「CTOの職務経歴書」は、レバレジーズ(現レバテック)のアナリスト兼営業が、インタビュー取材を通して注目企業CTOの視野に迫る連続企画です。
こんにちは。レバテック営業の山田です。前回に引き続き、株式会社トライフォート代表取締役 CO-Founder/CTO・小俣泰明氏のインタビューをお届けします。大手企業を退職後、ベンチャー数社を経験した小俣氏。「転職回数が多いことは決して不利ではない」と語る転職経験の背景とキャリアの考え方を伺いました。
--NTTコミュニケーションズに入社し「大手企業に就職する」という目標を果たされたわけですが・・・そこからベンチャーに転職したというのは、どこかやりにくさがあったのでしょうか。
僕の性格上はすごくやりにくかったですね。
ただ、人によっては大手の方が合ってる人もいるので一概にどっちがいいとは言えないのですが。
ただ、僕は自分で仕事をつくってビジネスを興したいっていう人間だったので。決められた仕事をこなすっていうのはあんまり向いてないなって。
僕自身は「自分じゃなきゃできないよね」っていう仕事ができるかどうかって所にモチベーションを感じる人間なので。
--エンジニアとして、今後そういう思考は必要になってくると。
エンジニアというか全ての職業において「自分が何をしたいか」を考えられないとダメだと思います。
「プログラマは給料上がるからオススメだよ」って話を聞いてやってるのでは、好きでやってるとは言えないですよね。
もちろん、今ある事業を引き継いでいく役割をもった人も必要だと思います。
だから、全員が全員とは言いませんが。それでも「新しいことを考える視点」はあったほうがいいと思いますね。
--一般的に、いわゆる大手志向の人はベンチャーに合わないと言われがちですが・・・
実際に大手で働いて肌で感じたんですが、大手企業に入ってる人たちってかなり優秀で適応能力が高い。
そういう人たちって、ベンチャーにいくと絶対成功すると思うんです。
だからもし、大手企業で自分がこの会社で活躍できてるっていう感覚を持てていないのであれば、恐れなくベンチャーに転職するとか、独立したほうがいいです。
--小俣さんは自分がやりたいことをできないと嫌、という気持ちで転職されたのですか?
いや、そうじゃなくて。
自分が活躍して、その対価として給料がもらえてるって感覚が持てないと納得いかないっていう感じですね
当然、お金をもらってる以上はやりたくないことだっていっぱいやらなきゃいけない。
重要なのは、
「自分がその仕事をやって、もらってる給料分だけ働けてるのかな?」って考えたとき納得できるかどうかですね。
--そこで納得がいかず、ベンチャーへ移られたんですね。
そうですね。
NCom(注1)の先輩があるベンチャーへ移るって話があって。その先輩から誘われたんです。
ただ、その企業は長く続きませんでした。
--当時は大変だったのでは・・・
まさに激動でしたね。
一度は一世風靡した会社だったんですが・・・J-Magic(注2)っていう「顔チェキ」(注3)を開発した会社で。合コンでもはやってたんですけどね(笑)
その頃はまだガラケーが主流で、なかなか画像検索技術が一般的なものではなくって。かなり時期尚早だったのかもしれません。
でも大きな出資を受けながら事業を回していた中、出資側からの強い要望で画像検索技術を使ったサービスをやりこむしかなかった。で、最終的に買収される形となりました。
--正直、転職を後悔したのではないですか?
当時は後悔しましたね。
「NComに残っとけばよかった」って。
待遇面ではステップアップしたんですけど・・・でもやっぱり難しかった。
上向きでイケイケ状態ではない会社でのサービス改善ってとても難しくて。新しいアイデアがいくらあっても出資側の要望を優先するとなると、なかなか話が通らないんですよ。
だからあんまり大きな挑戦はできなくて。ドラスティックに戦略を変えられないので、社長もすごく大変だったと思います。
苦しかった時期の事も、明るく話す小俣氏。
背後のディスプレイ奥に写っているのは CO-Founder/CEOの大竹 慎太郎氏。
--イメージされていたステップアップとは違ったんですね。
いわゆる「やりがい」っていうのは確かにあった。
でも、「ベンチャーで働くイコール何でも挑戦できる」じゃないんだなって感じましたね。
出資会社から縛りが入ったりすると、ものすごく制約があって。もうどうすることもできないですよね。かなりもどかしくて。相当キツかったです。
--でも、次の転職もベンチャーでしたよね。
その後は面白法人カヤックに移ったんだけど、そこだけはヘッドハンティングでなく自分で受けにいきました。行きたかったので。
ベンチャーに入って確かにつらかったんですけど、でも・・・やっぱり面白かったんですよね。「まだ諦められないな」と思って。
で、次は紹介とかではなく、本当に行きたいところを選ぼうと思ったんです。
カヤックではディレクター採用だったので、ここではあんまり技術には触ってないですね。
でも、エンジニア採用ではなくディレクターを未経験でやらせてもらえたのは僕にとって大きな価値でした。
--プログラミングができないことに抵抗はなかったのですか?
先ほど言いましたが(前編参照)、あくまで技術は「目的を達成する手段」なので。
僕の目的は「サービスをつくること」にあったので、むしろディレクターの方が合ってると思いました。
すごく優秀なメンバーばかりで、かなり面白かったですね。
その後はヘッドハンティング会社からのオファーをいくつか受けて、その中からITベンチャーでの取締役のポジションを選びました。
撮影が始まると「今回はコレ使ってみる?」と言いつつ、
自ら小道具を持ち込む等、鋭い言動とユーモアが両立していたのが印象的。
--ヘッドハンティングでの転職が多いとのことですが、断って残るという選択肢は今までなかったのですか?
ありますよ。
でも、新しいほうへ行ったほうがステップアップできるケースが多かったんですよね。
金銭的なステップアップと能力的なステップアップ、どちらも重要だなと考えてます。
それって、普通な考えじゃないんでしょうか。
--転職回数が多くなると不利になるんじゃないかって考えもありますが・・・
僕自身、転職はこれまで7社経験しているんですが、ヘッドハンティングとかで知名度がどんどん上がっていくんです。
たとえばシリコンバレーでは3年で転職するのって普通じゃないですか。日本もこれからそういう時代になるから、転職を恐れる必要はないです。
もちろん、辞めるときは案件の半ばで投げ出すんじゃなくて、しっかりクロージングさせて移らないといけないんですけど。
自分の能力幅を広げられる転職って、とても良いことだと思うんですよね。
--たとえ自分がそう思っていても、転職コンサルや企業側がそう判断しない場合もあるのではないでしょうか?
通常、転職支援サービスやヘッドハンティングを使うと職務経歴書で判断されると思うんですよね。
で、転職回数とか過去の経歴で見られることが多いかと思うんですけど、それってあんまり良くなくて。
経歴書で判断されると、どうしてもその内容に則した企業にしか入れないじゃないですか。
で、せっかく転職しても自分の視野を広げることができない。
だから、転職するときに本当に自分の能力の幅を広げたいと考えているなら、そういうことをちゃんと分かってくれる紹介会社を使うといいですよね。
経歴書ベースでない関係性を密にコミュニケーションをとって作っていった方がいい。それができそうにないなら、自分で探して受けに行くのがいいと思います。
重要なのは、自分の能力を発揮できる会社に巡り合うことなので。
--ベンチャーに興味があっても失敗が怖くて一歩を踏み出せない人も多いように思います。
ベンチャー系は優秀な人がいる所と、そこまでじゃない所が二極化する傾向にあるんですよ。
だから、本当にいい会社に巡り合うまでちゃんと探し続けたほうがいいですね。一回入ってみてうまくいかないってこともあるかもしれません。
でも、「この会社に入ったら終わり」ってことはないので。
そして現在、CO-Founder/CTOとして 株式会社トライフォート設立
--その後も転職を経てトライフォートを設立された訳ですが・・・ここまで辿り着くために重要だったものは何だと思いますか?
一番重要なのは、目的を明確に持って進んでるか、「自分が何をしたいか」ということです。
お金とか誰かの指示とか関係なく「やりたい」って思えることって、他の人にはない「かけがえのない強さ」
なので。そういう所を突き詰めていくのがいいんじゃないかと。
そのゴールが「起業」とは限りません。就職であっても自分の能力を発揮できる会社に巡り合えれば、それは婚約相手を見つけるくらい夢のある出来事だと思います。
注1:NCom…エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
注2:J-Magic…ジェイマジック株式会社。2009年、株式会社モバイルファクトリーにより買収
注3:顔チェキ…2007年にジェイマジック株式会社が開始した携帯電話サービス
「新しいサービスを自分たちの手でつくりたい」という明確な目的をもって進み続けてきた小俣氏。転職を繰り返してステップアップに挑んできたと語る姿に「やりたいことを叶える」強い志を感じました。インタビュー中は覇気がビシビシ伝わってきて思わず圧倒されそうになりつつ、撮影ではおどけて見せる姿も。小俣氏の魅力が伝わる取材でした。
現在トライフォート社では、さらなる拡大のため新しいメンバーを積極採用中とのこと。
トライフォート社の今後から目が離せません!
前編を読む新卒で大手に入れなかったら終わりみたいな考えは、気にしなくていい