Kotlinのメリット・デメリットとは?今後も使われていく言語なのか解説

最終更新日:2023年12月25日

Kotlinは、GoogleがAndroidの公式開発言語に認定し、急激に認知度が高まりました。技術の幅を広げたいエンジニアにとって、気になるプログラミング言語のひとつではないでしょうか。Kotlinのメリットは、Javaよりも学習コストが低く、Javaとの互換性があることです。ただし、比較的新しい言語のため、将来性に不安を感じる方もいるでしょう。本記事では、Kotlinのメリットや将来性について解説します。

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この記事のまとめ

  • Kotlinは、2011年に開発されたプログラミング言語で、Androidアプリ開発の公式言語として採用されている
  • Kotlinのメリットは、Javaよりも学習コストが低く、Javaとの互換性があること
  • Kotlinはアプリケーション開発やサーバーサイド開発ができる言語であるため、将来性が期待できる

Kotlinとは

Kotlinは、2011年に開発されたプログラミング言語で、Androidアプリ開発の公式言語として採用されています。Kotlinが発表されるまで、Androidアプリ開発にはJavaが多く使用されていました。

Androidアプリ開発をより簡単に行えるよう、Javaを改良して開発された言語がKotlinです。言語の構文自体はJavaと互換性がない独自の方式ですが、コンパイルされたコードはJava仮想マシン上で動作するため、Javaで作成されたIT資産を流用できる特徴があります。

また、KotlinはJavaと同じ静的型付けのオブジェクト指向言語のため、JavaやC#を扱うプログラマーやエンジニアにとっては比較的なじみやすい言語です。

Javaの問題を解決するために作られた言語

Kotlinは、容量が大きいJavaライブラリと異なり、容量が小さいランタイムライブラリを持っています。Androidアプリを開発する場合は、メソッドの数を65K以下に抑える必要があります。
そのため、これまでAndroidアプリ開発に使用されていたJavaのライブラリを活用するには制限がありましたが、コードを簡潔に記述できるKotlinを利用することで、メソッド数の問題を解決できます。

GoogleがAndroidアプリ開発の正式言語として採用

Kotlinは、Androidアプリ開発の公式言語として使われている言語です。2019年にGoogleがAndroidOS向けアプリケーション開発の公式言語として採用したことにより、注目を集めています。

関連記事:Kotlinとは?Javaとの違いや将来性、年収について解説

Kotlinの言語としての特徴

Kotlinは、静的型付けのオプジェクト指向のプログラミング言語です。オブジェクト指向とは、オブジェクトという関連するデータやメソッドに関する手続きを一つにまとめた考え方を、プログラムの基本的な構成とするものです。オブジェクト指向以外には、以下のような特徴を持ちます。

  • ・行末のセミコロンを省略できる

    ・変数宣言にvalとvarを使用できる

    ・ifとswitchの扱いがJavaと異なる

    ・ラムダ式を使用できる

    ・型宣言は後ろに置く

    ・Javaの標準ライブラリをKotlinで使用できる

    ・実行するプラットフォーム、ハードウェアを問わない

最大の特徴は、Javaの標準ライブラリをKotlinで使用できることです。つまりKotlinには、Javaとの互換性があります。また、Javaの文法が複雑でプログラミング初学者には習得が難しいのに対して、Kotlinは文法がシンプルなため、比較的習得しやすいでしょう。

Kotlinの言語としての特徴について、それぞれ詳しく解説します。

行末のセミコロンを省略できる

Javaでコーディングする場合は、行末にセミコロンをつける必要がありますが、Kotlinでは不要です。改行するだけで行末と判断されます。
コーディングのエラーが発生しにくいため、プログラミング初心者にとっては学習しやすいでしょう。
ただし、1行で複数行記述したい場合にはセミコロンが必要です。

変数宣言にvalとvarを使用できる

Kotlinでは、変数宣言の際
valで変数定義した場合、変数の中身を変更することはできません。変数というよりも定数のように使用します。
一方で、varで変数定義した場合は変数の中身を変更可能です。そのため、Kotlinでは目的に応じてvalとvarを使い分ける必要があります。

ifとswitchの扱いがJavaと異なる

Javaの条件分岐には、ifとswitchがありますが、Kotlinにはswitch文がありません。その代わりにwhenがあります。whenではswitchと同じ処理を記述できますが、switchよりもKotlinのwhenのほうがシンプルでわかりやすいコードで記述できます。
以下のサンプルコードでは、0~2の数値が一致すれば数値を表示し、どれにも一致しなかった場合は「0~2以外の数字です」と表示します。

・Javaのswitch

int i = 1;
switch(i) {
case 0:
System.out.println("0");
break;
case 1:
System.out.println("1");
break;
case 2:
System.out.println("2");
break;
default:
System.out.println("0~2以外の数字です");
}

・Kotlinのwhen

val i = 1
when(i) {
0 -> println("0です。")
1 -> println("1です。")
2 -> println("2です。")
else -> println("0~2以外の数字です。")
}

ラムダ式を使用できる

Kotlinの標準ライブラリではラムダ式を多用しています。ラムダ式は、メソッドを変数のように扱える点が特徴です。共通のコード構造を抜き出して、ライブラリ関数へ渡すことができます。
ラムダ式での記述によって、プログラムが冗長になることを防ぎ、より本質的な部分の記述に集中できるようになります。

型宣言は後ろに置く

Kotlinの変数宣言では、型宣言を後ろに置きます。JavaやC言語の場合、型宣言は前に置きます。JavaやC言語だけではなく、現在ある多くのプログラミング言語において型宣言は前に置くことが多いですが、KotlinやUMLやSQLのように型宣言を後ろに置く方式のものもあります。

Javaの標準ライブラリをKotlinで使用できる

KotlinはJVM言語であるため、コンパイラはJavaバイトコードを出力します。KotlinからJavaを呼び出せるだけではなく、JavaからKotlinも呼び出せます。また、Javaで作られたコードを維持しながら、新しいコードをKotlinで開発することも可能です。このようにKotlinとJavaは共存できるため、効率よく開発を進められます。

さらに、IntelliJ IDEAを使用すれば、一斉にJavaからKotlinへ移行できます。実際に移行するとなると、うまく変換されずにコンパイルエラーが発生することもありますが、フルスクラッチで作り直すのに比べると断然早いでしょう。

ライブラリに関しては、Spring Frameworkがバージョン5.0からKotlinを正式にサポートしたことにより、さらに使いやすくなっています。これまでJavaでプログラミングしていたエンジニアがKotlinを使い始める際も、構文などの言語仕様の違いに慣れればよいだけです。

以下の例では、KotlinからJavaの標準ライブラリを呼び出してファイルの内容を表示します。

import java.nio.file.Files
import java.nio.file.Paths

fun main(args: Array) {
val path = Paths.get("/document.txt")
val lines = Files.readAllLines(path)
for (line in lines) {
println(line)
}
}

実行するプラットフォーム、ハードウェアを問わない

Kotlinはプラットフォームやハードウェアに依存しない、クロスプラットフォームのプログラミング言語です。Java Virtual Machine (JVM) 上で動作できるため、Javaとの相互運用性があります。そのため、Androidアプリケーション開発やサーバーサイド開発など、さまざまなプラットフォームで利用されています。

さらに、Kotlin/Nativeと呼ばれるプラットフォームネイティブなコンパイラも提供されています。これにより、iOSやWebAssemblyなど、他のプラットフォーム上でネイティブな実行コードを生成できます。そのため、Kotlinを使用して異なるプラットフォーム上で同じコードベースを共有することができます。

Kotlinは非常に柔軟であり、拡張性が高いです。そのため、プラットフォーム・ハードウェアを問わず、さまざまな用途で広く利用されています。

Kotlinのメリット

Kotlinのメリットについて解説します。

安全性が高い

Kotlinを利用すると、エラーを減らすことができます。Kotlinは、Nullを許容する型とNullを許容しない型がわかりやすく区別されています。
Kotlinでは、「Null Safety」という仕様があり、Nullを参照した際に発生するエラーが発生しません。つまり、Null可型の変数にNull不可型の値を入れられますが、Null不可型の変数にNull可型の値を入れるとコンパイルエラーが発生します。
Javaで作られたコードをKotlinに置き換える際、Null許容とNull非許容の不整合があっても自然と防げる状態になり、非常に安全性が高いです。

Javaとの親和性が高い

Javaとの相互運用性が高い点もKotlinのメリットです。KotlinとJavaを相互に呼び出すことで、効率のよい運用につながるでしょう。
また、これまでJavaで実装されていたIT資産も容易にKotlinへ移行できます。既存のコードがJavaであっても、新しい機能はKotlinを仕様して実装を進めて置き換えるというハイブリッドな開発が可能です。

コードの記述が簡潔

前述したように、Kotlinはコードの記述が簡潔になる言語仕様がいくつもあります。
簡潔な記述は、安全性・安定性の向上につながります。Kotlinの元となったJavaと比較してコードがシンプルでわかりやすく、システム構築の負担も軽減されています。Kotlinを使えば、工数の削減にもつながるでしょう。また、文法がシンプルな分、Javaと比較して習得の難易度が低いこともメリットです。

言語のサポートが充実している

KotlinはGoogleがAndroidアプリ開発の公式言語に採用したことで、Androidアプリ開発者向けにGoogleからの手厚いサポートが受けられるようになりました。

Googleは、Androidアプリ開発を行っているKotlinエンジニアの経験値を向上する活動に力を入れており、Android Studio 3.2でLintサポートやオンライン学習できる講義などを提供しています。
また、Jet Brainsが開発元であることもサポートが充実している理由の1つでしょう。

関連記事:
Kotlinでできることは?特徴や事例を中心に徹底解説
Kotlinの将来性が高い理由とは?できることやメリット・デメリットも紹介

NULLの扱いが厳密で実行後のトラブルが少ない

KotlinはNULLの扱いが厳密で、実行時のNullPointerException(NULLポインタ例外)を減少させるための機能が組み込まれています。Kotlinでは、NULLの可能性がある変数を宣言する際に明示的に指定する必要があり、その変数を使用する際にはNULLチェックが必要です。これにより、コンパイル時にNULLに関するエラーを検知しやすくなります。

このような機能により、実行時のトラブルを減らすことができ、コードの信頼性を向上させます。

学習コストを掛けずに身につけやすい

Kotlinは、文法がシンプルであることから、学習の難易度が比較的低いと言われています。とくにJavaを習得している人は、文法も似ている部分が多いためスムーズに習得できるでしょう。そのため、Javaと比較すると関連書籍は少ないとはいえ、書籍と公式サイトを用いると十分に学習できます。

Kotlin公式サイトでは、実際にコードに触れられるコンテンツが公開されているため、関連書籍から得た知識をもとに実践してみることをおすすめします。公式サイトは英語表記であり、翻訳機能を使いながら学ぶと効率的です。

また、Kotlinを学習するためにオンラインスクールなども開講されています。Kotlinの実践的な学習が体系的に身につけられるため、すぐに仕事で活用したい場合は検討してみるとよいでしょう。

Kotlinのデメリット

どんな言語を学ぶ場合も、メリットだけではなくデメリットの理解も必要です。後発の言語であるKotlinには、以下のようなデメリットがあります。

Androidアプリ開発以外の事例が少ない

Kotlinは2011年に登場したばかりで、比較的歴史が浅いため、まだそれほど多くの現場で使用されていません。転職情報を掲載しているレバテックキャリアの求人数を見てみると、Javaが約7,000件あるのに対して、Kotlinは約1,500件です(※2023年11月現在)。

Kotlinの使いやすさや安全性などを考慮すると、Javaからの以降により、今後需要は高まっていくと予想されます。しかし、簡単にはJavaから置き換えできないケースや、クライアントがJavaからの移行に反対するケースなどもあるため、Javaで書かれたすべてのシステムがKotlinに変更されることはないでしょう。

Javaと比べて日本語のドキュメントが少ない

Kotlinは、Javaに比べると参考にできる日本語の情報が圧倒的に少ないです。

例えば、Amazonで「Java 入門」と検索すると2,000件以上の書籍がヒットするのに対して、「Kotlin 入門」ではわずか298件です(※2023年11月現在)。これはインターネット上の情報やドキュメントも同様です。
そのため、プログラミング自体が初めてで、これから独学でKotlinを習得しようとしている人には厳しい状況かもしれません。また、実際の開発現場でKotlinを利用する際にも、ピンポイントで欲しい情報がヒットしないケースが多いため注意が必要です。

一方、Googleは「Kotlin ファースト」として、Kotlinのチュートリアルなどを英語で提供しています。ある程度の英語力を持っている人は、英文読解の強化もかねて、英語のドキュメントでKotlinを学んでみるとよいでしょう。技術に関する内容であるため、比較的シンプルな英文で書かれていることが特徴です。

汎用性でみるとJavaに及ばない部分もある

Kotlinは、汎用性ではJavaに及ばない部分があります。Javaのほうが古く、長い間使われているため、開発できるものはKotlinよりも圧倒的に多いです。
汎用性が高い言語は、あらゆる開発現場に対応できるため、未経験から転職する場合は、汎用性の高いJavaの習得を求められる可能性が高いでしょう。

Kotlinの将来性

Kotlinの将来性について考えるには、まずIT業界全体の人材不足に注目する必要があります。2019年に発表されたIT人材需給に関する調査では、ITエンジニアの人材不足が顕著であるデータが出ています。Kotlinだけではなく、アプリケーション開発ができる言語を習得することは、今後の就職に有利となる可能性が高いでしょう。

Kotlinはアプリケーション開発やサーバーサイド開発ができる言語であるため、将来性が期待できます
その理由は以下の4点です。

  • ・スマートフォンの出荷増大に伴い需要が高まる

    ・GoogleがAndroidアプリ開発の公式言語に採用した影響

    ・アップデートし続けている

    ・世界的企業やサービスで使用されている

スマートフォンの出荷増大に伴い需要が高まる

MM総研が行った調査結果によると、2021年4月〜2022年3月の国内におけるスマートフォン出荷台数は、前年度比4.3%増で過去最多を更新しました。今後、5Gの需要が高まるにつれて、スマートフォンの出荷台数はますます増えていくと予想されます。それに伴いAndroidアプリ開発の需要も高まるため、Kotlinの将来性は高いといえるでしょう。

GoogleがAndroidアプリ開発の公式言語に採用した影響

GoogleがAndroidアプリ開発の公式言語に採用したことは、Kotlinの将来性に大きく影響しています。Javaよりも早くコードを記述できるため、「Androidアプリ開発といえばKotlin」というエンジニアも少なくありません。

アップデートし続けている

Kotlinは、日々アップデートを繰り返し、進化し続けている言語です。安定版であるKotlin1.1がリリースされたのは、2016年2月15日です。その後、2017年に1.2、2018年に1.3がリリースされています。
Android公式言語に認定されて以降の2021年には立て続けにアップデートしており、開発が加速している様子が伺えます。

さらに、Kotlinはアプリ開発だけではなく、サーバーサイドの開発でも用いられています。そのため、OSやデータベースなどの開発に関する知識があれば、エンジニアとしての価値が高まり、需要の拡大にも対応できる人材となれるでしょう。

世界的企業やサービスで使用されている

Androidアプリ開発にKotlinを採用しているのは、Googleだけではありません。Googleを筆頭に、Gradle、Corda、Evernoteなどの世界的に有名な企業やサービスでも多く使われています。今後もスマートフォンの普及は続き、Androidアプリを開発する企業は増加していくと予想されるため、Kotlinの需要はますます高まるでしょう。

Kotlinに関するよくある質問

ここでは、Kotlinに関するよく聞かれる質問を解説します。

Q1. Kotlinでできることは何ですか?

Kotlinでできることを3つ解説します。

・Androidアプリ開発
Kotlinは、GoogleがAndroid開発の公式言語に指定しているため、Androidアプリの開発で多く使用されています。

・Webアプリの開発
Webアプリケーション開発においても、Javaのフレームワークやライブラリが利用できるため幅広い実装が可能です。

・サーバーサイドの開発
サーバーサイドの開発でもKotlinは用いられます。現在サーバーサイドの開発にはJavaが広く使われていますが、追加や修正でKotlinが使用されるケースも多いです。

Q2. Kotlinが苦手なことはなんですか?

Kotlinが苦手なことを3つ解説します。

・Androidアプリ開発以外の事例が少ない
Kotlinは2011年に登場したばかりで、比較的歴史が浅いため、まだそれほど多くの現場で使用されていません。

・Javaと比べて日本語のドキュメントが少ない
Kotlinは、Javaに比べると参考にできる日本語の情報が圧倒的に少ないです。そのため、プログラミング自体が初めてで、これから独学でKotlinを習得しようとしている人には厳しい状況かもしれません。

・汎用性でみるとJavaに及ばない部分もある
Kotlinは、汎用性ではJavaに及ばない部分があります。Javaのほうが古く、長い間使われているため、開発できるものはKotlinよりも圧倒的に多いです。

まとめ

本記事では、Kotlinのメリットや将来性について解説しました。

kotlinのメリットは、「安全性が高い」「Javaとの親和性が高い」「コードの記述が簡潔」「言語のサポートが充実している」などが挙げられます。逆にデメリットとして、「Androidアプリ開発以外の事例が少ない」「Javaと比べて日本語のドキュメントが少ない」「汎用性でみるとJavaに及ばない部分もある」といったことが挙げられます。

Kotlinは将来性が期待できるため、将来を見据えたスキルアップや今後活動できる分野拡大を考えている人はKotlinに今のうちから触れておくのもおすすめです。Kotlinの持つメリットとデメリットを正しく理解し、学習を進めていきましょう。

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