PHPは、主にWebアプリケーション開発に用いられるプログラミング言語です。PHPがどのような用途でアプリケーション開発やシステム開発に利用されているのかを知ることで、PHPエンジニアに求められるスキルを把握できます。この記事では、PHPでできることや、PHPエンジニアに必要なスキル、PHPエンジニアになるためのポイントについて解説します。
PHPの概要
まずは、PHPというプログラミング言語の概要について解説します。
PHPについて
PHPはオープンソースの汎用スクリプト言語です。HTMLに埋め込めることから、特にWebアプリケーション開発に適しています。PHPの構文の多くは、C、Java、Perl言語からの転用であり、文法がシンプルなため、習得しやすいと言われています。動的なウェブページをWeb開発者が速やかに作成できることを主な目標として開発されたPHPですが、それだけにとどまらず、様々な用途に活用可能です。
PHPの歴史
まずはPHPの歴史を簡単に紹介します。
PHPの誕生
PHPは1994年に、C言語をベースとして開発されました。その名称は、Personal Home Page Toolsを略してPHP Toolsと呼ばれるようになったことが由来です。
PHPの変遷
PHP3以降のバージョンについて簡単にまとめました。詳細については、PHPの歴史(php.net)で確認してください。
バージョン | 説明 | サポート状況 |
---|---|---|
PHP3 | 現存するPHPに近い状態になった最初のバージョン | 2000年10月終了 |
PHP4 | PHP3からの大幅なパフォーマンス改善 | 2001年6月終了 |
PHP5 | ZendEngine2.0で新オブジェクトモデルをサポート | 2018年12月終了 |
PHP7 | ZendEngine3.0によるパフォーマンス改善 | 2022年11月終了 |
PHP8 | 2022年12月現在の安定版 | 2023年11月終了予定(8.0と8.1) |
関連コミュニティやカンファレンス
PHPはユーザが多いことから、コミュニティやカンファレンスが多くあります。以下に代表的なものを紹介します。
日本PHPユーザ会
日本PHPユーザ会は、PHPに関するコミュニティです。PHPの開発促進、PHPに関する情報の収集と公開、PHPユーザ相互の技術的・人間的交流などを目的とし、PHP開発者とユーザの有志により活動が行われています。
PHP Conference
PHP Conferenceは、国内最大級のPHPイベントです。毎年秋から冬にかけて開催されており、PHP Conference 2022は、9/24と9/25に開催されました。発表内容のスライドと動画が公開されているため、気になるトピックやセッションがある場合に情報収集しやすいことが特徴です。
PHPerKaigi
PHPerKaigi(ペチパーカイギ)は、PHPを利用している人、過去に利用していた人、興味がありこれからPHPを使いたい人が、技術的なノウハウを共有するためのイベントです。PHPerKaigi2022は、4/9から4/11の3日間で開催されました。PHP Conferenceと同様に、発表内容のスライドと動画が公開されているため、気になるトピックやセッションの情報を容易に得られます。
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PHPでできること
次に、PHPがどのようなアプリケーション開発に用いられるのかという観点で、PHPでできることを紹介します。
Webアプリケーション開発
PHPが主に利用されるのはWebアプリケーション開発です。Webアプリケーションの例として、ECサイトやCMS、SNSサイトなどが挙げられます。PHPでは、豊富なフレームワークを活用して開発効率を高め、Webアプリケーション作成に必要な各機能を実装することが可能です。
以下に代表例を挙げます。
ログイン・ログアウト機能
PHPフレームワークによっては、ECサイトやCMS、SNSサイトに必要となるログイン・ログアウト機能を実装する機能があります。例えば、Laravelには、標準で用意されているコマンド php artisan make:authを用いることで、ログイン・ログアウトなどの認証機能を実装できます。
CRUD操作
ECサイトには、商品を選択してカートに保存する機能が必要です。SNSサイトには、お気に入りの投稿を保存する機能が欠かせません。これらは、いずれもデータを保存する機能です。また、Webアプリケーションを実装する際には、保存だけではなく、参照や作成、削除の機能もセットで必要であり、これらをまとめてCRUD操作と呼びます。CRUD操作は、フレームワークの機能を用いることでシンプルに実装可能です。例えば、Symfonyのmakeコマンドを活用すれば、CRUD操作を行うメソッドを持つControllerを作成できます。
バックエンド開発
PHPを用いたバックエンド開発は、Webアプリケーション開発ほど多くの事例はありませんが、こちらもフレームワークを利用することで効率よく進められます。
バッチ処理
バッチ処理とは、一定量のデータを一括処理することです。例えば、日次で蓄積されたデータを、日付が変わったタイミングで集計処理を行ったり、日中の時間帯に予約された処理を夜間に一括で反映させたりできます。対象データを取得する機能や、データ更新を行う機能については、Webアプリケーションに必要なCRUD処理を用いて実装可能です。
API
APIは「Application Programming Interface」の略であり、アプリケーションやシステム内での情報参照やデータの更新要求を受け付けて処理を実行します。例えば、顧客情報を管理しているシステム内で、顧客情報を参照するAPIを用意しておけば、ECサイトなどの顧客情報を表示する処理を行いたいタイミングでAPIを利用できます。フレームワークの機能を活用すれば、よりシンプルにPHPを用いたAPIの実装が可能です。例えば、Laravelを用いる場合、make:controllerコマンドを使ってControllerファイルの枠組みを作成し、作成、参照、更新、削除のメソッドの枠組みを用意できます。そして、メソッドの枠組み内に必要なロジックを記載し、エンドポイントの設定を行うことで、シンプルなAPIが完成します。
PHPエンジニアの求人情報から読み取れるPHPの活用法
2022年12月時点で、レバテックキャリアのPHPの求人・転職情報件数は約3,800件です。PHPの求人情報から読み取れるPHPエンジニアの業務内容や、開発対象となるアプリケーションの種類は以下のとおりです。
Webアプリケーション開発に多く用いられるPHPですが、その内容にはさまざまなものがあります。
・CRM
・宿泊予約サイト
・学習ポータルサイト
・ビデオストリーミングサイト
・データマネジメントプラットフォーム(広告)
・SMARTサブスクリプション開発
・キャッシュレス決済プラットフォーム
・採用サイトCMS
・不動産メディア(自社サイト)
・電子コミックサイト
・音声サービス
・タレントマネジメントシステム
・マッチングサービス
・採用支援サービス
・メール配信サービス
PHPは、ECサイトやCMSといった用途に限定されず、音声配信や映像配信や書籍の販売、旅行、決済、採用支援、人事支援など様々な分野のアプリケーション開発に用いられています。
求人内容から見るPHPエンジニアに必要なスキル
次に、レバテックキャリアの求人内容から、PHPを取り扱う企業がPHPエンジニアにどのようなスキルや経験を求めているのかを考察します。
PHPエンジニアに求められるスキルや経験
まずPHPエンジニアに求められるのは、プログラミング言語などの技術要素を取り扱えるスキルです。これらのハードスキルは、必要なレベルを表現しにくいため、求人情報では経験年数が指定されているケースが多く見られます。もしくは、「(なんらかのプログラミング言語)を用いた開発経験」と記載されていることもあります。
PHPエンジニアに求められるソフトスキル
求人情報からは、PHPエンジニアに求められるソフトスキルも読み取れます。多くの場合ソフトスキルは、必須条件には入っておらず、求めるマインドとして記載されています。以下は、ソフトスキルの代表例です。
-
・顧客目線を持つこと
・他メンバーを巻き込む力
・提案力
・開発に対する前向きな姿勢
これらのソフトスキルからは、より自走できる人材が求められていることがわかります。特に技術進化のスピードが早い現代においては、最新の技術トレンドを能動的にキャッチアップする姿勢が欠かせません。また業務に関しても、より良い方法を自ら模索し、求められた以上の貢献を考えて行動できる人材が求められるでしょう。顧客目線でより便利なシステムやアプリケーションを作るスキルや、周りのメンバーを巻き込んで改善活動を遂行する力などが必要です。
PHPの学習方法
ここでは、未経験者と経験者の両方に向けて、PHPの学習方法を紹介します。関連書籍を用いた学習方法と、関連コミュニティやイベントを活用する方法があります。
関連書籍を用いた学習方法
関連書籍を用いた学習は、気軽に自分のペースで進められる点がメリットです。PHPの学習におすすめの書籍を紹介します。
「独習PHP 第4版」
「独習PHP第4版」は、PHP8の基本構文からクラス、DB連携、セキュリティ対策まで、必要な項目を習得できる内容です。文法の解説、例題、練習問題という構成になっているため、理解した文法をプログラミングに活用する練習にも役立ちます。また、オブジェクト指向についても言及されており、プログラミング言語と併せて理解を深められます。
「PHPフレームワーク Laravel入門 第2版」
「PHPフレームワークLaravel入門第2版」は、PHPと併せて、2022年現在の主要なPHPフレームワークの1つであるLaravelを学べる書籍です。Laravelのインストールから、フレームワークの中心となるModel-View-Controller(MVC)の使い方、開発に役立つ各種機能までをわかりやすく解説しています。第2版では、新しいディレクティブ(@csrf/@error)、バリデーションルール、Bootstrapによるぺージネーションリンク、Auth(Laravel/uiパッケージ)の使い方などの項目が追加されています。
「PHP本格入門[上]~プログラミングとオブジェクト指向の基礎からデータベース連携まで」
「PHP本格入門[上]」は、PHPの基礎知識を持っている人を対象とした書籍で、基礎レベルから実践レベルへの架け橋となるような内容です。目的に合うプログラミング記述を考えたり、可読性を向上させたりするためのアプローチ方法など、より実践的な知識を身につけられます。業務に求められる品質を理解するために活用するとよいでしょう。上下巻に分かれており、上巻は基礎文法やオブジェクト指向から、Webアプリケーションとデータベース連携までを解説しています。
「PHP本格入門[下]~オブジェクト指向設計、セキュリティ、現場で使える実践ノウハウまで」
「PHP本格入門[下]」には、上巻で取り扱った基礎内容を踏まえて、より実践的な内容が記載されています。PHPの文法要素が使われやすい用途や目的、コーディング規約や可読性の高いプログラミング作法、変更や拡張を見越した独立性の高いオブジェクト指向設計、品質を見えるようにするためのプロファイリングやデバック手法、自動テストやリファクタリング手法などを解説しており、業務レベルで実践的な内容を取り入れたい経験者向けの一冊です。
関連コミュニティやカンファレンスなどのイベントを活用する
書籍を用いた学習方法以外に、関連コミュニティを活用する方法もあります。先述したPHP Conferenceや、PHPerKaigiなどの年次で開催される大規模なカンファレンスでは、PHPを利用しているエンジニアのノウハウや、実際の業務での体験談、失敗談などを聞けるでしょう。これらは、書籍を用いたPHPの学習だけでは知ることができない貴重な情報です。関連コミュニティやイベントは、PHPの理解度を網羅的に高める目的ではなく、自身の業務に取り入れたい考え方を探したり、業務改善アプローチのヒントを見つけたりする目的で活用するとよいでしょう。
PHPエンジニアに転職する際のポイント
最後に、PHPエンジニアに転職する際に押さえておきたいポイントを解説します。
自身の転職理由を求人情報の内容とすり合わせて明確にする
まずは、自身の転職理由を明確にします。また、転職理由がすでに明確な場合は、自身の転職の軸に合う求人かどうかを確認しましょう。例えば、Webアプリケーション開発に携わりたいのか、オブジェクト指向のプログラミング言語を用いた開発経験を積みたいのか、フレームワークを用いた開発経験を積みたいのか、などによって選ぶべき企業は変わってきます。これらの情報は求人情報から読み取れるため、自身の経験やスキルとすり合わせたうえで、検討を進めるとよいでしょう。
PHPエンジニアの業務に活かせる経験やスキルを整理してアピールする
PHPエンジニアの業務経験がなくても、PHPエンジニアになりたい求職者はいるでしょう。その場合、PHPエンジニアに転職した際に活かせる経験やスキルをアピールすることが必要です。
Webアプリケーションの開発経験を活かす
PHPの主な用途はWebアプリケーション開発です。そのため、PHP以外の言語を用いたWebアプリケーション開発経験がある場合は、プログラミング言語に違いがあったとしても、設計方法や考え方を活かせる可能性があります。これまでのWebアプリケーション開発経験を、転職後の業務にどのように活かせるかを説明できるとよいでしょう。
オブジェクト指向での開発経験を活かす
PHPを取り扱ううえで、オブジェクト指向の理解は欠かせません。これまでにオブジェクト指向のプログラミング言語を用いた開発経験がある場合は、PHPで作成された既存のソースコードへの理解を深めやすく、スムーズに習得できるでしょう。オブジェクト指向のプログラミング言語には、Ruby、Java、Python、JavaScriptなどがあります。
フレームワークの利用経験を活かす
フレームワークを用いた開発経験があれば、その対象がPHPではなくても転職の際にアピールできます。フレームワーク自体の基本的な構造を理解していれば、別のフレームワークの習得コストを抑えられるためです。
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