リクルートテクノロジーズ主催「スーパーVRイベント」を取材視覚・聴覚・触覚を刺激するスーパーVR開発メンバーが語る「VR開発の今後」

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Oculus社のリフト「Rift」をはじめ「PlayStation VR」や「HoloLens」など、VR用のヘッドマウントディスプレイが昨今話題になってきている。各メディアからは「2016年はVR元年になる」という声も上がっており、VR技術への注目が高まっている。

そんな中、2016年3月17日(木)・18日(金)、株式会社リクルートテクノロジーズの研究開発機関アドバンスドテクノロジーラボ(以下、ATL)が、東京タワーメディアセンター内のスタジオアースにて、「未来アミューズメントパーク ~視覚・聴覚・触覚を刺激する、VRを超えたスーパーVR体験会~」を開催。このイベントは、スーパーVRと銘打たれた6つのアトラクションを体験できる企画となっている。
レバテックでは本イベントに参加し、各アトラクションをATLと共同開発したメンバーにインタビューを実施。今回のプロダクトへの思いや、今後のVR開発への見解などを伺った。

「アドバンスドテクノロジーラボ」(ATL)とは

株式会社リクルートテクノロジーズのCTO・米谷修氏がラボ長を務める、先進技術の研究・開発を行う機関。これまでATLでは、iBeaconやスマートグラス、kinectなどを活用し“近未来”の飲食店を実演した「未来レストラン」イベント開催や、IoT技術により物件内覧の業務効率化を実現する「オートメーションキー」の開発などを手がけてきた。今回のイベントでは、ATLが研究開発を進めてきたVR技術のお披露目が目的の一つだという。

装置開発(指サッカー・ペンギンロボットコントローラー)開発担当:林立夫氏
VRは手段であり、大切なことは「VRを使って何を目指すか」

指サッカーとは

ユニフォーム・シューズを着用した自分の手をサッカー選手に見立て、指でサッカーボールを蹴ってプレイするアトラクション。手首に付けたカメラの映像がヘッドマウントディスプレイに映し出され、手首サイズのサッカー選手になったかのような視点で楽しむことができる。

株式会社TASKO 設計制作事業部技術主任 林立夫氏

舞台制作・機械制作・デザイン・マネジメントを専門とするメンバーが集まり設立された株式会社TASKOにて、設計制作事業部技術主任を務める。同社では「ももクロガトリング銃」などさまざまなプロダクトの設計・制作に携わる。

―「指サッカー」は、文字どおり「指でサッカーをする」というユニークなアトラクションですが、どのような経緯で開発が決定したのでしょうか?

林氏:TASKOではこれまで幅広いジャンルの機器の開発を手がけてきましたが、VR開発は初めてだったんです。その上で我々なりに「VRとはなんぞや」ということを考えて、出てきた答えが「指サッカー」でした。イベントの趣旨がエンターテイメントですので、小難しいことは抜きに体験した人に楽しんでもらうのが一番だということで決まりました。

 



「スタジアムにいるかのような臨場感にこだわった」ということで、ユニフォームやシューズも丁寧な仕上がり

―今回VR開発は初めてだったということですが、開発を行う中で重要だと感じたスキルは何でしょうか?

林氏:VRはあくまで手段であって、大切なのは「VRを使って何を目指すか」というビジョンであると感じました。技術的なところは、勉強することでいくらでも補えますから。あとは「根性」ですかね。今回の出展にあたって3日完徹しましたので(笑)。

―VR開発の今後に対して、林さんのお考えをお聞かせください。

林氏:あくまで個人の見解ですが、今までのVR開発は視覚や触覚へ重点が置かれ、その他の感覚はおまけ程度であるように感じます。今回のスーパーVRのように、今後は視覚や触覚以外の五感へも重点が置かれ、五感へ等しく訴える方向へ進んでいくのではないでしょうか。

我々TASKOはVR開発専門ではありませんが、今後クライアントさまからのご依頼があればVR開発も手掛けていきたいですし、他と違う面白いVRプロダクトを作っていきたいと思います。
 

装置開発(ペンギンロボットコントローラー):近藤那央氏
「人間でないロボット」と「テレイグジスタンス」の組み合わせで可能性を探っていきたい

ペンギンロボットコントローラーとは

水中を泳ぐペンギンを仮想体験できるアトラクション。品川水族館の水槽にあるペンギンロボットを、背負った翼型のコントローラーを羽ばたかせて遠隔操作する。ラジコンのような操作ではなく、実際にペンギンの動きをすることでペンギンロボットを泳がせる、という点が没入感を深めている。

TRYBOTS代表 近藤那央氏(慶應義塾大学在学)

本物そっくりのペンギンロボット「もるペン!」の開発を行うTRYBOTS代表。生物の動きを緻密に再現する事を目的に日々活動。個性的な女の子を発掘するアイドルオーディション「ミスiD2015」にて応募者約4000人の中からミスiD2015を受賞する。高校では機械科を卒業し、現在は慶應義塾大学環境情報学部在学中。

―開発において苦労された点はどのようなところでしょうか?

近藤氏:ハード・ソフトの両方ですね。私たち「TRYBOTS」は、今まで「もるペン!」というペンギンの動きを再現するラジコンのようなロボット開発を手がけてきました。今回の「ペンギンロボットコントローラー」は、ペンギンロボットを仮想体験するための装置であり、これまでと勝手が違う開発になりました。ハード・ソフトをイチから制作する必要があり、「壊れないこと」「ちゃんと曲がること」などの基本的なところをクリアするのにも苦労しましたね。今回のプロダクトは私たちの活動の中で一番完成度が高く、とても面白いものを作れたと満足しています。

―今後の展望をお聞かせください。

近藤氏:今回はペンギンとテレイグジスタンス(離れた場所にあるロボットを自分の分身として操作し、その場にいるかのような感覚を持てるシステム)との組み合わせを実践しました。通常、テレイグジスタンスは人間が主体となるものですが、私たちは生物の動きを再現したロボットを開発してきた実績がありますので、人間ではないロボットとテレイグジスタンスという組み合わせで可能性を探っていきたいです。


「座間味島ロケットジャンプ」「四季の世界遺産ドライブ」などのコンテンツ監修:安藤晃弘氏
「全身体験」を意識することで、より深い没入感を実現

 



四季の世界遺産ドライブとは

日本国内にある4つの世界遺産をバイクに乗って仮想体験できるアトラクション。ヘッドマウントディスプレイに映し出される映像は3DCGであるものの、風や水滴、アトラクション自体の揺れなどを駆使することで、現実さながらの体験をすることができる。

座間味島ロケットジャンプとは

本アトラクションでは、ジェットパックを背負って大ジャンプをしているかのような体験が可能。ヘッドマウントディスプレイにはドローンを使って撮影した沖縄県の座間味島周辺の映像が映し出され、美しい自然を、普段では味わえない視点で楽しむことができる。

株式会社ハシラス 代表取締役 安藤晃弘氏

株式会社ハシラスの代表、兼VRプロデューサー。遠隔地へ代理旅行に行ける「オキュ旅」の主催、乗馬マシンと連動するアトラクション「Hashilus」の制作を経て、以後10種類を超えるハードウェア筐体込みのVRアトラクションのプロデュースをしている。本イベントでは「座間味島ロケットジャンプ」「四季の世界遺産ドライブ」など、複数のアトラクションを監修。

―今回の出展にあたり注力された点をお聞かせください。

安藤氏:今回のアトラクションのポイントは「全身体験」です。視聴覚と全身の体感が連動することで、「こんなにすごい世界に行けちゃう」という深い没入体験を狙っています。

例えばガンシューティングゲームですと、引き金を引くとコントローラーがブルブル震えて、銃を撃った感覚を表現するというやり方がありますが、これだと没入感には限界があると考えています。実際に銃を撃てば強い反動があるはずですので、手以外にも衝撃がくるはずですよね。

そのため「四季の世界遺産ドライブ」でいえば、状況に合わせてシートの前後や送風の強弱を変えたり、滝をくぐったら水滴を吹きかけたりと、「全身での体感」を意識して制作しました。

―VR開発で重要なスキルは何だとお考えでしょうか?

安藤氏:今後VR市場は加熱していくはずですので、美しい3D映像が作れるなどのスキルは需要が増してくると思います。ただし、今VR開発で一番求められている人材は「現実で面白いもの」を作れる人なんです。VRというと特別なことに聞こえますが、ヘッドマウントディスプレイを付けさせて次元の面白いワールドで楽しませるということは、現実で面白いことをやって楽しませることと本質的には同じことですからね。

また、“面白い”というと、“fun”の方を思い浮かべてしまうかもしれませんが、そうとは限りません。感動体験であったり、気持ちいいリラクゼーションであったりと、提供するものはいろいろとあります。今は技術的な部分だけに過剰な熱が集まっているのですが、実際に重要なのは「面白いものを提供する」という上位の部分なんです。

―今後のVR開発はどうなっていくとお考えでしょうか?

安藤氏:いくつかの方向性に分かれていくと思いますが、VR市場の口火を切っていくのはやはり家庭用ゲームでしょう。家庭用として、全世界に向けてDL販売するゲームを作るというモデルは、将来的に大きな経済規模になっていくはずです。ゲーム機やゲーミングPCなどのハードも普及していますし、遊びたいと思える有名なタイトルもあるというのはやはり強いですからね。

家庭用ゲームとは別路線で期待が持てると考えているのが、我々ハシラスが得意としているアミューズメントパークなどでの利用を想定したアトラクションです。こちらは家庭用では辿りつけない、全身での体感に訴えかけるような、別次元の面白い体験を作ることができる可能性があると思っています。ハシラスでは、ハウステンボスなどで展示されている「Hashilus」(乗馬マシンを使ったアトラクション)などの開発で実績がありますので、今まで人類が体験したことのない最高のVRを我々が作っていきたいですね。

そのほかにも、例えば工場などの工員の作業をトレーニングするといった使い方もあります。実際の工場を稼働させなくても、作業の流れを仮想体験できるため、トレーニングコストをぐっと下げられます。医療現場などにも応用が効きそうですよね。ありとあらゆる場所にVRは入っていくと思います。

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