未経験からデータサイエンティストに転職できる?
企業や組織の持つデータを分析することにより有益な傾向を見出し、経営上の判断などの支援を行うデータサイエンティストは、新卒者でも高年収が期待できる職種として注目を集めています。データサイエンスではデータ分析の手法としてAIを活用しており、技術を持った人材はIT業界以外からも強く求められる存在です。
しかし、そもそもIT業界が未経験であったり、数学や統計学の知識がない未経験者でもデータサイエンティストになることは可能なのでしょうか。ここでは、未経験からデータサイエンティストに転職することについて具体的に解説します。
関連記事:データサイエンティストとは?仕事内容や必要なスキル、目指し方を紹介
IT業界未経験ならかなり難易度が高い
データサイエンティストは一般的なプログラマーやSEとは異なり、データを解析してビジネス上の判断を支援することがミッションとなります。データの解析にはプログラミング言語やAIを活用するものの、データサイエンティストにとってアプリケーションを構築することは目的ではなく手段です。この点は、これまでのITエンジニアとは少し異なる存在といえます。
データサイエンティストとして活躍するためには、Pythonをはじめとしたプログラミングの知識を持ち合わせていることが理想とされます。そのため、IT業界での経験が一切ない未経験者にとっては極めてハードルが高く、採用を勝ち取ることは決して簡単ではありません。
データサイエンティストとして内定を勝ち取る新卒者の中には、学生時代に専門の学部で勉強しながら、インターンシップやアルバイトとしてデータサイエンスに関わる仕事をしてきた方が多いです。
未経験者は3年程度のデータサイエンス関連の経験が必要
未経験の方がデータサイエンティストへの転職を考えている場合、最低でもデータサイエンス関連の経験3年以上が必要とされます。未経験からのスタートでも、中長期的な計画を立ててデータサイエンスの知識や経験を積むことが重要です。データサイエンス関連の経験を段階的に積み重ねることで、データサイエンティストとしてのキャリアを効果的に築くことができます。
データ分析に関する職種がおすすめ
データ分析に関する職種からであれば、データサイエンティストに転職しやすいです。プログラマーやシステムエンジニアからでも転職できる可能性はありますが、なるべく類似する職種からの方がハードルは低いでしょう。
具体的には研究職、アナリスト、マーケターなどの職種で、特にデータ分析に力を入れて従事していた場合は、データサイエンティストへの転職に有利です。
エンジニア職種からの転職は可能
エンジニア職種でアプリケーション開発の仕事をしていた場合には、条件を満たせばデータサイエンティストとしての転職が可能です。
データサイエンティストはITを活用してデータの収集や分析を行う仕事のため、ITに関するスキル・知識と統計学的な手法、ディープラーニングをはじめとした機械学習の利用スキルが必要となります。エンジニア職種の場合にはITの基礎的なスキルは持ち合わせている状態のため、統計学的な知識とAIなどを用いてデータ解析を行うアプリケーション構築スキルを習得することが条件となります。求人によっては、これらのスキル習得は転職後でも可の場合もあります。
数理統計を扱う職種からの転職は一般的
データサイエンティストに求められる統計学や数学といった知見は、AIが注目されるようになってから新たに生まれたものではありません。これまでも数理統計を扱う職種は存在しており、たとえば調査会社やマーケティング会社、金融機関など、さまざまな分野で必要とされてきました。
これらの経験や知見がある方の場合は、数理統計の知識を活かしてデータサイエンティストとして転職に成功する可能性はあります。むしろ中途採用としてデータサイエンティストの転職に成功する方の多くは、このような知見や経験のある方でないと難しいといっても過言ではありません。
データサイエンティストへの転職で経験を活かしやすい業界
IT業界以外で数理統計を扱う経験を活かしやすい業界としては、以下のような業界があります。いずれもデータ解析を用いて業務の効率化が可能で、データサイエンティストを求めている業界です。
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・金融
・不動産
・製造
・コンサルティング
・広告
これらの業界で数理統計を扱う経験を積んでいれば、データサイエンティストへの転職時にアピール材料になります。各業界の業務知識をもっていれば、その業種をクライアントに持つデータサイエンティストとして需要があるためです。
そのほか、数理統計を扱う経験を積みながらSEやマーケティング、コンサルタントなどの職種で活躍した後に、データサイエンティストへ転職する道もあります。
データサイエンティストの未経験求人状況
データサイエンティストは若い世代でも優秀な人材が多く、即戦力として活躍しているイメージがあります。しかし、実際のデータサイエンティストの未経験求人状況はどのようになっているのでしょうか。ここでは、レバテックキャリアで公開されている求人案件から「未経験20代」「未経験30代」「未経験40代」と各世代ごとに詳しく解説していきます。
データサイエンティストの求人・転職情報>
20代未経験の場合
20代の社員が多く活躍している企業であっても、未経験の人材を採用しデータサイエンティストとして成長させてくれるケースは極めて稀です。求人の条件として学歴不問や外国籍可などの好条件が揃っている企業は多いものの、少なくともAIの知見があったり、Pythonなどのプログラミング経験があるなど、関連スキルを求められるケースが多いように見受けられます。
30代未経験の場合
レバテックキャリアで経験者を含めた30代が活躍中のデータサイエンティスト求人を探してみると、20代が活躍中の企業よりも多くのニーズがあることが分かります。2024年10月15日時点で、こだわり条件「30代が活躍中」の職種「データサイエンティスト」の求人・転職情報は127件ありました。同時点でこだわり条件「20代が活躍中」の職種「データサイエンティスト」の求人・転職情報は26件と大きな差があります。30代の業務に知見をもったデータサイエンティストには、20代よりもニーズがあるといえる状況です。
ただし、こちらも未経験者を募集している企業は極めて稀で、専門的な資格を持っていたり、AIに関連するスキルを有していることが前提となります。
40代未経験の場合
40代が活躍している企業におけるデータサイエンティストの求人案件は、20代、30代が活躍している企業に比べると大幅に少ない傾向があります。一般的なITエンジニアであれば40代ともなると、PMやPLなど上流工程を担うことが多く、データサイエンティストの求人においても豊富な経験があり、リーダーや管理職として活躍できる方を対象とした求人がほとんどです。
未経験可のデータサイエンティスト求人例
レバテックキャリアのこれまでの求人データを参考に、データサイエンティストとしての実務が未経験の方も対象にした求人例をご紹介します。対象業務によって必要とされる人材像やスキルには違いがあります。未経験からのデータサイエンティストへの転職を検討する方は、求人の傾向を掴み求められるスキルの獲得などにお役立てください。
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BIツールを用いたデータ分析と可視化業務の求人例
BIツールを用いてデータ分析およびその可視化を行うデータサイエンティストの求人例として下記が挙げられます。
【業界】
ソフトウェア/SIer
【業務内容】
・BIツール(Tableau他)を用いたデータ可視化
・ダッシュボード構築業務
・データマート設計/構築指示
・クライアントとの細部仕様調整
【求められるスキル・経験】
・プログラミング(1.5年以上/言語不問)
・チャレンジ精神を持ち新たな業務、技術に挑戦できる
・仮説の立案と数値の読み解き
【想定年収】
350~500万円
【勤務地】
愛知県
データ分析基盤のクラウドシフトを行う求人例
クライアントの既存オンプレミスのデータ分析基盤をクラウドシフトするデータサイエンティストの求人例は下記の通りです。
【業界】
IT・通信
【業務内容】
・クライアントのオンプレミスに構築されたデータ分析環境のクラウドシフト対応
・利用するサービスはデータ連携「AWS Glue」、BI部分「AWS QuickSight」、AI部分「Amazon Forecast」
【求められるスキル・経験】
・SQLを用いた実務経験1年以上
・AWS Glue、AWS QuickSight、Amazon Forecast、その他BIツールを用いた業務経験半年以上
【想定年収】
450~700万円
【勤務地】
神奈川県
マーケティングやデータ分析、AI構築を行う求人例
マーケティングやデータ分析、AI構築に携わるデータサイエンティストの求人例です。
【業界】
IT・通信
【業務内容】
・クライアントの持つ大量のデータを活用した企業変革支援
・クライアントの顧客価値創出/拡大にむけた戦略策定
・施策立案に向けたマーケティング分析
・AIを用いたCBMソリューションの構築
・構築したデータ分析の仕組みをグループ内展開
【求められるスキル・経験】
・統計学や機械学習に関する知見および経験
・分析プログラミングもしくはソフトウェア開発に関する知見および経験
・試行錯誤しながら結果や成果を求めた経験
いずれも、実務経験なしで独学での経験も可
【想定年収】
400~600万円
【勤務地】
大阪府
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの仕事とは、どのような仕事内容なのでしょうか。
データサイエンティストの仕事は、具体的には「課題抽出および仮説立案」「データ分析設計・環境構築」「データ加工、レポーティング」「データ分析と仮説検証」「戦略および施策の提示とモデル構築」などがあります。ここでは、データサイエンティストの仕事内容について解説します。
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データアナリストとデータサイエンティストの違いは?
課題抽出および仮説立案
企業が抱えるビジネス課題を抽出し、どの課題を解決すべきか・解決方法にはどのような方法があるかを整理・提案します。このとき、机上の空論にならないように実際に収集可能なデータや実行可能な分析方法を踏まえながら、仮説を立てることが大切です。
ここで決定した仮説に基づいて後続の作業(データ収集・分析・環境構築)が行われるため、データサイエンティストの仕事の中でも重要度が高いフェーズです。
データ分析設計・環境構築
立案した仮説をもとに、必要なデータや分析モデルの確定、データ分析基盤の構築を行います。たとえば、ERPやCRMからどのデータを収集すべきかを確定し、API接続によってデータが取得できるように、プログラムの設計・開発を行います。また、データの蓄積・検索・運用に使用する各種データベースの構築も担うことがあるでしょう。
このようにエンジニア色の強い仕事も含まれるため、プログラミング言語やDB関連のソフトウェアに関する知見・スキルが問われます。プログラミング言語としてはJavaやPython、Rなどが該当し、DB関連ではHadoop、MySQL、NoSQLなどの構築・運用スキルを求められることが多いでしょう。
データ加工、レポーティング
データ加工やレポーティングもデータサイエンティストの仕事のひとつです。データ設計と環境構築が完了した後、データの収集と加工作業に取り組みます。集めたデータを加工し、グラフや表を使って視覚化を行います。また、主要業績評価指標(KPI)の設定も行うことがあります。これらの作業は、データが意味する内容を理解し、それを他の人々に伝えるための重要なステップです。
データ分析と仮説検証
データ分析では、収集した各データを組み合わせながら、統計的に有意なデータ項目を特定します。例えば、「サービスの継続率に関連するデータ項目はどれか」「継続率を上げるためには、どのデータの動きに着目すべきか」といった観点でデータ項目を特定し、分析を行います。さらに、最初のフェーズで立案した仮説と突き合わせながら、仮説の妥当性を判断していきます。
戦略および施策の提示とモデル構築
戦略および施策の提示とモデル構築もデータサイエンティストの仕事のひとつです。データ分析の結果をもとに、ビジネス上の課題解決につながる経営戦略や業務施策を決定し、顧客に提示します。さらに、提示した内容が当初の目的に合致しているかを判断するため、アルゴリズムの実装や予測モデルの構築も担当します。
データサイエンティストに必要なスキル
データサイエンティストに必要なスキルとしては「ビジネスセンス」「データサイエンススキル」「データエンジニアリングスキル」の3つのスキルがあります。これらのスキルを身につけることで、データサイエンティストとしての業務の幅を拡げることが可能です。ここでは、データサイエンティストに必要なスキルについて詳しく解説します。
関連記事:データサイエンティストになるには?目指し方や必須スキルを解説
ビジネスセンス
ビジネスに対する深い理解、論理的思考能力、文書作成能力、プレゼンテーション能力が求められます。データサイエンティストとしてデータを分析し導き出した結果については、事業戦略などに役立てることが最終的な目的です。データサイエンティストは事業戦略策定上の根拠となる情報を提供して支援を行う立場のため、経営層などに分かりやすく分析結果を伝える必要があります。そのため、分析対象の業界や自社のビジネスモデルのほか、市場のトレンドや競合他社の状況も十分に理解しておくことが重要です。
データサイエンススキル
機械学習、深層学習、ディープラーニングなどの知識やスキルです。深層学習(ディープラーニング)とは、十分なデータ量があれば、機械(AI)が自動的にデータから特徴を抽出してくれるディープニューラルネットワーク(DNN)を用いた学習のことをいいます。
機械学習や深層学習、ディープラーニングの考え方、特徴、使い方、決定木などの基本的なアルゴリズムを理解し、取り扱えることが求められます。また、ロジスティック回帰、ニューラルネットワークなど、代表的なアルゴリズムの知識やスキルがあると希少性が高くなり、データサイエンティストとして高年収を獲得しやすくなります。
データエンジニアリングスキル
データサイエンティストの業務には、データ分析を行うための基盤構築、データ収集と加工などが含まれます。これらのデータエンジニアリングに向けたITスキルもデータサイエンティストに必要となるスキルです。
各種データベースの取り扱い、Git、Hadoop、Dockerなどのミドルウェアのスキルや知識、ETLツールを活用するスキル、LinuxやWindowsなどのOSについての知識、AWS、Google Cloud Platform(GCP)などクラウドサービスに関する知識、Tableauなどの統計関連のBIツールの知識などの様々な経験やスキルがあると希少性が高まり、データサイエンティストとして高年収の獲得にもつながります。
未経験からデータサイエンティストを目指すためのキャリアプラン
未経験からデータサイエンティストになることは、極めてハードルが高いです。しかし、どれほど優秀なデータサイエンティストであったとしても、必ず未経験の時期はあります。これからデータサイエンティストとして内定を勝ち取るためには、どのようなキャリアプランが考えられるのか、身につけるべきスキルもあわせて解説します。
関連記事:データサイエンティストの転職!各業界の需要や求人例も紹介
IT業界未経験から目指す場合
年齢を問わずIT業界未経験からいきなりデータサイエンティストとして内定を勝ち取ることは極めて難しいでしょう。そこでおすすめなのが、段階的にステップを設けてデータサイエンティストになる方法です。まずは関連性のある職種へ転職し、スキルや知見を身につけたうえでデータサイエンティストを目指します。
代表的な関連職種としては、データエンジニアリングスキルやビジネスセンスなどのスキルが共通している「SE(システムエンジニア)」や、消費者のニーズを探りながら商品企画や販売促進、市場調査などの分析を行うことでデータサイエンススキルを高められる「マーケター」などが挙げられます。
エンジニア職から目指す場合
エンジニア職種からデータサイエンティストを目指す場合には、すでに持っているITスキルに加えて、統計学的な知識とデータエンジニアリングのスキル習得や経験を積むことでデータサイエンティストを目指せます。特にAIや機械学習に関するプログラミング言語の習得、業務経験を積むことで活躍できる可能性を高めることが可能です。
AI・機械学習の分野で活用されるプログラミング言語を勉強する
未経験からデータサイエンティストを目指す場合、最低限身につけておきたいのがプログラミングスキルです。特にデータサイエンスやAI、機械学習の分野で重宝されるのが下記の3つです。
Pythonは、機械学習やAI開発分野で人気の高いスクリプト言語です。シンプルな記述で複雑な処理を行えることとデータ分析用のライブラリが豊富という特徴を持ちます。「NumPy」「Pandas」「Jupyter」などのライブラリがあり、実業務でも頻繁に使用するため、基礎文法と合わせて使い方を身につけておきましょう。
Rは統計解析を目的として開発された言語です。統計解析に必要な機能を複数備えており、大量のデータを効率よく解析することができます。「dplyr」や「stringr」といった拡張パッケージと合わせて学びましょう。
SQLは、DB操作用の言語です。国際的に標準化されており、RDBMSであればDBの種類に関わらず使用できます。データサイエンティストは、頻繁にデータ検索・抽出・操作を行うため、基礎レベルのSQLを扱うスキルは必須です。
関連記事:データサイエンティストに求められるプログラミング言語と学習方法
数理統計を扱う職種から目指す場合
数理統計を扱う職種からデータサイエンティストを目指す場合には、技術的な知識を補うことも大切ですが、統計的な知見を深めてビジネスに関して強みをさらに補強しておくのも一つの手段です。統計学的な手法による課題抽出や仮説の立案、検証スキルを向上させることなどが方法の一つとなります。
また、数学の知識もベースとして必要なため強化するとよいです。あらためて、微分積分学、線形代数などを復習しておきます。さらに、機械学習を活用するために統計学からは、パターン認識、一様分布、正規分布、二項分布、ポアソン分布といった確率分布の知識も確認しておきましょう。
Kaggleを使って機械学習に挑戦する
Kaggle(カグル)では約5万のデータセットと約40万のノートブックが公開されています。データセットとはデータサイエンスで用いるデータの集合体です。データサイエンス業務に必要とされるコードとデータが活用可能です。
Jupyter Notebookを立ち上げて、CSVファイルを読み込み、実際に機械学習を試してみましょう。未経験からデータサイエンティストを目指す場合、Kaggleで練習した後に、実際の業務のExcelファイルを読み込み、自分なりに機械学習をして結果を考察できると面接で高評価を得られ、内定に近づきやすくなります。
データサイエンティストになるためにおすすめの勉強方法
SEやマーケティングなどの関連職種からデータサイエンティストを目指す場合であっても、仕事をしながらスキル習得に向けて継続的な勉強をしていかなくてはなりません。データサイエンティストになるためにおすすめの勉強方法としては、書籍や通信講座の利用、データサイエンスオンライン講座、Udemy、現代統計実務講座などがあります。ここでは、データサイエンティストになるためにおすすめの勉強方法について解説します。
関連記事:データサイエンティストに必要な勉強は?学習ロードマップを解説
書籍を活用する
知識やスキルを身につけるもっとも手軽な方法として、書籍を活用した勉強方法が挙げられます。データサイエンティストとなるための基礎として、体系的な知識を身につけるのに適した学習方法です。
ただし、本を読んだだけではデータサイエンティストに求められる実践的なスキルを身につけることは難しいため、その後の実践的な学習と組み合わせて利用しましょう。
今回は、データサイエンティストに求められる基礎的な知識を理解するために、役に立つ本を紹介します。
初学者にも読みやすいおすすめ書籍
『[エンジニアのための]データ分析基盤入門 データ活用を促進する! プラットフォーム&データ品質の考え方』(斎藤 友樹、技術評論社)
データ分析基盤の構築、運用、活用に関するガイドラインを解説する入門書です。機械学習から不正検知まで、多様なデータ利用を支える基盤に焦点を当て、基本用語から可視化技術まで詳細に解説しています。
『Rによるデータサイエンス(第2版):データ解析の基礎から最新手法まで』(金 明哲、森北出版)
Pythonと並んで機械学習に適したプログラミング言語として注目されているのが「R」です。「Rによるデータサイエンス」は、Rのデータサイエンス分野での活用方法を網羅的にまとめた専門書で、データサイエンティストにとって必携の1冊といえます。
『SASによるデータ解析入門 第3版: SASで学ぶ統計的データ解析1 』(竹内啓 他、東京大学出版会)
SAS(Statistical Analysis System)とは医療や金融など幅広い分野で活用されているソフトウェアです。統計学と親和性が高く、データサイエンス分野でも注目されています。本書は、SASの入門用の1冊としておすすめです。
通信講座を受講する
データサイエンティストになるためにおすすめの勉強方法のひとつが、通信講座を受講することです。通信講座は自分の都合のいい時間帯に自宅で学習できることがメリットです。また、データサイエンティストに必要な知識を体系的に学習できます。
そのため、まとまった時間が確保できない方や予算が限られている方におすすめの勉強方法です。通信講座としておすすめなのが、データサイエンスオンライン講座やUdemy、現代統計実務講座などです。ここでは、これらの通信講座について紹介します。
データサイエンスオンライン講座
データサイエンスオンライン講座は、総務省統計局が提供している社会人や大学生に向けたデータサイエンスの基礎講座です。受講登録は無料で、第1週から第5週までの講座が用意されています。1週あたりの受講想定時間は3時間となっており、分析や予測の概念、手法、活用場面などを学習できます。
また、入門編として≪特別開講≫社会人のためのデータサイエンス入門も提供されています。
Udemy
Udemyはデータサイエンスの分野にかかわらず、IT分野のスキルやビジネススキル全般を学べるオンライン講座です。1講座あたりの価格も千円台から数万円までのものが多く、学びたいカリキュラムを自ら選択できます。
データサイエンスに関連したカリキュラムとしては、PythonやR、統計学の基礎など種類も豊富にラインナップされています。
現代統計実務講座
現代統計実務講座は、一般社団法人の実務教育研究所が運営している通信講座です。その名の通り統計学を専門にしたカリキュラムが中心となっており、標準学習期間である8ヶ月の間に基礎から応用まで体系的に学ぶことができます。
現代統計実務講座は文部科学省によって認定されている通信講座でもあり、カリキュラムの質、指導体制ともに極めて充実していることが特徴です。
スクールに通う
プログラミングスクールでもデータサイエンスに関連するカリキュラムが提供されています。データサイエンティストを育成するためのコースもあるので、効率的に学習できるでしょう。また不明点は講師に質問できるので、その点でも挫折せずに学習を継続しやすいはずです。
データサイエンティストを目指す際に役に立つ資格
データサイエンティストに必要なスキルを習得するために、役立つ資格はいくつか存在します。ここでは、データサイエンティストを目指す際に役立つ資格について解説します。プログラマーやエンジニアは実務スキルが重要視される傾向があり、それはデータサイエンティストも同じです。しかしデータサイエンティストは客観的なスキル証明が難しく、またポートフォリオとして成果物を提出するのも難しいです。そのため、データサイエンティストは資格によるスキル証明がより役立ちます。
統計検定
統計検定®は、一般財団法人の統計質保証推進協会が主催する検定で、統計学に関する知識を評価する統一試験です。5段階の級と2つの資格によって試験が分かれており、習熟度に応じた検定が受けられます。データサイエンティストに求められる統計学的な水準は、一般的に2級とされます。そのため、統計検定を受ける際は2級合格を目指すようにしましょう。
また、データサイエンティスト向けにDS基礎、DS発展、DSエキスパートという専門の検定科目も提供されています。統計に関する基礎的な知識に加え、データサイエンスについてのスキルを示せるため、おすすめの資格です。
統計検定2級は紙だけでなく、オンラインで受験できるCBT方式でも提供されています。CBT方式では一年間を通して受験できるため、自分の学習ペースに合わせて、試験を受けることができておすすめです。
ビジネス統計スペシャリスト
ビジネス統計スペシャリストは、オデッセイコミュニケーションズが運営している民間の認定資格です。試験科目は「エクセル分析ベーシック」と「エクセル分析スペシャリスト」とよばれる2種類に分けられます。ビジネス統計スペシャリストの試験では、Excelを活用したデータ分析の実用的な能力と分析結果を正確に理解し適用する能力についてが評価される重要な要素です。
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験は、IPA(情報処理推進機構)が運営し、経済産業省が認定するITに関連した国家資格試験です。習熟度や分野別に試験が分かれています。データサイエンティストを目指すなら「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」「データベーススペシャリスト試験」が役立つでしょう。
アクチュアリー資格試験
アクチュアリー資格試験は、日本語では「保険数理士」や「保険数理人」とも呼ばれます。アクチュアリー試験では、1次試験の「数学」が確率、統計、モデリングといったデータサイエンティストの必須知識を磨くのに適しているといえるでしょう。
ORACLE MASTER
ORACLE MASTERは、Oracle Databaseに関するスキルと知識の認定を行う資格です。オラクル社によって提供されています。試験はデータベースの管理や運用、SQLの習熟度が問われます。
Oracle Databaseは世界的なシェアを持つデータベース製品で、この資格はブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの4つのレベルに分けられます。シルバーレベル以上は、世界基準の資格とされています。
OSS-DB技術者認定資格
OSS-DB技術者認定資格は、LPI-Japanが運営するオープンソースデータベースPostgreSQLの技術力と知識を認定するIT技術者資格です。試験はデータベースの知識や運用・開発、チューニング、トラブルシューティングなどが問われます。
OSS-DBを取得することで、企業が必要とするデータベース技術者のスキルを持つことを証明できます。SilverとGoldの2つのレベルがあり、Goldではより深い知識が求められます。
Python3 エンジニア認定データ分析試験
Python3エンジニア認定データ分析試験は、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が運営する資格試験です。この試験はPythonを用いたデータ分析に特化しており、Pythonの基礎や数学、Pandasなどのデータ分析ライブラリ、Jupyter Notebookなどのツールに関する知識が問われます。この資格は、Python関連の資格の中で、特にデータサイエンティスト向けの内容となっています。
E資格
E資格は一般社団法人日本ディープラーニング協会が運営する、ディープラーニングの理論とその適切な実装方法についての知識と能力を認定する資格試験です。AIやディープラーニングを用いたアプリケーションを実装するエンジニアが主な対象です。
この資格を受けるには、JDLAの認定プログラムの修了が必要です。試験は年に2回行われ、合格率は約60%程度とされています。データサイエンティストを目指す方であれば、取得しておきたい資格です。
G検定
G検定(ジェネラリスト検定)は、日本ディープラーニング協会(JDLA)が運営するAIと機械学習に関連し、ビジネスでディープラーニングを活用する知識を証明する検定試験です。ビジネスでAIを活用するジェネラリストを対象としています。
試験では、人工知能(AI)や機械学習、ディープラーニングの基礎概念と応用技術などが問われます。試験は年3回実施されており、自宅での受験も可能です。合格率は60〜70%と比較的高めの試験です。
未経験からデータサイエンティストを目指す志望動機の書き方
未経験からデータサイエンティストになるための、志望動機の書き方のポイントや例文を紹介します。
特に志望動機を作成するポイントである「将来のビジョンを明確に伝える」「志望企業を選んだ理由を明確に記載する」「企業に入社後、どのようなスキルで活躍できるのかを伝える」について詳しく解説します。志望動機に悩まれている方は、ぜひ参考にしてください。
志望動機を作成するポイント
志望動機を作成するポイントは複数あります。最終的には企業にとって自分が役立つ存在であることをアピールしなければならないのですが、そのためのアプローチが複数あるためです。以下に紹介する内容をすべて網羅することで、効果的な志望動機になります。
1. 将来のビジョンを明確に伝える
将来のビジョンを明確に伝えることは、企業にとって大きなアピールにつながります。ビジョンを実現することで企業に貢献できるということもありますが、ビジョンのある人はモチベーションが高いため、仕事に精力的に取り組む可能性が高いです。企業側から見ると魅力的な人材になるということです。
2. 志望企業を選んだ理由を明確に記載する
応募先企業の社風や事業内容の詳細をチェックし、特徴を掴んでおくことが大切です。その上で、自身の知識・スキル、方向性を合わせます。企業からすると自社を選んだ理由が明確でないと、他社に流れてしまったり、採用しても辞めてしまう可能性が高いです。そういった意味でも、なぜその企業を選んだのか納得のいく理由が必要です。
3. 企業に入社後、どのようなスキルで活躍できるのかを伝える
データサイエンティストの場合、ビジネス・プログラミング・統計の専門スキルが必要です。職務経歴書を見直して、自分のスキルや知識を採用担当者へ正確に伝えることがポイントです。未経験でも、ITシステムやプログラミング言語についてどのくらいのスキルがあるのか、経営課題の解決にどう取り組んで解決したかを示しましょう。
志望動機の例文
データサイエンティストが未経験の方に向けて、志望動機の例文を記載します。
私はWeb広告企業にてWebアプリの開発をしてきました。Python、PHP、Ruby言語が扱えます。貴社が展開している輸入中古車のサブスクリプションモデルは、他企業にはない独自のビジネスモデルであり、多面的なデータ分析ができると考え、貴社を志望いたしました。
インターネットやSNSが普及し、膨大な情報が溢れる現代において、データサイエンティストは必要不可欠な職業だと思っております。ビッグデータを専門的に扱えるデータサイエンティストの仕事に興味を持ち、Webサイトを活用して統計解析やデータ分析の勉強をしています。
入社後は、Web開発で培ったプログラミング力に学んできた統計解析の知識を活かし、貴社の事業成長に貢献していきたいと存じます。
データサイエンティストの年収相場
データサイエンティスト協会によるアンケート『データサイエンティストのリアル』によると、データサイエンティストの平均年収は2020年時点で791万円という調査結果が出ています。よって、未経験の入社時点で年収が低くとも、経験を積み重ねることで、将来的な年収アップが期待できる職種といえます。
またレバテックキャリアが2024年10月15日時点で公開中の求人・転職情報より職種「データサイエンティスト」のデータを30件抽出し、年収の平均値を算出しました。この結果から、データサイエンティストの平均年収は約867万円と想定することができます。
下限の平均年収が約616万円、上限平均が約1,117万円と高い水準にあり、最も年収が高い求人では最大年収は2,000万円に及びました。スキルの高いデータサイエンティストは高年収を望める職種といえるでしょう。
データサイエンティストの求人・転職情報>
関連記事:データサイエンティストの平均年収は高い?年収を上げる方法や将来性を解説
データサイエンティストに向いている人の特徴
データサイエンティストには、どのようなタイプの人が向いているのでしょうか。
データサイエンティストに向いている人の特徴としては、論理的思考力があることや情報収集や分析が好き、業務改善・課題解決への意欲が高いなどがあります。ここでは、これらのデータサイエンティストに向いている人の特徴について解説します。
関連記事:データサイエンティストに向いている人の特徴とは?将来性も解説
論理的思考力がある
データサイエンティストには直感的な思考よりも、筋道立てる論理的思考力があることが重要です。そのため、問題を整理し結論を導く能力である論理的思考力がある方は向いています。理系出身でなくてもデータサイエンティストになれますが、数値やプログラミング言語に抵抗がなく、曖昧な直感ではなくデータに基づいて論理的に答えを導く能力が必要です。
情報収集や分析が好き
データサイエンティストに向いている人は、自分で情報収集や分析し、多種多様な情報を整理できる人です。ただデータを分析するだけでなく、データをビジネスに活用し、価値を創出することも重要です。つまり、「このデータは何を意味するのか」「どうやってビジネスに活用できるか」を常に考え、多角的に分析できる人が求められます。広い視野を持ち、柔軟に物事を見ることができる人はデータサイエンティストとして活躍できる可能性があると言えます。
業務改善・課題解決への意欲が高い
データサイエンティストはさまざまなデータと向き合い、業務改善・課題解決のために試行錯誤を繰り返す職種です。業務改善・課題解決への意欲が高い人にとってはやりがいのある職業で、予想外の結果に遭遇しても諦めず、成果を追求する粘り強さが必要です。データサイエンティストはクライアントの課題を抽出し、データを活用して問題解決を導く役割を担っています。そのため、高い問題解決能力を持つ人に向いている職業と言えます。
データサイエンティストは将来性のある職種
データサイエンティストは、将来性がある職種と言われています。その理由としては、現代社会においてビッグデータの活用が推進されていることがあります。その他にも、以下のような理由があります。
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・データサイエンティストの需要が高まっている
・ビッグデータ関連の市場拡大
・AIなどの技術開発の加速
・IT人材の不足
・AIに代替されにくい
これらの理由により、データサイエンティストは今後も高い需要で欠かせない職種になると予測されています。
関連記事:データサイエンティストの将来性ー10年後はどうなる?
データサイエンティストに関するよくある質問
データサイエンティストを目指す方にとって、データサイエンティストに関するさまざまな疑問を持つ方は多いでしょう。ここでは、データサイエンティストに関するよくある質問について回答します。データサイエンティストについて知ることで、自分が目指すべきか、足りないものは何か、といった判断に役立てください。
Q1. アルバイトからデータサイエンティストの経験を積めますか?
単純なデータ分析・加工の仕事は、アルバイト求人もあります。しかし、データサイエンティストの重要な役割はビジネス課題の解決にあり、アルバイトでは本質的な実務経験は積めません。
新卒・第二新卒以外で未経験から目指す場合、マーケターやエンジニアなどを経験し、キャリアアップを図ることがおすすめです。
Q2. 文系学部出身でもデータサイエンティストになれますか?
文系学部出身のデータサイエンティストも一定数存在します。データサイエンティストの応募要件には、「大学教養課程における数学・統計の知識」という項目が含まれることがありますが、データ分析の実務経験や統計を学習していることをアピールできれば、十分にカバーが可能です。
Q3. 新卒や第二新卒からデータサイエンティストを目指せますか?
新卒や第二新卒からデータサイエンティストを目指すことは可能です。その際はコミュニケーション能力と向上心・好奇心をアピールしましょう。顧客からのヒアリングやデータの分析や解析の結果から問題点、課題を伝え、解決策を提案する際にはコミュニケーションスキルが重要なためです。
Q4. 30代未経験からでもデータサイエンティストになれますか?
30代未経験からでもなれますが、20代と比較されて不利になる点もあります。教育の費用対効果や体力的な面は、30代ならではの業務経験量でカバーしましょう。機械学習や統計学をしっかり勉強し、自社のデータを活用して得られた成果をアピールできれば評価につながります。
まとめ
この記事では、データサイエンティストになりたいと考えている方に向け、仕事内容や求められるスキル、未経験から目指す方法を解説しました。データサイエンティストは、ITや数学、機械学習など複数の専門知識が必要な職業であり、目指すには多くの努力が必要となるでしょう。
一方で、経済産業省が養成に力を入れるほど将来性が期待されている職業でもあります。最近では徐々に、データサイエンティストを目指す学習環境が整ってきています。データサイエンティストの仕事に興味がある方は、この記事を参考にデータサイエンティストへの転身を検討してみてはいかがでしょうか。
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