IT業界のプロトタイピングとは?メリット・デメリットを解説

最終更新日:2024年1月19日

プロトタイピングとは、初期の段階でプロトタイプ(試作品)を作る開発手法です。製造業では一般的な手法ですが、近年ではIT業界でも多く活用されています。プロトタイピングにはユーザーの反応が見えるというメリットがある反面、開発コストが予想しにくいなどのデメリットもあるため注意が必要です。本記事では、プロトタイピングの概要やメリット・デメリット、アジャイル開発との違いなどについて解説します。

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この記事のまとめ

  • プロトタイピングは製造業では一般的な開発手法で、IT業界でも活用されている
  • ユーザーの反応が直接的にわかる、仕様の不備や不具合の早期発見につながるといったメリットがある
  • デメリットはプロトタイプ作成に時間がかかることや、要件がまとまりにくくなる場合がある

プロトタイピングとは

プロトタイピングとは、製品開発の初期段階において実際に可動するプロトタイプ(試作品)を作成する開発手法です。プロトタイプの使用感や顧客の感想などをフィードバックとして、細かな仕様を確定していきます。

プロトタイピングは製造業では一般的な開発手法

製造業では、プロトタイピングが一般化しています。例えば、自動車の新車開発では、必ずといってよいほどプロトタイプが作成されます。実際に走るプロトタイプを作成することにより、デザインや性能に対するリアルな印象や使用感を得られることが大きなメリットです。

製造業においては、量産のしやすさも重要な要素であり、プロトタイプは詳細な製造方法や生産ラインの組み立てを検証することにも用いられます。印象や評判、製造のしやすさなど、さまざまな観点で入念にチェックされ、製品のデザインやスペックなどの詳細が決定します。

IT業界におけるプロトタイピングとは

IT業界におけるプロトタイピングとは、実際に稼働するアプリやシステムを作成し、ユーザーの使用感などを確かめる開発手法です。

プロトタイプは試作品であるため、すべての機能が実装されている必要はありません。しかし、まったく動かないものではプロトタイプとしての意味を成さないでしょう。主要な機能はそれなりに動き、完成品に近い状態でUI上に表示される必要があります。

プロトタイプを作成することで、ユーザーの反応を確かめられるほか、どうすればより使いやすい製品になるかを実体験から検証できるため、UXの向上につながります。

プロトタイピングが使いやすい開発内容とは

プロトタイピングは開発の初期段階で「ある程度は実際に動くシステム」を作成する必要があります。

会社の基幹システムのような大規模なシステムを開発する場合、プロトタイプ作成に多くの時間や労力を要するため現実的ではありません。部分的にプロトタイプを作成する方法もありますが、基本的にはプロトタイピングは小規模な開発向けの手法です。

また、開発するシステムの仕様が明確に決まっている場合、プロトタイプを作成するメリットはほとんどありません。

プロトタイピングは、どのような機能が求められるのか、どうすれば使いやすい画面になるかが曖昧なケースにおすすめです。プロトタイプ作成やフィードバックにより、方向性が見えてくることも多くあります。

プロトタイピングのメリットとは

実際に触れるプロトタイプを作成すると、印象や使い心地などがはっきりと見えてきます。プロトタイピングのメリットについて解説します。

ユーザーの具体的な反応がわかる

プロトタイピングを行うことで、ユーザーの具体的な反応を開発初期の段階で確認できます。スムーズに操作しているのか、使いにくそうにしているのかなど、リアルな姿を見ることが可能です。

一般ユーザー向けのアプリケーションであれば、ユーザーがどんな反応を示すかは重要なポイントです。本格的に開発するべきか、そもそも開発をやめるべきかなどの経営判断にも役立つでしょう。

求められる機能やUIが明確になる

必要な機能や求められるUIが明確になることもプロトタイピングのメリットです。

ITに慣れていない中小企業の場合、「システムを使って業務を効率化したい」という要望はあるものの、システムで具体的に何をしたいかが明確になっていないケースが多く見られます。

そこで、プロトタイピングを行い作業者や管理者に向けて実際に動くシステムを示すことにより、「終業時に在庫数を入力して管理作業を簡略化したい」「この画面では在庫数と仕掛品の数を比較して、生産計画の微調整がしたい」など、具体的な要望が見えてくるでしょう。

必要な機能やUIが明確になれば、余計な手戻りが発生しにくく、開発をスムーズに進められます。

課題を早期発見できる

実際に動くプロトタイプは、課題の早期発見にも役立ちます。画面を動かしながら仕様を検証していると「〇〇と比較できないとこの画面には意味がない」「このタイミングではこの数字は得られない」など、具体的な課題が見えてくることもあります。

課題を早期に発見できれば、最小限の修正作業で済み、スムーズな開発が可能です。また、仕様を検証することで、より使いやすいシステムの開発につながります。

開発者の相互理解が深まる

システム開発の現場ではエンジニア・プログラマー・デザイナー・営業など部署間での認識のズレが発生しがちです。実際に動くプロトタイプを作成すれば、開発者側の相互理解が深まるため、認識の齟齬は起こりにくくなります。

また、製品が使われるシーンや使い方を理解しやすくなることもプロトタイピングのメリットです。プログラマーは仕様を理解しやすくなり、テスターは具体的なテストケースの作成に役立てられます。

プロトタイピングのデメリットとは

プロトタイピングには多くのメリットがある一方、デメリットも存在します。メリットとデメリットを検証し、プロトタイプの作成が必要かを見極めることが重要です。

プロトタイプ作成に時間がかかる

見た目やスペックを適当に作ったプロトタイプでは、ユーザーの正確な反応は得られません。「使いにくい」という意見があった場合、アプリケーションそのものの問題なのか、画面の作りこみが甘かったからなのか、スペック的な課題なのかなど、問題の切り分けができないからです。

そのため、ある程度の機能を持ち、見た目やスペックにもこだわったプロトタイプを作成する必要があります。プロタイプとはいえ、デザインやスペック、機能などの詳細を決める必要があると、作成に多くの時間がかかってしまいます。

要件がまとまりにくくなることがある

プロトタイプは、ユーザーのニーズを汲み上げるのに便利なツールです。一方で、ユーザーのニーズを汲み上げることはデメリットにもなり得ます。実際に動くものを触っていると、「この画面はせっかくだから、隣の製造ラインの情報と比較できるようにしたい」など、細かな要望が際限なく出てくるためです。

細かな要望にすべて応えていると、本質的な要望が見えにくくなってしまいます。「そもそもの目的は何か」「それを実現するための手段は何か」を見失わず、要望を取捨選択することが重要です。

開発コストが予想しづらい

あらかじめ作るものの概要がわかっているウォーターフォール型では、開発の規模やコストをある程度予想できます。

しかし、プロトタイピングでは試作の結果、要求や仕様が変わる可能性があるため、コストや期間の予想は困難です。想定していたコストを大きく上回るケースもあります。

プロジェクトに余裕があれば予想のブレをカバーできますが、コストや人員に余裕がないケースでは開発が滞る事態になりかねません。

プロトタイピングに役立つツールとは

プロトタイピングは、専用のツールを活用することで効率的に進められます。プロトタイピングの代表的なツールを紹介します。

UXPIN

UXPINはPayPal、Johnson & Johnsonなど世界の名だたる企業が採用しているプロトタイピングツールです。マージ機能が優れており、デザイナーとエンジニアが共同で作業しやすい点が特徴です。機能面とデザイン面で優れたプロトタイプを簡単に作成できます。

Figma

Figmaは、デザイナーと開発者の両方の目線で作られているプロトタイピングツールです。デザイナーにとってはデザインを決めやすく、開発者にとっては機能を試しやすいため、効率的な開発につながります。

オンラインのホワイトボードなど、チーム内で情報共有しやすい仕組みも提供しています。

Framer

Framerは、デザインや大まかな機能の反応をチェックしたい方におすすめのプロトタイピングツールです。作成した画面は簡単に公開できます。

また、SEO対策などの機能が豊富に備わっている点も魅力です。ユーザーの情報を解析しやすく、改善につながります。

プロトタイピングとアジャイル開発の違いとは

プロトタイピングと似た開発手法に「アジャイル開発」があります。アジャイル開発では、計画・設計・開発・リリースを小さな単位で行い、それを繰り返すことにより機能を追加していくのが特徴です。

追加する機能や仕様はリリースした製品の反応によって決まることも多く、「最終的な仕様」をしっかりと定めずに開発を進めていくという意味ではプロトタイピングと似ています。

一方で、アジャイル開発ではプロトタイプを必要としません。開発の過程でモックやプロトタイプを作成する場合もありますが、プロトタイプを作成するかどうかは状況に応じて決まります。

プロトタイピング経験も転職活動のアピール材料のひとつにできる

プロトタイピングによる開発経験は、転職活動での大きなアピール材料となります。職務経歴書に記載しておきましょう。プロトタイピングを実施した際の工夫やうまくいったこと・失敗したことなどをまとめておくと、採用担当者に伝わりやすくなります。

職務経歴書をうまく作成できない方は、転職エージェントの利用を検討してみてください。転職エージェントでは履歴書・職務経歴書の添削サービスなどを実施しています。また、自身の希望に沿った転職情報を得られるため、転職活動を効率的に進められるでしょう。

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