最近、“エンジニアはプログラミングの技術だけではなく、ビジネスの視点を持つことが重要”だと考える企業が増えています。
そんななか、ユニークな研修を行う企業が話題を呼んでおり、新入社員だけでWebサービス「Pacirii」を立ち上げたリブセンスのケースなどが知られています。
今回は、同様の視点からDMM.comラボが実施した、特別研修についてご紹介。
新卒と若手エンジニア、たった3名だけで企画から制作、マーケティングまでを手がけたというスマートフォンアプリ『金沢すきま旅』は、2つのコンテストで受賞する快挙を成し遂げています。
研修期間は約1年。当初はスマートフォンアプリ開発の右も左も分からなかったという彼らは一体、研修を通して何を学び、どのように成長を遂げていったのでしょうか。くわしくお話を伺いました。
金沢すきま旅とは?
名所が密集している金沢の地の利を活かし、出張で訪れたビジネスパーソンがすきま時間で観光できるスポットを紹介するスマートフォンアプリ。空き時間を入力すると、現在地、時刻、天気などの情報をもとにおススメの観光地をピックアップ。移動時間を省くとどの位の時間を観光にあてられるのかや、観光地から帰路につくタイミングなども教えてくれる。親切な設計と完成度の高さなどが評価され、「KANAZAWAスマホアプリコンテスト2014」で金沢市長奨励賞、「アーバンデータチャレンジ2014アプリケーション部門」で銅賞を獲得している。
PROFILE
飯田涼太(いいだ りょうた)─2012年4月入社
システム本部 プラットフォーム開発本部 エンジニア
金沢CTO室発足のきっかけを作ったキーマン。
バックエンドAPI、チームのとりまとめ、プレゼンテーション担当。
作田諒(さくた りょう)─2014年4月入社
システム本部 事業サービス開発部 エンジニア
金沢CTO室のムードメーカー。アイディアが斬新で、目の付けどころの的確さに定評がある。UI 、フロント全般 、LP全般担当。
大門弘明(だいもん ひろあき)─2014年4月入社
システム本部 事業サービス開発部 エンジニア
画像や動画編集も手がけるマルチクリエーター。イチオシは、石川県非公認キャラクター「たまひめちゃん」。APIとアプリの繋ぎ込み部分、観光地の評価ロジック、画像・動画の編集担当。
1. CTOに直接かけ合い、動き始めたプロジェクト
─『金沢すきま旅』を開発された経緯を伺えますか。
飯田氏:ことの始まりは、僕がCTOの城倉に話を持ちかけたことです。昨年(2014年)の春、社員総会で金沢を訪れた城倉に、「来春の北陸新幹線開業に合わせて、スマホアプリを使って何か話題づくりをしたい」と提案したところ、「じゃ、面白いアイディアを考えてみてよ」とGOサインが出ました。
─作田さん、大門さんはいつごろ企画に加わられたのですか。ご入社は2014年4月だと伺っていますが。
作田氏:4月に入社して2週間くらい経った頃、飯田から「ちょっとみんなのアイディアが欲しいから、ご飯に行こう。ご馳走するよ」と声をかけられました。その後、週一回くらいの割合で定期的にファミリ―レストランでご飯を食べながら、先輩たちとアイディア出しをするようになったんです。
しばらくすると、飯田から「今度CTOの城倉さんが来たときに時間をもらえるから、誰か提案しない?」と言われ、僕と大門が手を挙げたんです。
最初は、先輩たちからかけられた「ご飯をおごる」という言葉に釣られて、ごく軽い気持ちで参加したと話す作田氏
─入社してすぐ新入社員がCTOにプレゼンするなんて、とても珍しいですよね。不安はなかったですか。
大門氏:ありました。でもCTOに直接会う機会なんて、滅多にないだろうと思いました。せっかく話を聞いてくれるって言うんだから、失敗してもクビになるわけじゃないし、日頃出し合っているアイディアで挑戦してみることにしました。
すると、CTOの城倉から「いいね、何か作ってみようか」と言われたんです。“僕たちみたいなペーペーのアイディアを、実現しようと言ってくれるなんてどういうことだろう?”と驚き、戸惑いも覚えました。
作田氏:でもその反面、僕たちみたいな若手が考えたアイディアを受け止めて、評価してくれたことがうれしかったですね。僕は、良い上司がいる会社に入社できたんだと思いました。
飯田氏:結局、その時に提案したアプリを作ることにはなりませんでしたが、城倉は以前から若手エンジニアを育成する環境を充実させたいと考えていたようです。城倉は、“技術者視点でしか出ないアイディア発信をしていくような組織”を作っていくことに力を入れており、ちょうどその一環として実験的にエンジニア発信でサービスを作る場を設けたいと思っていたタイミングだったそうです。
─それが、金沢事業所にできたCTO室だったんですね。
飯田氏:はい。元々CTO室は、研究開発や技術発信を行うセクションです。金沢の事業所のCTOは、作田と大門の新人研修が終ってすぐ僕ら3人が配属になり、発足しました。でも、周りからの見ると謎だらけの部署だったようで、当初は周囲の視線が気になりましたね。
大門氏:しかも、東京にある本社のCTO室は、Geekと呼ぶにふさわしい先輩たちばかりです。だから、入社間もない僕と作田が、金沢でCTO室のメンバーだと名乗ることが恐れ多くて。
作田氏:配属後すぐに飯田から、「すごく厳しい道になるよ」と言われて怖くなりました。スマートフォンアプリはいつも使っているけど、開発の経験も無いし、どうやって作ればいいのか分からない。しかも当時は具体的なことが何も決まっていなくて、心配で仕方なかったです。
新卒の作田氏と大門氏、入社3年目の飯田氏が配属された金沢事業所CTO室。
発足当時、平均年齢は23歳という若さだった
─飯田さんはそれまでどんなお仕事をされていたんですか。
飯田氏:セキュリティーチームでプログラムを書いたりしていました。CTO室に配属されたのはうれしかったですが、期待に応えなければならないという大きなプレッシャーを感じていました。言い出したからには、絶対後に引けませんでした。
2. 100個以上のアイディアをひねり出し、アプリの骨子づくり
─CTO室での仕事は、どんなことから始められたのですか。
飯田氏:初めは作るアプリの方向性を決めるために、ミーティングやブレインストーミングを重ねていきました。ダウンロードしてもらうためには何が必要か、アプリを使う目的やシチュエーション、ユーザーに何を訴求したいのか、などを話し合いました。
そして、ただアプリを作っていても仕方がないので、目標を決めました。それが、約4ヶ月後に行われる「KANAZAWAスマホアプリコンテスト2014」でのグランプリ獲得でした。同コンテストは、北陸新幹線の開業に向けて、金沢で気軽に活用できるスマートフォンとタブレット向けアプリの出来を競うもので、金沢の町おこしを目的としていました。
─どうやって企画を固めていったのですか。
作田氏:某大手広告代理店のアカウントプランナーの方は、企画会議に一人で100個以上のアイディアを持ってくると聞いたことがありました。だから僕たちも、3人で100個以上のアイディアを出して、それを振るいにかけていくことにしたんです。
大門氏:でも当時、発想すること自体になれていなかったので、たくさんのアイディアを出すことが難しくて、結構、苦しい作業でした。そこで、社内のUX勉強会に出て着想の仕方を教わったり、XB(クロスビー)発想法など、いくつかの強制発想法を試してみたりして、何とか100個あまりのアイディアをひねり出しました。
ブレインストーミングの風景。3人が出した100個のアイディアを、事業所内の複数メンバーで揉んでいった
飯田氏:でも、それからが問題でした。「北陸新幹線開業に向けた町おこし」というコンテストの趣旨を考えたとき、ゲームなどの娯楽アプリよりは観光アプリを作ったほうが、良い評価を得やすいだろうという判断はつきました。観光アプリを作る場合、金沢の魅力を伝えることは当然ですが、それにどうやってオリジナリティや付加価値を出すべきなのか、なかなか答えを見つけることができなかったんです。
─ブレークスルーのきっかけは何でしたか。
飯田氏:ブレストした企画の中に、「こっから→ここ」という観光アプリがあり、それが突破口になりました。ある観光地で使うと、次に行くべき観光スポットが分かるというもので、『金沢すきま旅』の原型になりました。それに、「発展形として、空き時間で観光できるような情報を提供する」という案をプラスし、城倉はじめマネージャーが出席していたレビュー会で提案しました。
すると出席者から、「何も調べずに、ボタンひとつでパッと情報が出てくる仕組みはどうか?」などという声があがり、マネージャーからも「出張の時に使えるといいよね」という発言が飛び出したんです。
作田氏:出張という言葉に、ハッとさせられました。僕たちはあまり出張をしないので気がつかなかったのですが、北陸新幹線で金沢を訪れる出張客は、観光をしたくても仕事の合間の限られた時間しか使えない。だから、なかなか思うように名所を巡れないんですよね。そこで、出張のすきま時間を使って、効率よく金沢を観光するための情報を提供するアプリを作ることが決まりました。
飯田氏:ちょうどコンテストの一次審査の締め切りも迫っていました。その後、50回あまりの手直しを加えた企画書を提出し、選考を通過。二次審査への切符を手にしました。
3. 初めての仕事、初めてのスマホアプリ開発をスクラムで
─作田さんと大門さんは、『金沢すきま旅』が初めてのお仕事で、初めてのアプリ開発だったんですよね。
作田氏:はい。最初は何が分からないのかすら、分からない状態でした。アプリを作りたい!と言ってはみたものの、必要な知識や技術がまったくない。作りたいもののイメージが浮かんで、インターネットで調べようとするのですが、検索するためのキーワードすら分かりませんでした。
例えば「Table View」について調べたくても、単語を知らないから検索窓に「リスト」や「表」などと打ち込んで遠回りをしたり。さらに調べることができても、逆に分からない単語が増えて混乱することもありました。
大門氏:実は当時、金沢オフィスにスマートフォンアプリを専門に作る社員がいなかったんです。技術支援のために週一回来てくださる方がいて、その方にレクチャーを受けながら一から覚えていきました。定番のおみくじアプリも作りましたよ。
作田氏:少し慣れてくると、
─そんな時はどうされていたんですか。
大門氏:都度、メールで投げるか社内の詳しい人間に質問していました。当初はインプットの量が追いつかず、質問も要領を得ていないものが多くありました。でも、次第に専門用語や技術に慣れてくると、質問をする時にこちらの意図が伝わりやすくなっていきました。
また、徐々にネットでの検索もしやすくなっていきました。YouTubeに落ちている動画と、プログラマー向けサイトの「スタック・オーバーフロー」や「Qiita」を頼りに、何とかプログラミングができるようになっていきました。
─今回はSwiftではなく、Objective-Cの言語を使って作られていますよね。
飯田氏:ちょうどアプリを作り始めた時にSwiftのベータ版が出たんですよ。だから当初は、アプリをSwift で作ろうとしていたんですね。でも、ベータ版なので仕様変更があり、2週間後に同じプログラムが動かなくなったんです。それで、Objective-Cに切り替えました。
勉強会にも参加し、Swiftで作るつもりだったが、当時ベータ版だったことが原因でエラーが発生。
ほどなく開発言語をObjective-Cに変更した
─飯田さんは、それまでにスマートフォンアプリの開発経験をお持ちだったんですか。
飯田氏:いいえ。Webアプリケーションの開発は2年ほど経験していたのですが、スマートフォンアプリの開発は『金沢すきま旅』が初めてでした。まったく規模感をつかめなかったので、スクラムで開発を行うことにしたんです。
4. 分からないことだらけの開発にフィットしたスクラム
─実際にスクラムで開発されてみて、いかがでしたか。
飯田氏:スクラムの「分からないところは後で考えて、分かるようになったタイミングで詳細を決める」というスタイルに、随分助けられました。不明なことが多い開発初期の段階でさまざまなことを調べたり、想定したりする負担が減るので、時間を有効に使うことができました。
また、隔週でのスプリントレビューや、デイリースクラムの会議で進捗を確認しやすかったり、方針がぶれにくいというのも大きなメリットでした。特に今回、最初のほうはアイディアがころころと変わりました。そんななか隔週のレビュー会で「こうだよね!」と毎回方針を確認できたのは、とても効果的でした。
5. 金沢で暮らす社員ならではの情報を活かしたスポット評価
─開発体制と言語についてお聞きしたので、今度はアプリについて伺います。観光スポットは、何ヶ所くらいの情報を登録されているのですか。
飯田氏:金沢市が公開している観光地についてのオープンデータを活用して、約60ヶ所の情報を登録しています。アプリに空き時間を入れると、距離だけでなく、天気やスポットの営業時間なども考慮した情報が表示されるようになっています。
例えば雨のときには、屋内でも楽しめるスポットの情報がメインに表示されます。また、それぞれのスポットについて、おすすめのレベルを星の数で表示する評価機能も搭載しています。
─それは、どういう仕組みで作られているのでしょうか。
大門氏:距離・時間・天候などの諸条件から計算しています。ただ、それを機械的に割り出すだけなら、僕らがアプリを作る意味はありません。計算式には、実際に金沢で暮らし、働く僕ら金沢事業所のスタッフが見て、聞いて、体験して得た情報や意見を取り入れるようにしています。
例えば、「この観光地は屋内だから雨でも大丈夫」とか、「このスポットへ通じる道は夕方に渋滞するんだよね」などといった意見を点数化し、評価として組み込んでいます。
距離・時間・天候のうちどの条件を優先するかが課題だった。
最終的には、金沢事業所で働くスタッフからの意見や情報を参考に、評価の計算式を人の感覚に近いものへと調整したという
─実際に観光スポットへは足を運ばれたんでしょうか。
大門氏:はい。「KANAZAWスマホアプリコンテスト」の直前には、そうした評価が適切かどうかを確かめるために、3人ですべての観光地を自転車や徒歩で回りました。
実際にアプリを使いながら案内コースを歩いてみたりして、「やっぱり表示された30分では歩けないね」なんて言いながら、数日かけて一つひとつ確かめていきました。
6. 絶対絶命のピンチを乗り越えて獲得した、金沢市長奨励賞
─そんな入魂のアプリを引っさげて、「KANAZAWAアプリコンテスト」に出場されたわけですね。プレゼンの練習はだいぶされましたか。
飯田氏:めちゃくちゃしました(笑)。2週間前から毎日1時間くらい、新卒や若手のメンバーに集まってもらって、その前で練習をしていたのですが、毎回ボコボコにされて・・・。
作田氏:みんな容赦がなかったですね。なかでも抑揚については、「ジャパネットたかた」のCMくらい抑揚をつけないと、聞いているほうには伝わらない、心が動かない、とこだわりました。
─コンテストでは、その成果を発揮できましたか。
飯田氏:他の参加チームは、導入部分に美しいオープニング映像を流したり、金沢市が抱える問題にピンポイントで焦点を当てたりして、目立っていました。僕らも十分に練習をしたのですが、本番でネットワーク状態が非常に悪かったんです。あれは冷や汗をかきましたね。
作田氏:僕らはGPSとネットワークを使うので、冒頭、壇上でもたついてしまいました。でも、たまたま当日の朝、みんなで集まっている時に、本番で何かあった時のことを考えて、アプリを動画で撮影しておいたんです。壇上でとっさにスクリーンに写す内容を動画に切り替えて、なんとか時間内にプレゼンを終えることができました。前日の検証ではまったく問題が無かったんですが、万が一のための対策が、危機を救いました。
KANAZAWAアプリコンテスト授賞式での様子。
『金沢すきま旅』は惜しくもグランプリを逃したが、市長奨励賞の座に輝いた
─そんな苦労を乗り越えて、金沢市長奨励賞を受賞されたんですね。その時のお気持ちは。
大門氏:いやー、やっぱり悔しかったですね。グランプリを獲りたかった!
飯田氏:僕も悔しかったです。プレゼンの練習などで、たくさんの方からレビューの時間やアドバイスをいただいたので、上手く伝えきれなかったのではないかと後悔しました。また、アプリのコンセプトをもっと早い段階で課題解決に絞り、開発を行うべきだったと思いました。そうしたら、グランプリにもっと近づけたはずです。
7. 欠けていたマネタイズ、お金をかけずにマーケティング
─正式リリースは、それから2ヶ月後の2015年1月末でしたよね。
飯田氏:はい。でも、思ったよりダウンロード数が伸びませんでした。アプリを売り込むためには資金が必要ですが、『金沢すきま旅』にマネタイズの仕組みはありません。そのため、あまりお金をかけずにできる訴求策を幾つか実行しました。
作田氏:アプリのランディングページやFacebookページを作ったり、SEO対策も行いました。また、オープンデータ系のイベントや勉強会で配布できるようにリーフレットを作成したり。
大門氏:石川県の非公認キャラクター「たまひめちゃん」にPRしてもらったこともあります。Twitterページで告知イベントを募集していたので、依頼のメールを送ると「たまひめちゃん」のプロデューサーさんが快諾してくださったんです。金沢事業所を訪問してくださり、「たまひめちゃん」のブログでその様子を紹介していただいたほか、ランディングページにも「たまひめちゃん」が登場してくれました。
地元金沢の人気キャラクター「たまひめちゃん」を巻き込み、お金をかけないプロモーションを展開。
「たまひめちゃん」ファンの大門氏は、当時の様子をうれしそうに語る
─オンラインでのプロモーション以外にはどのようなことをされましたか?
飯田氏:ネット以外の方法では、ラジオに出演することと、もう一つは全国規模で開催されるコンテスト「UDC(アーバンデータチャレンジ)2014」への出場をしました。
ラジオについては、社内にたまたま昔エフエム石川に勤めていたデザイナーがいたことから、その紹介で番組に出演させていただき、アプリについてお話しました。結構いろいろな方が放送を聴いてくれて、取締役に「ラジオ聞いたよ!」と声をかけられたこともありました。
─「UDC 2014」でも受賞されたんですよね。
飯田氏:「UDC 2014」は、オープンデータを活用したアプリコンテストで、応募したら一次審査を通過できたので、大門と作田と3人で上京し、発表を行いました。その結果、銅賞をいただきました。
操作のわかりやすさと完成度の高さを、評価いただいたとのことでした。全国的なコンテストで受賞できたことが非常に誇らしかったですし、大門と作田もそれぞれのパートを責任を持って発表できたことで、自信になったようです。
─反響はありましたか。
飯田氏:はい。ラジオに出たときにも、「UDC2014」で受賞したときにも、アプリのダウンロード数がそれまでの5倍以上伸びました。準備などに手間はかかりましたが、挑戦した甲斐はありました。そして、エンジニアだから気付きにくいことなのかも知れないですが、オンライン以外の活動も重要だと学びました。
エンジニアながら、リーフレットやチラシの制作、配布も担当。
通常の業務では味わうことができない、有意義な経験だったという
8. 技術、仕事の進め方、収益化。金沢すきま旅で学んだこと
─それぞれ、このプロジェクトで何を学んだと思いますか。
大門氏:技術について言えば、もちろんiOSのプログラミングは上達したと思います。仕事のやり方については、発言しなければ何も始まらないということを強く感じました。物事は、とりあえず駄目もとでも相手に失礼の無いように伝えてみる、そしてアクションを起こすことが大事だと学びました。
あとは企画を立てる力ですね。今回、スマートフォンアプリの企画を立てるにあたり、3人で100個以上のアイディアで出すなど、発想して考えをアウトプットする技術を身につけることができたと感じています。
─飯田さんはどうですか。
飯田氏:やっぱりモノを作るなら、利益を出すことを考えないといけないということですね。エンジニアは「モノをつくりたい!」という気持ちにはなりますが、どうやって儲けるかまで考えが回らないところがあります。アプリを多くの人にダウンロードして使ってもらうためにも、マネタイズの仕組みが必要です。エンジニアが、利益を生み出す方法を考えていくことが重要だと実感しました。
─作田さんはいかがですか。
作田氏:僕は、素直にiPhoneアプリを作る技術を習得できたことです。「自分はスマホアプリを作れる人間なんだ」というアイデンティティーが一つできました。入社当時、肩書きはシステムエンジニアなのに、何を作れるのかを聞かれても、答えられないんですよね。でも、今ならiOSエンジニアをやっています、と胸をはって言えます。
自身がiOSエンジニアだという証ができたという作田氏の表情からは、
もう新卒エンジニアだった頃のあどけなさを感じられなかった
あとは、開発を一連の流れで経験できたことで、企画の段階からリリース後までを見据えることが大切なんだと気づきました。アプリを作って終わりではなく、どう運用していくのかを考えながら開発することも、エンジニアの大事な役割なんですね。
レバテック営業担当「林英司」から一言!
いかがだったでしょうか。
今回、インタビューに応えてくださった3名はいずれも、特別研修の経験を活かして、現在、開発の第一線で活躍されています。キーマンだった飯田さんは、DMMプラットフォームのリプレイスプロジェクトを担当。新入社員だった大門さんと作田さんは、アプリ開発チームで健闘されています。
DMM.comラボでは、今回の特別研修の成果を踏まえて、今後もエンジニアが企画からサービスを作っていくプロジェクトを、積極的に実施していく予定とのことです。そうして育成された、ビジネスの視点を持つエンジニアたちが、同社の未来にどんな影響を与えていくのか、注目です。
左から大門氏、飯田氏、作田氏。
志を一つにし、スマホアプリ開発に臨んだ3人は、先輩後輩の垣根を越えた強い絆で結ばれている
2013年7月、金沢市本町に開設された金沢事業所。
色鮮やかでポップなインテリアは、スタッフの創造力や発想力を刺激する。