【CTOの職務経歴書】原動力は“ゼロをイチ”にすること。その繰り返しがアカウントアグリゲーションの原型を生んだ。|株式会社マネーフォワード 取締役 CTO 浅野千尋氏【前編】

「CTOの職務経歴書」シリーズは、レバレジーズ(現レバテック)のアナリスト兼営業マンがインタビュー取材を通して注目企業のCTOに迫る企画です。

レバテック営業担当、林の写真

こんにちは。レバテック営業の林です! 今回の「CTOの職務経歴書」は、個人向け家計簿サービス「マネーフォワード」や、小規模事業者向けの会計ソフト「MFクラウド会計」などをリリースしている株式会社マネーフォワードの創業メンバーで、CTOを務めていらっしゃる浅野千尋氏にお話を伺いました。

「マネーフォワード」の特長であるアカウントアグリゲーションの開発を一手に引き受けていた浅野氏。少年時代の思い出からマネーフォワード創業に至るまでの歩みを語っていただきました。

マネーフォワードとは? 銀行や証券会社、クレジットカード会社のウェブサイトのアカウント情報を登録することで、各口座を一元的に管理できるアカウントアグリゲーションをベースにした家計簿・資産管理ツールやクラウド型会計ソフトなどを運営。 http://moneyforward.com/

“ゼロイチ”が好きな少年時代

―まずは、浅野さんの中学や高校の頃のお話を伺いたいのですが、当時熱中されていたことは何ですか?

浅野氏:パソコン自体に興味がありまして、パソコンを自作してインターネットにつなぐのがとても楽しかったんです。テレホーダイがあった時代で、23時になった瞬間につなげようとするんですが、なかなかつながらなくてイライラするとか(笑)。

当時のインターネットは全然情報が整理されていなくて、とてもカオスな世界だったんですね。そこに入り込み、迷い込む感覚がすごく好きでした。

―プログラミングをされるようになったのは、いつごろからですか?

浅野氏:最初にプログラミングをしたのは小学生のころです。家にあったパソコンのBasicでプログラミングして、丸とか四角とかを表示させて移動させるといった簡単なゲームを自分で作って遊んでいました。

Basicの本を見ながら勝手に自分でやって、どうしてもうまくいかないときには、電気関係のエンジニアだった父に聞いて手伝ってもらったこともあります。ただ、ネットに夢中になった中高時代には、プログラミングから興味が離れてしまいましたけど。

―人工知能にも興味を持たれていたとのことですが?

浅野氏:それは高校のときですね。昔から工作やプログラミングなど、世の中にないものを生み出す、いわゆる“ゼロイチ”が好きだったんですよ。その流れで人工知能を知り、自分で考えて動くものを作れると知ったとき、これはめちゃくちゃ面白いと思いました。

エンジニアとしての原点となった頃について、懐かしそうに語る浅野氏の写真
エンジニアとしての原点になった時代について、懐かしそうに語る浅野氏。

学生をしながら起業を経験

―いよいよ浅野さんの現在のお仕事に通じる部分に入っていきますが、金融に関して興味を持ったのはいつごろからですか?

浅野氏:株式市場がすごく盛り上がった2004年から2005年あたりに、興味を持って調べてみたんです。そのとき、株式市場は人工知能を利用する場としてとても適切なのではないかと思ったんですよ。安いときに買って高いときに売るという株式の基本をコンピュータにやらせたら絶対に面白いだろうと思ったのが、最初に興味を持ったきっかけです。

その後、大学でどの研究室を選ぶかというときに、村岡研究室がカブロボコンテストをやっていることを知りました。投資のアルゴリズムを募集してサーバ上で競わせるというそのプロジェクトは、まさに自分の興味のピンポイントだと。これはもう、村岡研究室に入るしかないと思い、入ったのちにはカブロボに関わらせてほしいと直訴しました。

―そこで再び、プログラミングに携わられたのですね。

浅野氏:そうです。コンテストの運営者側として、アルゴリズムを作るためのプラットフォームを作っていました。このプロジェクトが、最初に起業したトレードサイエンス社の前身です。

―学生をしながらトレードサイエンス社の起業を決断したのはなぜですか?

浅野氏:実は、高校のころから起業したいと思っていたんです。大企業ですでにでき上がったモデルを運用していくより、世の中にないものを新たに作りだす“ゼロイチ”をやりたいと思って。ところが、ただの学生が何のアイディアも無くすぐに起業できるわけはありません。ずっとチャンスを待っていた中でトレードサイエンスを立ち上げるという話があったので、まさにこれは千載一遇のチャンスだと。

―不安はなかったですか?

浅野氏:全然、何もなかったですね。ずっとやりたいと思っていた夢だったので、あまりその後の事は深く考えずとりあえずやってみようと思いました。もし会社が潰れたりしたらそれはそのときに考えようと(笑)

高校時代から起業願望があったことを話す浅野氏の写真
高校時代から起業願望があり、起業するときも恐れや不安を感じなかったという。

ベンチャーを回していくことが楽しかった

―立ち上げ当初の陣容は?

浅野氏:最初は5人で立ち上げました。3人はずっとビジネスをやってきた経験豊かな方々で、あとの2人が僕と研究室の先輩。僕たち2人でシステムを作っていました。立ち上げから3か月ぐらいはずっとシステムを作っていたんですけれど、休める日が月に1日だけ。それも、疲れて倒れて動けない日という感じです(笑)。

あとは朝から終電までやっていて、授業があるときだけ大学に行き、帰ってきたらまた作るという日々でした。すごく大変だったのですが、それでもなんか楽しかったですね。ベンチャーを自分たちで立ち上げて、回していくということ自体が、丸ごと楽しかったですね。

―トレードサイエンス社時代で印象深い出来事とは?

浅野氏:トレードサイエンスは、集めたアルゴリズムのトップを実際のファンドにして、その信託報酬をアルゴリズムの作者に返すというのをグルグル回していくようなビジネスモデルを掲げていました。

ですので、最終的にファンドにしないことにはビジネスモデルが完成しないのですが、そこのハードルがすごく高くて何年もかかりました。たくさんの壁を乗り越えて、実際のファンドをローンチできたときの達成感はとても大きかったですね。

ただ、同時にすごく悔しい気持ちもありました。そもそもカブロボファンドは公募のファンドである以上、説明責任という大きな制約があり、やりたかったけれどやれなかったことが多くありました。
本質的には、もっとできることがあったのではないかという気持ちになったことを覚えています。

学生時代について語る浅野氏の写真
学生時代には、体が壊れるまでビジネスと勉学に没頭したと明かす。

アカウントアグリゲーションシステムの原型を趣味で作成

―その次に、インテリジェントシープ社を設立されていますね。

浅野氏:その理由は、さきほどの課題につながります。1日に1回しか取引ができないとか、空売りができないなどのカブロボ特有の制約を取り払って、もっとロジックとして良いもの、儲かるものを研究したいと思っていたんです。

それで、平日の夜や土日などを利用して、自宅で個人の“趣味”として研究していたのですが、そっちのほうに時間を取りたくなって独立したというのが経緯です。

―ということは、アカウントアグリゲーションにつながる考え方は、浅野さんの“趣味”の時代から携われていたということでしょうか。

浅野氏:そうですね。リアルタイムで注文する際に、データを見ていかに早く注文するかというのが課題になっていたため、証券会社10数社に口座を開設して、それらにアクセスして自動発注するというプログラムを作って。どれくらいの速さで発注が通るかをすべて計測していました。

―当時は、アカウントアグリゲーションという言葉を知っていたんですか。

浅野氏:言葉自体は知っていたんですけれど、それをやっているという意識はなかったですね。アカウントアグリゲーションは複数の口座のデータをひとつに収集することが目的ですが、僕がやっていた10数個の口座に一気にログインして発注してというのは、どれが一番速いかを調査するためにやっていた仕組みだったので、目的が違っていたんです。

ですが、実際にやっていることはどちらもほぼ同じ。目的は違っても、プロセスは同じでした。
(つづく)

後編を読む【CTOの職務経歴書】経営に技術的なビジョンを持ち込むCTO。すべきことは、フェーズによって変わっていく。|株式会社マネーフォワード 取締役 CTO 浅野千尋氏【後編】

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