【CTOの職務経歴書】できない理由探しはしない。行動し、結果を出すことにこだわり続けたからこそ、“今”がある。|三和システム株式会社 取締役 CTO 阿部順一氏【前編】

今回の「CTOの職務経歴書」に登場するのは、三和システム株式会社取締役の阿部順一氏。国内で高い導入実績を誇るゴルフ場システム「NT-GOLF」シリーズをはじめ、医療予約ポータルサイト「MRSO(マーソ)」などを手掛ける企業のCTOだ。

新卒で入社したITベンチャー企業の倒産、独立など、さまざまな経験とキャリアを積んできた阿部氏。サッカーと数学に没頭していた少年時代から、三和システムに入社するまでの歩みを語ってもらった。

三和システム株式会社とは
国内で高いシェアを誇る、ゴルフ場の基幹パッケージ・ソフトウェア「NT-GOLF」シリーズを展開。人間ドック・健康診断の予約ポータルサイト「MRSO(マーソ)」を提供する医療事業にも力を入れている。2015年2月、医療事業分野を担う企業として「マーソ株式会社」を設立した。
http://www.sanwasystem.com/
http://www.mrso.co.jp/

サッカーを通じ、「行動する」大切さを学んだ

――まずは阿部さんの中学・高校時代の思い出、熱中されていたことなどを教えてください。

阿部氏:サッカー漬けの毎日でしたね。香川県の田舎の生まれなんですが、小学校からサッカー部に所属し、毎日暗くなるまで練習していました。

とくに練習がハードだったのが、高校時代。当時、所属していたサッカー部に監督がいなくて、チームの副キャプテンが仕切っていたんですが、そいつが本当に厳しいヤツだったんです。
彼とは3年間同じクラスで仲がよく、勉強は私がよく教えていたのですが、サッカーとなるととにかくコワい存在。試合でも練習でも一切の妥協がなく、叱咤激励、いや叱咤叱咤の連続で、私の代も下の代も部員が半分以上辞めてしまうほどでした。

でも、おかげで残ったメンバーはしっかりと成長し、最後の大会では結果を残せました。フィジカルもメンタルもずいぶん鍛えられましたね。
その彼がよく口にしていた言葉が、「できる、できないはどうでもいいから、とにかくやれ」。
この言葉が、私のその後の人生を大きく変えたと実感しています。

今、彼はプロを目指す中高生が集まるJFAアカデミーでコーチをしているんですよ。サッカーに対して常に本気だったので、メンバーに求めるレベルも非常に高かったんです。
当時は、彼の要求に対して「そんなのできないよ」とよく思っていましたが、そう口にしてしまったらそこで終わりなんですよね。「できない」と思っている限り、実現する方法なんて思いつくはずがないのですから。

だから「できない理由探しはやめて、どうしたらできるかを考える」。
これは今も、自分が仕事に向かう際の信条になっています。

学生時代の思い出を笑顔で話す阿部氏の写真

阿部氏の人生を変えたサッカー部の副キャプテンとは、進む道は変わっても、今も交流があり、いい刺激を与え合う仲間だという。


――「できない理由探しはしない」。いい言葉ですね。さて、高校を卒業後、大学では工学部経営システム工学科を専攻されたと伺っています。経営システム工学科を選んだ理由は何だったんでしょうか?

阿部氏:勉強では、小さいころから数学が大好きだったんです。高校時代は「数学オリンピックに出たい」という思いもあって、難関大学の入試の過去問ばかりやっていました。

けれど、数学以外の科目は全く興味がなく、授業もさぼっていたぐらい。当然、行ける大学といえば理系のみ。いわば消去法ですね(笑)。東京に行きたいと思っていたので、東工大(東京工業大学)を志望したんです。そして、経営システム工学科を専攻したのも、実は消去法的な選択でした。

東工大は1年は学科所属がなくて、第1~7類までのコースに分かれているんです。私は東工大を選んだとき、ロボコン(IDCロボットコンテスト大学国際交流大会)に参加したいと思っていました。

ロボコンは東工大とMIT(マサチューセッツ工科大学)の共催でスタートしたもので、世界中の大学生が集まって、生活をともにしながらロボットを作るという一大イベントなんですね。
よって、1年で機械系の4類を選択。2年でその類内の制御システム工学科に進み、ロボットを作るはずでした。

しかし、田舎から東京に出てきて、すっかり勉強以外のことが面白くなってしまったんです。サッカーをするかたわらバイトを始め、学校にはあまり行かず、当時はまっていたインディーズバンドのライブを観るために、ライブハウスに入り浸っていました。

典型的なダメ学生ですね(笑)。結局、人気のある制御システム工学科はあきらめることになり、経営システム工学科に進むことになったんです。


――なるほど(笑)。実際にはどのようなことを学ばれたんですか?

阿部氏:経営を行う上で必要になるヒト、モノ、カネの基礎を学びました。ここでの勉強はその後のキャリア形成にも良い影響を与えてくれたので、結果的にここへ進んで正解でした。
4年で進んだゼミも、自由に研究内容や卒論のテーマを決められたので、当時興味のあったコーポレートファイナンスの研究にじっくり取り組むことができました。

勉強でも仕事でも、選んだ先で内容に価値を見いだせるかどうかは、そこで「何をするか」にかかっていると思います。機械を作るのも魅力的でしたが、現在のビジネスのベースとなる部分を大学で勉強できたのはよかったと思います。


――就職活動を行う際の軸はどこに置いていましたか?

阿部氏:実を言うと、大学で経営について学ぶうちに、就職への興味が俄然薄れてしまったんです。“経営する”視点で研究していたせいか、“働く”側になるイメージがまったくわかなくなって……。

「どこでもいいかな」と思って、大学の推薦で某大手メーカーの面接を受けました。ところが、面接が進むうちに面接官と意見が合わなくなって、最終的に推薦の話はなくなりました。それで、なんとなくITベンチャー企業へ。ITに興味があったわけではなく、なりゆきまかせでした。


――それまでプログラミングの勉強をしたり、実際にコードを書いたりといった経験は?

阿部氏:独学で少しやっていました。20歳の頃にWindows95が出て、HPや掲示板、チャットなんかが流行り始めたんです。私は当時インディーズバンドにはまっていたので、仲間とライブハウスで会うだけでなく、ネット上で広く交流したいなと思ってファンサイトを作りました。

でも、その時はBBSなどを通じて「交流する」のが目的で、プログラミング自体に興味があったわけではありません。あくまでプログラミングというのは、目的を果たすための手段でしかなく、IT業界で仕事をするなんて全く思ってもいませんでした。

新卒で入ったITベンチャー企業の倒産で、シビアな現実を知る

――特に志は持たずにIT業界に入ったとのことですが、入社した会社ではどのような仕事を担当されていたのでしょうか?

阿部氏:創業して間もない、社員15名ぐらいの規模の会社だったのですが、システムの開発から導入、保守まで幅広く担当していました。

メールを使ったコミュニケーションツールのパッケージを製作していたのですが、肝心の商品が全く売れなくて。資金はたちまち枯渇し、社員はどんどん辞めていきました。挙句の果てに社長と一緒に資金繰りに走り回っていた専務までも消え、最後に残ったのは社長と経理と私の3人だけでしたね。


――途中で辞めようとは思わなかったのでしょうか?

阿部氏:会社が潰れていく過程を見られる機会なんて、めったにないじゃないですか(笑)。せっかくだから最後まで見届けようと思ったんです。

実際、社会ってシビアだなあと痛感しましたね。いくらいい製品を作ったとしても、利益が上がらない限り会社は潰れてしまう。景気のいい時はどんどん人が集まるけれど、悪くなるとアッという間にいなくなってしまう。こうした現実を、20代前半に見ることができたのは貴重でしたね。


――その後は、どのように転職活動を行ったんでしょうか?

阿部氏:倒産した会社でお世話になっていた上司の紹介で、800人ぐらいの中堅SIerに転職しました。自ら選んだ会社ではありませんでしたが、元上司に恩返しをする意味でも、何かしらの成果を出すまではがんばろうと思いました。

ちょうどMicrosoft.NETが出始めたころで、.NETを使った業務アプリケーションやパッケージをお客様に提案したり、常駐先の開発チームを拡大したりと、結果を出すことに専念しましたね。

約1年半で確実に利益を上げ、手掛けていたプロジェクトも一段落ついた頃、次のステップに行く決意をしました。


――ここで転職ではなく独立の道を選択されます。理由はなんだったんでしょうか?

阿部氏:単純に仕事の自由度を広げたいと思ったのと、収入を上げたいという気持ちもありました。でも、一番大きかったのは仕事や顧客に対して、自分で責任を持てる立場になりたいと考えたことでしょうか。

会社の一社員という立場では、顧客の評価に関係なく、会社から給料をもらうわけじゃないですか。いくらがんばっても、あるいは逆にサボっても、得られる対価はあまり変わらない。そうすると、どうしても責任感、さらには成長意欲までも薄れてしまう気がしていたんです。

独立すれば、仕事の成果とそれに対する評価、さらに対価として得られる収入が直結し、責任の所在もクリアになる。そういう立場で仕事をし、もっと自分を高めていきたいと思いました。


――実際に独立して働き方は変わりましたか?

阿部氏:顧客との関わり方がガラリと変わりましたね。サラリーマンの時以上に、自分の成果に対する評価をしっかり意識して、仕事に取り組むようになりました。

その結果、ある仕事の成果が認められ、電通グループの電通国際情報サービスの技術部隊を率いるポジションに就くことになりました。
大手金融系のフレームワークを構築したり、PMOのチームと連携して大規模なプロジェクトをサポートしたりと、毎日充実していましたね。

さらに言えば、会社が手掛けている全プロジェクトを技術面から見ることができる立場で、B to Bのビジネスからコンシューマー向けの案件まで携わることができたのは、貴重な経験でした。

また、エンジニアの採用と教育も任されていました。何百人というエンジニアに会うことで、“人を見る目”が養われましたね。

「社長と目指す方向が同じ」。これが転職の決め手に

 

ノートPCを見る阿部氏の写真

つねに高みをめざし、働く場所やスタイルを変えてきた阿部氏。そんな生き方の価値観が現社長と通じ合い、転職の決め手となった。

――いよいよ三和システムに転職なさるわけですが、それまでのポジションを捨て、再び組織に属する道を選んだのはなぜだったんでしょうか?

阿部氏:確かに、電通では新しい技術もどんどん扱え、いろんなプロジェクトを見ることができて、自分の好きなようにチームを作れる。本当に恵まれたポジションでした。でも、だんだん居心地が良すぎることを危惧し始めたんです。次の成長のためには、あえて「環境を変えるべきではないか」と思ったんですね。

また、独立してわかったことがありました。
「独立して事業を始める」のと、「会社の社長になる」というのは別モノということです。そして、自分は「社長になりたい」わけではないことにも気づいたのです。

経営者ではなく、これまでのエンジニアとしてのキャリアを活かしながら、もっと事業にコミットして働きたいと思いました。

当時は技術やプロジェクト管理の研究開発とサポートが中心で、間接的な立場でしかないので、プロジェクトには関われても事業そのものに携わることはできなかったんです。そこに物足りなさも実は感じていました。そんなときに、三和システムとの出会いがあったんです。


――何が入社の決め手になったのでしょうか?

阿部氏:ひとつはユーザーに直結するビジネスを手掛けていることですね。さらに、代表(同社代表取締役社長 西野恒五郎氏)と話をしたとき、彼の事業の目標だけでなく生き方にまで共感できたのが大きかったですね。

“会社=社長”、つまり会社は経営者で決まるというのが私の考えです。
社長が今までどう生きてきて、会社をどう成長させていこうとしているのか。将来的には何を成し遂げていきたいのか。そんな話をあれこれ聞くうちに、「この人と自分は最終ゴールで一緒にいるんだろうな」と思えたんです。

彼は営業サイドの人間なので、私と考え方はまったく違う。けれど、目指す方向が同じ。そう確信できたのが入社する契機となりました。

後編を読むCTOとしての成長は“目的”ではなく、会社を発展させる“手段”に過ぎない|三和システム株式会社 取締役 CTO 阿部順一氏【後編】

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