- Pythonによる業務改善とは?
- Pythonで業務を自動化するメリット
- Pythonによるワークフローレベルの業務改善事例
- Pythonを会社で使う場合の注意点
- Pythonを活用して業務改善を実現する方法
- Pythonに関するよくある質問
- まとめ
Pythonによる業務改善とは?
Pythonに限らず、プログラミング言語による業務改善の大半は「自動化」によるものです。単純な処理速度で見れば、Pythonよりも優れた言語はいくつもあります。
Pythonが業務改善に活用されるようになった理由として、Pythonの特徴である「学習コストの低さ」「可読性の高さ」があります。比較的理解しやすく、読みやすいため、非IT人材のあいだでも広く使われています。
それによってITエンジニアが行うシステム開発のみならず、マーケティングデータの収集やメールの自動送信など細かな日常業務の改善でも使われるようになりました。
ここでは、Pythonによる業務改善の具体例について解説します。
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そもそもPythonとは
そもそもPythonとは、1991年に公開されたオープンソースのプログラミング言語です。シンプルで可読性が高く、プログラミング初心者でも習得しやすいといわれています。
汎用性が高いため、Webアプリ開発やデータ収集・分析、AI開発など、さまざまな分野に活用されており、フレームワークやライブラリも豊富で幅広い層に人気があります。
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Pythonでできる業務の自動化
Pythonによる自動化では、一般的にルーチンワークになりがちな作業をプログラミングによって定型化し、自動的に実行できるようになります。ファイル操作やクリック、入力作業などをごく小さなプログラムで作成し、PC上で実行します。こうすることで、事務処理や打刻処理、Web上からの情報収集といった「個人レベルのタスク」を自動化できます。
Pythonによる業務改善のタイプ
Pythonによる業務改善には主に「収集」「集計、分析」「入力、操作」の3種類があります。これらを自動化することにより、業務の効率化を図ることができるでしょう。
以下では、Pythonによる業務改善のタイプについて、詳しく説明していきます。業務においてよく使用することがあればぜひ参考にしてみてください。
情報収集
Pythonを活用することで「複数のWebサイトから欲しい情報を見つけ出し、手元に保存する」という情報収集作業の自動化が可能です。具体的には次のような方法があります。
クローリング
クローリングとは「複数のWebサイトを巡回し、HTMLなどの情報を取得する」処理のことです。Webクローラーと呼ばれるbotを作成し、検索エンジンやWebサイトを巡回しながらHTML情報を取得していきます。クローリングで取得したHTML情報をもとに、後述のスクレイピングによって情報抽出を行う使い方が一般的です。
スクレイピング
スクレイピングでは、WebサイトのHTMLから欲しい情報を特定し、抽出します。また、抽出した情報を加工しやすい形にして保存することも可能です。スクレイピングを活用することで「特定のキーワードに関連したWebサイトのタイトルとURL一覧」や「ECサイトの人気商品ランキング上位5つ」などを自動的に取得できるようになります。
また、プログラミング次第では「HTTPステータスをチェックしてリンク切れを発見する」「Webシステムから顧客リストを作成する」などの操作も可能です。ちなみに、Pythonにはスクレイピング用のライブラリ(Beautiful Soupなど)も用意されています。
集計、分析、可視化
Pythonを使いこなすことができれば「集計」「分析」「可視化」も自動的に行うことができます。
集計と可視化
たとえば、日々の業務で蓄積された情報がCSVファイルとして存在するとしましょう。Pythonを活用すれば、CSVファイルからヒストグラムを描くことが可能です。また、データの分布を「散布図」として表現したり、自社Webサイトの内部リンクを「ネットワーク図」として自動的に可視化したりと、意思決定に活用しやすい形に変換できるようになります。
分析
Pythonは機械学習アルゴリズムの実装において頻繁に使われています。たとえば、業務用データを機械学習アルゴリズムへ投入してマーケティング施策を最大化させる方法を見つけられます。テキストデータからのマイニングによって売上アップにつながる情報も抽出でき、分析業務の改善が進みます。統計・解析などの知識が必要になるため、やや高度ではあるものの、挑戦してみる価値は十分にあるでしょう。
入力、操作
Pythonは、いわゆる「雑務」と呼ばれる分野の自動化も得意としています。
Excel操作
PythonにはExcelを操作するための「OpenPyXL」というライブラリがあります。OpenPyXLを活用すれば、さまざまな業務用書類(請求書、納品書など)を自動で作成できます。イメージとしてはExcelマクロに近いでしょう。また、OpenPyXLは、Excelマクロが苦手とする「マイクロソフト製ソフト以外との連携」も得意としています。つまり、Googleアプリやビジネスチャットツールとの連携も可能です。反対に、ExcelマクロができることはPythonでほぼ実現できます。
メール自動送信
Pythonの外部ライブラリ「smtplib」や「imaplib」を使うことで、メール送信時に使われるプロトコル「SMTP」や「IMAP」を操作できるようになります。また、単に送信するだけではなく、メールの自動作成も可能です。
ブラウザ上でのルーチンワーク自動化
ブラウザの立ち上げや必ず使用するページの表示など、ブラウザに関する定型業務の自動化が可能です。ブラウザ操作自動化用ライブラリとしては「Selenium」が有名です。
Pythonで業務を自動化するメリット
Pythonを活用して自動化するメリットとして、「作業時間の短縮」「リソースの創出」「人的ミスを防ぐ」など5つの要素が挙げられます。自動化するメリットを知ることで、目的を見据えて業務改善に取り組むことができるでしょう。
以下では、Pythonで自動化するメリットについて、具体例を用いながら詳しく紹介していきます。
作業時間が短縮される
自動化するメリットとしてまず挙げられるのが、作業時間の短縮ができるということです。Pythonを使って業務を自動化することによって、一つひとつ手作業でやっていた時間のかかる作業を、一瞬で終えられるようになります。
たとえば、毎日30分かけていた作業をPythonの自動化を導入することで、処理結果のチェック作業のみになり、所要時間が5分になったと仮定しましょう。すると、1日あたり25分の作業時間を短縮できます。毎月20営業日、同じ業務を行う場合、500分の作業時間を短縮することができ、年間で考えると6000分、つまり100時間もの時間を短縮できます。
1ヶ月換算(20営業日)
25分×20営業日=500分
1年換算
500分×12ヶ月=6000分
より高度な業務にかける時間を創出できる
Pythonによって業務を自動化をすることのメリットは、より高度な業務にかける時間を創出できるという点です。目先の単純作業に時間を奪われ、重要だが緊急性の低いタスクに手が回らないといったことは経験したことがあるのではないでしょうか。
ビジネス方針や営業戦略、込み入った課題の解消などの難しい業務には、ある程度まとまった時間が必要です。しかし、まとまった時間を日々の業務の中で創出するのは難しいことが多いです。
Pythonの業務効率化を導入し、単純作業の負荷を下げることで、より高度な業務にかける時間を創出できます。
人的ミスを防げる
人的ミスを防ぐことができるということはPythonの自動化のメリットです。
単純作業であったとしても、作業ボリュームが増えると、おのずとミスをする機会が増えてしまいます。しかし、作業を自動化することで、人手を介して作業するよりもミスが少なくなります。また、ミスによって手戻りしていた作業も減るため、短い時間で品質をより良くできるでしょう。
ミスが許されない作業にこそ、Pythonの自動化が活躍します。
単純作業から解放される
Pythonによる業務効率化のメリットは、なんといっても単純作業から解放されるということです。定形作業が苦手な人にとって、非常に大きなメリットといえるでしょう。Pythonにより業務改善されると、単純作業に長時間向き合うという仕事に対する精神的な負担が減少します。
精神的な負担が減ることで、働きやすくなることも業務改善の一つです。
スキルの向上につながる
Pythonを活用した業務の自動化をする際、Pythonに対する理解が深まります。自身が自動化したい作業を実現するためには、周辺の知識やスキルが必要です。
プログラミングや外部ライブラリなどを勉強し、作業の自動化をするためのシステムを作成することは、エンジニアとしてのスキル向上につながります。
Pythonによるワークフローレベルの業務改善事例
Pythonは個人の仕事や作業である「タスク」を自動化し、業務改善ができます。しかしそれだけにはとどまらず、Pythonを上手く使うことで、複数の業務を連動させた「ワークフローレベル」の業務改善も可能です。もちろんタスクのような単純作業ではないため、よりシステムも複雑化しますが、その分大きな改善が見込まれるでしょう。
以下では、規模の大きな業務改善事例を3つ紹介します。
共有ファイルの数値更新をチームメンバーに自動通知
ある企業では、「Python」+「Zapier」+「Slack」の組合せでファイル更新を自動的に通知する仕組みを構築しています。
Zapierはワークフロー自動化ツールで、さまざまな外部ツールと連携しつつ定型処理を自動化する機能を持っています。この企業では、共有ファイルの数値が更新されたタイミングをZapierで検知し、Slackから関係各位へ通知する仕組みを使っていました。
しかし、関係者は曜日によって変わるため、通知するタイミングごとに宛先を変えなくてはなりません。Zapierには「曜日によって宛先を変更する機能」がなかったために、この部分をPythonで開発したとのことです。
3つのツールを組み合わせることにより、担当者が入れ替わる環境であってもファイル変更通知が自動的に届く仕組みが確立されました。
翻訳botによるコミュニケーション円滑化
Pythonの活用で、外国人メンバーとのコミュニケーション円滑化が進んだ事例もあります。
具体的には、Slack上で任意のメッセージにスタンプを付与すると、そのメッセージが英語に翻訳される仕組みです。メッセージにスタンプがつけられると、Googletrans(翻訳ライブラリ)を読み込んだPythonプログラムが自動実行され、Slack上で翻訳されるようになります。
ネットワーク運用自動化
ネットワークエンジニアであれば、ネットワーク機器の状態確認をコマンド操作で行った経験があるでしょう。Pythonを使うことで、このコマンド操作による確認業務が改善されます。
たとえば、ターミナルソフト(tera termなど)上で頻繁に実行するコマンドをマクロとして作成しているとしましょう。このマクロと同様の処理をPythonとPythonライブラリで作成し、より少ない手間で複雑な業務を行えるようになります。具体的な例としては、Pythonライブラリ「subprocess」を使った複数デバイスへのping自動化や、「telnetlib」をつかったtelnet接続と操作の自動化です。
Pythonライブラリを活用することで、より柔軟な設定が可能になるため、煩雑になりがちなネットワーク確認業務が改善できるでしょう。
Pythonを会社で使う場合の注意点
Pythonを使った業務改善を検討している方は会社で使うことが多いですが、会社でPythonを使う場合には、いくつか注意しておかなければならないポイントがあります。これらに気をつけないと、場合によってはインシデントを引き起こしたり、セキュリティリスクが発生したりしてしまう危険性があるので、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
Pythonのインストールが許可されているか
Pythonを会社で使う場合の注意点の一つとして、Pythonのインストールが会社で許可されているかという点です。
WindowsやMacなどが業務でよく使用されますが、これらのOSにはPythonは標準搭載されていません。そのため、Pythonを使うためには自分でインストールする必要があります。会社としてインストールを許可しているかどうか確認を必ずしておきましょう。わからない場合には、必ず社内SEや情報システム部などに問い合わせましょう。
プロキシ経由でライブラリにアクセスできるか
Pythonを会社で使う上での注意点は、プロキシ経由でライブラリにアクセスすることができるかという点です。
Pythonで業務効率化するためには、外部ライブラリをインストールする必要があります。その際、pipと呼ばれるコマンドを使ってインストールをしていきますが、pipでは、インターネットを経由してPyPIと呼ばれるソフトウェアリポジトリ(外部ライブラリ置き場)にアクセスしなければなりません。社内ネットワークからインターネットに接続する際に、プロキシを利用している場合には、そのプロキシ経由でpipが使えるかどうかを確認する必要があります。
また、もしプロキシ経由でのpipが実行できない場合には、PyPIからファイルをダウンロードし、オフラインでpipを実行するオプションもあるので、必要に応じて調べてみることをおすすめします。
書いたコードにセキュリティリスクはないか
書いたコードにセキュリティリスクがないかという点も会社でPythonを使う際に注意するべきです。セキュリティリスクというのは、データの破損、改ざんなどで損害を受けること、あるいは情報漏えいなどでマイナスの影響を受けることを示します。
Pythonを使って業務を効率化するためのコードを書いたとしても、そのコードがセキュリティリスクのあるものであった場合、インシデントにつながる可能性があります。セキュリティインシデントは、会社の信用を落とす危険性があり、業務効率化によるメリット以上のデメリットを被ることになるため、細心の注意が必要です。
一方で、セキュリティに関しては難解かつ専門的な知識が必要な場合が多いため、日々の業務効率化のためのコードには、あまり複雑な技術を使わないようにするのが得策でしょう。
Pythonを活用して業務改善を実現する方法
ここまで、Pythonを使った自動化のメリットや業務改善の事例を紹介してきました。これまでの内容を読んで、「よし、業務改善に向けて行動しよう!」と思っている方もいるでしょう。しかし、Pythonを活用して業務改善を進めていくためには、あらかじめ準備が必要です。
ここではPython未経験者の方へ向けて、業務改善の実現に向けた手順を紹介していきます。
Pythonの基礎を学習する
Pythonを活用して業務改善をするにはまず、Pythonへの基礎理解が必要です。Pythonの基礎知識がない状態では、作業を自動化するプログラムの記述もできません。
Pythonは、シンプルな構文でプログラミング初心者でも比較的学びやすい言語です。学習サイトや参考書を用いて独学で習得することもできるでしょう。独学に不安がある方は、スクールに通うことをおすすめします。
環境構築をする
Pythonを使った業務改善のためのプログラムを開発する前に、Pythonをインストールして環境構築をしましょう。Pythonインストールの手順は以下の通りです。
用途に合ったライブラリでシステムを開発する
Pythonの基礎を理解し、開発環境を準備できたら、求めるシステムの開発に取り掛かりましょう。自動化のシステムを開発する際、用途に合ったライブラリを活用していくことが重要です。
以下は、よく使用される代表的なライブラリの一覧です。参考にしてみてください。
用途 | ライブラリ |
---|---|
数学計算 | math |
データ解析 | pandas |
画像処理 | Pillow |
データ交換 | json |
日付・時間処理 | datemite,dateutil |
カレンダー | calendar |
グラフ作成 | mathplotlib |
機械学習 | sklearn |
Pythonを使った業務改善に関するよくある質問
Pythonを使った業務改善を検討している方の中では、Pythonで自動化できることや自動化するメリットについて知りたい方が多いようです。
ここではPythonを使った業務改善に関するよくある質問について答えていきます。類似の疑問を持つ方は参考にしてみてください。
Q1. Pythonで自動化できることは何ですか?
Pythonを使って自動化できることは、以下のような作業が挙げられます。
-
・クローリング・スクレイピング
・データの集計、可視化
・データ分析
・Excel操作
・メールの自動送信
・ブラウザ上のルーチンワーク自動化
Q2. Pythonで自動化することのメリットを教えてください
Pythonで自動化するメリットとして、以下のようなことがあります。
-
・作業時間が短縮される・リソースの創出ができる
・人的ミスを防げる
・単純作業から解放される
・スキルの向上につながる
自動化するメリットを知ることで、目的が明確になり、業務改善に取り組むことができるでしょう。
まとめ
Pythonは機械学習アルゴリズム開発やビッグデータ解析など、主に先端ITの分野で活用が進む言語です。その一方で、インタプリタ型言語特有の学習コストの低さや可読性の高さなどから、非IT人材が業務自動化に活用する例も少なくありません。この記事では、Pythonを活用した業務改善でできることと実例、メリットなどについて紹介してきました。Pythonを上手く使えば、個人レベルから企業レベルまでさまざまな自動化が可能になるでしょう。業務改善を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
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