プロジェクトリーダーの育成方法とは?必要なスキルや資質を解説

最終更新日:2024年2月15日

プロジェクトを牽引する重要な役割を担うプロジェクトリーダーの育成について頭を抱えている企業は多いようです。さまざまな部署のメンバーとビジョンを共有しプロジェクトを成功へ導くために、リーダーに必要なスキルとは何でしょうか?

この記事では、プロジェクトリーダー育成の方法やセミナーを有効に活用する術、世界的に活用されているリーダー育成術などを紹介します。

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この記事のまとめ

  • プロジェクトリーダー育成のためには教育プログラムを作成し、その方針に沿って計画的に進めると良い
  • プロジェクトリーダーは現場管理やチームの引率を担い、プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体の統括に加え、社外折衝の役割も担う職種
  • プロジェクトリーダーに求められるスキルには「段取り力」や「影響力」、「コミュニケーションスキル」が挙げられる
  • プロジェクトマネジメントやリーダーシップ論を学ぶには実務だけに限らず書籍の活用も有効である

プロジェクトリーダーとは

IT業界において、プロジェクトをゴールまで導くのがプロジェクトリーダーの役割です。主に現場責任者として、企画・設計から開発、納品まで適切に管理し、チームメンバーを率いてプロジェクトを遂行します。

そこで企業が頭を抱えるのがプロジェクトリーダーの「育成」です。リーダー教育には相応の時間と費用がかかり、リーダー候補者を数十万円の研修へ送り出すこともあります。

しかし、即戦力が求められる現場や少数精鋭のスタートアップ企業では、時間やコストをかけずにメンバーをプロジェクトリーダーに起用することも珍しくありません。企業の体制を問わず、優れたプロジェクトリーダーを育成するためにはどうすれば良いのでしょうか。

関連記事:プロジェクトリーダーの仕事内容と役割、平均年齢や年収を解説

プロジェクトマネージャーとの違い

プロジェクトリーダーはチームを牽引しながら現場管理の役割を担う一方、プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体を統括し責任を負う立場であり、クライアントとの折衝も行います。

このように社内で役割を明確に分けている企業もありますが、小規模プロジェクトではプロジェクトマネージャーがプロジェクトリーダーを兼任する場合もあります。

どちらもプロジェクトを管理する役割であることは共通していますが、プロジェクトマネージャーが管理する業務範囲はプロジェクトリーダーよりも広く、責任も重大です。

プロジェクトリーダーの育成方法

プロジェクトリーダーの育成は、多くの企業が抱える課題です。プロジェクトリーダーの役割は現場管理がメインとなるため、抜擢する人材はプロジェクトを率いていくためのスキルを備えている必要があります。

ただし、このようなスキルは一朝一夕で身につくものではありません。また、プロジェクトにとって重要な役割を担うため、どのような育成方法をとれば適材となるリーダーが育つのか、頭を悩ませている企業もあるでしょう。

ここでは、プロジェクトリーダーの育成方法について解説します。

リーダー教育のプログラムを作成する

プロジェクトリーダー育成をより迅速に的確に進めるには、計画的な教育カリキュラムの作成が大切です。現場経験だけを頼りに理想のリーダーを育成するには時間がかかり、必要とされるスキルが不足する懸念もあるため効率的とはいえません。

まずは、プロジェクトリーダー育成のための教育カリキュラムを整備し、現場経験も積めるよう配慮しながら段階的に育てていくと良いでしょう。

学ぶためのモチベーションを養う

プロジェクトリーダーの候補者を育成のためのセミナーや講座に参加させても、本人のモチベーションがなければ身につけるべきスキルも身につきません。「次のプロジェクトで生産度20%アップを目指す」といった目標設定や資格手当を設けるなど、モチベーションを維持できるような具体的な施策も必要です。

リーダーシップ研修を実施する

リーダーの役割に必須であるリーダーシップを養うために、研修を受けさせることも効果的です。現場経験に富んだプロジェクトマネージャーなどのリーダー職の社員を講師として実施し、座学だけではなく実践的な内容も盛り込んだ研修が理想的です。インプットとアウトプットの繰り返しでスキルの成熟度を把握しながら着実に進めていくと良いでしょう。

また、外部講師に研修を依頼する方法もあります。リーダー育成の専門家に任せれば、社内の人員を研修に割く必要はありません。人的リソースの面ではメリットですが、コストがかかる点はデメリットといえます。「費用はできるだけ抑えたい」「コストはかかっても社員にはコア業務に集中してほしい」など状況に合わせて選ぶと良いでしょう。

学びと体験の場をセットで用意する

セミナーや講座で学んだ後は、すぐに体験の場を設けることが大切です。インプットとアウトプットの繰り返しでスキルの習熟度を把握しながら着実に進めていくと良いでしょう。たとえば、次に参画するプロジェクトに近い内容のセミナーを受ければ、その内容を実際のプロジェクトで実践できます。このように学習と実践をセットで体感する方法が効率的です。

フィードバックを受けて次に活かす

プロジェクトリーダーのスキルは、リーダーシップや交渉力、マネジメント力など数値で測れないものが多く、スキルの習熟度を確認するには現状と課題が把握できるような工夫が必要です。

このような場合は、現場でチェックシートなどを用意し、周りのプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーからこまめにフィードバックを受けるのが理想的です。さらに、フィードバックを元に足りない部分や改善すべき点の対策をとることでスキルを養っていけるでしょう。

会社全体でリーダー育成に取り組む

リーダーを育成するには、一貫した計画のもと、現場も含め全社で取り組む必要があります。理想のリーダー像にギャップがあると、育成がスムーズに進まず方向性もぶれてしまい、効率が悪いです。

また、教育カリキュラムを進める上でほかの部署との連携は不可欠です。人事部や経営層と現場で求めるリーダー像にギャップがある場合には擦り合わせをし、ほかの部署とも協力しながら全社で育成に取り組む姿勢が大切です。

プロジェクトリーダーに必要な「段取り力」と「影響力」

プロジェクトリーダーに求められるスキルは「段取り力」と「影響力」です。システムに関する知識を十分に身につけているだけでは、プロジェクトリーダーは務まりません。

プロジェクトを期限内に高品質で完遂するためには、システム開発だけでなく、顧客調整・他部署との折衝・人的リソース管理など、さまざまな仕事をこなしていく必要があります。その過程において適切な事前準備を行うことやチームを率いるリーダーとしての影響力が重要です。さらに、プロジェクトリーダーは開発やマネジメントに関する幅広いスキルと経験が求められる職種です。

また、従事するプロジェクトの特性や業界によっても必要なスキルは異なります。ここではプロジェクトリーダーとして活躍する上で必要となるスキルを2つ紹介します。

関連記事:プロジェクトリーダーに必要なスキルとは?資格や年収相場も紹介

段取り力

リーダーに必要なのは、プロジェクトをまとめるための段取り力です。プロジェクトマネジメント協会が提唱している国際標準のプロジェクト管理技法「PMBOK(ピンボック)」では、以下の8つのポイントを挙げています。

  • 1.目的・範囲

    2.スケジュール

    3.費用

    4.人材

    5.コミュニケーション

    6.品質

    7.調達

    8.リスク


プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーがプロジェクトを適切に管理し成功へと導くには、これらの要素を考慮した計画的な段取りが不可欠です。PMBOKは、目的と費用のバランスをとりながら、メンバーが無理のない範囲でプロジェクトを進めるための技法とされています。

影響力

人の上に立つ役職を全うするためには、メンバーを引きつける影響力が必要です。

ロバート・B・チャルディーニ氏による『影響力の武器』では、他者の行動を引き出す6つの項目として、1.返報性、2.一貫性、3.社会的証明、4.好意、5.権威、6.希少性が提示されています。

たとえば、1.返報性では、「受けた恩は返したくなる」という心理に基づき、出し惜しみせずに他者へ貢献することを推奨しています。ほかの項目においてもさまざまな心理が土台となっており、リーダーが人を動かすアプローチとして有効です。

影響力は、いわば人間力でもあります。一朝一夕で身につくものではありませんが、日々意識することで自然と影響力のある行動を取れるようなリーダーを目指しましょう。

プロジェクトリーダーの育成がうまくいかない理由

プロジェクトリーダーに必要とされるスキルが分かっていても、実際の現場ではプロジェクトリーダーの育成がなかなか進まないケースが多くあります。その原因として、育成方針や環境が整備されていないことや、育成を担当する側の資質の問題などが考えられるでしょう。

ここでは、プロジェクトリーダーの育成がうまくいかない理由について解説していきます。

社内の教育体制が整っていない

プロジェクトリーダーのスキルは、現場で学べば良いと考えている会社もあります。しかし、基礎を身につけていない人が現場管理を担うことは、プロジェクトの失敗や遅延、品質低下にもつながるため、高リスクかつ非効率的といえます。リーダー育成に向けた人事制度を機能させ、バックアップできる環境を整えることが先決です。

プロジェクトリーダーを育成したい場合は、まず対象社員にプロジェクトマネジメントに関する研修の受講を促したり、資格取得を支援したりすると効果的です。

プロジェクトマネジメントに関する資格としては、情報処理技術者試験の「プロジェクトマネージャ試験」や、米国のプロジェクトマネジメント協会(PMI)が運営している「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)試験」などが挙げられます。

資格取得した場合に給与を上げる、キャリアアップの評価基準の1つとするなど、リーダー候補者の動機づけも併せて考えるとより良いでしょう。

知識や経験のあるプロジェクトリーダーが社内にいない

実際のプロジェクトでは教科書どおりに進むことは少なく、常に新しい課題やタスクを解消していく必要があるため、研修や資格取得で基礎を身につけたとしても、現場で活躍できるとは限りません。

そこで頼りになるのが、知識や経験のある先輩プロジェクトリーダーの存在です。プロジェクトリーダーの育成において、先輩社員の元で実際のプロジェクト推進を近くで見られる機会は大変貴重です。どのように課題を解消していくのか、どうやってスケジュールをコントロールしているのか、顧客との折衝で気をつけるポイントは何か、などを身を持って学べばリーダースキルを向上させることができます。

近くにこのような先輩プロジェクトリーダーがいれば、チーム全体としてスキルアップが期待できますが、育成の進んでいない現場では手本となるような社員がいない場合が多いです。その場合には、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーとしての経験豊富な人材を採用するなどの方法を検討しましょう。

効果が見えにくく、優先順位が低くなりやすい

教育体制を整え万全なフォローができる環境を設けても、その効果は実感しにくく、目に見えないスキルの習熟度を把握するのも難しいでしょう。また、プロジェクトリーダー育成の必要性は理解しつつも、現場の人材をリーダー育成に割く余裕がないケースも考えられます。

このような背景から、育成の優先順位が低くなったり、停滞状態に陥ったりしやすいです。リーダー育成には時間と労力がかかることを理解した上で、人的リソースも考慮した余裕のある教育体制と無理のない計画で進めていきましょう。

プロジェクトリーダーの育成におすすめの本

研修や実践経験に加えて、書籍での自己研鑽もプロジェクトリーダースキル育成には有効です。プロジェクトリーダー論については、数多くの書籍が出版されています。ここでは、プロジェクトリーダー育成に役立つおすすめの本をいくつか紹介します。

外資系コンサルが教える難題を解決する12ステップ プロジェクトリーダーの教科書

アクセンチュア・PwC・IBMで13年間に渡りプロジェクトリーダーを務め、研修講師としても活躍するコンサルタントが執筆した本です。

「プロジェクト=必ず問題が起こるもの」とし、プロジェクトにおける12のステップごとに、プロジェクトリーダーに必要なマインドやスキル、アクションが解説されています。
筆者の具体的な経験をもとに注意すべきポイントが解説されているため、実践的なイメージがつきやすく、経験の浅いプロジェクトリーダーにとって考え方・振る舞い方の参考となる本です。

紹介されている数多くの具体例に対して、自分だったらどのように行動するかを頭で考えながら読み進めれば、自ずと実践的なスキルも身につけられるでしょう。

誰でもチームをゴールに導ける! プロジェクトリーダー 実践教本

実践教本として【プロジェクトの立上げ→計画→実行】のプロセス順に、リーダーとして重要となるポイントを説明している本です。筆者はMBAやPMPといった資格を保有しており、青山学院大学大学院(MBAコース)にて「プロジェクトマネジメント」で講師を務めています。

プロジェクトマネジメントが学べるほか、プロジェクトリーダーに求められるリーダーシップに焦点を当て、その理論や発揮の仕方が解説されています。

また、「リーダーとしての5W1H」や「リーダーシップに特化したステークホルダー管理表」など、実践で使えるフレームワークの雛形がダウンロード可能です。本書で学んだ知識を実際の現場ですぐに活かすことができる点も本書の魅力といえます。

プロジェクトリーダーに関するよくある質問

プロジェクトリーダーの育成方法や求められるスキルを知りたいという企業は多くあります。リーダー育成は、コストや時間がかかる上、育成途中で候補者が転職してしまう場合もあり、企業にとっては難しい課題の1つでしょう。

ここではプロジェクトリーダーの育成に関する質問にフォーカスし、回答していきます。

Q1.プロジェクトリーダーに必要なスキルとは何ですか?

プロジェクトリーダーに必要なスキルで特に重要なのは「段取り力」と「影響力」です。目標に対し、費用や人的リソースのバランスをとりつつ、無理のない範囲でプロジェクトを進めていく力が必要とされます。また、リーダーとしてメンバーを導いていく影響力が必要です。

Q2.プロジェクトリーダーの育成方法はどうしたらいいですか?

まずは教育プログラムを整えましょう。人事部や経営層だけでなく全社一丸となって育成に取り組む姿勢が大切です。資格取得支援など、リーダー候補者の動機付けへの配慮やフォローも重要です。研修を実施したり、身近なリーダーからのフィードバックも活用したりしながら座学と実践を組み合わせると効率的に育成できます。

Q3.プロジェクトリーダーとして大切なことは何ですか?

プロジェクトリーダーは現場を管理する役割を担い、プロジェクトを進める上でチームを率いるリーダーシップが必要です。そして、どのような場面でも一貫して求められるのは高いコミュニケーション能力といえます。メンバーとの円滑なコミュニケーションがとれれば自ずと信頼関係も築けます。

まとめ

この記事では、プロジェクトリーダーの育成方法や求められるスキル、育成がうまくいかない理由などについて解説しました。プロジェクトリーダーはプロジェクトを遂行する上で欠かせない存在であり、優秀な人材が育成できれば会社の財産になります。

リーダー育成は一筋縄ではいきませんが、先の未来を考えれば全社で取り組んでいくべき課題といえ、コストや時間をかけてでも力を入れることを強くおすすめします。現場で活躍するプロジェクトリーダーを育てるためには、育成する側もされる側も、強い心構えとモチベーションが不可欠です。

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