員番号は社員を特定する番号です。同様に主キーは、レコードを一意に特定する項目です。

リレーション

データベースにおいて「リレーション」はテーブル同士の関係性のことを指します。例えば、会社の拠点が登録されている拠点マスタテーブルと、社員が登録されている社員マスターテーブルがあるとします。1つの拠点に複数の社員が在籍している場合、拠点マスタと社員マスタは「1:nの関係」といえます。このような関係性のことをリレーションといいます。

オブジェクト

オブジェクトとは、データベース内に独立した塊(モノ)としての存在を指します。具体的にはテーブル、索引(インデックス)、データ項目などがオブジェクトに該当するでしょう。

トランザクション

トランザクションは、処理や作業での塊(単位)を指します。複数のSQLによるデータ更新をひとつの塊として、データベースへ反映させる処理がトランザクションです。

例えば銀行振込の場合、「振込先」「日時」「金額」「口座残高」などの情報を更新しなくてはなりません。また、振込元の口座、振込先の口座に対して情報の更新が発生します。こうした処理を個別に実行すると、データベース内で不整合が起こる可能性が高くなります。

こうした不整合を防ぐために、振込元の口座からの出金の情報更新、振込先の口座への入金の情報更新、振込が行われたことを意味するデータの登録の3つの情報の更新を一つの塊として実行するのが、トランザクションだと考えると理解しやすいでしょう。

コミット

コミットとは、トランザクションの処理を確定させることです。

先ほどの銀行振込の例では、振込元の口座からの出金だけでは処理は確定しません。必要な全ての処理が完了するとトランザクションがコミットされます。

ロールバック

ロールバックとは、トランザクション処理のキャンセルのことです。

先ほどの銀行振込の例では、振込先の口座の情報更新に失敗した場合、振込元の口座も元の状態に組み戻します。これをロールバック処理といいます。ロールバック処理の結果、トランザクションが開始される前の状態に戻ります。

SQLを学ぶメリット

多くのシステムではデータベースが使用されているため、ITエンジニアがSQLを学ぶことは、システム開発の仕事を行う上で大きな意味があります。では、SQLを学ぶメリットとは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、ITエンジニアがSQLを学ぶことのメリットについて解説します。

キャリアパスの幅が広がる

近年は業界業種を問わず、蓄積されたデータの活用が進んでいます。あらゆる分析はデータを活用する時代と言っても過言ではありません。どの企業でもデータ分析や加工は日常的に行っており、データベースの重要性も増しています。こうした状況からITエンジニアにとって、どのような職種でもSQLの知識が求められるケースも多くなりました。

例えばプログラマーがSQLを習得することで、テーブルからのデータ取得効率の向上によるパフォーマンスアップを図れます。これは、高品質なソースの記述につながるでしょう。インフラエンジニアであれば、データベースのパフォーマンスチューニングや設定変更などの業務に役立ちます。

さらに近年急速に台頭してきたデータサイエンティストにとっても、SQLは必須のスキルです。データ分析環境の構築や、課題の検証などでデータ操作を頻繁に行うため、エンジニアと同等レベルのSQLスキルを身に着けておくとキャリアの幅が拡がります。

国際規格であり汎用性が高い

SQLはISO(国際標準化機構)によって標準化されていて、IT業界全体の「共通言語」としての側面も持ち合わせています。言語仕様やデータベースソフトウェアによって多少の違いはあるものの、基本的な仕様はほぼ同じです。

このためプログラミング言語やデータベースを学ぶ際には、SQLの知識は共通したものがベースとなり、繰り返し学習することを避けることができます。データに少しでも携わる仕事であれば、必ずどこかで役に立つスキルと言えるでしょう。

データベースエンジニアの台頭

ビッグデータ時代に入り、注目されている職種のひとつに「データベースエンジニア」があります。データベースエンジニアとは、データベースの設計・構築・運用・管理を行うエンジニアです。求人の数こそ多くありませんが、内容はいずれも高度で専門性が高いものばかりです。

大規模システムには必須の人材であることから、実績とスキルさえあればキャリアを積み上げやすい職種ともいえます。データベースエンジニアへの転職を検討するなら、SQLはまさに登竜門ともいえるスキルです。

経営企画やマーケティングにも役立つ

SQLのスキルは、データベースを管理するエンジニアに限らず、経営企画やマーケティングなどの職種でも活用できます。統計データを活用して利益を最大化したり、顧客情報管理のサービスを開発したりするのに、SQLのスキルが役立ちます。

SQLの将来性

SQLのスキルには安定した需要があり、将来性も高い技術と言われています。1986年に統一標準規格が発表され、現在に至るまで多くのデータベースで使われており、今後も使われ続けると見られています。なぜSQLは将来性が高いのでしょうか。その理由について解説します。

レガシーシステムと先端技術の双方で使われる

SQLはプログラミング言語とは異なり、データベースの世界において寡占状態にあります。RDB用言語としては事実上、SQL以外にほぼ選択肢がない状態が続いています。そのためシステムの新旧に関わらず、依然としてSQLのスキルが役立つのです。例えばレガシーシステムから新システムへのマイグレーションなどにおいては、どちらのシステムでも共通してSQLのスキルが求められるでしょう。

ただし、データベースにはRDB以外のデータベースも存在しており、NoSQLデータベースといったSQL不要の技術も台頭しつつあります。用途が違うため直接的にはSQL(RDB)にとって変わるわけではないのですが、ITエンジニアとしては注視するべき技術と言えます。

クラウドサービスへの適応

クラウドサービスを使用する際にも、SQLは欠かせない技術です。実際にAWSではデフォルトのRDBとして、MySQLが採用されています。最新のクラウドサーバーに移行しても、決してすたれることのない言語のひとつがSQLなのです。

ほぼすべての先端IT分野で必須

AIやIoTといった先端IT分野の活用が急激に広がると考えられ、これからは一部の業界や企業だけでなく広く一般化していくことでしょう。先端ITではいずれもデータ収集と分析が必須であるため、どちらの分野においてもRDBとSQLの知識が役立つことは間違いありません。

SQLを使用可能なデータベース

SQLを使用できるデータベースは、有償・無償問わず数多くあります。ここまでSQLについて理解し、実際に使ってみたいと考えている人もいるでしょう。SQLを利用できるRDBのなかでも代表的な製品(RDBMS)を紹介します。

MySQL

MySQLとはOracleが開発、サポートするリレーショナルデータベース管理システムです。CMSで最も有名なWordPressのデータベースとしても利用されているので、一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。もともとオープンソースのデータベースとして開発されており、2023年2月現在も無料で利用できるライセンスが適用されたバージョンが提供されています。

WordPressのブログ投稿、ユーザー管理、プラグインの情報などを個々の「テーブル」に保存して、それらの情報を「キー」で関連付けます。WordPressのアプリケーションが情報にアクセスする場合、SQLを使用してMySQLのデータベースにリクエストを送信する(クライアントサーバーモデルによる)ことでデータを操作します。多くの一般ユーザーにとって、オープンソースのMySQLは馴染みのあるDBMSとも言えるでしょう。

Maria DB

MariaDBはMySQLから派生したデータベース製品です。オープンソースでGPL V2という実行、複製、再配布、改変が認められたライセンスで提供されています。

MySQLと高い互換性を持ち、加えて機能追加やソースコードの改善が行われています。様々なLinuxディストリビューションにMySQLに変えて採用されており、人気の高まっているデータベース製品といえます。

PostgreSQL

PostgreSQL(ポストグレスキューエル)は、オープンソースのRDBMSです。Linux、macOSといったUNIX系OSだけでなく、Windows OSにも対応しています。またBSDライセンスというオープンソースの中でも緩やかなライセンスを採用しており、独自の機能改変などを行っても公開義務はありません。

PostgreSQLの特徴としては、ほかのオープンソースソフトウェアと連携が可能な点です。システムを連携することで、例えばクラスタリングやレプリケーションなどで可用性の向上が期待できます。高い可用性が要求される大規模システムでも、商用データベース製品と遜色ない仕様にすることも不可能ではありません。可能な限り導入コストを抑えたいなら、PostgreSQLはとても魅力的なDBMSと言えるでしょう。

Oracle Database

Oracle DatabaseはOracle社の提供する商用RDBMSです。商用DBの分野で長い歴史と大きなシェアを持っています。

Oracle Databaseの大きな特徴としては、「高い堅牢性で障害に強い」「ロックによる待機が起こりにくい」といった点があります。データベースの冗長化や複製など、BCP対策にも効果的です。またデータ更新中の際はほかの人が同じタイミングで更新しないよう、最小のレコード単位でロック機能が働きます。同じテーブルであってもレコードが異なれば更新が可能なので、待ち時間になる確率が低くなり効率的な運用も可能です。

Oracle DatabaseはほかのDBMSと比べると高性能で高価格なため、大企業向け、大規模システムや信頼性の高いDBが必要なシステム向けの製品です。安定稼働を望むならサポート契約を締結することで、バグ対策の修正パッチの提供を随時受けられるのもメリットといえるでしょう。

Microsoft SQL Server

SQL Server は、Microsoft社が開発したRDBMSです。Windowsシステムでよく使われています。
Windowsの開発元であるMicrosoft社が開発しているため、Windows OSと相性が良いのが特徴です。

SQL Serverでは、データベースを視覚的に操作できる「GUI」が利用できます。データベース管理ツール「SQL Server Management Studio」を利用することで、データの操作を直感的に行うことができます。

SQLite

SQLiteはパブリックドメインの軽量データベース製品です。大きな特徴はデータベースのインストールや設定が必要なく、アプリからライブラリとして使用できる点にあります。アプリケーションに組み込むことができ、手軽に利用できることから人気を博しています。動作に必要なのはc言語ランタイムのみで、マルチプラットフォームにも対応しています。

【初心者向け入門編】SQLの勉強方法

SQLは独学でも習得しやすいのがメリットであり、特徴でもあります。

関連記事:SQLの勉強方法を解説|おすすめのサイトや本、構文例まで紹介

動画・サイトで学ぶ

インターネットを通じ、動画やWebサイトを利用して学習する方法は、手軽で視覚的にも情報が得やすいことが特徴です。SQLを動かしているところが見えるため、動作がイメージしやすく、初心者の学習にも向いています。

PC上にデータベース環境を用意して、動画やWebサイトの内容を実際に動かしながら確認することで理解が深まります。

書籍で学ぶ

書籍でもデータベースに関する学習が可能です。学習レベルに合わせた書籍選びが必要となります。また、書籍を利用する場合にもPCを用意して、書籍に記載された内容を再現しながら学習することで理解が深まります。最初は資格対策の本よりも、動かしながら理解する入門書を選ぶのがおすすめです。

自宅に開発環境を構築

自宅のPCに開発環境を構築すれば、いつでもデータベースやSQLに触れられます。学習効率も格段にアップするので、無料で利用できるMySQLやPostgreSQL、SQLiteなどを活用しましょう。

SQL関連のおすすめ資格

RDBやSQLのスキルを客観的に証明するために、資格の取得は有効な手段です。SQLに関連する知名度の高い資格を3つ紹介します。

ORACLE MASTER

ORACLE MASTERはデータベース開発として有名なOracle社が主催するベンダー資格です。開発元が実施しているので、Oracleのスキルを証明するには最も有効です。ORACLE MASTERにはレベルが4段階設定されており、実務経験に応じたレベルを取得を目指しましょう。

Bronze:新入社員など初心者向け
Silver:現場に配属されて半年程度向け(実務経験6か月程度)
Gold:豊富な実務経験が求められ難易度は高い(実務経験3年程度)
Platinum:Oracleのプロフェッショナル向け(実務経験5年以上)

2019年よりORACLE MASTER2019という新資格体系が適用されています。Plutinumについては、2023年6月に2019がリリース予定されています。

OSS-DB技術者認定試験

OSS-DB技術者認定試験​は特定非営利活動法人のエルピーアイジャパンが、オープンソースデータベース全般に関する知識を認定する資格です。前述のORACLE MASTERはSQLの基本知識なども出題されますが、Oracle製品に依存する知識も多く出題されます。一方でOSS-DB技術者認定試験では、データベース全般に関する内容が出題されます。レベルもSilverとGoldの2段階があり、Goldを取得するにはSilverの合格が必須条件となります。

OSS-DB Silver:PostgreSQLを利用したデータベースシステムの設計から開発・導入・運用ができる技術者
OSS-DB Gold:PostgreSQLを利用した大規模なデータベースシステムの改善や、運用管理・コンサルティングができる技術者

基本情報技術者試験

基本情報技術者試験は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営し、経済産業省が認定する国家資格「情報処理技術者試験」のうちITエンジニア初心者に向けた試験です。国家資格のため、社会的に認知度や信頼度が高く、ITエンジニアの登竜門とも言えます。

システムエンジニア・プログラマーを目指す人に向けて広範囲に渡って基本的な知識を問う問題が出題され、SQLやデータベース基礎も含まれます。そのため、まずはこの資格取得をめざすとよいでしょう。

データベーススペシャリスト

データベーススペシャリスト試験は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営し、経済産業省が認定する国家資格「情報処理技術者試験」のうちデータベース技術者に向けた試験です。国家資格のため、社会的に認知度や信頼度が高いといえます。

特定のデータベースについて問う問題ではなく、データベースの概念について問う問題が多くなっているのも特徴です。ITに関する国家試験では最高レベル4に設定されており、難易度は非常に高いですが合格すれば高いスキルを証明できます。

SQLを習得することで目指せる職種

SQLを習得することで目指せる職種を紹介します。いずれもSQLは必須スキルですが、どの職種もSQLのスキルのみで転職できるわけではありません。年収レンジについては、レバテックキャリアの求人から分析した結果を記載しています。

データベースエンジニア

データベースの設計・構築・管理・運用を行う職種です。Oracle DatabaseやMicrosoft SQL Server、PostgreSQL、MySQLといった主要データベースを扱えれば、応募できる求人の幅が拡がります。SQLはあくまでもコアスキルのひとつですので、実務レベルを意識して身に着けておきましょう。

年収レンジ:450~900万円

関連記事:データベースエンジニアの将来性と主なキャリアパス

サーバーサイドエンジニア

Webサービスやアプリケーション開発において、主にサーバー内の処理を実装する職種です。サーバーサイドではPHPやJavaといった言語を使ってデータベースと頻繁にデータのやり取りを行うため、SQLの知識とスキルも求められます。

年収レンジ:400~1000万円

データサイエンティスト

データサイエンティストはビッグデータの収集・蓄積・分析などを行い、課題解決に役立つ知見を見出す職種です。データを用いて仮説の検証を行ったり、顧客への提案を行ったりもするので、データの操作に精通している必要があります。SQLはデータ操作の専門的なスキルですが、最低でもDDL(データ定義言語)、DML(データ操作言語)、DCL(データ制御言語)の基礎的な内容は身に着けておくべきでしょう。

年収レンジ:400~1200万円

関連記事:
データサイエンティストの仕事内容を解説!必要なスキル、知識、学習方法もご紹介
データサイエンティストに求められるプログラミング言語と学習方法

SQL関連職種で高年収を提示される条件

これら4つの職種で高年収を提示されるためには、「技術的バックボーンが厚いこと」「統計解析などの知識をもっていること」などが必要になります。特にテックリードクラスになれば、年収1000万円を超える条件の提示をする企業も少なくありません。チームリーダークラスの実力(マネジメント能力、経験)も、高年収を獲得しやすい条件と言えるでしょう。

SQLスキルが活かせる転職求人例

レバテックキャリアで公開されているSQL関連の求人例には、以下のような案件があります。

【システムエンジニア】

【業界】
IT・通信

【業務内容】
Salesforce Marketing CloudやAdobe製品などのCRM、マーケティングツールの導入案件におけるSQLの設定、Salesforce独自のスクリプト言語を用いたシナリオのプログラム開発を行います。
要件定義、設計、実装、テスト、導入、運用までが担当工程です。

【必須条件】
・プログラムの開発経験2年以上
・データベースに対する知見
・Webのフロントエンドコーディングスキル
・Salesforce製品やAdobe製品の導入やカスタマイズ経験がある方は優遇
・コミュニケーションスキル

【想定年収】
650~900万円

【勤務地】
東京都

【DBスペシャリスト】

【業界】
IT・通信

【業務内容】
顧客の戦略的IT投資に向けて、先進IT技術の調査を行い、システム(データベース領域メイン)の最適化、効率化、スリム化を提案します。
・高可用性かつ高難易度な非機能要件実現に向けたDB基盤検討、PoC、Database選定
・企業内のデータシステム再配備
・大規模データを用いた効率的、費用対効果の高いシステム基盤検討
・短時間での安全なシステム切替を実現するデータ移行検討

<具体的なプロジェクト事例>
大規模DB(Oracle)システム(8ノード/20TB)HWリプレイス案件(計画~調査~実施まで)
大規模DB(Oracle)システムのBCP対応実装案件
大規模DBのクラウド基盤での構築案件
分散DBシステム(約70TB)を利用した情報系システム案件
ダウンサイジング案件でのDB技術リード(計画、構築、移行、運用までの全フェーズ)

【必須条件】
・DBの構築、運用経験
・OS/NW/ストレージなどの基盤技術の知識があると尚可
・システム開発におけるDBA業務経験
・SQLチューニングの経験
・大規模データ分析についての新技術習得に意欲的な方

【想定年収】
700~1,500万円

【勤務地】
愛知県

【事業を横断するデータアナリスト】

【業界】
IT・通信

【業務内容】
モバイル向けインターネットサービスを展開する企業において、社内の既存事業、新規事業に向けたデータ分析を行っていただきます。
スマートフォンゲーム、ライブストリーミング、ヘルスケア等のWebサービスが対象となります。
・事業課題解決に向けたデータ抽出と分析、施策提案までの支援
・A/Bテストなどによるサービス改善のための仮説検証分析支援
・BIツールによるデータ可視化、ダッシュボード作成
・データエンジニアと協力し、データ分析基盤整備

【必須条件】
・データ分析によるプロダクトやサービス改善業務の経験
・SQLを用いたデータ抽出と集計のスキル
・基礎的な統計の知識(統計検定2級程度)
・自分とは異なる専門性をもつ他者をリスペクトし、協調して業務遂行ができること
・不確実性の高い環境において目的に沿って適切に仮説を構築し自ら思考して動くことができる方
・チームとして成果を最大にするために自分は何をすべきかを考えて行動できる方

【想定年収】
650~1,200万円

【勤務地】
東京都

SQLに関するよくある質問

最後にSQL に関するよくある質問について、回答をまとめました。
SQLとプログラミングの違い、データベースとSQLの違いなどに関してよく質問されます。自分自身が疑問に思っていることに近い質問があれば、ぜひ参考にしてみてください。

Q1. SQLはどういうときに使うのですか?

SQLはデータベースとやり取りをする時に使用します。データベースの中でも特にリレーショナル型データベースを操作するのに使用します。

Q2. SQLとは何ですか?

SQLとは「Structured Query Language」の頭文字であり、「構造化された問い合わせ言語」と翻訳されます。SQLはさまざまなプログラミング言語内で「SQL文」として使用するケースが多く、命令文との組み合わせでデータベースの操作が可能です。

Q3. SQLとプログラミングの違いは何ですか?

SQLはコンピュータに対する命令文という点ではプログラミング言語と似ていますが、通常のプログラミング言語は「処理の手続き」を記述するのに対し、SQLは「出力したい項目と条件」を指定します。

SQLでは「どのような結果が欲しいか」を指示して、具体的な処理内容はデータベースエンジンに任せるのです。

Q4. データベースとSQLの違いは何ですか?

データベースはデータを保存・管理するしくみのことで、SQLはそのデータベースを操作するための言語です。

Q5. SQLで何ができますか?

SQLを使って、データの登録、更新、削除、検索などのデータの操作ができます。またテーブルの作成や削除などもSQLを使って行います。

まとめ

SQLはデータベース操作用の言語として、世界で最も普及している言語です。SQLのスキルを身に着けることで、ITエンジニアとしてキャリアパスの幅を広げることが可能です。

基本的なコマンド文であれば、学習ハードルは低いので独学での習得も可能です。まずは学習環境を構築して、実際にSQLに触れてみることをおすすめします。

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