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MATLAB(マトラボ)とは?
MATLAB(マトラボ)とは、MathWorks社による高度な数値計算に特化した統合開発環境であると同時に、その環境内で使用されるプログラミング言語の名称でもあります。主に理工学や経済学など、数値計算を必要とする分野で幅広く活用されています。
MATLABの大きな特徴は、C言語やC++、Java、Python、.NETなど、多くのプログラミング言語との連携が可能な点です。そのため、既存のコードを再利用し効率的に開発を進められます
ここでは、統合開発環境とプログラミング言語という2つの側面からMATLABを解説していきます。
総合開発環境としてのMATLABに含まれる機能
統合開発環境としてのMATLABは、複数のツールが含まれていることが特徴です。以下に、総合開発環境としてのMATLABに含まれる機能をそれぞれ紹介します。
機能 | 概要 |
---|---|
データ分析 | テキストやスプレッドシートなど外部のデータを取り込み、 分析を行う機能が含まれています。データクリーニングや 平滑化、グループ化に加え、記述統計なども可能です。 |
グラフィックス | 2次元および3次元プロットの作成が可能です。 グラフィックスを最適化するためのコード最適化機能も含まれます。 |
アプリケーションのアルゴリズム開発 | スクリプティング用ファイルや関数が含まれます。 また、クラス作成や各種ファイル操作も可能です。 |
イティブアプリおよびWebアプリ作成 | MATLAB内に用意された関数を用いたプログラミング によるアプリ作成に加え、ビジュアルプログラミング ツール「App Designer」を活用した開発も可能です。 |
多言語連携 | MATLABはPython、Java、C言語、C++、.NETなどの 言語と相互に連携可能です。これらのプログラミング 言語のライブラリを呼び出したり、相手方の言語から MATLABの機能を利用するといった使い方ができます。 |
ハードウェア接続 | 研究機関の機器や、データ取得用機器、オーディオや カメラとの接続が可能です。 |
並列計算 | マルチコアCPUやGPU計算クラスターと接続して 並列計算を行えます。後述するシミュレーションツール 「Simulink」との連携で可能になる機能もあります。 |
アプリケーション配布 | MATLABで開発したアプリケーションは、同じMATLAB ユーザーと共有できます。また、パッケージとして配布 することも可能です。 |
クラウドコンピューティング | MATLABでは、Webブラウザ上からMATLABを利用する 「MATLAB online」という機能があります。また、 ファイルストレージ機能やパブリッククラウド上での 実行機能など、クラウドコンピューティングに対応した 機能なども備わっています。 |
Toolboxへの機能追加 | MATLABには追加機能をダウンロード・インストールする Toolboxという機能もあります。必要に応じて追加機能を インストールし、いつでも使えます。 |
プログラミング言語としてのMATLABの特徴
プログラミング言語としてのMATLABは、行列や配列処理を得意とする点が特徴です。一度に一つの数値処理ではなく行列と配列全体を処理できるため、数値計算の分野では使いやすい言語といえます。
また、コマンド入力によるソースコードの作成と実行、行列や配列の処理、データ型変換、演算子による演算、条件分岐など一般的なプログラミング言語が持つ機能も備えています。
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MATLABでできること
MATLABは研究開発からシステム開発、ディープラーニングのアルゴリズム開発や画像解析、さらにはC++コードの生成まで、その活用範囲は多岐にわたります。また、数値計算からレポーティング、テストまで一貫して行えるため、研究者やエンジニアの生産性向上も可能です。
本章では、MATLABの6つの主要な使用用途について、実際の開発現場での活用例を交えながら詳しく解説します。
ディープラーニングのアルゴリズム開発
MATLABでは、ディープラーニングを活用したアルゴリズム開発や、その後の処理プロセスを実装できます。これを利用し「歩きながらスマホを操作している人物を検知し、警告を出す」という機能も開発可能です。
具体的には「ディープラーニングによる人物の検知」「歩きスマホか否かの判断(分類)」「警告表示」などのアルゴリズムが開発されています。
ディープラーニングとは
ディープラーニング(深層学習)とは、機械学習の手法の1つです。具体的にはデータの背景にあるルール・パターンを自分で学習し多層的(ディープ)構造で考える方法が採用されています。
これにより、従来人間がAIに学習させるべきルール・パターンの指示をせずに実装可能です。人間の脳神経細胞であるニューロンを模したシステム「ニューラルネットワーク」がベースにあり、高性能であるためさまざまな分野で活用されています。
関連記事:AIエンジニアとは?仕事内容やなるために必要なスキル、年収を解説
さまざまな数値計算処理
Toolboxに機能を追加することで「統計解析、モデリングおよびアルゴリズム開発」「回帰、内挿、平滑化を用いたデータ曲線」などを行えます。MATLABは数値計算言語とも呼称するだけあって、数値計算処理に関する追加機能が豊富です。
レポーティングとテスト(Simulinkを活用した場合)
MATLABと同じくMathWorks社の製品である「Simulink」との連携により、レポーティングやテスト機能を利用できます。Simulinkはシステム設計・シミュレーション・テストのためのグラフィカル環境で、MATLABとの連携でより使い勝手の良いシステム開発・シミュレーション・テスト環境が構築できます。
CおよびC++コードの生成
MATLABにはC言語とC++のコードを生成する機能があります。これは「MATLAB Coder」と呼ばれるコーディングツールで実現できる機能です。MATLABで実装したコードをCおよびC++のコードにコンパイルでき、計算速度の向上などを見込めます。
コンピューティングビジョン分野での画像解析
コンピューティングビジョンとは、画像解析に関する分野を指します。人間がものを見るのと同じように、コンピューターでも自動で画像に表示されるものを認知し解析する目的で行います。
たとえばこの分野がより発達すれば、自動車の自動運転技術がより高機能になります。画像解析を必要とする開発においてMATLABは主要な開発環境の1つです。
ロボット工学分野でのシステム開発
ロボット工学のアルゴリズムに関する分野でMATLABが使用されます。センサー反応、カメラの映像などでロボットの動きを制御するシステムが開発できます。
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MATLABでの開発事例
開発事例を知ることで、どのようにMATLABが活用されているか理解しやすいです。MATLABは、幅広い分野で活用されており、有名企業でも数多く導入されています。
代表的な開発事例としては、エネルギー管理システムの制御やソーラーカー開発、車載システム、エンジン制御システム、核燃料デブリ除去用ロボットアーム、半導体への機械学習技術の応用などが挙げられます。
また、MATLABの公式サイトには、MATLABのユーザー事例が多数紹介されているので、気になる方は参考にしてみてください。
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MATLABとPythonとの比較
MATLABとPythonができることは、大きな枠組みでとらえれば大差ありません。しかし両者には難易度と価格で差があります。
比較ポイント | MATLAB | Python |
---|---|---|
料金 | 基本は有償 | 基本は無償 |
得意分野 | 数式計算処理 | ディープラーニングなど 機械学習全般 |
言語方式 | インタプリタ言語 | インタプリタ言語 |
サポート | 専用ヘルプあり | ユーザーフォーラムなど |
求人件数 ※2024年11月時点 |
247件 | 6,601件 |
Pythonは、原則として無償利用が可能です。これに対してMATLABは、原則として有料となっています。ただし、機能が制限された無料版(試用版)も存在するため、事前に使い勝手を確認することは可能です。
難易度を比較すると、Pythonは習得しやすいです。対してMATLABは工学的・科学的な問題解決への応用がしやすく、エンジニアが習得する言語としての認知が広まっています。
得意分野を比較すると、MATLABは「線形代数の処理に強い」「行列やベクトルが扱いやすい」という強みが挙げられます。一方Pythonは、ディープラーニング関連の開発で事実上のスタンダードとなっている言語です。
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MATLABとSimulinkとの関係性
MATLABとSimulinkは、どちらもMathWorks社の製品です。ただし、以下のような違いがあります。
-
・Simulinkはシステム設計、シミュレーション、テスト環境構築向け
・MATLABは数値計算、アルゴリズム開発、データ解析向け
MATLABとSimulinkの連携によって統合開発環境としてのMATLABがさらに便利になるため、補完関係にある製品と言えます。
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MATLABの価格体系
MATLABは利用者がどのような組織で活用するかによって価格が異なります。ここでは、以下の5つのプランについて価格体系を解説します。
-
・企業や官公庁
・スタートアップ企業
・教育機関
・学生
・個人
また、Simulinkにやや機能が制限された「製品評価版」もあるため、一緒に紹介します。価格は2024年11月現在のものです。最新価格はMathWorks公式サイトを参考にしてください。
Standard
Standardは企業や官公庁、その他団体が利用する場合のライセンスです。
ライセンスの種類 | 料金 (税抜) |
---|---|
永久ライセンス (Perpetual) ※2年目以降保守サービスを利用するためには 年会費が必要 |
20,000円 |
年間ライセンス (Annual) | 128,000円 |
Startups
StartupsはMATLABに承認されたスタートアップ企業が利用できる特別価格のプランです。90以上のアドオン製品が利用できます。
ライセンスの種類 | 料金 (税抜) |
---|---|
年間ライセンス (Annual) | 515,000円 |
Academic
Academicは教育機関や学術研究機関など教育に関連する団体が使用できる特別価格のプランです。MATLABだけでなく、ほとんどすべてのツールボックスを利用できます。
ライセンスの種類 | 料金 (税抜) |
---|---|
永久ライセンス (Perpetual) ※2年目以降保守サービスを利用するためには 年会費が必要 |
75,000円 |
年間ライセンス (Annual) | 37,500円 |
Student
Studentは学生向けライセンスです。プロフェッショナル版(Standard)と同じ機能を持ちますが、インターフェイスに若干の違いがあります。
ライセンスの種類 | 料金 (税抜) |
---|---|
永久ライセンス (Perpetual) ※2年目以降保守サービスを利用するためには 年会費が必要 |
9,990円 |
Home
Homeは個人が非営利目的で利用する場合に選択できるライセンスです。政府・学術機関や商用利用はできません。
ライセンスの種類 | 料金 (税抜) |
---|---|
永久ライセンス (Perpetual) ※2年目以降保守サービスを利用するためには 年会費が必要 |
15,500円 |
製品評価版
製品評価版とは、いわゆる「お試し期間」です。価格は無料で30日間評価版を利用できます。プロフェッショナル版では製品版・評価版に機能の差はありませんが、Homeと学生版ではSimulinkに以下の機能制限があります。
-
・モデル数が1000の非バーチャルブロックに制限される
・アクセラレータ/ラピッドアクセラレータシミュレーションモードは非対応
・モデルブロックのシミュレーションがノーマルモードのみ対応される
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MATLABの学習方法
MATLABについて学習するには、いくつかの方法があります。一般的なMATLABの学習方法としては、MATLABの日本語サイトの活用があげられます。
また、MATLABの初心者向け書籍で学習し、実際に動かしてみることもおすすめです。ここでは、これらのMATLABの学習方法について詳しく紹介していきます。学習に役立つサイトや書籍をチェックしていきましょう。
MATLABの日本語サイトで学ぶ
MathWorksでは、MATLABの無料チュートリアルを公開しています。テキストは英語が基本ですが、MATLAB入門は日本語対応しているためチェックしてみると良いでしょう。
コースではビデオ解説とテスト・フィードバックが含まれており、自分のタイミングで学習可能です。このほかにもディープラーニングやMATLAB基礎、複雑なデータの読み込みや可視化のコースも用意されています。
ただし、関連コースを受講する場合はMathWorksアカウントの取得が必須です。
MATLABの初心者向け書籍で学ぶ
MATLABの概念や基本的なことから学びたい場合は、書籍での学習がおすすめです。初心者向けの書籍としては以下が挙げられます。
『はじめてのMATLAB』(近代科学社、北村達也)
『MATLABクイックスタート: 数式処理から機械学習まで』(東京大学出版会、藤原 毅夫)
『最新MATLABハンドブック 第七版 機械学習・ディープラーニング対応』(秀和システム、小林一行)
これらの書籍はある程度のプログラミング知識を持つ方なら、MATLABの理解を深めるために役立ちます。
ただし、何年に発行された情報かを確認するのがポイントです。古いノウハウやまとまっていない情報を載せる書籍ではなく、自分の知りたい学習レベルに合わせた本を選ぶようにしましょう。
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MATLABの始め方
MATLABを使い始めるには、いくつかのステップを踏む必要があります。まず最初にMATLABをインストールし、デスクトップ環境言語を日本語に設定しましょう。
ここでは、MATLABを始めるためのインストールの方法や環境設定を解説します。
MATLABのインストール
インストールするにはMathWorksアカウントを作成する・サインインする必要があります。すでにアカウントを所持している方はメールアドレスを入力し、持っていない方は作成しましょう。
個人で使用する以外の企業や教育機関など団体利用の場合、代表の管理者のメールアドレスでサインインする必要があります。複数人で使う場合は、インストール方法を分かりやすく記載したガイドを作成するとスムーズです。
次に、インストーラーをダウンロードします。インストールにはネット接続が必要です。リリースバージョン、ダウンロードの種類、OSを選択するとダウンロードが開始され、インストーラーからMATLABをインストールしましょう。
MATLABのデスクトップ環境を日本語に変更
MATLABデスクトップは基本的に英語です。日本語、韓国語、中国語の翻訳対応がされているため、言語を日本語に変更して使ってみましょう。デスクトップ言語を変更するには、以下の手順で進めてください。
ホーム>環境>基本設定>MATLAB、一般>デスクトップの言語を選択
MATLABのほとんどのデスクトップ要素・アプリでは、この「デスクトップの言語」で指定したものが使われます。ただし一部の機能ではオペレーティングシステムの表示言語となるため、正しく意味が読み取れているか確認することをおすすめします。
また、デスクトップの言語変更はバージョンによって設定方法が異なります。MATLAB Answersではサポートスタッフが使用方法のFAQを公開しているため、参考にすると良いでしょう。
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MATLABの将来性
MATLABの将来性は高いです。自動運転やロボット工学、AI開発など最先端分野での需要が年々拡大しており、特に研究開発の現場で需要を伸ばしています。産業界でも画像処理や信号処理、制御システム開発において広く採用されており、既存システムの保守管理で継続的な需要も多いです。また、教育機関での採用も多く、次世代の技術者育成ツールとしても重要な位置を占めています。そのため、今後も安定した需要が見込まれます。
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MATLABに関するよくある質問
ここでは、MATLABに関するよくある質問とその回答をまとめました。MATLABについてのよくある質問としては、MATLABでできることや強みについての疑問が挙げられます。
また、PythonとMATLABの学習順序についてやMATLABの語源についても質問されがちです。これらの質問への回答を通じて、MATLABについての理解を深めていきましょう。
Q1. MATLABで何ができますか?
MATLABができることはさまざまです。中でも、ディープラーニングのアルゴリズム開発やデータ解析、数値計算処理、Simulinkを活用したレポーティングとテストなどは専門家からも評価される部分であり、MATLABを自由に使いこなすことができればエンジニアの強い味方になってくれるでしょう。
Q2. MATLABとPythonはどちらを先に学習すべき?
Pythonは無料でMATLABよりも習得難易度が低いため、まずはPythonから始めるのがおすすめです。なお、将来的には、どちらも習得しておくと強みになります。特に、MATLABは工学や科学分野での数値計算に優れており、Pythonは機械学習やWeb開発など幅広い分野で活用できるため、両方のスキルを持つことで、より広範囲の問題に対応できます。
関連記事:未経験でPythonエンジニアになるには?学習方法や求人例を紹介
Q3. MATLABの語源は何ですか?
MATLABという名称は、MATrix LABoratory(行列実験室)に由来しています。名前の通り行列操作が得意であり、さまざまな理工学分野に利用されるだけでなく、産業分野にも幅広く利用されています。
Q4. MATLABの強みは何ですか?
MATLABの強みは大きなコミュニティがあり、学習しやすく使いやすい環境が整っている点です。さらに、高速な数値計算処理能力と簡単にグラフや図を作成できる機能も、MATLABの大きな強みといえるでしょう。
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まとめ
MATLABとは、数値計算処理やディープラーニングの分野で活用されている開発環境およびプログラミング言語の名称です。先端IT人材の不足が危惧されている今、Pythonなどとあわせて習得しておくことで、ITエンジニアとしての市場価値を高めることにつながります。
技術のキャッチアップはさまざまなシーンで役立ちます。この記事を参考に、MATLABの取得を始めてみてはいかがでしょうか。
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