アジャイル開発とは?開発プロセスやウォーターフォールとの違いをわかりやすく解説

最終更新日:2023年11月27日

アジャイル開発は、顧客要求や市場環境に合わせ、スピーディーで柔軟な開発を目指す手法です。近年、多くの企業が採用している手法のため、アジャイル開発に注目しているITエンジニアの方も多いでしょう。当記事では、アジャイル開発の概要やウォーターフォール開発との違い、メリット・デメリットなどを解説します。また、具体的な開発プロセスや従来の開発手法との違いについても解説します。

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この記事のまとめ

  • アジャイル開発は従来のウォーターフォールなどの手法とは異なる開発プロセスである
  • メリットがある一方で手法を理解していないと主に管理面でリスクがある
  • DXと親和性があるものの、DX人材は不足しているためアジャイル開発スキルを持っているエンジニアは高い需要が見込まれる

アジャイル開発とは

アジャイル(agile)とは、直訳すると「機敏・迅速」という意味で、アジャイル開発(アジャイルソフトウェア開発)は、スピーディーに開発を行う手法を指します。
今まで使われてきたシステムやソフトウェアの開発手法の基本となる「設計→開発→テスト→リリース」の開発工程を、短いサイクルで何度も繰り返すことが特徴です。
このサイクルを「イテレーション」と呼ぶなど、アジャイル開発には特有の名称があります。

アジャイル開発では、開発する全タスクに優先順位をつけることで、MVP製品(Minimum Viable Product:実用最小限の機能を備えた製品)として必須な機能を優先して開発します。また、プロジェクトに修正はつきものであるという前提で進めるため、仕様変更に対応できる柔軟なプロジェクト進行をしながら、顧客要望を満たすことに重点を置いた開発手法です。

従来のウォーターフォール開発は、要件定義や設計でシステム全体の方向性を決めてから開発を進め、開発完了後、顧客の受入試験から納品までに要求が満たされているかを確認する流れでした。そのため、工程の最後に仕様の認識違いが発覚したり、仕様変更が発生したりすることがありました。

一方で、アジャイル開発では前述のとおり、リリースとレビューを繰り返しながら早い段階で動くものを顧客と確認しながら開発を進めます。そのため、大きな手戻りやプロジェクトの炎上などのリスクを下げながら着実に開発を進めることが可能です。これにより、サービス提供開始までの期間を短縮できるなど、スピーディーな開発が期待できます。

アジャイル開発の種類と具体的な開発プロセス

次に、アジャイル開発にはいくつかの種類があります。それらとアジャイル開発の具体的な開発プロセスについて解説します。

アジャイル開発の種類

アジャイル開発にはさまざまな手法がありますが、代表的なスクラム、エクストリームプログラミング(XP)、リーンソフトウェア開発について解説します。

スクラム

スクラムとは、1~4週間のスプリントと呼ばれる開発工程を複数回繰り返す手法です。一般的には少人数でチームを組み、開発を進めていきます。
アジャイル開発ではイテレーションと呼ぶ開発工程を、スクラム開発ではスプリントと呼ぶなど、両者は使われる言葉が異なり、スクラム特有のルールもあります。
スクラム開発のメリットは、より現場に即したルールがあるため、初めてのチームでもセオリーに従って進めることで導入しやすい点です。また、スクラム開発に関する実践的な書籍も多くあるため参考にしやすいでしょう。

参考:scrum guides「スクラムガイド スクラム公式ガイド:ゲームのルール 」

エクストリームプログラミング(XP)

エクストリームプログラミングの特徴は「5つの価値基準」と「19のプラクティス」に重きを置く点です。基本的に、素早いリリースが必要とされる小規模な開発に適用されます。多くても10人程度の少人数チームを組む場合の手法です。

「5つの価値基準」とは、プロジェクトやチームのマインドとして大事にする基準のことで、「確約」「勇気」「尊敬」「公開」「集中」が定義されています。

「19のプラクティス」では、プロジェクトを成功させるための具体的な手法が掲げられています。例えば、19のプラクティスのひとつに、プログラマーが2名で一緒に実装を進める「ペアプログラミング」があります。ペアプログラミングは、1人がコードを書き、もう1人がすぐにレビューを行って異なる視点でコーディングを実施することで、問題やバグを検出し、コード品質を上げることを目的としています。

リーンソフトウェア開発(LSD)

リーンソフトウェア開発は、トヨタ自動車が採用・実施しているトヨタ生産方式をIT分野に応用した開発手法です。JIT(ジャスト・イン・タイム)を重視しており、クリティカルパスを把握して適切なタイミングで適切なものを提供することを目指しています。
厳密に定義された進め方はありませんが、下記7つの原則を念頭にソフトウェアを開発する手法です。

  • ①無駄をなくす

    ②不具合を未然に防ぎ、品質を高める

    ③フィードバックから得た知識を蓄積・活用する

    ④重要な意思決定を急がない

    ⑤ソフトウェアリリースを迅速に行う

    ⑥メンバーを尊重する

    ⑦開発プロセス全体を最適化する

リーンソフトウェア開発の全体としての方向性は、無駄をなくすことです。不具合を未然に防ぐことも、意思決定を急がないことも、結果的には無駄の抑制につながります。

参考:トヨタバーチャル工場見学「よくわかる「トヨタ生産方式」」

アジャイル開発プロセス

アジャイル開発は、種類によってプロセスが多少変わってきますが、ここでは基本的なアジャイル開発プロセスの概要を紹介します。

見積

アジャイル開発の見積は、工数では行わない点が特徴です。ストーリーポイントと呼ばれる相対見積(フィボナッチ数)によって、各タスクの開発サイズをチームメンバーで見積ります。

計画

見積が完了後、より詳細なタスクを洗い出します。優先度の高いタスクや各タスクの関係性を考慮しながら、どのイテレーションでどのようなタスクを実施するかを計画します。

設計/実装/テスト

設計/実装/テストは、機能ごとに行います。開発者は工程ごとに設計専任・実装専任・テスト専任などの役割分担はせずに、必要に応じてそれぞれの役割を担当します。

リリース/レビュー

イテレーションの最後には、開発した成果物を関係者が確認できる環境へリリースし、レビューを行います。

ふりかえり

チームでふりかえりを行い、良かったことや問題・課題などを共有します。次回以降のイテレーションで改善すべきことを決め、プロジェクトの進行とともにチームが成長することを目指します。

参考:IPA「アジャイル開発の進め方 」
関連記事:アジャイル開発関連のおすすめ資格10選と需要を徹底解説

アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い

前述したとおり、ウォーターフォール開発は、要件定義から設計、開発、実装、テスト、運用までの各工程を順に完了させていく開発手法です。

要件定義や全体の詳細な機能や設計を固めてから開発に着手するため、開発を開始するまでに時間を要します。一方で、初期段階で全体が決まっていることから、プロジェクトスケジュールを確定しやすい点がメリットとしてあります。リソース配分などの体制や費用の確定など、事前に全体を設計しやすくなります。

アジャイル開発との相違点は、開発途中での仕様変更や追加対応がしにくいことです。ウォーターフォール開発では、開発の最終段階になってから、仕様に関して顧客との認識のズレが明らかになることがあります。いくつも前の工程に遡って開発を見直す必要があるケースも多く、追加費用が発生したり、開発の遅延につながったりするりおそれがあります。

アジャイル開発では機能ごとの開発を小規模で繰り返すため、修正や設計の変更がしやすい点が特徴です。

アジャイル開発のメリット・デメリット

どの開発手法にもメリットとデメリットはあり、アジャイル開発にもメリットとデメリットがあります。導入を検討している場合はこれらをよく理解し、特にデメリットについては対策を行ったうえで導入を進める必要があるでしょう。

アジャイル開発のメリット

アジャイル開発のメリットは、前項で解説した柔軟性のある開発と、開発スピードの他に、チームのスキルやモチベーションの向上が期待できるという点もあげられます。

アジャイル開発では、「アジャイルソフトウェア開発宣言」を大前提に開発を行い、これを実現するために様々なプラクティスが存在します。
例えば朝会やふりかえりもそのひとつで、これらにより密なコミュニケーションが行われるほか、ふりかえりでは自ら課題を発見し、チームで解決する行為を繰り返すことにより、チーム力の強化と自立した人材の育成が期待できます。

アジャイル開発のデメリット

アジャイル開発では、ストーリーポイントでの相対見積でイテレーション計画を立て、チームがイテレーション内で実施できるタスクの消化具合を見ながら毎回計画します。
そのため、見積や計画に慣れが必要であることや、管理のハードルが高いことがデメリットと言えるでしょう。

また、プロダクトオーナー(プロダクト開発の責任者)の要求がはっきりしなかったり、方向性に一貫性がなかったりする場合、開発が場当たり的な状態に陥ることで開発の方向性がぶれて失敗しやすくなります。

こうしたデメリットをカバーするためには、アジャイル開発の経験者を中心に体制を組むことが効果的です。
アジャイル開発の経験者がいない場合は、研修期間を設ける、プロジェクト全体の期間を多く取るなどの対策が必要となるでしょう。

アジャイル開発の代表例

アジャイル開発はさまざまな製品で採用されています。ここでは、アジャイル開発が採用されている代表的な事例を紹介します。

デンソー

デンソーでは、2017年からMaaS開発部デジタルイノベーション室を設置し、アジャイル開発の取り組みをスタートしました。センサーなどのIoT情報を活用したプロダクト・サービスをアジャイルで開発しています。
部門名であるMaaSとは、Mobility As A Serviceの略称で、モビリティ(交通)のサービスという意味で、アジャイルによるMaaS開発の背景にはカメラやセンサーなどからの情報をソフトウェアで処理して制御する、自動車のソフトウェア化の潮流があります。
従来、機械部品のかたまりとして見られてきた自動車ですが、近年では自動運転や運転サポートなどソフトウェアの比重が大きくなりつつあります。
自動車へのソフトウェアの適用は日進月歩で進んでいるため、アジャイルによる開発が適しているといえます。

参考:デンソーのアジャイル開発チームができるまで

鹿児島銀行(Payどん)

鹿児島銀行のPayどんは、鹿児島銀行に口座を保有する顧客が利用できるキャッシュレス決済サービスです。完全キャッシュレス商業施設「よかど鹿児島」の新装オープンに合わせることが必須条件であったため、完成の遅延が許されない状況下でPayどんの開発プロジェクトが進められました。厳しいスケジュールにも関わらず、アジャイル開発の採用によりオープンと同時にサービスの提供が実現しています。

参考:スマホ決済アプリ『Payどん』

東京証券取引所

東京証券取引所では、機関投資家の取引を電子化するためのプラットフォームを構築することになりました。しかし、東京証券取引所にとっては新しいビジネスであり、要件定義を確定できませんでした。加えて、海外の競合サービスに対抗できるようスピーディーな立ち上げが求められたため、アジャイル開発が採用され、手法としてはリーン開発が採用されています。

参考:富士通「東京証券取引所 様アジャイルプロジェクト事例」

アジャイル開発が注目される理由

アジャイル開発が注目されている主な背景には、ユーザニーズ・社会環境・テクノロジーなどの変化に素早く対応するために、ビジネスのスピードが上がっていることが挙げられます。
また、最近では、アジャイルへの注目は開発手法にとどまりません。近年のVUCA(ブーカ)といわれる、変動しやすく(Volatile)、不確実で(Uncertain)、複雑(Complex)な状況に対応するには、アジャイル的な思考が必要とされており、同様の手法がさまざまな考え方・進め方に使われることもあります。

アジャイル開発経験者の需要

近年では、業種を問わずDX化が進んでいますが、DXを進めるプロジェクトマネージャーの数は大幅に不足しているのが現状です。DXとアジャイル開発の進め方には高い親和性があるため、アジャイル開発経験者は多くの企業で重宝されるでしょう。
また、IT業界でのアジャイル開発プロジェクトの浸透も進んでいることから、アジャイル開発経験のあるプロジェクトマネージャー、エンジニアともに高い需要が続くと考えられます。

参考:IPA「これからの人材のスキル変革を考える~DX時代を迎えて~」5.DX推進人材は大幅に不足

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この記事の監修

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