EVENT REPORTイベントレポート
ヒカラボレポートとは、開催されたヒカラボにおいて、登壇者が伝えたい講演内容を記事としてまとめたものです。ご参加された方はもちろん、ヒカラボに興味があるという方も是非ご覧ください。
ヒカラボレポートとは、開催されたヒカラボにおいて、登壇者が伝えたい講演内容を記事としてまとめたものです。ご参加された方はもちろん、ヒカラボに興味があるという方も是非ご覧ください。
こんにちは!レバテック営業の黒田です。
今回のヒカ☆ラボにご登場いただくのは、株式会社ニューズピックスのプログラマー兼ディベロップメントネージャー・文字 拓郎(もんじ たくろう)氏です。
近年、大きな盛り上がりを見せているソーシャルメディア業界の中でも、1年間でユーザー数を数十倍に増やし、急成長を遂げている経済ニュース共有サービス「NewsPicks」。
メディアの変革期と言われる現代において、同メディアがユーザーからの信頼を勝ちとり、成長し続けてきた秘訣についてお話していただきました!
「PV数を追わない」という方針を掲げる同社は、何をKPIとしているのか?
独自のテクノロジーで作り上げた「NewsPicks」が成長し続けるのに必要なこととは?
話題のニュースサイト開発の裏側に隠された、独自の戦略をここに公開します!
講演者プロフィール
こんにちは、文字拓郎です。
株式会社ユーザベースは「世界一の経済メディアをつくる」というミッションを掲げており、そのために現在ふたつのサービスを展開しています。
ひとつは「SPEEDA」という、プロフェッショナル向けの企業や産業を分析するためのサービス。国内大手のコンサルティングファームや
PEファンド・投資銀行のほとんどに導入されているほか、大手事業会社の経営企画室などでの利用も増えています。現在は世界共通のビジネス情報インフラを目指し、アジアを足がかりとして海外進出をしているところです。
もうひとつが私が担当している「NewsPicks」で、こちらは一般ビジネスパーソン向けに提供している、経済に特化したニュースアプリです。
「SPEEDA」も「NewsPicks」もまだまだ成長中のサービスですが、このふたつのサービスを使って、ビジネスパーソンが朝起きたら「NewsPicks」でニュースをチェックし、会社に着いたら「SPEEDA」で企業分析を行う──常にユーザベースのサービスを利用して、容易に世界中のビジネス情報にアクセスできる世界をつくりたいと考えています。
今、メディアは大変革期を迎えていると言われています。「NewsPicks」の編集長である佐々木は、「100年に一度の変革期だ」と言っているんですけれども、一体この業界の何が変わろうとしているのか。それは「コンテンツ制作」、「流通」、「マネタイズ」の3点に分けて説明することができます。
情報過多の現代において、「ニュースをより理解したい!」というユーザーが非常に増えてきています。そういった人々に向けて、メディアは新しいフォーマットで記事や情報を届けようとしているんですね。既に欧米では、「BuzzFeed(バズフィード)」のようなバイラルメディアや「QUARTZ(クオーツ)」、「Vox」といった新しい形のビジネスニュースサイトが増えてきています。
以前は紙媒体やPCでの流通が主流でしたが、時代はモバイルとソーシャル。ユーザーはモバイルのアプリで情報を消費し、それらをツイッターやフェイスブックで拡散し流通させるという方法にシフトしています。
Webメディアの主な収入源はバナー広告ですが、北米などでは有料課金制にシフトするなどの新しい試みが始まっています。バナー広告は単価が安いため、Web メディアは既存メディアに比べると大きな収益をあげることが難しいと言われています。これまでは、少しでも広告収入を増やすため、PV を増やす目的でいわゆる「釣り記事」などが乱造されてきました。当然、このビジネスには永続性がありません。良いコンテンツを作るにはお金がかかります。デジタルシフト・スマホシフトが進む中、各メディアはマネタイズの道を模索して有料課金やネイティブアドなどの試みにチャレンジしています。
これら3つの動きに対して、我々はモバイル新時代における新しいビジネスモデルを作ろうと挑戦しているわけです。
当初はなかなかユーザー数が伸びなかったのですが、昨年秋に編集部が発足して以降、「NewsPicks」は順調に成長しています。2014年9月末頃に編集部によるオリジナルコンテンツを公開し、ユーザー数は現在約55万人(2015 年 9 月時点では約 70 万人)。
一度利用していただけたユーザー様には比較的コアなファンになっていただけることが特徴で、なかでも20~30代の有望なビジネスパーソンの利用率が高く、ユーザーに占める意思決定層の割合は約30%、平均滞在時間が長く拡散力も強いのが特徴です。著名ビジネスパーソンも多数利用しており、有望なビジネスパーソンにリーチできるモバイル対応の新メディアとしての地位を確立しつつあると言えます。
こうした背景を活かして、マネタイズは「有料課金」と「ブランド広告」の2本柱で行っています。ユーザー様からの有料課金は、編集部オリジナルの有料記事やイベントへの優待などを特典としています。ブランド広告は、主に企業のブランド醸成をサポートするための広告記事をビジネスパーソン向けに配信することで、広告主様からお金を頂いています。モバイルに対応しており、有望なビジネスパーソンにリーチ出来るメディアということで、広告については現在引き合いが多く、国内初のブランド広告専門チームを設立するなど力を入れて展開しているところです。
それでは、ここからは制作サイドのご紹介をしたいと思います。「NewsPicks」は編集部、プラットフォームチーム、広告チームの3つに分かれて制作しています。
「東洋経済オンライン」の元名物編集長・佐々木紀彦をはじめ、優秀な編集者が多数集まっており、様々なオリジナルコンテンツを提供してくれています。先述した通り、社内には 「SPEEDA」 のアナリストがおりますので、アナリストによる経済分析などもあります。そのほかにも若手著名人のインタビュー、中にはスポーツ記事などもありますね。
編集部はKPIに「PV数を追わず、サービスの貢献度合いを測る」ことを設定しており、無料記事からの新規ユーザー登録数や、有料記事からの課金数など、獲得面・活性化面それぞれで、各記事に対してワンナンバーでわかる独自のKPIを設けています。
広告を使ったユーザーの獲得、ユーザー向けのコミュニティイベントやキャンペーンの企画、サービスの運用が主な仕事です。 なかでも特に力を入れているのは運用面ですね。アルゴリズムによって自動的に話題のニュースをピックアップするだけでなく、社内の編成スタッフが常に“今、ビジネスパーソンが読むべき記事”を編成して届けています。日中に大事なニュースが流れてきた場合には、プッシュ通知を使います。
KGIとしてはDAU・エンゲージメント率・有料課金を追っています。しかし、これらの数値は見ていても一喜一憂するだけなので、DAUは分解してKPIに落とし込み、コホートを使って新規ユーザーの行動を把握しています。
主に3種類の広告を展開しています。広告主のブランドに合わせた記事を掲載する「Brand Stories」、「NewsPicks」内に企業のアカウントを開設してフォローを行う「Brand Account」、タブ全体を広告主にスポンサードしてもらう「Brand Tab」の3つです。
広告を作る上で我々が大切にしているのは“ブランド資産を形成すること”です。広告主の投資が短期的な効果で終わるのではなく、長期的に見て広告そのものがブランドの資産となるような工夫をしています。ブランドのアカウントをフォローしないと記事が読めない、といった仕組みもそのひとつですね。
広告チームでは近頃、“CMP”というプラットフォームを作っていまして、これは“コンテンツマーケティングプラットフォーム”という造語なんです。
既存のWebメディアは、非常にPVに依存しています。PVを稼ぐために釣りタイトルをつけた中身のない記事を作り、効果が出たらより良い釣りタイトル作りに注力する。ユーザーにとって悪い体験をひたすら追求しているという、負のサイクルに陥っているのが現状です。そこで、我々はCMPを用いて良いコンテンツ、つまりユーザーにとって価値のある広告を作ろうと試みています。
CMPには「CREATE」「DISTRIBUTE」「LEARN」の3つの側面があります。
モバイルに適したコンテンツ制作をサポートするUI作りですね。これを、まずは編集部内で利用して改善を繰り返しながらクオリティーを高めていきます。
広告を適切なターゲット、「NewsPicks」のようなプラットフォームの場合は適切なビジネスパーソンに配信します。記事はPICKで拡散することもできるので、ソーシャルでバズらせることも可能です。
Google Analyticsなどでは、具体的に「誰が読んだのか」といった細かい情報まではわかりません。しかし、「NewsPicks」上では「誰がいつ、どこまで読んで拡散してくれたのか」、「インフルエンサーは読んでくれたのか」、「記事に対してどうコメントされたのか」といったところまで学ぶことができます。
これら3つの特性を活かして、ユーザーにとって価値のある広告を適切な人に配信し、その結果を見てメディア側は今後どのような広告記事を作っていけば良いのか学ぶことができ、更にユーザーにとって価値のある広告をつくる──そんな「正のサイクル」を生み出すことが出来るのではないか、という仮説を我々は持っています。
編集部がオリジナルコンテンツを立ち上げたり、iOS版だけだったアプリをAndroid版やWEB版でも展開したりと、2013年9月のサービス開始以来、様々な試行錯誤を繰り返してきました。
その中でどういう機能をユーザーに提供すればいいのか、メディアとしてどんな方向性を目指せばいいのか、どうやってマネタイズしていくかなど、色々と模索していた時期がありました。これをシード期、と勝手に呼ばせて頂きます。この最後のあたりで私は NewsPicks にジョインしました。
次に、ある程度メディアの方向性が見えてきて、足回りを整備しながら進めてきたのがアーリー期、今はその足回りも固まってきたので成長期に差し掛かっています。今まで学んできたことを活かして、サービスを一気に伸ばしていこうとしている時期ですね。
編集、開発、広告と、どのチームにもプロフェッショナルの人材が集まり、強いビジョンを共有しながら「NewsPicks」を作ってきました。手動のプッシュ通知やデプロイなど、泥臭いことも情熱を持ってやってきたからこそここまで来ることが出来たと思っています。とはいえまだまだ道半ばです。今後も継続してサービスを成長させ、年内にはスマホにおける経済メディアという領域で No.1 の地位を盤石のものとし、来期以降は更に大きく羽ばたいていきたいと思っています。また、今後はビジネスの成長に合わせて、技術的な挑戦も行っていきたいですね。
「強いビジョンを持って良いチームを作る」、「泥臭いことも情熱を持ってやりきる」、「成長と挑戦のバランスをとる」。これら3つのことを大切にしながら、我々は「NewsPicks」を“世界一の経済メディア”へと成長させていきたいと考えています。