SwiftはApple社が2014年に発表したネイティブアプリ開発用言語です。登場から6年余りと歴史が浅いものの、iOS上のアプリ開発に使われることから、徐々に知名度が上がっています。また、MacOSやLinux上でも動作することから、モバイルデバイス以外の分野でも需要が拡大しています。ここでは、Swiftの特徴や勉強方法などについて解説します。
- Swiftとは
- Swiftを勉強するメリット
- Swiftの勉強は難易度が高い?
- Swiftの勉強を進める順番
- 初心者がSwiftを勉強するための学習ロードマップ
- Swiftのおすすめ勉強方法
- Swiftの勉強に関するQ&A
- まとめ
Swiftとは
Swiftは、2014年にApple社が発表したアプリケーション開発用言語です。iOS、MacOS、Apple TVやApple Watch向けのOS、Linux上でも動作します。Swiftは「Everyone Can Code」をテーマとしており、誰もがコーディングしやすい言語を目指しているといえるでしょう。
このことは、「Swift Playgrounds」という学習用アプリケーションが提供されていることからも推測できます。
Swiftの強み
Swiftの強みは以下の3つに集約されるでしょう。
ハードウェア制御開発が可能
Apple社製のデバイスに最適化された言語であることから、同社のデバイスであればハードウェアにかなり近い部分(ハードウェアの制御)の開発も可能です。また、近年は「SwiftyGPIO」などのハードウェア制御用ライブラリもリリースされており、サーバーサイド開発での活用も期待されています。
C言語およびObjective-Cとの連携
SwiftはC言語の関数や構造体をそのまま活用できるほか、Objective-Cのコードやライブラリも流用することができます。C言語やObjective-Cで作られた情報資産を有効活用しつつ、新しい機能を付与できることはSwift独自の強みと言えるでしょう。
処理速度の速さ
Swiftは軽量かつ高速な点も強みのひとつです。公式サイトの情報(※)によれば整数検索ではObjective-C比で最大2.6倍、Python比で最大8.4倍の速さで計算が可能という発表があるほどで、既存機能の高速化などにも活用できます。
Swiftを勉強するメリット
次に、Swiftを勉強するメリットについて解説します。
参入者が少ないためスキルの希少性が高い
2020年時点の状況でいえば、iOSやMacOS上での開発経験を持つエンジニアはあまり多くありません。また、MacOSを搭載したマシンの購入など、開発環境の整備にはある程度の投資が必要です。一般的なPCとしてはまだまだWindowsが強いことから、MacOS環境の構築自体が参入障壁になるわけです。
現状は少数のSwiftプログラマーが複数の案件を行ったり来たりしている状態であり、新規参入者は決して多くありません。そのため、しっかりとスキルを身に着けられれば、希少性の高い人材として重宝されるでしょう。
マイグレーション需要をキャッチできる
SwiftはCやObjective-Cとの連携が可能で、なおかつ処理速度も速いことから、これら既存の言語で開発されたシステムの「移行・置き換え(マイグレーション)用言語」として期待されています。今後10年程度のスパンで見ると、レガシーシステムから新システムへのマイグレーション需要が大きくなると考えられるため、新規参入者でも経験を積める機会が増えると考えられます。
iPhoneの安定した需要で案件が多い
今や生活必需品となったスマートフォンのシェア(※)を見ると、日本ではiOS(iPhone)のシェアが65%弱となっています。また、オセアニアや北アメリカでもiPhone人気が根強く、iOSのシェアは40〜60%程度です。したがって、iPhone向けのネイティブアプリ開発において、非常に安定した需要が見込めます。
さらに万が一Swiftに代わる言語が台頭してきたとしても、現状のSwift・Objective-Cの関係のように新旧言語間で連携・互換性が維持される可能性が高いため、Swiftのスキルは無駄になりにくいと考えられます。
※参考:アウンコンサルティング株式会社,「世界40カ国、主要OS・機種シェア状況 【2020年5月】」
Swiftの勉強は難易度が高い?
このように勉強するメリットが複数あるSwiftですが、実際の学習難易度はどの程度なのでしょうか。一般的にSwiftは可読性の高さや直感的なコーディングが可能な点から、学習コストが低いといわれています。確かに言語自体の難易度はそれほど高くはありません。しかし、プログラミング初心者にとっては「簡単とも言い難い」要素があるため、以下の点に注意が必要です。
環境構築と「慣れ」のコスト
前述したようにSwiftの勉強にはMac環境の構築が必要です。特に「Xcode」という統合開発ツールは、Windows環境で使うことを想定していないため、事実上のMacOS専用ソフトウェアです。また、Windows環境に慣れた人間がMacOS環境に移行するコストは、お金だけではありません。あらゆるインターフェースの使い方に慣れ、違和感なく使えるまでの労力と時間が必要です。この労力と時間が、Swiftを勉強するうえでのハードルになりがちなのです。
周辺知識の習得
SwiftおよびXcodeを用いた開発では、通常「CocoaPods」と呼ばれるライブラリ管理ツールを使用します。CocoaPodsはLinux上で動作し、インストール作業やファイル操作においてLinuxコマンドを用いるため、基礎的なLinux操作の知識が不可欠です。「cdコマンド(ディレクトリ移動)」や「viコマンド(文字編集)」などはそれほど難しくはありませんが、WindowsのようなGUIベースの操作に慣れていると違和感を覚えるかもしれません。
日本語情報の少なさ
Swiftに限らず、プログラミング言語の勉強は、トライ&エラーの繰り返しです。エラーの解決方法や上手な記述方法のヒントを探るためには、インターネットの活用が欠かせません。したがって、「インターネット上にお手本となるコードサンプルが多い言語ほど、勉強しやすい」と言えます。一方、Swiftは誕生から間もない言語であり、インターネット上にコードサンプル、問題解決方法などの情報が少ないのです。
ある程度のプログラミング経験があるならばさほど問題ありませんが、初心者に近い人間が完全に独学で学ぶのは難しいかもしれません。そのため、独学にこだわりすぎず、オンライン学習サイトやスクール活用で問題解決のためのリソースを確保しながら、勉強を進める方法がおすすめです。
Swiftの勉強を進める順番
次に、効率的にSwiftの勉強を進めるための順番を解説していきます。
Xcodeの使い方
Swiftの勉強にとりかかる際に一番最初にやるべきことは、Xcodeの使い方の習得です。XcodeはApple社が開発している、コードエディタです。iPhoneやMac上で動作するアプリケーションを制作するためには、このXcodeで開発する必要があります。
Xcodeには、コーディングを行うのみならず、コンパイルをしてビルドしたり、仮想端末を起動して実際の挙動を確認することができる仕組みが搭載されています。Xcode自体を完璧に使いこなすには時間がかかりますが、まずは何ができるのかを把握して基本的な使い方を理解してからSwiftの勉強にとりかかるようにしましょう。
Swiftの基礎
次に、Swiftの基礎を学習していきましょう。Swiftはプログラミング言語の1つなので、独自の構文が定められており、構文通りに記述しなければエラーとなってアプリを作ることはできません。
Swiftの基本構文を勉強するのには、Xcodeに搭載されている「Swift Playground」と呼ばれる機能を利用するのがおすすめです。基本的な構文はこれを終えれば習得することができるでしょう。
また、Swiftの公式サイトに、「A Swift Tour」※というチュートリアルがあります。このチュートリアルでは、演習課題を通じてSwiftの基本的な記述方法を学ぶことができるため、こちらもおすすめです。
※Swift公式チュートリアル A Swift Tour(2023年2月19日アクセス)
アプリ開発の基礎
アプリ開発ツールであるXcodeとSwiftのプログラミング上の構文を身につけたら、アプリ開発をしていくことで基礎スキルを身につけていきます。
ここでおすすめなのが、Swiftの公式サイトにあるSwiftUIのチュートリアル「Landmarks」※です。
4時間25分ほどの所要時間を使って、SwiftUIのフレームワークを使ったアプリケーション開発を体験することができます。
SwiftUIとは、WWDC 2019で発表されたSwiftの新しいフレームワークです。モダンなアプリケーション開発が可能なため、これからSwiftUIを学ぶ方はこれを習得しておきましょう。
※Swift公式チュートリアル Landmarks(2023年2月19日アクセス)
Appleの公式ドキュメント熟読
ここまでである程度Swiftのスキルを身につけることができているはずです。ここからは、Appleの公式ドキュメントを熟読することでさらに幅広いSwiftに関する知識と、Appleが期待する実装方法を習得していきます。
Swiftの構文に従っていれば、ある程度動くアプリケーションを作成することは可能です。ただしSwiftの開発元であるAppleが想定していない記述をしていると、意図しない挙動をしたり、頻繁にクラッシュしてしまうアプリケーションを作ることになってしまう可能性があります。そこで、Appleが公式に出しているプログラミング指針に関して理解しておくようにしましょう。
これらのドキュメントは公式サイト※でログイン後に見ることができます。
※公式日本語ドキュメント(2023年2月19日アクセス)
初心者がSwiftを勉強するための学習ロードマップ
次に、初心者がSwiftを勉強するための学習ロードマップの一例をご紹介します。
1.使用するフレームワークの決定
まず初めにやるべきことはSwiftのフレームワークを決めることです。フレームワークとは効率的にアプリケーションを開発するために一定のルールを定めたものです。Swiftはプログラミング言語であるため、一から全て自分で記述してアプリケーションを構築することも可能ですが、アプリケーション開発には様々な部品が必要となります。通信やセキュリティ、課金機能などを全て自力で構築するのは時間がかかりすぎるのと、品質懸念があるため、おすすめしません。
Swiftのフレームワークにはメジャーなもので、UIKitとSwift UIがありますが、Swift UIのほうが2019年にできた新しいフレームワークであるため、こちらをおすすめします。
2.Swift UIの参考書を購入
次に、SWIFT UIの参考書を1冊購入しましょう。
アプリ開発において重要なのは、アプリを開発し始めてから、実機で動くアプリをビルドする部分まで一気通貫で理解することです。この一部の工程でもわかっていなければアプリ開発をすることはできません。
そのため、体系的に学ぶことができる参考書を1つ持っておきましょう。
3.参考書を実践してXcodeの使い方と基本的な実装を勉強
次は購入した参考書を見ながらXcodeの使い方と基本的な実装方法を勉強していきます。
まずは見よう見真似で、コピペしながらコーディングをしていく進め方で良いです。
また、全てを理解しようとすると時間がかかり、モチベーションも下がってしまうため、ある程度割り切って進んで行きましょう。
4.Apple公式リファレンスで仕様をチェック
参考書である程度の基礎を学んだあとは、Apple公式リファレンスを見ながら仕様をチェックしていきます。参考書で紹介されているメソッドや実装方法は、仕様の一部を抜粋したに過ぎません。公式リファレンスには各ライブラリでできることが網羅的に記述されています。
参考書で構築したアプリケーションに対して、公式リファレンスで学んだ知識を使って改良してみることもおすすめです。
5.簡素なアプリを使ってみる
次のステップは、簡素なアプリを使ってみることです。他の人が作った簡素なアプリを実際に手を動かして操作してみることで、どのようにプログラミングされているのか想像してみましょう。
また、自分だったらどう実装するか考えながら使ってみるのもよいでしょう。
6.簡単なアプリを開発
次は簡単なアプリを開発していきます。
最終的に作りたいアプリがあったとしても、それが複雑すぎるものだと開発に時間がかかり過ぎてモチベーションが下がってしまったり、結局作りきれなかったといったことになりかねません。
まずは簡単に実装できるものにしましょう。
7.Apple Developer Programに加入
次のステップはApple Developer Programに加入することです。Swiftで作成したアプリをリリースするためには、これに加入する必要があります。また、入会費として費用がかかり、月額に直すと1000円〜1300円ほどかかるため、初期費用として考慮しておきましょう。
8.App Storeへ自作アプリをリリース
ここまでできたら、App Storeへ自作アプリをリリースしましょう。審査があり、セキュリティやUIなどに問題なければ公開することができます。
また、審査にて落ちてしまった場合にも、審査結果でどこがNGだったのかを教えてもらえるので、修正して再度申請することが可能です。
Swiftのおすすめ勉強方法
次に、Swiftのおすすめの勉強方法を、メリットデメリットに触れつつご紹介していきます。
アプリ「Swift Playgrounds」を使って勉強
Swift Playgroundsは、Swiftをインタラクティブに楽しく学べるアプリです。
Swift Playgroundsは課題を解きながら楽しくSwiftを学ぶことができる点がメリットです。
一方で、実際に手を動かしてコーディングをする経験があまり積めない点はデメリットといえます。
Swift入門本で勉強
Swift入門書と使って勉強するという方法は、体系的にまとまった書籍で細かい仕様まで図などを見ながら理解をすることができるというメリットがあります。一方で、情報量が多く、必要以上に理解しようとしすぎてしまう可能性がある点には注意が必要です。
入門サイトで勉強
次に紹介する方法は入門サイトで勉強するという方法です。
インターネットの特性を生かして、よくわからない点があればピンポイントでキーワードで検索して学習を進められるというメリットがあります。一方でネット上の情報は古かったり、正確ではない可能性があるため、情報の取捨選択が必要となる点はデメリットです。
動画視聴により勉強
次はYoutubeなどの動画サービスで勉強をするという方法です。
文字を読んで勉強することが苦手という方は、目や耳で情報をインプットできるため、この方法がおすすめです。
ただし、情報が体系化されていたり網羅的に整理されているわけではないため、必ずしも自分が求めている情報が得られる動画があるとは限らない点がデメリットといえます。
プログラミングスクールで勉強
次の方法はプログラミングスクールで勉強するという方法です。現在ではオンラインやオフラインでのプログラミングスクールが多く展開されています。専門知識を有する講師に直接体系的に教えてもらえるというメリットがあります。ただし、受講するためにコストがかかることが大半で、他の学習方法に比べて費用がかかってしまう点はデメリットです。
勉強会に参加
最後にご紹介するのは勉強会に参加するという方法です。
Swiftはメジャーなプログラミング言語であるためコミュニティが発達しています。そのため、有志でSwiftの勉強会が開催されることがあります。これに参加することで、有識者から直接教えてもらえたり、一緒に学ぶ同志を見つけることができる点がメリットです。
デメリットとしては勉強会が不定期だったり、スケジュールが合わないと参加できないといったことが挙げられます。
Swiftの勉強に関するQ&A
Swiftの勉強に関するQ&Aに答えていきます。
Q1.Swiftの勉強方法は?
Swiftの勉強方法には以下のようなものが挙げられます。
・アプリ「Swift Playgrounds」を使って勉強
-
・アプリ「Swift Playgrounds」を使って勉強
・Swift入門本で勉強
・入門サイトで勉強
・動画視聴により勉強
・プログラミングスクールで勉強
・勉強会に参加
それぞれの方法にはメリットデメリットがあるため、自分に合った方法を見つけることが重要です。
Q2.Swiftの学習難易度は?
Swiftの学習難易度は他のプログラミング言語に比べて容易と言えます。
Swiftは2014年に発表されたばかりの言語であり、これまでのプログラミング言語のわかりにくい点に対する改善が取り込まれた言語であるためです。
Q3.Swiftの将来性は?
iPhone搭載のiOSが国内モバイルOSシェア1位を10年以上堅持する現状では、Swiftエンジニアには高い将来性があるといえます。「OSシェアはユーザー数、アプリ利用者数に直接関連すること」、「iOS開発元のAppleによるSwiftの優先的サポートを明言していること」により、iOSがシェアを維持し続ければ、SwiftによるiOSアプリも継続的に必要とされるためです。
まとめ
SwiftはApple社が2014年に発表したネイティブアプリ開発用言語です。歴史は浅いものの、Apple社製のデバイスに搭載されるiOS上のアプリ開発に使われることから、徐々に知名度が上がっています。また、学習コストが低く、汎用性が高い点も特徴です。特にアプリケーションエンジニアとしての転職を検討している方には習得をおすすめします。
ITエンジニアの転職ならレバテックキャリア
レバテックキャリアはIT・Web業界のエンジニア職を専門とする転職エージェントです。最新の技術情報や業界動向に精通しており、現状は転職のご意思がない場合でも、ご相談いただければ客観的な市場価値や市場動向をお伝えし、あなたの「選択肢」を広げるお手伝いをいたします。
「将来に向けた漠然とした不安がある」「特定のエンジニア職に興味がある」など、ご自身のキャリアに何らかの悩みを抱えている方は、ぜひ無料のオンライン個別相談会にお申し込みください。業界知識が豊富なキャリアアドバイザーが、一対一でさまざまなご質問に対応させていただきます。
「個別相談会」に申し込む
転職支援サービスに申し込む
※転職活動を強制することはございません。
レバテックキャリアのサービスについて