【CTOの職務経歴書】効率化で人を自由にする。昔からそれが僕のモチベーション|KAIZEN platform Co-Founder & CTO 石橋利真氏[前編]

「CTOの職務経歴書」シリーズは、レバレジーズ(現レバテック)のアナリスト兼営業マンがインタビュー取材を通して注目企業のCTOに迫る企画です。

レバテック営業担当、山田の写真

こんにちは。日本で最もCTOと対談する男を目指す、レバテック営業の山田です。
今回は、Growth Hackツール「planBCD」で有名なKAIZEN platform Inc.のCo-Founder & CTOである石橋利真氏に、お話をうかがいました。

KAIZEN platform Inc.とは

「もっと簡単に、Webサービスの改善ができれば、もっとサービスの成長は加速し、ユーザーの生活ももっと便利になる。」という想いから、ウェブサービスのGrowthを加速させるA/Bテストツール「planBCD」を開発し、ロンチ数ヶ月で3億円以上を売上げを達成している注目のスタートアップ。元はてな・GREEの伊藤氏が顧問として参画するなど、技術力の高さも話題。

planbcd
KAIZEN platform Inc.が提供するグロースハックツールplanBCD」。
利用企業にはリクルートグループ、サイバーエージェントなどの
大手企業をはじめGunosyなど注目ベンチャーまでずらりと並ぶ

話題のスタートアップでCTOを務める石橋氏が、どのようなキャリアを経てCTOとなったのか。その道筋には、一貫した価値観が垣間見えました。

記事を前後編に分け、前半ではスタートアップ立ち上げまで、後編では立ち上げから現在までをお届けします。

温かい雰囲気のミーティングルームで石橋氏とレバテック営業の山田が対談している写真
温かい雰囲気のミーティングルームで、お話を伺いました。


コードとの出会いは、タートルグラフィックス

山田:では、学生時代に遡ってお話を伺っていければと思うのですが、石橋さんのコードとの出会いはいつ頃なんですか?

石橋:小学3年生の頃です。父親が観光の仕事だった関係で、小3から小5までアメリカの小学校に通ってたんですけど・・・みんなサンダルか裸足で通ってるような学校で。
だけど、図書館にはパソコンが導入されてて。みんな裸足で泥まみれになって野球した後に、どどどどーって図書館行ってパソコンいじるみたいな。今考えると変な学校ですね(笑)

山田:当時から小学校にパソコンがあるなんて、さすがアメリカですね。

石橋:そこに「タートルグラフィックス」っていう、要はプログラミングを教えるためのツールがありました。アイコンが画面のど真ん中にあって、下にマクロを書けるんですよね。
座標軸、色、ピクセル数を指定して、書け!みたいな。それにメチャクチャのめりこんで。ループ文とか制御コードとかを見つけて。みんなが命令を1個ずつ書いてる中で、自動で円を作り続けるのをあみだしたり、虹色で円がキュルキュル描かれていくのを見せてみんなをビビらしてました(笑)
それが原体験の1つですね。なんか知んないけど褒められてて。「俺、これ好きかも!」って。

石橋:そこからもまた空いて、次は大学2年生くらいで、マッキントッシュが出てきました。昔ってjpgの画像一枚見るのに5分くらいダウンロード待ってたんですよ。こうやって。(腕を組んでじっと待つポーズ)

山田:時代を感じます(笑)

石橋:友人に勧められて28.8Kのモデムでパソコン通信をやりはじめて。そこで、複数の掲示板を効率よく巡回するマクロ機能を見た時「あ、これタートルグラフィックスのループと一緒だー」って気づいたんです。その頃に意識したのかなあ?どうやらSI業界とかSEっていうものがあるらしいとか・・・だから、仕事として意識したタイミング自体は遅いんですよ。

山田:確かに。就職を考える頃に初めて意識する感じですね。

石橋:最終的には、リクルートの制作会社があったんですけれど、採用して頂けまして。そこからシステム開発の世界に入りました。

当時のネット環境について、身振り手振りを交えて説明する石橋氏の写真
当時のネット環境についても、身振り手振りを交えて
非常に分かりやすく説明していただけました。

本&印刷の世界から社会人スタート

山田:最終的に「この会社に決めよう!」と思ったきっかけは何だったのでしょう?

石橋:新しいことをやろうとしていたのが理由の1つです。99年くらいの話なんですが、築地の端の方にある、本社と全然違うオフィスが職場でして。ただ、最初の1年はDTPを統括する部署でした。フィルムを印刷して印刷会社に渡していたのを、データ入稿に切り替えていく時代で、その啓蒙活動を担当していました。

とはいえ、やりたかったのはWeb開発だったので、1年たった頃に「Webやりたいのにやらせてくれないなら、辞めますよ僕!」って言い出しました(笑)
そしたら、前から「やらせれば良いじゃん」って言ってくれてたWeb開発の課長が引っ張ってくれて。そこで道が開けた感はありましたね。

山田:そこからプログラマとしてのキャリアが始まったんですね。

石橋:そう。遅いんですよ。

社会人2年目でエンジニアとしての第一歩。いきなりサイトをまるごと担当。

山田:実質的に、社会人2年目からエンジニアとしてのキャリアスタートですね。

石橋:はい。2年目からですね。でも・・・実は当時、体制が整ってなくて。何百人もいる会社の中でWeb開発やってるのが6人、7人くらいだったのかな?自分の4個上の先輩が年長という若いチーム。そんなメンバーでゼクシィとか住宅情報とか、それぞれのサイトまるっと3人チームとかで全部作ってたんですよ。

山田:え!3人で!

石橋:その当時(リクルートの)本流はまだ本で。Webはまだ「おまけ」的なポジションだったんですね。だけどオペレーターさん達が原稿を入力する仕組みだったり、Webで検索してゼクシィの情報を1個ずつ見れる仕組みを3人で全部作って。Web開発の上から下からまるっと見れて、それをすごく多くの人たちが見に来るっていう・・・多くの人の目に触れるものを作るっていうのを、いきなり2年目で体験させてもらいました。

Webサイト「ゼクシィ.net」の2000年代初期のサイト画像
2000年代初期のゼクシィ.net

その後、規模が大きくなるに従いSIerが入ってくる時代になりました。やっぱり大量展開するような業務だと「言ってくれたら来月から数十人用意する」というほうが強いんですよ。7人じゃもうだめじゃんって。仕事が減る時代に入ったんです。フロントサイドの仕事がなくなったり。

山田:少人数の活躍でWeb強化の地盤が安定し、そうすると結果的にSIerのほうが強くなると・・・難しいですね。

石橋:その代わりに社内制作システムの開発が増えました。当時のホットペッパーとかスーモとか、営業の方がヒアリングしてきた内容の修正を100人規模のオペレーターが入力していたんですね。そこに「ここは業務改善できますよ」と入り込む。すると、それをキッカケにまた仕事がどわーって増えて。

山田:ユーザとの関わりに面白みを感じていたところに、次は社内の業務改善へ向かうことになったんですね。とはいえ、ゼロスタートからどうやって改善点を見つけ出すのですか?

石橋:とりあえず残業で大変な思いをしているオペレーターのお姉さんたちと仲良くなって。「なにで困ってます?」「ここがめんどくさい」「じゃあちょっと僕、それシステム化します!」という地道な手法です。この、近しい人たちが残業してるのを改善するっていう仕事を結構長い間やってて。これはこれで、やりがいを凄く感じてました。

Webサイト「ホットペッパー」の2000年代中頃のサイト画像
2000年代中頃のホットペッパー(WEB版)。

山田:なるほど、当事者とのコミュニケーションから入るんですね。

石橋:はい。ネットやシステムのチカラで、人の負担を減らす。キーワードはいわゆる「効率化」なんですけれども。この「効率化」を僕はずっと支えてて、それがモチベーションになっています。

人の負担をぐっと減らして、そのぶん、違うところに思考力を使うというのが好きなんです。パソコンって、余計な作業を自動化・効率化するものだと僕は捉えてるので。そういうふうにツールを用意して渡すことで、みんなが自由になっていくのが凄く気持ちいいんですよね。

山田:効率化で人を自由にする、ですか。


石橋:はい。たとえばGoogleも、みんなが検索するものをいかに効率良く一箇所に集めるかみたいなことやってるし、RubyだったりRuby on Railsなどのオープンソースプロジェクトも、無償なのにみんなで寄ってたかって参加していくじゃないですか。で、凄い効率のいいものができ上がって、使うと、結局世界のみんなの負担が減るわけです。そういうのが気持ちいい。

山田:なるほど。石橋さんのモチベーションはその辺にあるのですね。

石橋:それでも、結局は2007年くらいにはWeb開発系の業務を全部SIerに持って行かれちゃうんです。すると「だったら、こっちはWebでもっと新しいことやれるか探って実証してみよう!」って話がでました。そこに「それ俺やるー!」って手を上げて(笑)

山田:おお、再びチャンスが。

事業のWebに対する風向きを変えた~メディアテクノロジーラボ時代~

Media Technology Labs  MTL    メディアテクノロジーラボ
リクルートの実証研究機関、メディアテクノロジーラボ

山田:メディアテクノロジーラボの時代は、どんなお仕事を?

石橋:いろいろありましたが・・・WebAPIのリクルートWebサービス(http://webservice.recruit.co.jp)を作りました。ホットペッパー、エイビーロード、ケイコとマナブとかのデータが入ってます。他にもiPhoneのホットペッパーアプリを作った時は、iPhoneが出てきた当時に「リクルートが持つ情報をiPhoneで提供すると、こういう新たなユーザー体験につながりますよ」ってのを事業側にプレゼンすると、事業がこっち振り向いてくれたっていう体験は気持ちよかったですね。

Webサイト「リクルートWEBサービス」の画像
リクルートが提供する各種WEBメディアのデータベースが
活用できる「リクルートWEBサービス

あと先輩と二人で、半日で作って即リリースした「調整さん(http://chouseisan.com/)」ってのがありまして。飲み会や打合せのスケジュール調整ツールなのですが、予想外に好評で驚きました。継続的に数十万UUの利用があって、事業計画ナシで進めたのが悔やまれます。本音を言えば、個人でやれば良かった、なんて(笑)

Webサイト「調整さん」の画像
半日で作ったスケジュール調整サービス「調整さん」。

山田:どんどんチームの価値が認められていったんですね。

石橋:そうですね。ただ個人としては、ビジネスを現場で動かすメンバーに関わることが多くなるにつれて、技術だけじゃなくて「ビジネスを回す」って部分にも興味がでてきたんです。 APIを作る、アプリを作る。じゃあそれは、ビジネスにはどれくらい影響を与えているんだろうって。

山田:視野を一気に広くする感じですか?

石橋:それまでは「Webに触れて新しいことやるの楽しい。効率化していくの楽しい」って。そう思ってきたし、そこは今も変わらないんですけど・・・。でも、たぶん当時はまだ「ビジネスを回す」という事を、深く理解していなかったと思います。

山田:「ビジネスを回す」というと・・・

石橋:たとえば、リクルート全体がやってることを理解しているつもりでも、一番上がどういう意思決定をして、その後どういうプロセスを経て自分たちに仕事が降りてきてるのか、っていうのが見えてなかった。

山田:経営陣の意思決定レベルで理解したいと。

石橋:でも、リクルートみたいな大企業でビジネスを見通すポジションに行くより、等身大サイズのビジネスが成長する過程を体験したいと思い、この時、初めて転職を意識しました。

「自分の手でビジネスを知る場所」を探しはじめた~スタートアップ黎明期~

山田:自分でビジネスをやる側に、意識が向きはじめたんですね。

石橋:もちろんリクルートにいながらWeb視点でビジネスを見ようって考えもあったんです。でもより自分にとって見通しの良い環境で「ビジネスって何だろう?」「経済って何だろう?」っていうのを知りたかった。

山田:そこでベンチャーに。

石橋:そうですね。エンジニア目線でビジネスを見たくて、夜と土日を使って色んなスタートアップに顔出して手伝ってた時期が1年半か2年ぐらいありました。

山田:すぐにKAIZEN platform Inc.さんを立ち上げたわけではないのですね。

石橋:はい。普段の仕事があって、でも独立したいよねっていう経営肌の奴と、エンジニア、デザイナーとかが、オフタイムになると銀座のどこかのカフェにみんな集まって「よし仕事するぞっ!」てミーティングをはじめる、みたいな。

山田:起業の前段階のような感じを受けます。

石橋:まさにスタートアップの黎明期みたいなことをやってました。そんな時に、須藤(KAIZEN platform Inc. CEO)と再会したんです。

KAIZEN platform Inc. CEO 須藤憲司氏の写真
KAIZEN platform Inc. CEO 須藤憲司氏

山田:再会?

石橋:実は、彼もメディアテクノロジーラボに一時期いたんです。彼はビジネス肌の人間で、自分の事業計画を持ってラボに入ってきました。ラボではアイディア持ってる人の所にエンジニアが一緒になって、アイディアを具現化して出すってことをやってたんですが、それで少し接点があって。

山田:ラボつながりなんですね。

石橋:須藤が面白かったのは、ものすごくデキる奴なんですけども・・・おかしいと思う事があったら、会社に対してもちゃんと反抗するという(笑)そういう時に会うと「今日の会議でおかしい事があって、バシッと言ってやりましたよ!マジほんと聞いてくださいよ石橋さん!」って話し始めるわけです。

山田:アツイ人ですね。

石橋:ある事業で、SIerからあがってきた結構な金額の見積りがそのまま経営会議を通過しそうな時に、須藤が「ちょっと待って下さい。これ高すぎですよ。なんでこの見積もりを高いって言える人が経営会議に居ないんですか。」ってなったらしくて。

山田:おお・・・かっこいい。

石橋:で、僕に仕様見せてきて、「これバシさん(石橋さん)いくらだったら作れる?」ってなるわけです(笑) 僕が「2週間で、たぶんゼロを1つ少なくしてもいけるよ」って答えたら。「でしょー!!!じゃあバシさん作ってよ」という流れで、実際に作ったことがあるんですよ。

山田:へえー!そんなことがあったんですね。

石橋:プロトタイプを僕ともう1、2人位で2週間で作って、須藤がそれを事業に持って行って「ほら、言ったとおりコストかけ過ぎなくても良いもの作れますよ!」みたいな(笑)

山田:凄いコンビですね。

石橋:そんな須藤から、スタートアップを探していた時期の僕に電話がきたんです。「石橋さん、面白いことやりませんか?」って。

山田:須藤さんと一緒に事業をすると決めた一番の理由って何なんですか?

石橋:事業への共感とかたくさんあるんですが(笑)一番は、自分自身が誰とやりたいかを考えたときに、彼とやりたいと思えた事です。最初は「人を使い倒してのし上がる事を是とする」タイプの人間なんじゃないかと疑念を持っていたんですが(笑)

彼のすごいところはゴールに向かって今やらないと行けない事を逆算できて、実行して気づくとゴールを超えているところ。ゴールを超えられる理由は2つあって、1つはゴールって正しいんだっけ?このやり方って正しいんだっけ?って常に問いかけている、つまりKAIZENしてるんですね。

もう1つはそれを自分だけでやろうとせず、皆に助けてもらっている、そして運が強い(笑)。でも彼はそれ以上に人に恩を返し続けるのが筋と考えていて、そのスタンスに共感しました。すごいですよ、彼。

後編を読む【CTOの職務経歴書】無駄を減らして、その分クリエイティブな事に時間を使った世界がどうなるかを見たい|KAIZEN platform Co-Founder & CTO 石橋利真氏[後編]

レバテック営業担当、山田の写真

社会人一年目から「テクノロジーで人の負担を減らす」という一貫した信念で実績を積み上げていく姿が、いまのKAIZEN platform Inc.さんのビジョンへとつながっている印象を強くうけました。

自分の手でビジネスを見通すスタートアップを探しはじめた石橋氏。この須藤氏からの電話をきっかけにKAIZEN platform Inc.の立ち上げへと進みます。次回は立ち上げ期から今後の展望までをお届けします。

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