Swiftとは、Apple社が発表したオープンソースのプログラミング言語です。
iPhoneやMacは世界中で人気の製品ですが、その中で動作しているアプリの開発にもSwiftが使用されています。Swiftを使いこなすことで、どういった仕事ができるようになるのでしょうか。そして、エンジニアとしての市場価値は高まっていくのでしょうか。
ここでは、プログラミング言語「Swift」の特徴とSwiftエンジニアの将来性を解説していきます。
- Swiftとは?
- Swiftでできること
- Swiftの将来性
- Swiftを学ぶにあたって知っておくべきこと
- Swiftエンジニアの収入と転職市場
- Swiftエンジニアに求められるスキル、転職に活かせる資格
Swiftとは?
Swiftとは、Apple社がリリースしたオープンソースのプログラミング言語です。2014年に公開されてから、このSwiftを使って多くのアプリが開発されてきました。iOSアプリをはじめ、MacBookやiMacなどのPC向けアプリも数多く開発されています。
Swiftの特徴
Swiftは、ソースコードが読み書きしやすい現代的なプログラミング言語です。人が理解しやすいスクリプト言語の要素が含まれており、英文に近い表記で可読性が高いのが特徴です。
主に、Apple製品向けのアプリを開発する言語と位置づけられています。現在では、iOSアプリの開発もObjective-C言語から、よりパフォーマンスの高いSwiftに移行しており、注目度が高まっているといえるでしょう。
プログラミング言語の人気度を発表しているTIOBE(2022年12月)によると、Swiftの言語は上位15位にランクインしており、その注目度が分かります。
プログラミング言語「Objective-C」と「Swift」の違い
Objective-Cは、C言語をベースにAppleが開発したオブジェクト指向の言語です。
1983年にBrad Cox氏によって設計されたプログラミング言語であり、これまでApple製品向けのアプリは、主にObjective-C言語で開発されていました。
その後、iOSアプリの開発言語に採用されたことで多くの開発事例が蓄積していきます。2014年に公開されたSwiftに比べ、開発ノウハウが充実しているのがObjective-C言語の強みです。
一方、Swiftはこれまでのプログラミング言語の歴史を踏まえ、より洗練された言語として開発されています。そのため、Objective-Cの上位互換のプログラミング言語と呼べるほど、パフォーマンスや安全性が向上しています。
具体的に、Swiftが優れている特徴をみていきましょう。
処理速度が速い
Swiftで開発されたアプリは、処理速度の速さが特徴です。
一般的なアルゴリズムの1つ「深さ優先探索アルゴリズム」を使った整数検索では、Objective-Cよりも最大2.6倍のスピードで処理が完了すると言われています。
不具合が起こりにくい
Swiftでは安全ではないコードを排除し、変数の空白(nil)に対してチェックが厳しくなっています。これにより、ベースとなるC言語よりも安全性が高まる設計となっています。開発時に不具合の原因となる箇所を検知できるようになっているため、プログラミングもしやすくなります。
動作確認がしやすい
Swiftは、Xcodeと呼ばれる統合開発環境で開発します。開発中に一部のソースコードの実行結果を確認したい時、「Playgrounds」と呼ばれるモジュールを導入すると、リアルタイムで実行結果を確認できます。プログラミング初心者でも動作確認がしやすいのが特徴と言えるでしょう。
関連記事:SwiftとObjective-Cの特徴や違い、将来性、学習の優先度を解説
Swiftでできること
続いて、Swiftを習得したらできることを解説します。
主にApple製品向けのアプリを開発できるようになりますが、具体的には次のようなものが挙げられます。
iPhone、iPadなどのスマートデバイス向けアプリ
世界中で使われているiOS向けのアプリはSwiftで開発されています。
Appleの提供するライブラリなどを活用しながら、アプリ開発を進めることになるでしょう。
MacBookやiMacなどのPC向けアプリ
Swiftでは、iOSアプリだけではなくMacOSのアプリが開発できます。
MacOS向けのアプリの開発では、トラックパッドやマウス、キーボードによる入力やウインドウサイズの変更、ドラッグ&ドロップなど、PC上での操作を考慮する必要があります。開発時にはこれらを最適化してくれるApp機能を用いながら開発を進めます。
Apple TV向けアプリ
大画面のTVをより楽しむための製品「AppleTV」向けのアプリも開発できます。
AppleTVで使用するtvOSでは、TVのリモコンを使ったユーザーの操作を想定していたり、iOSにはないフォーカスと呼ばれる概念を制御したりする必要があります(※1)。
Apple Watch向けアプリ
ウェアラブルデバイスとして注目されるApple Watch向けのアプリ開発も可能です。
技術の進歩によってできることが増えているApple Watchですが、現在では直接音声通話(VoIP通話)機能に対応し、共有機能が強化されるなど、開発できる範囲が広がっています。将来的な用途や可能性も広がっている状況にあるため、ポテンシャルを秘めた開発領域です。(※1)
Webアプリケーション / Webサーバー
iOSのネィティブアプリを開発するプログラミング言語と思われがちなSwiftですが、WebアプリケーションやWebサーバーの構築もできます。
※1参考:開発 - Apple Developer
Swiftの将来性
2014年に公開された歴史の浅いSwiftですが、プログラミング言語としての将来性はあるのでしょうか。
ここでは、Swiftの将来性について解説します。
Swiftが将来性のある言語と言われる理由
数あるプログラミング言語の中で、Swiftは将来性があると言われる理由は、主に2つあります。
Apple向け製品開発に使われるプログラミング言語に採用されている
Swiftで作成されたアプリは世界中のiPhoneユーザーに使用されます。特に、日本国内ではiOSの市場シェアが全体の67%を占めており、その人気は極めて高いと言えるでしょう。
2014年にSwiftが発表されて以降、iOSアプリの開発で使用される言語はObjective-Cに替わってSwiftが主流になっています。そのため、今後もSwiftを用いたアプリ開発の需要は増えていくことが想定されます。
汎用性が高まっている
SwiftはiOSアプリ開発向けのプログラミング言語として認知されていますが、実はその汎用性は高まっています。Swiftがオープンソースのプログラミング言語として公開された後、Webアプリケーションの開発で使用できるフレームワークがいくつも登場しました。
代表的なフレームワークのKituraは、Swiftでサーバーサイドを開発するためのオープンソースのWebフレームワークです。このフレームワークを使うことで、WebアプリケーションやWebサーバーの開発ができます。
こうしたWebフレームワークの登場によって、SwiftはiOS向けのアプリ開発に留まらず、さまざまな場面で採用されるようになってきました。
Swiftエンジニアが知っておくべきリスク
今後も需要が高まり、エンジニアの活躍の場が広がっていくと予想されるSwiftですが、注意すべきこともあります。
継続的な情報収集が必須
Swiftは、歴史が浅いプログラミング言語です。更新頻度が高く、2014年から2022年にかけて、Swift1.0~Swift5.7まで更新されています。Swiftでアプリを開発するには、このような言語のアップデート状況をキャッチアップし、変更内容を把握していく必要があります。
需要がApple社に依存している
Swiftは、iOSアプリやmacOSアプリの開発において優れたプログラミング言語と言えます。しかし、Appleの製品以外のアプリ開発でSwiftが使用される場面は多くありません。JavaやPHP、JavaScriptの方が、WebサイトやWebアプリケーションなどの開発に多く使用されているため、Swiftと比較すると多方面に活躍の場があると言えます。
今後もSwiftエンジニアの需要はありますが、その需要は一企業であるApple社の方針によって大きく変わりかねません。Swiftと並行して別の領域のスキルを習得するなど、Apple社がもたらす需要への依存度を下げる努力も必要でしょう。
関連記事:Swiftの将来性は?需要状況や年収別に求められるスキルを解説
Swiftを学ぶにあたって知っておくべきこと
これからSwiftを勉強するエンジニアは、何から始めたらよいのでしょうか。
ここでは、Swiftを学び始める前に知っておきたいことを3つ解説していきます。
統合開発環境(Xcode)
統合開発環境とは、ソースコードを記述するためのテキストエディタをはじめ、コンパイラやデバッガなど、プログラミングに必要な機能をまとめた開発環境を指します。Swiftを用いてプログラミングを行うためには、Xcodeと呼ばれる統合開発環境が必要です。
XcodeはApple社が提供している統合開発環境であり、iOSアプリやMacOSアプリなどを効率的に開発する機能が搭載されています。例えば、Xcodeに含まれるSwiftUI機能を使うと、プレビュー画面ですぐに動作確認でき、効率的な開発ができるため、Xcodeの使い方や各種機能を知るところからはじめると良いでしょう。
Swiftの代表的なフレームワーク
Swiftで効率的にアプリ開発するには、フレームワークを利用します。用途に応じてさまざまなフレームワークがありますが、ここでは代表的なフレームワークを解説します。
Vapor
Vaporは、Swift用のWebフレームワークです。
サーバーサイドのWebアプリのAPIの開発、HTTPサーバーの作成もできます。
Perfect
Perfectは、クライアントサイドとサーバーサイドの両方が開発できるフレームワークです。双方で同じクラスやユーティリティを使用でき、開発が効率化できます。
Kitura
Kituraは、サーバーサイドの開発向けのWebフレームワークです。
IBM社によって開発され、改良が重ねられた現在は、コミュニティへ運営が引き継がれました。
Swifton
Swiftonは、Ruby on Railsを参考に開発されたWebアプリケーションフレームワークです。MySQLやPostgreSQLなどの複数のデータベースに対応しているため、開発環境に合わせやすいのが特徴です。
HTTPSwiftServer
HTTPSwiftServerは、iOSアプリと通信するサーバーを開発するためのフレームワークです。Apple社MacOS向けのネイティブアプリを開発する時に使うフレームワーク、Cocoaを拡張し、iOSアプリとサーバー間で連携できるシンプルな機能を提供します。
Swiftの勉強方法
ここでは、これからSwiftを学び始める方に参考にしてほしい勉強方法と参考情報を解説します。
初心者でも楽しみながら学べる Swift Playgrounds
Swift Playgroundsは、Apple社が提供しているSwiftの学習ツールです。世界14言語に対応しており、日本語での学習ができます。
Swift Playgroundsは、iPadとMacで使えるアプリで、コーディングの知識がない初心者や学生も対象です。統合開発環境(Xcode)をセットアップしなくてもすぐに始められるため、学習までのハードルが低いと言えるでしょう。
アプリ内で記述したソースコードはすぐに実行でき、その結果がアプリ画面にビジュアルで表現されるので、プログラムの動作を確認しながら学べます。
リファレンスとして使えるThe Swift Programming Language(日本語版)
swift.orgは、Swiftに関する情報が集約されている専用のWebサイトです。
swift.orgの中には、プログラミング言語の基本的な構文やメソッド、エラー処理に関するガイド情報が英文で記載されています。これを日本語に翻訳したドキュメントが「The Swift Programming Language(日本語版)」です。
Swiftプログラミングを学習中に、関数やプロパティなどの基本的な情報を確認する時に活用すると良いでしょう。
Swiftエンジニアの収入と転職市場
ここでは、Swiftエンジニアに挑戦する人が気になる収入と、転職市場について解説します。
Swiftエンジニアの収入
Swiftエンジニアとしてスキルアップし、収入アップを目指したいと考えている人も多いのではないでしょうか。
アイティメディア掲載の「エンジニアの年収言語別トップはSwiftの469万円、SAMURAIが調査(2022年7月)」によれば、プログラミング言語別に平均年収を見ると、最も高いのは「Swift」の469万円でした。
Swiftエンジニアの転職市場の状況
国内では、iOSを使用している人が市場の67%(※2022年12月現在)を占めていることから、iPhoneアプリ開発などの需要は引き続き高いと言えるでしょう。
一方、Swiftは2014年に発表されて歴史が浅く、まだ発展途上と言える言語です。Appleのプラットフォームやフレームワークを理解し、Swiftプログラミングのスキルを用いてアプリ開発ができるエンジニアはそう多くありません。
Swiftエンジニアは稀少性があり、市場価値を高めるキャリアプランの一つと言えるでしょう。
レバテックキャリアでは、以下のようなSwiftエンジニアの求人が掲載されています。(※2022年12月現在)
【業界】
IT・通信・インターネット/ソフトウェア
【業務内容】
主な業務は、iOSアプリ開発です。現在は、PdM、デザイナー、QA、エンジニアを含めて10人程度を1チームとして、日々スクラムを行いUXを考えながら、複数チームでユーザーアプリ開発に携わっています。
<具体的な業務内容>
・業務のUXを向上させるための機能開発
・ユーザーのペインの調査や、それに伴う機能開発
・プロダクト開発プロセスやアプリ開発の効率化
・iOSの新機能のキャッチアップと、それを生かした機能提案
【求められるスキル・経験】
・Swiftを利用したiOSアプリの開発/運用経験
・リアクティブプログラミングの実装経験
・Gitを用いたチーム開発の経験
【想定年収】
600~1,200万円 (給与形態:年俸制)
【福利厚生】
健康保険 / 厚生年金 / 雇用保険 / 労災保険 / 通勤手当 / 慶弔休暇 / 年末年始 / 有給休暇
【予定勤務地】
東京都港区(フルリモートワークOK)
関連記事:Swiftエンジニアの転職市場状況とは?求人例を含め解説
Swiftエンジニアに求められるスキル、転職に活かせる資格
これからSwiftエンジニアとして転職を考える方向けに、求められるスキルの解説と転職に活かせる資格などをご紹介します。
Swiftエンジニアに求められるスキル
Swiftでの開発は、Apple社の開発プラットフォームを利用するため、求められるスキルにも特徴があります。具体的にみていきましょう。
Swiftプログラミングの基本的なスキル
Apple製品のアプリの多くはSwiftで開発されているため、Swiftを用いたプログラミングスキルは重要です。開発で使用するXcodeの使い方に長けており、統合開発環境の構築から実機を用いたデバッグ、性能改善までできると重宝されるでしょう。
Appleのプラットフォームやフレームワークを理解した開発スキル
iOSアプリの開発では、Appleのプラットフォームを活用して進めます。豊富なライブラリやモジュールなど、開発プラットフォームの特徴やフレームワークに準じた開発が求められます。
また、Appleの場合はUIデザインのガイドライン(iOS ヒューマンインターフェースガイドライン)が厳格に定められているため、これらの内容の理解も重要となるでしょう。
チーム開発のスキル
アプリ開発では、複数のメンバーで行うことが多いです。GitやSubversionなどのバージョン管理ソフトを使ってソースコードを管理する必要があるため、これらのツールの使い方も理解しておくとよいでしょう。
Swiftエンジニアへの転職で活かせる資格
最後に、転職に活かせる資格や試験をご紹介します。
Apple認定のApp Development with Swift
App Development with Swiftは、Swiftに関するApple認定の資格です。資格取得によって、Swiftプログラミングの基本概念や、アプリケーション開発で用いる開発ツールの知識を習得していることを証明できます。
国家試験であるシステムアーキテクト
システムアーキテクト試験は、IPA(情報処理推進機構)が行う国家試験の一つです。
合格することで、開発に必要となるシステムの要件定義、設計技術を習得し、業務ニーズに応じた情報システムのグランドデザインを整える知識も習得していることを証明できます。
ITエンジニアの転職ならレバテックキャリア
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