EVENT REPORTイベントレポート
ヒカラボレポートとは、開催されたヒカラボにおいて、登壇者が伝えたい講演内容を記事としてまとめたものです。ご参加された方はもちろん、ヒカラボに興味があるという方も是非ご覧ください。
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今回は2014年7月23日に「ヒカ☆ラボ」に登壇いただいたクラウドゲート株式会社 野尻氏による「ゲーム市場から求められるクリエイターとは」をテーマとした講演をレポートします。
講演者プロフィール
今回の登壇では、
「事業を通して見えてくるモバイルのソーシャルゲームの市場の変遷」
「ソーシャルゲームに関わるイラストの需要をめぐる変遷」
「市場から求められる技能の変化」
という流れで講演していただきました。
はじめにソーシャルゲームの市場規模についてお話します。
市場を見るとブラウザゲームはピークアウトして、緩やかに減っています。
Nativeアプリは、拡大傾向にありますが、どこまでこの勢いで伸びるかは現状分かりません。
ここからは、ソーシャルゲーム、モバイルのソーシャルゲームの時代を、黎明期・発展期・転換期と区切って説明します。
ちなみに、この定義は一般的な物ではなく、クラウドゲートが独自に区切ったものです。
ソーシャルゲーム/SNSゲームの初期。
2007年は、GREEが『釣りスタ』を出した時期ですね。
その後、2009年頃から各社がソーシャルゲームを出し始め、市場は盛り上がりを見せました。
2010年頃にはSNSプラットホーム上で遊べるソーシャルゲームの市場が新たに誕生しました。
mixiやGREE、DeNAがSNSをオープン化し、ユーザーに向けて様々な企業がゲームを出せるようになりました。
『サンシャイン牧場』や、『怪盗ロワイヤル』などのタイトルは大ブームになりましたね。
ビジュアルに関しては、フィーチャーフォンの小さな画面で遊ぶゲームがほとんどだったので、デフォルメチックな絵が多い傾向にありました。
Flashで「キラリーン」みたいな演出がよく使われていたのもこの頃です。
発展期は、カードバトルゲームが1つのソーシャルゲームの完成形のような形になって出た時期です。
中でも、大ヒットした『神撃のバハムート』が各社のベンチマークとなりました。
実は当時はいろんなクライアントから「バハムートっぽいイラストを描いてください」っていうオーダーがとにかく多かったです。
この頃にはモバイル専業の会社さんで大きく業績を伸ばしたところもたくさん出てきました。大手のゲーム会社さんもソーシャルゲームに参入するようになりましたね。
転換期では、カードバトルゲームからNativeアプリに移り変わっています。
きっかけは2012年から2013年に『パズドラ』の大ヒットです。
『パズドラ』を皮切りに、どの会社さんもNativeアプリにどんどんシフトしていきました。
『黒猫のウィズ』や『モンスターストライク』などもこの頃の代表作ですね。
転換期の特徴は、アプリになったことで実現した、自由な表現設計です。
当時のイラストにおいては、再びデフォルメチックなイラストのニーズが増えてきました。同時に、カードのような絵ではなくちびキャラのモーションも人気です。
ここからは、ソーシャルゲーム市場の変遷に合わせてどのようにイラストの需要が変わっていったかを解説します。
黎明期はフィーチャーフォンの画面でゲームプレイしていたので、アバターやWeb素材、バナーなどのクリエイティブのニーズが非常に多かった。
あとFlashも多かったですね。
ファイト、バトルとか調理などゲーム中のシーンで「キラリーン」と出るような動きが求められていました。
逆に、純粋な一枚絵のイラストはあまりニーズがありませんでした。
発展期になりますと、カードバトルのスタイルが確立したことで、多種多様のカードイラストが求められるようになりました。
『神撃のバハムート』のヒットによって、毎月70本から100本近くの新規のカードバトルゲームがリリースされました。その影響により、厚塗りや美麗系のイラストの需要が急激に増えました。
ちなみに、今は当時の大体5分の1程度になってます。
転換期では、『パズドラ』のヒットによって、デフォルトチックなキャラクターやモンスターの需要が再び多くなりました。
さらに、転換期では世界観の統一や、既存キャラクターとの親和性など「テイスト合わせ」が必要になってきました。
というのは、カードゲームバトルの場合、1枚1枚のイラストレーターさんが全然違っても、まったく問題はありませんでした。
しかし、転換期のゲームでは、ゲームの中での統一感を合わせるニーズが増えてきたのです。
黎明期はデフォルメチックなイラストやキャラクターデザイン、Flashでのモバイルサイトの作成スキルが必要でした。
発展期になり、カードバトルゲームの時代になると、一枚絵を描くための基礎画力が求められるように。
さらに、カード映えする見せ方や厚塗りリアルテイストを描く描画力も、クライアントからニーズが強くありました。
転換期に入ってからは、ゲームに統一感を持たせるためある程度規格に従って描くスキルが重要になっています。
例えば、線画の太さが規定されていたり、キャラクターの頭身、色味などのテイストを合わせるスキルです。
またUIのデザインや、モーション作成、3DCG。もう少し上位になってくると、そもそものコンセプトアートやキャラクターデザインのスキルも今は求められています。
モーションに関しては、新しいツールがどんどん出てきています。習熟した人がまだ業界にあまりいない状態なので、早めに学んでおくと先行者利益という意味でも非常にメリットが大きくなるでしょう。
他にも、2013年以降からは塗り「だけ」線画「だけ」など、各工程のみを依頼する案件も増加しています。
最後に、クリエイターの方に伝えたいこと3つのことをお教えします。
イラストレーションって、割と個人の中で完結しますよね。
もちろんクライアントあってのお仕事ではありますが、イラストレーションというのは自分の作業であり、自分の作品として残るものです。
ですので、最近増えつつあるパーツの一部のみを作るお仕事や、規格に合わせて描くお仕事を自分の作品とはみなしにくいと考える方も多いです。
しかし、1人だけではできないもの、共同でつくるものにも、それはそれで価値はちゃんとあります。
そのようなお仕事の価値にも目を向けていただくといいのではないでしょうか。
2つ目は、作品に対して自分なりに語れる理論、つまりこだわりを持つことです。
要は、イラストに対して、「何でこういう表現なのか」と説明できるということです。
上手い方は、自分なりに「これはこういう材質で、体の部位はこういう風に成長して、こういう風になるんです」というところまで考えて描かれています。そして、それを言葉で語ることもできます。
説明できるということは、自分の中に理論として落とし込めているということです。
そこまでできている方は、やはり説得力が強いですね。
仮にその案が採用されなくても、「この人は凄く考えて作ってるんだな」というのは伝わってきます。
今、この業界だけを見ても、お仕事の状況は大きく変化しています。
自分ができることだけにとどまらず、周辺にちょっと飛び出しただけでも、いろんなクリエイティブのお仕事の可能性があります。
特に2Dのモーションや3Dのツールも、無料のものや安価なものが出てきており、学ぶことで新しい可能性は開けます。
そのような新しいチャンスにも目を向けていただきたいなと思っています。