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“Webマーケティングの大衆化”を目指す「Homeup!」の裏側に迫る「ベトナムは奇跡のような国」オフショアを使いこなす「Homeup!」開発者の見解

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Webマーケティング事業やライフメディア事業を中心に、自社メディアの運営やサービス開発を手がける株式会社ベーシック。2014年にリリースした「Homeup!(ホームアップ)」は、“Webマーケティングの大衆化”をミッションとしたマーケティングオートメーションツールだ。現在は、ベーシックが運営するWebマーケティング総合サイト「ferret(フェレット)」と両輪で、マーケティング初心者を支援している。

「Homeup!」は開発スタート時から、ベトナムにラボを設置してオフショア開発を進め、低コストかつ少人数で大規模開発を行っているという。どのようにしてオフショア開発を使いこなしているのか?開発担当責任者の斎藤 幸士さんにお話を伺った。

斎藤 幸士(さいとう こうじ)氏
Webマーケティング事業部開発責任者 開発2部 部長

情報通信系研究所などでプログラマとして勤務の後、スタートアップの立ち上げに関わる。フリーランスを経て、株式会社ベーシックに入社。現在はWebマーケティング事業部にて、Webマーケティングのノウハウを伝える「ferret」と、そのノウハウを実践するためのツール「Homeup!」の開発責任者として指揮を取っている。

Webマーケティングに必要なツールをオールインワンにした「Homeup!」

――「Homeup!」とは、どのようなツールなのでしょうか?

斎藤氏:「Homeup!」はマーケティングオートメーションツールとして、誰でも簡単にWebサイトを運用できるようにするための、最低限必要なものを備えています。主なターゲットとして想定しているのは、Webの専任担当者がいないような中小企業です。

不特定多数に向けて行うマスマーケティングと異なり、Webマーケティングでは興味・関心の異なる個々の顧客に向けて「適切なコンテンツ」を「適切な方法」でお届けする必要があります。しかし、これを業務として実行するため、十分な知識が求められる上に、リソースも膨大に必要です。マーケティングオートメーションツールは、そういった施策を打つ際のオペレーションの数々を自動化するためのものです。

加えて「Homeup!」では、Webマーケティングの知識・技術が十分でない方でも使いこなせるツールを目指しています。

具体的な機能を挙げると、コンテンツを作成するためのCMSでは、ドラッグ&ドロップでコンテンツ編集ができ、PC&スマホにも対応したデザインを構築できます。Google アナリティクスのようなアクセス解析もあり、こちらは注目すべき項目をピックアップして、誰でも重要度の高い項目を理解しやすいようになっています。さらに、お問い合わせフォームを作ってページにアップできる機能、お問い合わせしてきた顧客の管理、その顧客に対してメール送信ができる機能など、「Homeup!」の中にすべて入っています。

複雑なことをせずとも、「Homeup!」の推奨するとおりに実行していただければ、最大限のコンバージョン(Webサイト訪問者が顧客に転換されること)が生まれますよと、誰でも簡単に使えるということを打ち出しています。

――斎藤さんはどのような経緯で「Homeup!」に関わるようになったのでしょうか?

斎藤氏:以前は自分で会社を経営しており、ベーシックから出資をしてもらっていました。その会社から離れてフリーランスとして働いていた頃、「Homeup!」を立ち上げるということで、代表の秋山から声がかかったのがきっかけです。

「Homeup!」の構想を聞かせてもらい、プロトタイプを見た瞬間に「イケる!」と感じました。そして直感的に、Webマーケティングに強いベーシックと私の開発力を組み合わせたら市場で勝てるのではと思い、「Homeup!」のプロジェクトにジョインしました。

Homeup!に関わるようになった経緯について語る斎藤氏の写真

Webマーケティングのノウハウを学びたい、という思いもジョインした理由の一つだと述べる

――なるほど。実際に開発に携わることになり、どういった印象をお持ちでしたか?

斎藤氏:「Homeup!」を構想どおりの製品に仕上げるには、技術的に難しい開発になりそうだと最初から感じていました。

お問い合わせや資料請求の入力フォームを作成する機能を例にあげると、“簡単に”作成できることが大前提としてあります。しかもその裏側では入力フォームと連動させて顧客管理やメール配信などを行えるようにする必要があるため、要求される技術や工数は相当なものです。

実装しようとしている機能の一つひとつがどれも高度なものでしたので、プロトタイプに手を加えていくやり方では、目指しているクオリティにはまず届かないというのが明白でした。そのため、アーキテクチャの設計を入念に行った上で、一から作る必要があると判断しました。

とはいえ、その時点で「Homeup!」開発を行うのは私1人だけ。この規模の開発を行うなら、私の知っているオフショア会社でベトナムにラボを作り、そこで開発をさせてほしいとお願いしました。

――開発体制はどのようなものでしょうか?

現在は、国内にいる開発スタッフは私と他2名。ベトナムではエンジニア8名とQA(Quality Assurance)1名が「Homeup!」のエンジニアチームです。日本のスタッフは「Homeup!」にフルコミットしているわけではなく、「ferret」の開発もしています。主にメインで開発を行っているのはベトナムのラボです。

指導したベトナムの新卒エンジニアがラボで後輩を指導する好循環が生まれた

――そのときはなぜ、オフショア開発にしようと思われたのでしょうか?

斎藤氏:私がフリーランスだったときに、一度ベトナムのオフショア開発を利用したことがあり、そのときの印象がとても良かったことが要因です。発注したきっかけは、自分で事業をやっていたときの部下が、その時点ではオフショア会社でブリッジSEとして働いており、一度その会社に依頼してみたいという興味からでした。

正直なところ、クオリティについては、最初はあまり期待していなかったというのが本音です。地頭のいい人たちはいても、開発のセンスとかは日本よりも遅れた技術を使っていて、品質は期待できないだろうなというイメージでした。しかしふたを開けてみると、日本のスタートアップで開発をしているエンジニアたちと遜色のないレベルのスキルセットとセンスを持っていて、いい意味で裏切られましたね。

その案件はラボを作る規模ではなかったのですが、いつかラボを作ってみたいなと思うようになりました。ちょうどその時、ベーシックに入って「Homeup!」を立ち上げる事になったので、ラボで開発を行うことを決めました。

マーケティングの知識・技術は常に新しいものが求められるため、「Homeup!」は継続的に改修を加えていく必要があり、一定期間、一定のメンバーを確保するラボ型開発はうってつけでもありました。

オフショア開発をはじめたきっかけについて語る斎藤氏の写真

フリーランス時代に依頼したときの手応えから、ラボ開発をやりたいという考えがあったという

――オフショア開発で苦労された点はどういったものでしょうか?

斎藤氏:一番苦労したのは彼らを育てるということでしょうか。最初の数ヶ月は特に時間をかけていました。

「Homeup!」の開発を始めた時のベトナムのエンジニアは3名でした。「新卒でもいいからなるべく優秀で日本語がしゃべれる人がいい」とオーダーしたら、3名とも新卒だったんですね。

彼らはベトナムで理系トップクラスのハノイ工科大学を出ているため、技術は拙くても、ポテンシャルが優秀なのはわかっていましたし、じっくり育てる価値はありました。とはいえ、ごく最初のうちは、Skypeでの会議でコミュニケーションを取りつつ育てることに、もどかしさを感じてもいました。

開発が始まった当初は、もちろん求める品質のものは上がってきませんでした。ですが、彼らは吸収力が高く、GitHubによるコードレビューを繰り返すことでグングン成長していってくれました。

――オフショア開発のような、外部委託先を育てるということは余計な負担になるのではないでしょうか?

斎藤氏:私たちには、単なる業務を委託する相手というイメージはありませんでした。ラボ開発なので「ベトナムのメンバーもチームとして接しよう」と、最初から私たちのなかで決めていました。このメンバーたちはすごくいいエンジニアに育つというのは、もともと私の部下だった者からも聞いていました。この目論見は見事に当たり、今ではものすごい戦力になっています。

現在のベトナムのエンジニア8名のうち、3名はベーシックの社員でして。彼らはジョブフェアで採用して、今はインターンとして実習していますが、ゆくゆくは日本に来て勤務する予定です。

「Homeup!」開発スタート時に私が育てた新卒エンジニアたちが、今はラボでベーシックの社員となるインターン生を育ててくれている。これはすごくありがたいことで、日本に来る時には大きな戦力になっていることでしょう。

――初めにエンジニアを育てた事が好循環になっているのですね。

斎藤氏:はい。最初にラボに入った3名は、すごく自分たちのサービスとして強い思い入れを持ってくれています。私も年に4回ほど現地に行って指揮をとっているのですが、毎朝みんな集まってミーティングをする時に、みんなが「『Homeup!』行くぞー!」とかけ声を出しているんですよ。本当に自分のこととしてサービス開発に思い入れを持ってくれています。

朝のミーティングについて楽しそうに語る斎藤氏の写真

毎朝のかけ声は自発的にやってくれていると嬉しそうに語る斎藤氏

ベトナムのエンジニアたちは、素直で技術的な向上心が高く、日本のサービスの開発に関わる事に価値を感じてくれています。何か仕事をお願いした際のモチベーションが、非常に高いんですよね。そのひたむきな姿を見ると、一緒に仕事をしていてこちらもうれしくなってきます。彼らにもいいサービスを開発したなと思ってもらいたいですし、「君たちががんばってくれるから、このサービスが成り立っている」と話しています。

現地の文化や価値観を大事にすることでラボのチームビルディングがうまくいく

――「Homeup!」がオフショア開発でうまくいっている要因を、斎藤さんはどのようにお考えですか?

斎藤氏:定期的に現地に行って、直接会うことが大事だと思います。

これは、ベトナムのしかもハノイに限った話かもしれませんが、ひと言でいうと昭和の日本のような雰囲気があるんです。ハノイの若者は一度会社に就職したらあまり退職しない、社員は家族という価値観です。

日本語で言ったら飲みニケーションかもしれないですけど、定期的にチームビルディングの一環で、みんなで飲みに行くという文化が根付いていますね。私もベトナムに行ったときは、チームのみんなとめちゃくちゃ飲みます(笑)。

飲んでる最中も、ベトナムならでの掛け声をみんなで掛けあったりと、熱い空気がありますね。そうしてお酒を飲み交わすことで信頼感が育まれ、お互いを近く感じられるようになるんです。そのため、ベトナムのラボのチームビルディングでは、みんなでお酒を飲んだり食事をする時間をとても大事にしています。

――ハノイの義理人情が厚く、情に深い気質の人たちが集まっているのですね。

斎藤氏:そうですね。例えば同じベトナムでも、ホーチミンではジョブホッピングする人が多いと聞いたことがあります。現地の文化や価値観を把握する事は大事ですね。

また、ベトナム独特の事情もオフショア開発向きだと考えています。

長らく続いたベトナム戦争により多くの犠牲者が出たことで、現在は中高年層の人口が少なくなっており、国民の平均年齢は若い。その中で、国として教育に力を入れていて、理系が強い国です。そして理系の仕事で外貨を稼ごうと思ったら、一番稼げるのがプログラマーであり人気の職業なんですよ。そういう国はあまりなくて。ベトナムでは一番頭のいい若者がプログラマーになっています。

「Homeup!」でディレクターをやっている稲船は、前職で中国のオフショア開発を利用した経験があったそうですが、そのときは大変苦労したと聞いています。私も実際に仕事をしたことがあるのはベトナムだけですが、「Homeup!」開発がうまく回っているのも、ベトナムが“奇跡的な国”だからこそと思っています。

オフショアについて語る斎藤氏の写真

ディレクターの稲船氏は中国で失敗した経験から、最初はオフショアに乗り気ではなかったとのこと

少ないリソースでベトナムのチームが果たしている役割は大きい

――日本人のエンジニアに委託する選択肢もあったかもしれません。パフォーマンスの違いについてはどう思いますか?

斎藤氏:「Homeup!」は開発規模が大きくなることや、継続的な改修があらかじめ想定されていたので、それを見込んで開発体制を作ろうとするとコストが大きくなります。スピードを求めるような小規模な開発だったら、即戦力となる日本人だけのチームもありではないでしょうか。

大規模で長い時間がかかる開発なら、オフショアを使うというのはコストメリットを考えても妥当なところだと考えています。

「Homeup!」が競合として考えているのは、アメリカのマーケティングオートメーションツールです。同社は、社員を数百人抱えていて、そのうち半分くらいがエンジニアという環境で開発をしています。

「Homeup!」はもっと少ない期間・リソースで開発していることを考えると、ベトナムのチームが果たしている役割は相当大きいです。

――この記事を見ているエンジニアの方たちもオフショア開発に携わることもあると思います。どういう場合に、オフショア開発を選択したらいいと思いますか?

斎藤氏:日本側でしっかり技術をわかっているマネージャーがいる場合でしょうね。どこのオフショア会社もラボを作る場合には、ベトナム側にPMを立てず、開発の責任者は日本に、メンバーはベトナムのラボに置いています。そうなるとPMに立つ日本の人間がスキルセットを持っていないといけない。そういう条件が整っている場合には、効果的じゃないかなと。

品質のために新しい技術を取り入れることが、エンジニアのやりがいにもつながる

――「Homeup!」のリリース後に、技術的な大規模な改修を行ったとお聞きました。具体的にはどのようなことを行ったのでしょうか?

斎藤氏:「Homeup!」のCMS部分に使っていたAngular.jsをReact.jsへ移行させました。CMS部分には、ドラッグ&ドロップでテキストや画像を入れられるという機能がありまして。端的にいうと、この機能にはReact.jsの方が向いているということで手を入れていき、2015年10月の時点でようやく終わりつつあります。

次に考えているのが、ユーザー行動解析部分の改修です。「Homeup!」は基本的にRubyを使っていますが、大量のアクセスログを扱う解析部分は、処理が高速なGo言語の方が効率的だと判断して、リプレイスを行っています。

Angular.jsからReact.jsに移行するときは、ベトナムのCMSを担当しているエンジニアに数カ月前から「勉強しておいてね」とオーダーしておいたので、一気に移行できました。そこで今回も、ベトナムの解析周りの開発をしているエンジニアには業務をこなしつつもGo言語の勉強をしてほしいと2~3ヵ月前にオーダーしておきました。

Go言語への移行について語る斎藤氏の写真

Go言語への移行では、主担当に業務中も勉強をしてもらっているという

―― Go言語は比較的新しい言語ですよね。向上心の高いベトナムのエンジニアの方からするとやりがいがありそうですね。

斎藤氏:みんな、それはもう喜んで勉強してくれますよ。「Homeup!」のラボに関しては新しい技術を積極的に取り入れるようにしています。データベースにはMongoDBを、アクセスログに関してはDynamoDBを使ったりとか。AWSの製品もたくさん使っていますし、エンジニアとして「Homeup!」に携わるのはすごく楽しいんじゃないかなと思っています。

エンジニアの立場からも事業を推進するというマインドで仕事をしてほしい

――今後一緒に働いていきたいエンジニア像はありますか?

斎藤氏:ある程度のスキルセットを持っているということはもちろんあるのですが、一番は、我々のビジョンに共感してくれる人です。なおかつ、立場は関係なく事業を推進できる人と一緒に仕事したいです。

エンジニアの立場から、サービスをリリースする時に「こういったデータが必要です。そうでないとリリースに間に合いません」などネガティブな情報をディレクターに伝えられることも必要です。

――ベトナムのエンジニアから意見が出る事はありますか?

斎藤氏:ありますね。例えば、私が設計したものにも、彼らから「ここはこうした方がいいんじゃないか」という意見はよくあります。それができるのも、ラボの中で意見を出している先輩の姿をみているからだと思います。最初に指導したエンジニアたちが、マインドに関することも含めて他のエンジニアたちに伝承しているのではないかなと。

――今後のご自身の課題や抱負はありますか?

斎藤氏:マーケティングオートメーションツールを誰でも簡単に使えるようにするというのは、やはり一番の課題であり、もっとも難しいところです。“簡単に使える”ようにするためには、その裏で何倍も難しい開発をしなければならないですから。

また、我々がミッションとして掲げる「Webマーケティングの大衆化」を実現するためには、ユーザーの方にWebマーケティングの知識を深めていただく必要もあります。そのため、知識をお伝えする「ferret」と、ノウハウを実践するための「Homeup!」、両者を成功させることでミッション達成を目指していきたいです。

レバテック営業担当、加藤の写真

レバテック営業担当「加藤 大貴」から一言!

「Homeup!」開発をがっつり支える、ベトナムのオフショア人材の優秀さ

斎藤さん曰く、“技術的に難しい”ことを実現しようとしている「Homeup!」。それを見事に形にしているベトナムのエンジニアは、やはり優秀なんだなと改めて感じました。優秀さの背景には歴史的事情や教育への取り組みがあるともお話しいただき、大変タメになりました。また、遠く離れたベトナムの地、ハノイを“昭和の日本”と、斎藤氏が表現されていたのがとても印象深かったです。

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