未経験からでもプロジェクトマネージャーになれる?
エンジニア未経験からでもプロジェクトマネージャーになることは可能です。ただし、未経験の状態からすぐにプロジェクトマネージャーになるのは難しいでしょう。開発担当者やプロジェクトリーダーなどの実務経験を経て、スキルを向上させたあとになれる、という意味合いです。
未経験からでも可能な理由としては、求められるスキルが広範に渡ることが挙げられます。システム開発などのITプロジェクトの全体的な工程像や成果物・業務内容・プロジェクト管理への知見、顧客の業種・業界・業務への理解など、必要なスキルを挙げるときりがありません。
また、業務の特性上、豊富な経験も求められます。プロジェクト推進上で発生する課題は、原因や選択可能な施策などもケースバイケースで臨機応変な対応が求められるため、それまでの経験が重要です。顧客折衝では窓口となる場合が多く、経験が試されるシーンも少なくありません。
一部例外となるのは、ほかの業種でプロジェクトマネージャー経験がある人の場合です。プロジェクトマネジメント手法は多くの分野で共通しているため、すぐにIT業種のプロジェクトマネージャーとして即戦力になれる場合もあります。
プロジェクトマネージャーとは
プロジェクトマネージャーとは、システム開発プロジェクトにおける責任者となるポジションです。プロジェクトの現場をまとめ、プロジェクトを成功に導くミッションを持つ重要性の高い役割のため、多くのエンジニアがキャリアパスの目標地点として目指しています。
プロジェクトリーダーもプロジェクトにおける重要なポジションです。しかし、プロジェクトマネージャーとは責任やマネジメントの範囲が異なります。プロジェクトリーダーを経験したあとにプロジェクトマネージャーになるケースが一般的です。
以下では、プロジェクトマネージャーが担当する役割や仕事内容、プロジェクトリーダーとの違いを解説します。
プロジェクトマネージャーの役割
プロジェクトマネージャーの役割は、システム開発プロジェクトの全体を管理・推進し、プロジェクトを成功に導くことです。IT事業者に所属するプロジェクトマネージャーの場合には、事業の単位となるプロジェクトにおいて利益を追求する役割も担います。
システム開発プロジェクトでは、プロジェクト推進上の障害となる問題がさまざまな方向から発生します。多岐に渡る関係者の利害関係や技術的な課題、予算と納期などあらゆる問題に対し、顧客と折衝し最善の解決策を見つけるために奔走するのがプロジェクトマネージャーです。
実際の設計やプログラミング、テストなどにおいては直接の作業者とはならず、管理やレビューなどを担当する場合が多いです。
プロジェクトマネージャーの仕事内容
プロジェクトマネージャーは、各プロジェクトにおいて決められた期日までに成果物(システムや仕様書、ハードウェアなど)を完成・納品する責任を負っています。そのために、主に以下のような業務を担当しています。
-
・プロジェクトスコープ(作業範囲)の決定
・プロジェクト体制の構築(人員の配置やチーム編成など)
・プロジェクトの全体的なスケジュール設定
・プロジェクトの進捗確認、定例会の開催など管理運営全般
・人員(SEやPGなど)の手配および人的コスト管理
・クライアントとの交渉
プロジェクトマネージャーは、システムの開発や改修といったプロジェクトをやり遂げるために、プロジェクトチームを結成します。このとき、どういった人材がどれだけ必要かを計算し、人材を確保します。
また、スケジュールを設定しプロジェクトが始動したあとには、つねに進捗のチェックが必要です。必要であれば人材の追加投入などを行い、計画修正もしていかなくてはなりません。業務変更に伴うシステムの仕様変更など顧客から何らかの要求があった場合は、交渉の窓口としても活躍します。
関連記事:プロジェクトマネージャー(PM)の役割は?仕事内容・必須スキルを解説
プロジェクトリーダーとの違い
プロジェクトリーダーは開発者などの立場からプロジェクト内のチームを牽引するポジションです。いわば、プロジェクト内のチームにおけるプレイングマネージャーにあたります。
一方、プロジェクトマネージャーはマネジメントに特化し、プロジェクト全体を責任範囲とします。そのため、プロジェクト体制上はプロジェクトリーダーよりもプロジェクトマネージャーの方が職位が上になります。
関連記事:
プロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーの違いは?
プロジェクトマネージャーとディレクターの違いとは?
未経験からプロジェクトマネージャーになるには
未経験からプロジェクトマネージャーを目指す方法について解説します。未経験でそのまま転職活動を進めても、プロジェクトの責任者となるプロジェクトマネージャーのポジションに配置される可能性は非常に低いでしょう。とはいえ、プロジェクトマネージャーは技術職未経験であっても、ほかの業界や職種でマネジメント経験があれば目指しやすい職種です。
重要なのは、マネジメントを経験し、かつアピール材料を増やしながら段階的に目指すことです。これまでの職務経歴から活かせるスキルがないか、資格を取得してITやマネジメントの知識を身につけられないかなど検討してみましょう。ITやプロジェクトマネジメントに関する知見は最低限求められるので、まずはこれらを補填していく必要があります。
資格を取得する
資格取得は、プロジェクトマネジメントに必要な知識を横断的に学ぶことができ、対外的な知識の証明にもなります。未経験からプロジェクトマネージャーを目指す際、スキルや意欲を証明するための1つの手段として資格の取得はおすすめです。プロジェクトマネージャー向けの資格としては、以下が挙げられます。
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・PMP®
・プロジェクトマネージャ試験
・ITコーディネータ試験
関連記事:プロジェクトマネージャーに役立つおすすめの資格と難易度を解説
PMP®
PMP®は、プロジェクトマネジメントの概念が生まれた米国の団体「PMI(米国プロジェクトマネジメント協会) 本部」が認定している国際的な資格です。
同団体が提唱する「PMBOK (Project Management Body of Knowledge) 」は、プロジェクトマネジメントのノウハウを体系的にまとめており、これをベースにした資格がPMP®です。PMP®はIT業界で高い評価を得やすく、未経験者でも一定の知識を有することの証明になります。
PMP®の受験資格の要件は以下です。プロジェクトマネージャーのポジションではなくとも、プロジェクトマネジメントの実務経験が必要とされるため、注意が必要です。どれくらいの実務経験が求められるかは、学歴によります。マネジメント経験がない方は受験できません。
学歴 | プロジェクトマネジメントの経験 |
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中等教育卒業 (高校卒業、準学士号または海外の同等資格) |
5年/60ヶ月以上に渡る、一意かつ重複しない プロジェクトマネジメントの実務経験 |
4年制大学卒業 (学士号または海外の同等資格) |
3年/36ヶ月以上に渡る、一意かつ重複しない プロジェクトマネジメントの実務経験 |
GAC認定プログラムによる学士号取得または 大学院卒業(学士号もしくは修士号、または海外の同等資格) |
2年/24ヶ月以上に渡る、一意かつ重複しない プロジェクトマネジメントの実務経験 |
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営し、経済産業省が認定する国家資格試験です。
プロジェクトマネージャーに求められる組織運営、管理能力、リスク管理と分析、評価に関する知識などが問われます。日本国内ではPMP®と並ぶ、代表的なプロジェクトマネージャー向け資格といえます。PMP®はプロジェクトマネジメント経験が必須となる一方で、この試験は未経験の方でも受験可能です。
過去の統計データから合格率は15%前後と非常に難易度が高く、記述や論述式の回答が求められる問題もあるため、試験対策が必須とされています。令和5年度秋期試験の合格率は13.5%でした。
ITコーディネータ試験
ITコーディネータ試験は2001年にスタートした特定非営利活動法人ITコーディネータ協会により運営される資格試験です。経済産業省の推進資格でもあります。
試験では、経営戦略やIT戦略、プロジェクトマネジメントに関する知識を問われます。また、資格取得には試験合格に加えて6日間の集合研修の完了が必要です。IT業界ではプロジェクトマネジメントやPMO(Project Management Office)の一員として参画するときに、評価される資格といえるでしょう。
ITコーディネータ試験は受験資格の要件などは特にありません。ITCのメンバーIDを取得すれば受験可能です。
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、プロジェクトマネージャ試験の下位資格です。アプリケーション開発者向けの応用レベルの資格です。ほとんどの人は、応用情報技術者試験に合格したあとにプロジェクトマネージャ試験を受験しています。
応用情報技術者試験の内容が難しいと感じる場合は、焦らずに下位試験から挑戦すると良いでしょう。下位資格としては基本情報技術者試験やITパスポート試験が挙げられます。
応用情報技術者試験はプロジェクトマネージャーだけでなく、IT業界で幅広く需要があり、また合格すれば評価される資格です。内容は幅広いですが、基本情報技術者試験に比べると得意分野に絞って選択できます。
現職でマネジメント経験を積む
プロジェクトマネージャーは一足飛びに目指せる職種ではありません。必ず何らかのマネジメント経験が問われます。
そのため、まずは現職で小規模チームのリーダーなどに就き、チームマネジメントの経験を積む必要があります。そして、このときに役立つのが資格試験で得たマネジメントの知識です。マネジメントを任せてもらうためのアピールにもなるでしょう。
中小SIerなどのリーダー職に転職する
中小規模のSIerの中には、未経験者でも応募できるチームリーダー、グループリーダー、マネージャーの求人を出している企業があります。中小SIerではプロジェクトマネージャーの職種自体を設けていないケースもありますが、多くの場合プロジェクトマネジメント業務も担当します。
こういった求人に応募し、マネジメントのイロハを学ぶのも有効な方法の1つです。ただし、未経験者の転職はハードルが高いため、資格を取得し転職の成功確率を上げるのがおすすめです。
面接対策をする
未経験者の場合は、プロジェクトに関わった経歴がなくても、学習意欲やチャレンジ精神、コミュニケーション能力など、ほかの職種で培ったスキルや経験をアピールすることが大切です。
プロジェクトマネージャーに必要なスキルを身につけるために、資格取得や独学、セミナー・講座の受講などで学習を進めるのも重要です。学習しきれていない部分は、入社後に積極的に学ぶ姿勢をアピールすると良いでしょう。
プロジェクトマネージャーの志望動機
面接では、プロジェクトマネージャーになりたい理由をほぼ確実に聞かれます。理由は人それぞれ異なりますが、一般的には以下の内容は含めるべきとされます。
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・その企業でなければならない理由
・プログラマーやSEとしての経験を活かして貢献できること
・入社後の目標
給与や待遇面の良さを主軸とする志望動機は避けましょう。また、自分自身の成長などはアピールしたほうが良いですが、自分のことだけだと企業側のメリットを提示できないため、内容のバランスを考慮する必要があります。「自分自身の成長」と「企業のメリット」の両方を含めると良いでしょう。
IT業界未経験者がプロジェクトマネージャーを目指すには
IT業界が未経験でも、マネジメント経験があればより優位になりやすいです。ただし、IT業界未経験からプロジェクトマネージャーを目指す場合には、業界経験者よりも条件が厳しくなります。さらに、大手企業への転職はハードルが高い傾向があるため、まずは中小企業のPMポジションを狙うのがおすすめです。
IT業界未経験者がプロジェクトマネージャーを目指すには、下記のポイントを踏まえた対策を行うと良いでしょう。
業務や技術に関する知識を身につける
ITの業務の知見や技術的な知識が必要です。すなわち、未経験からプロジェクトマネージャーを目指す場合には、専門的な業務知識を保有していることが前提といえます。
応募する企業が求める業務知識とITを結び付けられるよう、ソリューションや技術の知識を学ぶと良いでしょう。たとえば、ITコーディネータ試験に向けた学習により、業務知識とIT企業での利用の仕方を学べます。
IT業界のプロジェクトマネージャーには、プロジェクトマネジメントの知識とスキルも必要です。特に、以下に挙げるプロジェクトマネジメントでよく利用される手法は熟知しておくと良いでしょう。
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・WBS(Work Breakdown Structure=プロジェクトを作業単位に分割し階層構造に再構築する手法)
・開発手法(ウォーターフォール/アジャイルモデル)
・テスト手法(V字/W字モデル)
プロジェクト運営に必要な知識は、「SEやPGをはじめとしたメンバーをどう動かすか」「どの工程にどれだけの人員が必要か」など、工程や人的リソースの管理に役立ちます。国家資格である基本情報技術者試験などを取得して、ITに関する基礎知識を身につけるのも良いでしょう。
これまでのマネジメント経験を整理する
業界問わずマネジメントに携わった経歴がある場合には、プロジェクトマネージャーの業務に関連する経験と捉えられるため、未経験者の中でも有利です。これまでの業務知識やマネジメント経験を振り返り、どのようなプロジェクトで力を発揮できるかを整理し、転職先を検討しましょう。スキルマップや経験したプロジェクトの履歴を作成すると、自分にマッチする企業を見つけやすくなります。
プロジェクトマネージャーに向いている人・向いていない人
誰もがプロジェクトマネージャーに向いているとはいえません。また、プログラマーやSEに向いていても、プロジェクトマネージャーの適性があることとはまったく異なります。プログラマーやSEとしては、そこそこのスキルでも、プロジェクトマネージャーとしては大いに活躍する人もいるからです。
さらに、もともと必要な資質を持ち合わせている人もいれば、努力を重ねてようやく適性を身につける人もいるため、現段階での正確な判断は難しいでしょう。
しかし、一般的に求められるプロジェクトマネージャーの業務背景やスキルから、参考となる人物像が推測できます。では、どのような人がプロジェクトマネージャーに向いていて、逆にどのような人はプロジェクトマネージャーに向いていないのか、以下で解説します。
向いている人の特徴
プロジェクトマネージャーに向いている人の特徴として、以下が挙げられます。
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・コミュニケーション能力が高い
・チームをまとめられる
・課題に対する意識が高い
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトに関係する多くの人とコミュニケーションを取る必要があるため、コミュニケーション能力が必要です。
またプロジェクトマネージャーはプロジェクトチームのリーダーとして、チームをまとめる役割なので、リーダーシップやマネジメントスキルが求められます。
プロジェクトのスケジュールや品質、予算などの管理を行う際には、細かいところまで目配りできる意識が重要です。
向いていない人の特徴
プロジェクトマネージャーに向いていない人の特徴として、以下が挙げられます。
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・関係者とコミュニケーションを取るのが苦手
・論理性に欠ける
・ストレス耐性がない
人と話すことが苦手だと、プロジェクトマネージャーには向いていないでしょう。
プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体を把握し、細かい部分まで考慮しながらスケジュールや予算、品質管理などを行います。そのため、論理的思考力が必要です。コミュニケーションも正確に取る必要があるので、その点でも論理的思考力は不可欠といえます。
また、プロジェクトマネージャーはコミュニケーションや課題解決において大変に感じる場面もあるでしょう。トラブルの発生はどうしても避けられないため、逆境に弱いと、活躍し続けるのは難しいです。
プロジェクトマネージャーに求められるスキル、知識、経験
本項ではIT系企業のプロジェクトマネージャーに求められるスキルや経験について解説します。IT業界では、一般的にプロジェクトマネージャーはPGやSEを経験し、チームリーダー(TL)やプロジェクトリーダー(PL)などを経てからキャリアアップする場合が多い職種です。しかし、必ずしも技術職の経験が必要なわけではありません。
他業界でのマネジメント経験や、特定の分野(金融やロジスティクス)に関する豊富な業務知識・経験があれば、それを活かしてプロジェクトマネージャーになることは可能です。ただし、クライアントに対して技術的な解説ができるプロジェクトマネージャーは信頼を得やすい傾向にあります。
プロジェクトマネージャーの仕事内容を進める上では、以下のようなスキル、知識、経験が求められます。
関連記事:SEからプロジェクトマネージャーになるには|年収や業務内容を比較
求められるスキル
プロジェクトマネージャーに求められるスキルの代表例を紹介します。人との関わりや責任のあるポジションであることから、高いヒューマンスキルが要求されます。プロジェクトを成功に導くためにこれらのスキルを掛け合わせ、総合的に高水準のパフォーマンスを発揮できることが重要です。
コミュニケーションスキル
システム開発プロジェクトには必ずクライアントがおり、仕事の相手はコンピュータではなく人間です。複数の関係者間で共通の認識を作り、プロジェクトチーム全体をまとめるには高度なコミュニケーションスキルが必要となります。
プロジェクトマネージャーがコミュニケーションスキルを発揮する業務の具体例として、下記が挙げられます。
-
・顧客要求を引き出し、プロジェクトリソース(受注金額、体制、技術力など)から現実的なプロジェクトプランを提案し交渉する
・ステークホルダーへの状況説明や各種の協力依頼をする
・プロジェクトチームを率い、チーム内の円滑な関係を築く
リーダーシップ
プロジェクトマネージャーはプロジェクトチームの責任者です。チームをまとめ牽引するリーダーシップも必要とされます。
また、プロジェクトチームは自社内のメンバーに限らないことが重要なポイントです。クライアントの事業部門担当者、システム部門担当者、その上司などのステークホルダーもプロジェクトをともに進める仲間として味方につけ、1つのチームとして成功を目指すのが理想です。
課題解決・分析力
プロジェクトを進めていく上で、各種の問題の発生は避けられません。プロジェクトマネージャーはこれらの課題を可能な限り速く発見し、分析、解決に導くスキルが求められます。
あらゆるエンジニア職種には課題解決力が必要ですが、プロジェクトマネージャーの場合には問題の早期発見と、周囲を上手に巻き込んで課題解決に導く能力が特にポイントとなります。
課題の早期発見のためには、その芽となるリスクについてのマネジメントを実施します。また、課題の解決においては、効率的かつ確実に解決することが重要です。プロジェクトメンバーや周囲に協力を仰ぎ、適材適所で問題解決できるメンバーを割り当てるなど、解決の術を考案するのもスキルの1つです。
各種管理能力
プロジェクトマネージャーはプロジェクトに関するあらゆる管理を行います。たとえば、下記が挙げられます。
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・人員、予算の適切な配置を行うためのリソース管理能力
・スケジュール、作業進捗の管理
・課題管理
・リスク管理
・コスト管理
・品質管理
管理する上では、経験や知識をもとにあらかじめ大体のリソースやコスト、進捗スピード、起こりうる課題などを予測できるのが望ましいです。とはいえ、管理を行っている途中で初めて異変に気づき、対処が可能になるケースも少なくありません。
求められる知識、経験
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの実作業についても広く知識を持っている必要があります。実作業がどのようなものかを知っていなければ、適切な管理が行えないためです。
また、プロジェクトのさまざまなシーンにおいて、判断が重要となる場合があります。その際に役立つのが、IT業やその他業務におけるプロジェクト経験です。経験は、問題に直面した際の選択肢を増やし、判断の基準になります。このため、経験も重要視されるポイントです。
ITに関する技術的な知識
ITに関する技術的な知識はプロジェクトマネージャーのベースともいえる重要性の高い知識です。顧客の要件という形のないものを、ITシステムとして実現するには具体化が必要となり、その裏付けとなるのが技術的な知識だからです。
たとえば、顧客がWeb画面上でアニメーションの表現を取り入れたい場合、最終的に技術的に実現できるか否かを判断しなければ要望への対応可否も回答できないでしょう。できること、できないこと、新たに追加された機能などの概要を抑えるには技術的な知識が欠かせません。
また、技術的なバックボーンがない場合には、エンジニアとの会話で妥当性を判断するのが難しいです。エンジニアとの信頼関係を築く上でも、技術的な知識の保有は重要です。
クライアントの業界に関する業務知識
プロジェクトマネージャーはクライアントの業界、業務について知識を持つ必要があります。
多くのシステムはクライアントの業務の効率化や品質の向上を目的に行われます。業務の改善が目的である以上、クライアントの事業内容を良く知り、問題点を細かく分析しなければ改善にはたどり着けません。
また、業界、業種によって業務の行い方や慣習は違います。ITシステム上で再現する場合には、その詳細についても把握する必要があります。
システム開発プロジェクトに従事した経験
IT業界でシステム開発プロジェクトに従事した経験は、システム開発プロジェクトの進行、各工程での実施内容などを知ることにつながります。
具体的には、プロジェクト全体を組み立てる際、作業における見積もりやスケジューリングに対して、経験が役立ちます。理屈の上では分かっていても、実際に自分のしたことのない作業を見積もったり、スケジューリングしたりするのは難しいものです。
また、段取りを知っていることで、次に必要なアクションを予測しやすくなる点でも、プロジェクト従事経験が活きてきます。
プロジェクトマネジメント経験
進捗管理や品質管理などのプロジェクトマネジメント業務の経験は、まさにプロジェクトマネージャー業務の一部を先取りして行ったのと同様です。プロジェクトマネージャー業務は多岐に渡りますが、関連する経験が一部あるだけでも、プロジェクトマネージャー業務をこなす上で多少の余裕を与えてくれるでしょう。
プロジェクトマネージャーの需要
プロジェクトマネージャーの需要はあるものの、その量と質に満足していない企業が多いのが現状です。
IPAが公表したDX白書2023によると、日本の企業ではプロジェクトマネージャーの量、質ともに不足しているのが分かります。DXを推進する人材の量と質の確保についての調査では、「過不足はない」と回答した企業の割合は量が9.6%、質が6.1%と非常に低い結果でした。
また、データ利活用に関連する人材のアンケートでは、「不足している」と回答した人の割合は以下のとおりです。
-
・データ利活用に理解のある経営/マネジメント層:50.9%
・データを活用した製品/サービスを企画できる事業企画:61.8%
・データの高度な分析を行う データサイエンティスト:62.6%
・データを活用したソフトウェア やシステムを実装できる開発者:56.1%
・データ分析を行い、自社の 事業/業務に活かせる従業員:68.7%
上での回答からわかることは、マネジメントから開発者まで幅広く人材が不足しているということです。プロジェクトマネージャーのようなマネジメント側の人材も不足しています。
関連記事:プロジェクトマネージャーの転職を成功させるコツ|年収の上げ方や求人例も紹介
未経験可のプロジェクトマネージャーの求人例
未経験からでも応募可能なプロジェクトマネージャーの求人は存在します。下記では、レバテックキャリアに掲載されている求人・転職情報をもとに、事例を紹介します。事例内ではプロジェクトの企画・推進やディレクションした経験などが求められていますが、必ずしもプロジェクトマネージャーとしての業務経験は必要ありません。
たとえば、「SEとして管理側の役割を担った」「顧客と開発チームメンバーの間に入ってコミュニケーションを積極的に行った」経験でも十分にアピール材料になります。そのため、役職名にとらわれず、コミュニケーションを取ってマネジメントした経験などをしっかりアピールすることが大切です。
プロダクトロードマップの策定・管理
ビジネスチャットサービスのプロダクトに携わるプロジェクトマネージャーの求人です。
【業界】
・IT、通信
【業務内容】
中長期の事業戦略の実現に向けたプロダクトの管理、各所との調整
<具体的な業務内容>
・プロダクトロードマップの策定/管理
・定量/定性調査による課題の特定、優先順位付け
・関連部署との連携による顧客理解の推進
・戦略に基づく施策の立案
・各所との調整 など
【求められるスキル・経験、マインド】
・自社プロダクトのマネジメント経験
・内製開発でのエンジニアやデザイナーとの開発推進の経験
・複数名チームのリーダー経験
・定量的な思考と課題に対する数量的背景を見出せる分析力がある方
・困難な状況でも可能性を模索し結果を求められる方
【想定年収】
600~1000万円
【勤務地】
東京都
インフラ設計構築、運用保守プロジェクトの管理
社員が参画する複数のプロジェクトを管理するプロジェクトマネージャーの求人です。
【業界】
・IT、通信
【業務内容】
各プロジェクトの内容把握、顧客への提案、メンバー管理、関係者との調整、予算管理など
<具体的な業務内容>
・メンバー増員やローテーションといった顧客への提案
・メンバーの動きやメンタル状況の確認
・協力会社との顔合わせ、各種調整
・予算達成に向けた各種管理 など
【求められるスキル・経験、マインド】
・インフラの設計構築、または運用保守の経験
・営業(業種不問)の経験
・リーダー(業種不問)の経験
・周囲と円滑なコミュニケーションがとれる方
・業務に積極的に取り組める方 など
【想定年収】
350~700万円
【勤務地】
東京都
顧客のWebシステム、アプリでの提案~開発
製造、エンタメ、物流といった幅広い業界の顧客に向けたシステム・アプリ開発プロジェクトに携わるプロジェクトマネージャーの求人です。
【業界】
・IT、通信
【業務内容】
Webアプリ・システム、スマホアプリ、基幹システム、自社プロダクトなどの多様なプロジェクトにおける、提案、要件定義、設計、開発など。案件、スキルに応じてPM、PL、SEのいずれかを担当。
<具体的な業務内容>
・Webアプリ、システム開発などでの顧客への提案~開発、保守/管理まで
・各プロジェクトの管理
【求められるスキル・経験、マインド】
・汎用系を除くシステム開発での設計以上の経験(5年以上)
・プロジェクトリーディング(規模、立場問わず)
・顧客と対話しながら業務を推進できるコミュニケーション力がある方
【想定年収】
600~750万円
【勤務地】
東京都
プロジェクトマネージャーの年収
厚生労働省が商標登録している職業情報提供サイトjobtagによると、プロジェクトマネージャーの平均年収は660.4万円です。IT業界の中でも、プロジェクトマネージャーの平均年収は高めです。
また、2024年5月28日時点でレバテックキャリアに掲載されている求人・転職情報より、職種「プロジェクトマネージャー」に該当する情報を90件抽出し、平均年収を想定してみました。この場合、プロジェクトマネージャーの平均年収は約841万円です。レバテックキャリアで扱う求人は年収が高めのものが多いためjobtagの平均年収を大きく上回る結果となっています。
プロジェクトマネージャーの求人・転職情報>
関連記事:プロジェクトマネージャーの年収とは?求められる経験やスキルも解説
プログラマーやSEと比べて年収は高い
プロジェクトマネージャーの年収をほかの職種と比較してみましょう。
jobtagのデータから、プログラマーとSEの年収を見てみると、どちらも平均年収は550.2万円で同じです。これは、元としている令和4年賃金構造基本統計調査における各職種の職業分類が「ソフトウェア開発技術者(WEB・オープン系)」で同一のためです。
プロジェクトマネージャーと比較した場合は、100万円以上平均年収に差があります。プログラマーやSEと比べて、プロジェクトマネージャーの平均年収は高いといえるでしょう。
プロジェクトマネージャーからのキャリアパス
プロジェクトマネージャーからどのようにステップアップが可能なのか、キャリアパスを紹介します。未経験からプロジェクトマネージャーを目指す場合でも、キャリアパスをどう設定しておくかでロードマップが変わります。スムーズにキャリアを築いていくためにも、キャリアパスまで見据えた上で目指せるのが望ましいです。
考えられるキャリアパスの例としては、ITコンサルタントや社内SE、フリーランスなどが挙げられるでしょう。ただし、ひとことでプロジェクトマネージャーといっても、在籍している業界により選択肢が大きく異なるため、SIerに在籍している場合と、それ以外の場合に分けて解説していきます。
SIerの場合
SIerに在籍しているプロジェクトマネージャーのキャリアパスとして、以下が挙げられます。
-
・社内の幹部職
・ITコンサルタント
・フリーランス
・社内SE
社内の幹部職
SIerのプロジェクトマネージャーから社内幹部に出世するコースは王道といえるキャリアパスです。具体的な役職は企業によって異なりますが、マネージャ―、部長職、GM、CIO(最高情報責任者)、センター長などが挙げられます。社内での出世だけでなく、他社で前記のような役職に就いていた場合は、はじめから幹部職として採用されるケースもあります。
ITコンサルタント
ITコンサルタントへのキャリアパスも一般的です。ITコンサルタントといっても幅が広いですが、たとえば外資系のITコンサルタントは大規模なプロジェクトの最上流工程を担っている場合も少なくありません。結果的にプロジェクトマネージャーの上の工程を担当することになるので、より上流工程を目指す意味では良いキャリアパスでしょう。
フリーランス
プロジェクトマネージャーからフリーランスへの転身も増加傾向にあります。フリーランスになった場合、プロジェクトにはさまざまな立場で参加が可能です。プロジェクトマネージャーだけでなく、SEやPGとして参画する選択肢もあるでしょう。会社員時代より下流工程で参画しても、企業が仲介しない分手取りの報酬が多くなるケースもあります。
社内SE
ワークライフバランスを求める場合、社内SEという選択肢もあります。SIerでキャリアを積んだ人材への需要は大きいため、転職市場では有利です。社内SEはSIerに業務を発注するケースも多く、その際にSIerでのプロジェクトマネジメント経験が役立ちます。
SIer以外の場合
Web業界、アプリ業界などのプロジェクトマネージャーの場合、以下のようなキャリアパスが考えられます。
-
・ITコンサルタント
・フリーランス
・社内SE
・プロダクトマネージャー(PdM)
職種については同じ名前でも、SIerの場合と中身が少し異なることには注意が必要です。
ITコンサルタント
SIer以外のプロジェクトマネージャーからITコンサルタントへのキャリアチェンジを行う場合、主に中小企業を対象としたシステム、アプリ提案を行うコンサルティングが主な対象となります。プロジェクトマネージャーとして活躍していた際の経験を活かすため、顧客規模が似ている方が適しています。
フリーランス
フリーランスに転身する場合もITコンサルタントと同様の考え方です。SIerのような大規模プロジェクトや客先常駐ではなく、小規模なシステム、アプリ開発や受託でサイトやツール作成を請け負うフリーランスとして活躍しやすいでしょう。
社内SE
社内SEはさまざまな業界から求められています。そのため、どの業界でプロジェクトマネージャーを担当していたかに関わらず、幅広い応募先があるでしょう。IT業界で培った技術力やマネジメント力を他業界で活かすキャリアパスです。
プロダクトマネージャー(PdM)
ITサービスを自社で提供する企業において、サービスの責任者として活躍するプロダクトマネージャー(PdM)も有力なキャリアパスです。プロダクトマネージャーの場合、責任範囲はサービスの運営を含めプロダクトを用いた事業全体となります。
Webサービスの提供は事業の形態として普及が進んでいますが、比較的新たな業態のため、その管理を行うプロダクトマネージャーは不足しているのが実情です。
プロジェクトマネージャーは1つひとつのプロジェクトが業務の区切りです。一方で、サービスを提供するプロダクトマネージャーの場合は継続的な機能追加や改善が必要とされるため、継続的に開発とリリースを繰り返しながらサービス運用を行います。より長いスパンでのシステム開発の責任者となるポジションです。
プロジェクトマネージャーに関するよくある質問
プロジェクトマネージャーに関するよくある質問と回答をまとめました。寄せられる質問には「どうすればなれるのか」に関連した内容が多いです。特にエンジニア経験がなく、業界未経験からプロジェクトマネージャーを目指す場合にも参考になるでしょう。また、各質問に簡潔に答えているため、必要な情報が確認しやすいです。より詳しく知りたい方は本記事や関連記事などで解説しています。
Q1. プロジェクトマネージャーは何歳からなれますか?
一般的に年齢に関する規定はありません。所属組織やプロジェクトにおいてプロジェクトマネージャー業務が行えることが条件です。ただし、スキルと経験が必要なため、30〜40代がボリュームゾーンとされています。参考データとして、令和5年度秋期実施のプロジェクトマネージャ試験の合格者平均年齢は38.1才です。
関連記事:プロジェクトマネージャーの平均年齢は?何歳まで目指せる?
Q2. プロジェクトマネージャーになるには何が必要ですか?
プロジェクトマネージャーに求められるスキルや経験は幅広く存在します。代表的なスキルとしては下記が挙げられます。
-
・システム開発プロジェクトでの実務経験
・システム開発に対する知見
・プロジェクトマネジメントスキル
業界経験がない未経験者でも、マネジメント業務に携わった経験は有利に働くでしょう。
Q3. プロジェクトマネージャーの平均年収はいくらですか?
2024年5月28日時点のレバテックキャリアのデータから算出するとプロジェクトマネージャーの平均年収は約841万円です。厚生労働省の職業情報提供サイトjobtagによると、660.4万円です。プロジェクトマネージャーはプログラマーやSEよりも年収が高いですが、企業によるところも大きいといえます。
まとめ
この記事では、未経験者がプロジェクトマネージャーを目指すための方法を中心に、適性や年収、需要、キャリアパスなどを解説しました。
プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体の指揮官的な存在であり、IT業界でも特に需要が高い職種です。また、SEからキャリアアップ・年収アップを目指したい人にとっても1つの選択肢となります。未経験から目指すのは簡単ではありませんが、過去にプロジェクトマネジメントやリーダーなどの経験があると優位といえます。
キャリアパスの選択肢は複数あり、ITコンサルタントや社内SE、フリーランスなど、プロジェクトマネージャーからさらにキャリアアップするルートが考えられます。さらに、プログラマーやSEよりも高い年収が望めるため、興味がある方はぜひ目指してみてはいかがでしょうか。
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