(株)Aiming 最高技術責任者 小林俊仁氏【後編】【CTOの職務経歴書】風通しの良い組織作りにこだわることが、良いゲーム作りにつながっていく

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前回に引き続き、「CTOの職務経歴書」には株式会社Aimingの小林俊仁氏が登場。若くして取締役や中国での起業を体験した小林氏。現在、どのような気持ちでCTOを務めているのか、そして今後、どのようなことを実現したいのかについて、話を伺った。

株式会社Aimingとは
「スマホオンラインゲーム世界一」をミッションに掲げ、主にスマートフォン向けオンラインゲームの企画・プロデュース・開発・運営を行う会社。代表作に、「剣と魔法のログレス いにしえの女神」「ロードオブナイツ」「幻塔戦記グリフォン」など。 2015年3月に東証マザーズに上場を果たす。
http://aiming-inc.com/ja/

1. スマートフォンの未来を信じてAiming社設立に参加

――中国での子会社撤退後、小林さんがどのように動いたかを教えてください。

小林氏:中国から帰国したのが2007年で、それからはコミュニティーエンジン社で、オンラインゲームの技術ディレクター、プロジェクトマネージャーとしてゲーム作りに携わりました。

2010年に、コミュニティーエンジン社がなくなるという話があり、当時『ブラウザ三国志』を当てていたONE-UP社代表の椎葉忠志に相談しました。当時のONE-UP社には企画や運営の機能はありましたが、開発を行う部署がなく、開発グループとして丸ごと受け入れていただけることになりました。

――そのとき小林さんはどういった立ち位置だったのですか?

小林氏:技術チームを現場でまとめるプロジェクトマネージャーをやりつつ、複数チームを横串に挿すような仕事もやっていました。現場での情報共有の仕組みを作ったり、勉強会を開催したり、採用に力を入れたり……。CxOの肩書はまだありませんでしたが、組織をまとめるための仕事が増えていったのはこの頃でした。

――そして、いよいよAiming社の立ち上げになるのですが、Aiming社はONE-UP社から独立したという形になるのでしょうか。

小林氏:2011年当時のONE-UP社は、『ブラウザ三国志』に加えて『戦国IXA』といったブラウザゲームでヒットを生み出していました。でも椎葉には、オンラインゲームのスマフォシフトが起きるという仮説があり、このフィールドでこそ MMO で培った我々の強みを発揮できるという確信もありました。この考えに基いて作った会社が、Aiming社です。

ONE-UP社には、すでにしっかりとした売り上げがありましたが、リスクテイクするAiming社には成長可能性がある。どちらにも魅力はありましたが、僕をはじめ多くのエンジニアは、Aiming社での新たな挑戦を選びました。

鋭い視線で前を見つめる小林氏の写真

スマートフォンのゲームに未来があるという椎葉代表の考えに共感して、Aimingを選んだ

2. オンラインゲームの中には、すでにソーシャルネットワークがあった

――Aiming社の設立後、小林さんの仕事内容は変わりましたか?

小林氏:いえ、ほとんどONE-UP社時代の仕事を継続するような形でした。Aiming社の最初のヒット作となったのは『ロードオブナイツ』ですが、この技術チームのマネジメントをやりつつ、横串に挿す仕事も引き続きやっていました。

――横串に挿すとはどういう仕事のことを言うのでしょうか?

具体的には、プロジェクト間の情報共有や異動、採用など、はっきりプロジェクトの責任範囲とは言えないものの、組織としては必要な仕事全般を指します。

ゲームにはデザイナーやプログラマーなど、いろいろな職種の人が関わりますが、職種ごとに部署があるような組織ではセクショナリズムが強すぎたりして、プロジェクトを進める際にケンカになりがちなんですね。

ケンカをすると面白いゲームは作れないので、プロジェクト単位で徹底的に権限を委譲して、そのなかで多くの職種が横断的に密なコミュニケーションを取りながら、意思決定できる必要がある。だから、プロジェクトを軸にして組織を作っていくんですが、すると今度は、同職種の情報共有が上手くいかなくなったり、採用や教育を他責にしたり、複数プロジェクトで同じ技術的な落とし穴にハマったり、ということが起こるんですね。そこらへんを何とかしようとがんばった、という感じです(笑)

顎に手をあて考える小林氏の写真

面白いゲームを作るには、プロジェクトチーム単位で思い切り権限委譲することが重要だというのが小林さんの信念

――先ほど、オンラインゲームに興味を持った理由として、社会学的な視点でコミュニティーを可視化したかったというお話をお聞きしましたが、そこともつながりますね。

小林氏:ええ、僕がオンラインゲームの開発を始めた当時はSNSがありませんでしたが、もしその当時にSNSがあったら、僕はゲームではなくSNSを手がけていたのではないかと思います。そういう意味では、今のソーシャルゲームの隆盛は、自分がやりたかったこととやってきたことがマージしてきたという感があります。面白くなってきたな、と(笑)。

――正式に今の役職に就いたのは2013年5月からとのことですが、小林さんの正式な肩書はCTOではなく、CEnO(チーフエンジニアリングオフィサー)ですよね。「テクニカル」ではなく「エンジニアリング」という言葉を使うことには、こだわりがあるのでしょうか。

小林氏: CTOのあるべき姿に正解はないのですが、あくまで僕にとってはCEnOという言い方の方が実情に合っていると感じられるということです。

「テクニカル」だと技術寄りの印象がありますし、実際に技術を極めているCTOの方はたくさんいらっしゃると思います。一方、僕の場合はもう少し広い意味で技術というものを捉えたく、エンジニアの組織作りといったところまでを含むニュアンスを持たせたくて、CEnOとしています。

といっても、やはりCTOの方が通りがいいので、CTOと言うことも多いですよ。このインタビューも「CTOの職務経歴書」ですしね(笑)。

3. 自分なりの"純化"を遂げていくことが今後の目標

――小林さんは、Aiming社の前身とも言えるONE-UP社、さらにはコミュニティーエンジン社時代から採用に関わっていらしたというお話がありました。エンジニアを採用する際の判断基準のようなものがあったら、教えてください。

小林氏:その人がプライベートにおいて自然とやってしまうことや、アウトプットしていることは何なのか、を見ています。それがゲームやプログラミングだと、Aiming で活きる可能性が高いですね。 会社の枠に人をはめるのではなく、あくまで主体はその人であり、才能が我々の会社で活きるかどうか、という視点です。

プライベートを見る理由は、やりたい仕事はやらされる仕事よりも圧倒的にパフォーマンスが高く、かつ楽しいからです。 我々の仕事が、その人のやりたいことの範疇にあってほしいんですね。

――広い意味でのエンジニアの組織作りという点で、具体的にはどのようなことに意識されているのでしょう。

小林氏:やはり組織内での風通しを良くすることですね。組織作りが上手くいっていないときには、当然ながら作るゲームのクオリティーも落ちます。世の中には、いわゆるクソゲーというものがありますが、誰だってクソゲーを作りたくて作るわけではないですよね。

クソゲーができてしまう理由の多くは、コミュニケーションの目詰まりにあると思います。「これがないと面白くないでしょ」とか「このままリリースしちゃっていいの?」なんてそもそも論を言い出すのは非常に勇気が要ることです。しかし、そういう言い難いことを素直に言い合えるチームができなければ、ゲームの質は高まらないと信じています。

コミュニケーションの目詰まりは、しばしば対立を生んでしまうこともありますが、それはやりたいことを持っているたくさんの"脳みそ"が集まっている職場では、避けられないことです。つまるところ、僕の仕事のかなめの部分は、皆の脳みそを一緒にすることなんだろうと思っています。

――これから小林さんご自身はどのように進化していきたいとお考えですか?

小林氏:進化というと、様々なことができるようになると考えがちですが、組織作りやマネジメントの場合は、人に任せたり権限を委譲したりしていくので、そういう意味では僕がやることは減っていくかもしれません(笑)。なので、進化というよりは「純化」ですかね。純化の方向性はやはりこれまで通り、チーム作りということになってくると思います。

これは、一抹のさみしさもありますが、組織が強くなるためには必要なことですし、後進が育っていくのを見るという喜びもあります。結果的には、それが優れたゲームを世に送り出せる組織作りにもつながっていると思うので、チームマネジメントを突き詰めていくというところには今後もこだわっていきたいですね。

今後の展望について、身振り手振りを交えながら語る小林氏の写真

人間関係やコミュニケーションがうまくいくような組織作りにこだわっていきたいと話す小林さん

レバテック営業担当、大林春菜の写真

レバテック営業担当「大林春菜」から一言!

社交的な人となりと、マネジメントへのこだわりが感じられるインタビューでした

初めてお会いしたときから、とても社交的で顔が広かった小林さんですが、内向的だった学生時代から人となりが形成されていく過程を知ることができて楽しかったです。特に、たくさんの"脳"をまとめるのが自分の役割だとおっしゃっていたのは、マネジメントへのこだわりが感じられて印象的でした。また、最後に"純化"という言葉で自らの進化を締めくくられたあたりも、豊富な経験あればこその重みだと感じました。

前編を読む京大大学院時代にオンラインゲームに出会い、バイトに新幹線通勤。20代で取締役、そして中国で起業へ

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