Unityは、主にゲーム開発用のツールであるゲームエンジンとして利用されていますが、3Dコンテンツの開発など、ゲーム以外のさまざまな業界でも活用が広がっています。本記事では、Unityの特徴や需要、将来性、さまざまな業界での活用事例について解説します。Unityや3Dコンテンツ制作に興味のある方は参考にしてください。
Unityとは
Unityはゲームエンジンとして高い知名度があり、有名タイトルから個人開発のゲームまで多くのゲーム開発に採用されてきました。はじめに、ゲームエンジンおよびUnityの概要について解説します。
Unityの概要
Unityとは、Unity Technologiesが開発するゲームエンジンです。モバイルやPC、コンソール向けなどゲーム全体の半分以上がUnityで開発されています。世界の45を超える拠点で事業を展開し、Unityのクリエイターは190以上の国と地域に存在するなど、世界中にUnityの技術が浸透しています。豊富なライブラリや素材を提供しており、高品質なグラフィカルのゲームを作れることが魅力です。
Unityの用途はゲームだけではありません。産業用途のロボットや、自動運転のアプリケーションにおいてもUnityが活用されています。現場のロボットで収集したデータをもとにシミュレーションを作成した事例や、自動車に搭載するセンサデータや車両の挙動をシミュレーションした事例があります。そのほかにも、ARやVR、建築物などの分野向けのソフトウェアが販売されています。
※参考:
産業用ロボットにおけるUnityとAI技術の活用
Unity x 自動運転シミュレーション、自動運転におけるGame Engineの役割
ゲームエンジンとは
ゲームエンジンとは、ゲーム開発に用いられるIDE(統合開発環境)のことで、UnityとEpic GamesのUnreal Engineの2つが大きなシェアを握っています。コンピュータグラフィックスのアプリケーション開発に必要なライブラリやツールがまとまっており、3Dグラフィックスによる映像や音声の処理などの開発を進められる環境が用意されています。
また、産業機器や自動車、都市モデルといった3Dデータをゲームエンジンに取り込み、3Dによるデザインレビューや景観シミュレーションに活用する事例もあります。近年では、DXやデジタルツインなどが注目を集め、コンピュータ上で3Dデータを活用したいというニーズが増えています。
Unityの需要と将来性
ゲームエンジンおよびゲーム市場全体の将来性と、Unityの需要について解説します。
新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要があり、2020年にはゲームエンジンおよびゲーム市場が急速に拡大しました。2021年もその傾向は続いており、今後もUnityの需要は拡大すると見込まれます。
ゲームエンジンおよびゲーム市場の将来性
世界でのゲームエンジンおよび開発ソフトウェアの市場規模は、2020年に6.9億ドルに達しました。2027年には、18.8億ドルにまで達すると予測されています。その期間の年平均成長率は14.1%の見込みです。ゲーム業界における需要の増加だけではなく、自動車や建築、ARやVRなどさまざまな業界での採用が期待されています。
ゲームエンジンの主力分野であるゲーム市場に注目すると、2021年における世界市場は、前年比6.1%増の21.9兆円に達しました。最大の市場は中国を中心とする東アジアで、約40%を占めています。傾向としては、ネットワーク接続が前提となるオンラインプラットフォームの割合が大きいです。
日本国内の市場を見ると、2021年は前年比0.8%減の2兆円規模となりました。2020年は新型コロナウイルスの影響で巣ごもり需要があったものの、今年は横ばい状態です。国内ゲーム人口の5,535万人のうち、スマートフォンアプリのゲームユーザーは最も大きく4,231万人に達しています。
※参考:
ゲームエンジンおよび開発ソフトウェアの世界市場:規模・現状・予測(2022年)
世界ゲーム市場は約22兆円に 国内市場はゲームアプリが1.3兆円
Unityの需要は拡大
Unity Technologiesの発表によると、2021年にUnityプラットフォームにて制作されたゲーム数は、前年より93%増加しました。Unityを活用するゲームクリエイター数も前年より31%の増加です。特に広告収入で収益化されるようなスマートフォン向けゲームが多く制作されています。
2020年に発生した新型コロナウイルス感染拡大の影響でゲームの収益は伸びており、パンデミック発生以前よりもゲームのプレイヤーが多い状況です。特にスマートフォン向けゲームはユーザー数が多く、2021年におけるアプリ内課金による収益の伸び率は162%を超えるほどでした。しかし、中国では2021年8月に18歳未満の子どもに対するゲームの規制が強化され、プレイヤーのリピート率が極端に落ち込みました。
関連記事:Unityエンジニアとは?仕事内容や将来性、スキルを解説
※参考:Unityゲーミングレポート2022
Unityの特徴
市場で高いシェアを誇るUnityは制作できるコンテンツの幅が広く、初心者でも取り組みやすい環境が整っています。ここでは、Unityの主な特徴を4つ紹介します。
マルチプラットフォーム
Unityの対応プラットフォームは20以上と豊富で、多様なコンテンツを制作できます。デスクトップPC向けであればWindowsやMac、Linuxに対応、モバイル向けならiOSとAndroid、家庭用ゲーム機向けならPS5やPS4、Nintendo Switch、Xbox Oneに対応しています。ほかにもXR向けにARKitやARCore、Oculus、PlayStation VRなども対応するなど、制作したゲームを多くのユーザーに届けられるでしょう。
※参考:Unity はどのプラットフォームをサポートしていますか?
初心者でも使いやすい
Unityのエディタを用いるとコードを書く必要がないため、ゲーム開発の際にプログラミングの知識は必須ではありません。キャラクターや小道具、背景などのオブジェクトを配置し、GUIの操作で大きさや外観、振る舞いなどを設定する、という流れでゲームを作成できます。UnityはC#をサポートしていますが、基本的な機能に関するスクリプトや拡張機能などが用意されています。Unityの機能を用いると、C#のみで進めるよりも楽にゲーム開発ができるでしょう。
※参考:
Unity ユーザーマニュアル
プログラミング経験がある方の UNITY でのスクリプティング
学習コンテンツが充実
Unityはユーザーマニュアルがインターネット上で公開されており、これからUnityを学ぶ初心者向けのチュートリアルや、上級者向けのガイドが用意されています。エディタ―の使い方やスクリプトの書き方、グラフィックやビジュアルエフェクト、2D、XRなど、習得したいスキルを学べる環境が整っているため、興味のある方は活用してはいかがでしょうか。
チュートリアルを通してUnityの仕組みを学べば、いずれオリジナルのゲームを作れるようになるでしょう。ただし、英語版コンテンツを機械翻訳しただけで、日本語の監修が未実施のコンテンツもあるためご注意ください。
※参考:Unity Learnへようこそ
目的に応じたライセンスを選択できる
Unityを利用するには、目的に応じたライセンスを購入しなければなりません。ライセンスには以下の4種類があり、それぞれ金額や利用条件が異なります。(※2022年12月現在)
Personal:個人開発者および小規模企業向け、無料
年間の収益や調達資金が10万ドル未満であること
Plus:個人開発者および小規模企業向け、48,394円/年(税込、年間プラン)
年間の収益や調達資金が20万ドル未満であること
Pro:プロ向け、267,960円/年(税込、年間プラン)
収益や調達資金の制限なし
Enterprise:大規模チーム向け、営業窓口から販売
また学生向けのUnity Studentプランもあり、学生の間は無料で使用できます。
関連記事:未経験からUnityエンジニアとして就職・転職する方法とは?
Unityの活用事例
Unityはゲーム開発に限らず、3Dモデリングを必要とするさまざまな業界で活用されています。6つの分野に関して代表的な用途を紹介します。
ゲーム開発
Unityの代表的な用途はゲーム開発です。個人開発者から大手企業まで、多くのクリエイターがUnityを利用しています。ジャンル別でみると、パズル、カード、レージング、カジュアル、スポーツでUnityは高い収益を上げています。また、中国と日本は広告収益が高く、その他の地域はアプリ内課金の収益が高い傾向があることも特徴です。
近年ではユーザー数増加のため、同一タイトルのゲームを複数のプラットフォームで開発するケースが増えてきました。さまざまなプラットフォームに対応しているUnityは、別のプラットフォームへのインポートも実行しやすいメリットがあります。また、多種多様なゲーム開発に対応しており、古くからあるドット絵を用いた2Dゲームから最新の3Dまで制作可能です。アセットストアに用意された豊富なライブラリや素材を活用してもよいでしょう。
※参考:Unityゲーミングレポート2022
AR/VR
ARやVRを活用したゲームでもUnityが活用されており、コンテンツのシェア率は60%を超えました。今後5年間で、2.16億人のプレイヤーが増える見込みです。Unityが提供するオンライン学習プラットフォームのUnity Learnで、VRコントローラを用いた操作やユーザーインタフェース要素などの開発スキルを学べます。
また、製造業やアパレル業界などで商品を販売する場面においても、ARやVR体験を活用するケースが増えています。立体的な3Dモデルを用いることで試作品の印象をより強くし、顧客へのプレゼンテーションに活用できるためです。さらに、AR技術を用いて機器にチュートリアルを重ねて表示したり、重要な手順を強調したりなど、操作方法の解説にも活用されています。詳細は後述しますが、ARやVR技術は他業界でも広く取り入れられています。
※参考:
Unityゲーミングレポート2022
Unity で AR/VR アプリを作成する方法を学ぶ
デジタルツイン
デジタルツインとは、物理世界で収集したデータを用いて3Dモデルを構築した仮想世界を作り、仮想世界上でのシミュレーションを通して物理世界での課題を解決するという概念です。デジタルツインは工場の製造ラインの効率的運用や、都市の防災シミュレーションなどを目的に開発が進められています。
デジタルツインの開発ツールとして、3Dモデルのシミュレーションが可能となるUnityのようなゲームエンジンが注目されるようになりました。デジタルツインは、IoTやビッグデータ、AIなどの技術と相性が良いといわれています。現場にある多数のセンサーで収集したビッグデータを用いてAI学習モデルを設計し、より高度なシミュレーションを実現できると期待されています。
※参考:デジタルツインとは?
建築
建築業界においても、Unityの3Dモデル技術によるARやVR技術が活用されています。AR技術で建設予定地に設備や建物の構造を映し出し、イメージを共有しやすくして効率的な情報伝達や意思決定につなげていくものです。
複雑な作業工程に関する手順を表示したり、トレーニングを用意したりすることで、短期間でのスキルアップを目指せます。また、現場の作業員が見ている情報をARゴーグルで共有し、ベテランの作業員が遠隔から指示するという活用方法もあります。ARやVR技術の活用で迅速な情報共有や作業員のスキルアップを実現すれば、現場作業の品質や生産性の向上が期待できるでしょう。
※参考:建築設計、エンジニアリング、建設
自動車
自動車の開発や製造プロセス全般においてUnityを活用できます。製品のデザイン検討を行う際は、バーチャル空間に試作品を作成し、ARやVRを用いて実際に車を操作するなど、インタラクティブなデザインレビューを実施できます。
製品設計時には、機械学習で走行シミュレーションをしたり、車内のディスプレイに車の3Dモデルや地図を表示して現在の状態を表したりする活用方法があります。セールス活動において、バーチャル空間上でイベントやショールームを開催することも可能です。また修理やメンテナンスの場面では、AR技術で手順を示すなど、作業者をアシストするシステムが検討されています。
※参考:
自動車&製造分野での活用
「スクリーンは新しいホースパワー」:大手高級自動車ブランド、Unity でイノベーションを起こす
医療
医療分野でUnityが活用されている事例もあります。医療機器業界は世界規模で55兆円の市場がありますが、医療シミュレーション分野に限定すると全世界で1,400億円ほどであり、今後の成長が期待される分野といえるでしょう。
例えば、医者が手術前に参照する画像データは数千枚におよぶことも少なくありません。Unityを活用して画像から3DCGデータを作成できれば、手術前の短時間でも理解しやすくなります。また、手術シミュレーションは3DCGで手術の仕方を教えてくれるだけではなく、ベテラン医師と新米医師の操作データを比較したり、参考にしたりすることもできます。
※参考:Unityの医療と教育への応用 ~ちょっと人を助けてみませんか?~
関連記事:Unityでできることとは?ゲーム分野以外の活用例も紹介
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