今、注目の学生エンジニア起業家が実践する5つのことを紹介する企画。
第一弾は、話題のサロンモデル検索サービス「Coupe」を運営する、竹村 恵美さんにお話を伺いました。
竹村さんが学生時代に起業した理由とは?日ごろ、経営者としてエンジニアとして心がけていることとは?サロンモデル派遣という成長分野でビジネスを加速させる、竹村さんの素顔と仕事への情熱に迫りました。
※当記事は、2015年3月に行われた取材をもとに作成しています。
竹村 恵美さん PROFILE
株式会社Coupe 代表取締役/CEO
1991年生まれ。高校時代をスイスで過ごし、立教大学文学部へ。アナウンサーになるためレッスンに励むが、大学3年生のとき株式会社ログバーでインターンを始めたことがきっかけで、プログラミングを始める。その後、メガベンチャーでのインターンなどを経て、サロンモデル検索サイト「Coupe」を立ち上げ。2014年4月に実施された第1回「Startup Weekend Tokyo Woman」では優勝を飾る。事業の将来性などが評価され、2015年2月よりサイバーエージェント・ベンチャーズより出資を受けている。2015年3月同大学卒業。尊敬するエンジニアは、株式会社ビズリーチ 取締役CTO 竹内 真氏。尊敬する起業家は、株式会社ログバー CEO 吉田 卓郎氏。
Coupe 竹村さんが実践する5つの習慣
1. スタッフが成果を出した時には、一緒に大よろこびする
2. 明日会社が無くなっても大丈夫なスキルを持つ
3. スタッフに深夜の自宅開発を推奨する
4. メンバー全員の得意を把握する
5. おしゃれでいることを徹底する
─まず、お仕事について教えていただけますか。
サロンモデルと美容師さんをつなぐプラットフォーム「Coupe」を、開発・運営しています。大学3年生のときに、同じ大学に通っていた友だちと二人で、サービスを立ち上げました。2014年11月にβ版を、2015年2月に正式版をリリースしています。130名を超えるモデルが登録していて、β版時代を含めると、3000件あまりの依頼をいただくことができました。
─大学に入る前から、プログラミングの勉強はされていたんですか。
いいえ、まったく。実は私、大学3年生の夏までけっこう真面目にアナウンサーを目指していたんですよ。大学の放送研究会に入ったり、アナウンススクールに通ったり。数多くのアナウンサーを輩出している芸能事務所にも所属していて、豊島区のイベントでアナウンスのお仕事をさせていただいたりしました。
でも、レッスンを受けたり、さまざまなお仕事をいただくうちに「何か違う」と感じるようになってしまって…。
1. 女子アナからエンジニアへ。180°変化したあこがれ
─どんな違和感を感じたんですか。
私は昔から自分で何かを考えて、それを仕組みや形にしていくのが好きでした。例えば高校3年間、スイスの学校に通っていて、校内のカフェテリア長をしていましたが、食事が本当に美味しくありませんでした。そこで、シェフに日本食を教えて、少しでも味が改善されるようにプロジェクトを立ち上げて取り組んだり、長い順番待ちの列を短くするような仕組みを考えたりしていました。
アナウンサーのお仕事では、完璧に原稿を読むことや番組を仕切ることを求められるので、一から考えて、何かを生み出すということが少ないんですよね。そこに物足りなさを感じました。また、アナウンサーはたくさんの人に見られながら、完璧に仕事をこなさなくてはならないので、自分をすり減らすような気がしたんです。きっと長く続けていくのは難しいだろうと思い、目指すことを辞めました。
─そんななかプログラミングを初められたきっかけは何だったのでしょう。
ログバーでインターンをしていたとき、スイス時代に覚えたフランス語で通訳のお仕事をさせていただいていたほか、ソーシャル周りで広報のような業務もさせていただいていたんです。でも、自分にはITやプログラミングの基礎知識がなかったので、できないことや分からないことがどんどん増えてきて、ちょっとしたストレスになっていました。
そんなとき、すぐそばでエンジニアさんがプログラムを書いている様子を見かけることが、ひんぱんにありました。まず、言語でさまざまなデバイスやアプリを動かしているということに驚いたし、ディスプレイの黒い画面に白や緑の文字をブワーッと打ち込んで作業をしている姿が、とても格好良く見えたんです。
思わず近くにいたエンジニアさんに「私、文系ですけどできますか?」と相談したら、「できるよ!」という返事が帰ってきて、すぐにプログラミングスクールの講座に通い始めました。講座は10日間の集中コースだったのですが、HTMLとCSSの勉強から初めて、最後にはPHPのif文を使って診断アプリを作りました。そこからは夢中でプログラミングを勉強しました。
2. 美容師をしている親友の役に立ちたくてサービスを立ち上げ
─なぜ、ヘアサロンモデルの検索サービスを始められたのですか。
中学時代、体が弱くてあまり学校に通えていなかった時期がありました。そんな時に支えてくれた大切な友だちが美容師になったんです。表参道にある有名な美容室でアシスタントをしていて、ヘアカタログ掲載のために髪を切らせてくれるヘアサロンモデルを、自分で探して来る必要がありました。
でも、ヘアサロンのアシスタントは激務です。毎日朝早くから夜遅くまで働いたうえに、一週間で唯一のお休みの日にも街頭に立ってヘアサロンモデルを見つけなければなりません。最近は声をかけても、警戒心が強かったり、スマホをいじっていたりして話すら聞いてくれないことも多くあるそうです。しかも、ようやく見つけたヘアサロンモデルに払うお金も、手取り15万円にも満たないお給料から払わなくてはいけません。
彼女の役に立てないかと、しばらくはアナウンススクールや芸能事務所で一緒だった友だちを紹介していました。でも、どうせプログラミングを勉強しているなら、ネットを使って自分で可愛い子たちを集めて、美容師さんに紹介する仕組みを作ればいいんだと思い、サービス(Coupe)を立ち上げました。
実は就職するつもりだった。でも、自分らしさに気づいて
─学生で起業することに不安はなかったですか。
Coupeを立ち上げたときは大学三年生の秋で、ただ友だちのような美容師さんのお役に立てればいいと、あまり深く考えずにサービスをスタートさせました。ログバーでインターンをした後、とあるメガベンチャー企業から内定をいただいていて、そのまま就職するつもりでいました。
でも、内定者インターンとして働いているときに、気づいたんです。当時担当していた仕事の内容のほとんどを、すでにCoupeで経験していたということに。そして、大きな組織のなかで決められたことをこなすよりも、やっぱり自分が創造したビジョンを形にしていきたいと強く思うようになりました。
当時Coupeでの儲けはゼロだったので、不安でいっぱいでした。がんばってもお金にならなかったらどうしよう?スタッフに給料を払っていけるだろうか?と真剣に悩んでいたとき、起業家の先輩たちが背中を押してくれました。
ログバーの吉田社長は、社会人経験がないことに大きな不安を感じていた私に、「企業の色に染まると、できないことがある。若さと無知を武器に、一気に進むと強い。まずはやってみたほうがいい」とアドバイスをくれました。
また、後でエンジェル投資家になってくださったGoogle本社の方にも、「一度、起業をして失敗したとしても、それをくんでくれる企業は絶対にある。がんばれ!」と励ましていただきました。お陰で、経営者になる覚悟ができました。
3. 友達にバイト代を払って、一緒に作った連絡システム
─サービスを作るうえで、苦労されたことはありますか。
すべての連絡を、Coupeのサイト上で完結できるようにしたことですね。立ち上げから2014年12月に法人化するまで、ずっと私ひとりでエンジニアリングを担当していました。その間、美容師さんやモデルから出てくる要望には、すべてHTMLとWebで調べたPHPを使って何とか応えていました。でも、あるときモデルから「派遣先に、自分のメールアドレスを使って連絡をしたくない」という声が多く出たんです。
実は当時、100名以上いるモデルの名前や写真をすべてHTMLで打ってWebに表示させ、別に問い合わせフォームを用意。そこに、美容師さんが希望のモデルや撮影日時、謝礼の額などを入力できる枠を設け、情報がこちら(運営側)に届くようになっていました。
そして、依頼が来たモデル一人ひとりにLINEやメールなどを使い、連絡。美容師さんが入力してくれた情報を共有し、後はモデル個人と美容師さんとで細かいやり取りをしてもらうというアナログな連絡手段をとっていました。
でも、それだと美容師さんとモデルが互いの連絡先を把握する必要があり、仕事をお断りするときにも、モデルから直接メールをしなければなりませんでした。また、スタッフも仕事の依頼が来るたびに、美容師さんがフォームに入力してくれた情報を抽出し、一人ひとりモデルに知らせていくという手間が発生していました。
もっと勉強するべきだったのですが、当時は投資家巡りと大学で忙しくなってきてしまっていて、自分ひとりだけでシステムを作る時間を捻出できませんでした。悩んだ結果、詳しいエンジニア仲間の友だちに幾らかバイト代を支払って、一緒に作業をしてもらうことにしました。
─学生さんなのに、バイト代をもらうのではなく支払ったのですね。
はい。お金は何とかするからと、無理を言って引き受けてもらいました。でも、まだ資金調達もできていなかったので、きつかったですね。決してたくさんではありませんが、お金をかき集めて、何とか支払いました。
友達がバックエンドのプラグラムを書いてくれて、私はフロントを担当しました。2週間ぐらいずっと部屋にこもって、作業をしていました。私がフロントのコードを打って友達に送り、友達が中を書く。大変だったけど楽しかったですよ。
4. 日程調整メールも審査対象。Coupeならではのモデル選び
─Coupeのサービスの強みは、何でしょうか。
単なるサロンモデルと美容師とのマッチングサービスではなく、厳選したサロンモデルを手配していることです。
きれいにヘアセットとメイクをしてもらい、写真を撮ってもらえるサロンモデルのアルバイトは、今、学生さんなどからとても人気があります。SNSのプロフィールに、サロンモデルと書けることがステイタスになっていたりするほどです。
弊社にもたくさん応募をいただくのですが、まずは書類審査でモデルとしての素材や経験、作品などを見てふるいにかけます。その後、プロフィール写真の撮影日や場所を調整するメールでのやり取りを通じ、人間性や常識のある返事ができるかどうか、マナーが身についているかどうか、などを確認します。
さらにプロフィール写真の撮影当日には、モデルとしての技術はもちろん、時間に正確かどうか、カメラマンなどスタッフと上手にコミュニケーションを取れるかどうかをチェック。自信を持って美容師さんに送り出せるモデルを、採用しています。
一般的に、サロンモデルのなかには当日ドタキャンをしたり、撮影現場から途中でいなくなってしまう子が多くて、美容師さんたちの悩みの種になっているんです。だからCoupeでは、忙しい美容師さんたちが気持ちよく仕事をできるモデルを送りだすことを、大切にしています。
5. “儲ける力”をつけたい。経営者の先輩に、恩返しをしたい
─もうすぐ大学生活も終わりですね。これからエンジニアとして、経営者としてどのように成長を遂げていきたいと思いますか。
まずエンジニアとしては、もっと勉強をして、フロントもサーバー周りも両方こなせるようになりたいです。最近、どうしてもエンジニアリングに割ける時間が少なくなってきてしまっているのが、悔しくて。優秀なインターンが入ってきてくれたので、何とか時間を作って、どんどんその子から知識やスキルを吸収していきたいと思います。
また、経営者としては、マネジメント力とマネタイズをする力を磨いていきたいと考えています。スタッフはインターンを含め6人。彼らのモチベーションを保つにはどうしたらいいか、何が経営者視点を持ってもらうための材料になるのかと、日々模索しています。将来的にはお給料も今よりたくさん払えるようになりたいですし、みんながハッピーに働ける会社を目指したいですね。
実は今、あり難いことにビズリーチさんのオフィスの一角を、無償で間借りさせていただいています。時折CTOの竹内さんがいらして、「ちゃんと儲かっていますか?」と声をかけてくださるんです。これからは、法人向けサービスにも力をいれて、竹内さんをはじめお世話になった方々へ、できるだけ早く恩返しができるようになりたいですね。
─では最後に、竹村さんが普段から実践されている5つのことを教えてください。
6. Coupe代表 竹村さんが実践する5つのこと
1. スタッフが成果を出した時には、一緒に大よろこびする
スタッフが仕事で成果を出した時には、みんなで一緒に大よろこびするように心がけています。特に、バックエンドを担当するエンジニアの仕事では、フロントと比べてどうしても成果が見えにくいものです。
だから、裏側の変化にはできるだけすぐに気づくようにアンテナを張っていますし、結果が出たときには一緒によろこびを分かち合います。褒められた本人はモチベーションがあがりますし、スタッフ同士感謝の気持ちが芽生えてきます。
2. 明日、会社が無くなっても大丈夫なスキルを持つ
週一回、スタッフが交代で先生役を務める勉強会を開催しています。例えばRuby on Rails、資金調達、アンバサダーマーケティングについてなど、Coupeをさまざまなスペシャリストが揃う集団に育てたいと考えています。
スタートアップなので、まだ大企業のような安定性はありません。社員にはいつも緊張感を持ち、組織に頼らず自立自走していけるようなスキルを身につけていってほしいですね。勉強会は好評で、それだけでCoupeに入りたいと言ってくれる方もいるほどです。
3.スタッフに深夜の自宅開発を推奨する
経験上、深夜0時を過ぎたあたりからエンジニアとしてのエンジンがかかることが多く、そんなときにいわゆる神が降りてくる瞬間が何回もありました。そのためスタッフには、もし深夜に開発をがんばった場合、成果を見せてもらえれば、朝の出社は遅くてもOKということにしています。
「夜に早く寝て、朝に早く起きて仕事をする人が偉い」という文化を鵜呑みにはせず、スタッフにはそれぞれ自分らしい働き方でパフォーマンスをあげてほしいと考えています。
4.メンバー全員の得意を把握する
どんなに忙しくても、定期的にスタッフと1対1の会話の時間を設けるようにしています。そして、スタッフが得意とすることやCoupeでやりたいことと、仕事の内容とを可能な限りマッチングさせるように努めています。
やっぱりスタッフにはやる気をもって働いてもらいたいですし、会社を好きでいてもらいたい。時にはそれで頭を悩ませることもありますが、スタッフ一人ひとりについて理解し、適正な役割を果たしてもらうことで、相乗効果が現れてくるんですよね。
5.おしゃれでいることを徹底する
これまで美容系メディアに携わる方々にたくさんお会いしてきて、美容師さんやモデルさんに尊敬されるためには、まずおしゃれであることが大前提だと実感しました。万一「この会社の人はダサい」という印象を与えてしまったら、企業イメージと経営に負うダメージは深刻なものになるでしょう。
忙しいと美は後回しになりがちですが、私自身、美容師さんやモデルさんの横に立っても恥ずかしくない外見でいることをつねに意識しています。スタッフにもおしゃれでいることを徹底し、ネイルとまつ毛エクステを推奨しています。将来的には社員にもインターンにも、美容にかかるお金を福利厚生費として支払いたいと思います。
─ありがとうございました。
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