転職活動をする中で、「どういう基準で採用をしているのだろう?」という疑問を持ったことはないだろうか。
応募書類にせよ、面接にせよ、採用では求職者にいろいろな内容を問われるが、実際にどう判断しているかは採用担当者のみぞ知るもの。
そこで企業の採用担当者に、中途採用において「こんなエンジニアが欲しい」という要望をダイレクトに聞いてしまおうというのが、本企画「採用担当者の本音」。
今回取り上げるのは、日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営し、多数のサービスを提供するヤフー株式会社(以下、ヤフー)。今回は人財開発本部 人財採用部で部長を務める金谷俊樹氏にお話を伺った。
※この記事は、2016年6月時点の内容です
今回の採用担当者: コーポレート統括本部
人財開発本部 人財採用部
金谷俊樹(かなだにとしき)氏
ヤフーで採用したいのはこんなエンジニア
1. 新しい技術の習得に余念がない
2. なんらかのプログラミング言語に習熟している
3. 自分の仕事の限界を決めずに動ける
4. インターネットの未来を作っていける
仕事内容は大別すると2種類
「サービス開発に携わるエンジニア」と「ビッグデータを扱うエンジニア」
―初めにヤフーの事業内容を教えてください。
金谷:ヤフーでは100を超えるサービスを提供しておりますが、ビジネスとしては「広告」「eコマース」「決済金融」の3分野に分かれます。このうち、現時点で特に注力しているのが「eコマース」と「決済金融」ですね。
「eコマース」においては、1店舗でも多くの事業者の方に利用いただき、取り扱っていない商品がないような「eコマース」の場所づくりをしていけるか、という点。
「決済金融」では、そういった取引に伴う決済・金融周りの部分で、電子マネーの「Yahoo!マネー」やクレジットカードの「Yahoo! JAPANカード」など、インターネット上でやりとりされるお金にまつわるシステムを整備する、という点です。
また、ヤフーで提供しているサービスの数々からは、ユーザーの購買履歴などの膨大なデータが集まってきています。このデータをいかに有益なものに変えていき、またいかにしてユーザーへ還元していくのか、そういった「ビッグデータ」の分野にも注力しています。
ヤフーに集まるデータは世界でも例がないくらい多種多様であるという
―なるほど。それではエンジニアの仕事内容をお聞かせ下さい。
金谷:ヤフーのエンジニアを大きく分けると「サービス開発に携わるエンジニア」と「ビッグデータを扱うエンジニア」の2つに分かれます。
まず「サービス開発に携わるエンジニア」は、サービスの新旧を問わずユーザーにとってより良いサービスにしていくために、エンジニアリングを行っていきます。
ヤフーは2016年で20周年を迎えるということもあり、レガシーなシステムになっている部分もチラホラありまして。そこで既存のヤフーを刷新するくらいの勢いで作りなおしを進めています。
「ビッグデータを扱うエンジニア」は機械学習などを用いてデータを解析し、要素技術を含め実装までもっていくというところまでを担当します。ヤフーが抱える多種多様なデータを活用すれば、検索ランキングの改善やクエリの意図判定などの検索体験の向上を始め、ユーザーの満足度をさらに高められる可能性があるはずですので。
働き方としては、個人主義ではなく、チームとしての成果が求められます。もちろん個人に与えられる目標はありますが、個人の目標を達成するだけでなく全体を見てフォローしなければ、個人の評価はそこまで高くはなりません。
求められるのは「新しい技術の習得に余念がないこと」「なんらかのプログラミング言語に習熟していること」
―ヤフーがエンジニアに求めるスキルや経験はどういったものでしょうか?
金谷: 1つは「新しい技術の習得に余念がない方」。もう1つは、「なんらかのプログラミング言語に習熟している方」ですね。
まず1つめの「新しい技術の習得」についてですが、やはりインターネットにおける技術の移り変わりは激しいですから、積極的な技術へのキャッチアップが求められます。
たとえば、10年ほど前は「JavaScriptは廃れていくだろう」という見方すらありましたが、今ではJavaScriptでサーバーサイドをプログラミングできるようにまでなっています。こういった技術の移り変わりに対応していくためには、やはり勉強する習慣が身についているかどうかは大切です。
もう1つの「なんらかのプログラミング言語に習熟している」という点でいうと、「プログラミング言語は、それぞれ方言でしかない」という考えによる部分が大きいです。
仮に「C言語しかやったことがありません」という方へ「今日からPHPをやってください」と頼んでも、きちんと習得している方でしたらおそらく1~2週間、長くとも1ヶ月くらいで使えるようになるはずですからね。
言語に限らず、1つの技術にじっくり向き合う経験は重要だと語る金谷氏
面接で聞く際も、「普段どんな技術的な勉強をしていますか」「新しい言語に触れなければならない状況で、どうやってその能力を身に付けましたか」といったことを聞いていますね。
―ヤフーではどういった経歴の方が活躍しているのでしょうか?
金谷:Web業界から転職された方はやはりなじみやすいですが、基本的にはどんな経歴の方でも活躍しています。たとえばSIerから転職された方でいえば、金融機関や官公庁向けのシステムを開発してこられたのでしたら、ミスがないように作りこむ経験がありますので強みになりますよね。
ただ、補足をしておくと、ヤフーではエンジニアはコードを書くのがメインとなっています。「社内でキャリアアップしていくと設計などの上流工程に移っていく」というような形ではないので、技術指向性が高い方がマッチしますね。
―それでは求めるマインドはどのようなものでしょうか?
金谷:これは「自分の仕事の限界を決めない」ということですね。これは2つのポイントがあります。
1つは「自分の担当範囲を超えて動けること」です。サービスを担当するエンジニアの例でいうと、担当するサービスの中、担当する業務範囲の中でしか行動しない、ということもあると思います。
ですが、「自分がやりたいこと」「ユーザーにとっての課題を解決すること」に対して、自分の担当範囲や担当部署を飛び越えてでも実現しようとすることが求められます。
もう1つは、ユーザーの要望に応え続けるためには、常に考え続けなければならないということです。ヤフーでは多くのユーザーへサービスを提供しているので、限りない要望や希望を叶える必要があります。
現在、ヤフーでは「課題解決エンジン」というミッションを掲げています。これは「ヤフーが日本をアップデートする。そのための課題を見つけ、その課題を解決していきましょう」というものです。
そのために、課題を解決するための馬力と具体的に課題を発見する力――何がアップデートされると、どう良くなるのかというイメージをしっかり持てるかという点が求められます。
―なるほど。それではヤフーに向いていない人を挙げるとしたらどんな方でしょうか?
金谷:ヤフーを使って、どうするかというビジョンを考えられない人です。現在、多くのユーザーにヤフーを利用していただいています。この巨大なサービス・メディアを使って、どのように新しい価値を作っていくかと、いうビジョンを持って動くことが大切です。そのため、この環境に対して、受け身でしか動けない方は向かないでしょう。
―採用したいエンジニアを一言でいうと?
金谷:「ヤフーで幸せになれる姿を想像できる人」ですかね。ヤフーは技術のキャッチアップ、自分の武器、インターネットが好きでヤフーを使ってどうしてやろう、こういうことを考えていかないとダメな場所です。
それを理解した上で、「自分がこういうふうに幸せになれる」「人を幸せにできる」ということを想像できているとヤフーで活躍していただけるかと思います。
選考では「経験」を何よりも重視
―採用にあたって、選考ではエンジニアのどの部分を優先してチェックしますか?
金谷:ちょっと抽象的になってしまうんですが、その方が持っているスキルや経験――“武器”がヤフーで使えそうか、その“武器”を持って配属を想定している部門で戦えそうか、を確認しています。すごくいい“武器”を持っているけどこの部門ではないな、となったら別の部門で、というケースはありますね。
中途採用の選考は複数回行われ、人事部門、配属想定部門の方が立ち会う場面が必ずあるという
―書類選考では、どの項目を重視されるのでしょうか?
金谷:これは担当者によっても違うのかもしれませんが、「職歴」ですね。特に、「プロジェクト名」「プロジェクトの概要」「使用言語」「人数」「担当したポジション」といった「プロジェクトのサマリー」。その中でも「プロジェクトの規模」「立場」「使用した技術」です。これらの項目を、具体的にヤフーのどこにマッチするんだろうか、といった見方をしますね。
逆にあまり重視していないのは、「転職回数」や「志望動機」「自己PR」ですね。「転職回数」は人によって事情が異なりますし、「志望動機」についても、技術力が優れていれば志望動機が弱くてもヤフーとしては採用したいエンジニアです。「自己PR」に関しても、“こういう人間になりたい”というような希望よりかは、経験などの事実を重視します。
中途採用において「志望動機」や「自己PR」を聞くことは、面接でもめったにないのだそう
―経験の「長さ」ではどうでしょうか?
金谷:経験に関しても、2年だろうと10年だろうと長さはあまり関係なく、「経験の深さ・質」を重視しています。ですので「年齢」なども、それ単体で採用を判断することはありません。仮に40歳の方でもさらに成長していくのでしたら問題ないですし、逆に過去の資産だけでやっていきたいという方でしたらNGなんですよね。
―なるほど。選考にあたっての“伝え方”という点では、どういう“伝え方”だとわかりやすい、などはありますか?
金谷:そうですね。ありがちなのが、経験されたプロジェクトのことをお話しいただく際に、プロジェクトの規模感や概要が9割、自分のやったことを1割、というケース。これは逆だとありがたいですね(笑)。プロジェクトの中で、自分の担当は何で、決められた分野はどこまでで、その中や外で自分が何をしたのかを、こちらは知りたいので。
あとは、「新しい言語を習得しなければならなかった」「炎上しているプロジェクトの火消し役としてアサインされた」など、状況によって大変だったことは必ずあるはずですので、「何が困難だったポイントで、それをどうやって乗り越えたのか」を伝えていただけると、なおありがたいですね。
日本最大級のサービスに携わる醍醐味
―エンジニアにとって、ヤフーで働くことはどのようなメリットがありますか?
金谷:これは難しいところなんですが、2つ挙げます。1つは、日本最大級のサービスを提供する会社だからこそ、多くのユーザーの課題解決、ひいては日本の課題解決にも貢献できるという点です。
裏側で動いているシステムも大規模ですし、技術力も高水準。データセンターからアプリケーションまで全てを一気通貫で持っている、かつ自社で企画・製造している環境は稀有だと思います。この大規模な環境で力を発揮できるというのもメリットでしょうか。
もう1つは、そういう環境だからこそ、成長意欲の高く、結果を残そうとするエンジニアが、多様な業界・業種から集まっているという点です。
一緒に働く人間から多くの刺激を受けられる環境だと思っていますので、切磋琢磨しながら成長したいという方には満足していただけるのではないでしょうか。
―最後に、ヤフーの求人に応募しようと考えているエンジニアに向けてメッセージをお願いします。
金谷:我々は「ヤフーにハマる人」というより、「ヤフーを使って、インターネットの未来を一緒に作ってくれる人」に来てもらえたら、と考えております。
いつのころからかインターネットがインフラ的存在になりつつありますが、現在における“インフラ度合い”は10年前と比べ物にならないと感じています。その中でヤフーはポジションをよく保ち続けているなと思う一方で、そうあり続けるために我々は頑張っているという面もあります。
ヤフーが「UPDATE JAPAN」を実現するために、いかに課題解決をしていけるか。そのためにも、既存の社員だけでは足りませんので、多種多様な経験や技術力をお持ちの方にお越しいただき、一緒にやっていけたらと思っています。