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ヒカラボレポートとは、開催されたヒカラボにおいて、登壇者が伝えたい講演内容を記事としてまとめたものです。ご参加された方はもちろん、ヒカラボに興味があるという方も是非ご覧ください。

イベントレポートvol.31

オリックス傘下に入っても絶対にブレない弥生のこだわりは「UX」と「品質」にある|ヒカ☆ラボレポート

2017/07/19(水)更新

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会計ソフトとしてすっかりおなじみの「弥生会計」シリーズ。
ロングヒットの裏側にはUXと品質にこだわり続けるエンジニアの存在がありました。

今回は、先日行われたヒカ☆ラボに登壇いただいた株式会社弥生のテクニカルリーダー陣による講演『15年連続で業務ソフトウェア売上No.1企業のエンジニアに聞く「品質」と「UX」に隠された秘訣とは』のレポートをお届けします。

長く愛される商品・サービスを作りたい方は要チェックです!

プロフィール

黒木 進矢氏(シニアテクニカルリーダー:製品ロードマップ担当)
Windows 95がまだ世にない1994年、ミルキーウェイに入社。 ミルキーウェイ、インテュイット、弥生、ライブドア、弥生と、 転職はせず会社名だけがコロコロ変わる会社員生活を送る。
小番頭、クイックブックス、弥生会計とWindows会計パッケージの開発に長く関わる。 ライセンス認証、弥生会計の所得税申告モジュール、 やよいの見積・請求・納品書、YAYOI SMART CONNECTといった .NETベースの新規製品・サービスの開発にリーダーとして携わる。
また生粋のデジタルガジェット好き。新しい製品やサービスが大好きだが、 「買ったからには無駄にせず使い倒す」信条を持つので、あまりガジェットは持っていない。 このような、新しいモノ好きが得た経験を弥生製品にフィードバックしている。

プロフィール

田中 良文氏(テクニカルリーダー:製品・オンライン共通担当)
弥生がクラウドに本腰を入れた2009年の変革期に入社する。 MicrosoftAzureの開発を技術面でリード。 やよいの店舗経営オンラインやYAYOI SMART CONNECTなどの製品を世に送り出す。 近年はUXを探求し、弥生製品の評価、 時には自らがイラストレーターを使って、画面設計だけでなく素材の作成までも手掛ける。

プロフィール

山田 達也氏(シニアテクニカルリーダー:製品ロードマップ担当)
エンジニア、アーキテクト、エバンジェリストなど、謎な肩書きを経て2010年秋に弥生に入社。 .NET/WPFによる弥生製品の共通機能の開発を推進しつつ、 SIerや外資のブランチではなかなか得られない自社製造100%の純度に酔いしれる。 現在はシニアテクニカルリーダーとして弥生製品のロードマップ策定を担当。 弥生に入ってから体重が約20Kg増加した点が悩みといえば悩み。

 

15年連続で業務ソフトウェア売上No.1企業のエンジニアに聞く、「品質」と「UX」に隠された秘訣とは

まず、なぜ弥生が淘汰されずここまでやってこられたのか。それは、必須対応をちゃんとやってきたことと、UXにこだわってきたということ、時代に合ったUXの取り組みを怠らなかったことが重要なんじゃないかと思います。

弥生会計シリーズでは、これまでUXにこだわってきました。やっぱり商用プロダクトであるからにはキャッチーな見た目が求められます。そして、使いやすくないと使い続けてもらえません。料理も、味がよくても盛り付けがよくないと評価されないのと同じですよね。
見た目と使いやすさの両立が、商用プロダクトにおいては重要だなと考えています。

 

弥生のUXへのこだわり

弥生にはUXにこだわる歴史がございます。
弥生株式会社の前身であるIntuit(インテュイット)自身かなりUXにこだわっていました。また、Intuitは、同じくUXにこだわり続ける昔ミルキーウェイと日本マイコンを買収し拡大を見せました。弥生はそのDNAを受け継いでおります。

現状に至るまでには、当然失敗もあった

当然ながらいくつか失敗もございます。
今回、バッドケースとして紹介させていただきたいのが「弥生会計02シリーズ」の「簡単取引入力」と呼ばれる機能です。これは、ステップバイステップの形式で仕訳を入力する画面になります。

◆うまくいかなかった事例:「簡単取引入力」

仕訳というのは覚えてしまえば非常に簡単なのですが、覚えるまでが結構時間がかかるんです。それをなるべく隠そうとした機能が「簡単取引入力」です。見た目は非常にキャッチーで、簿記の初心者でも入力できそうなんですけど、この画面では複雑な取引が入力できない仕様となっていました。たとえば銀行振込で手数料込みの仕訳とか。

さらに、入力した取引は結局仕訳の画面で確認しなければなりませんでした。
この仕訳の画面を出してしまうと、結局「入力の敷居」を下げたのに「確認の敷居」は高いまま、というギャップが埋まらないという状態でした。

ここで改善するなら、同じ画面上で過去の取引や仕訳を表示できるようにするとか、あとは「この画面で取引が仕訳に変換する」という事をちゃんと表示してお客様の学習を促すという2つの方法があります。

この失敗の教訓は、ステップバイステップのウィザードというのは簡単に使えるUXで使いやすいんですけど、応用がきかない、という弱点があるということです。そして、入力画面と確認画面を別のViewにするとユーザを混乱させてしまうということです。

これを後に活かしたのが「弥生会計11」です。
「弥生会計11」では初心者とエキスパートの両者を満足させたいという想いから、UXのコンセプトを考えました。結果、かなり改善されています。

弥生のお客さまには全くの初心者の方もいらっしゃいますし、会計事務所などで非常にこう会計に詳しいというエキスパートの方もいらっしゃいます。どちらの顧客層に対してもアプローチできないといけないのです。

 

会計初級者「カジュアルスタイル」にも対応した使いやすさを追求

ちなみに、弥生はこれからもパッケージだけなのか?というともちろん違います。

まず、これまで弥生が提供してきたデスクトップアプリケーションは既存の市場で大変好評をいただいていて、120万人の市場を抱えています。そこで出てくる課題は、初心者のユーザ用にとってはとっつきづらいということです。弥生会計に持たれるイメージが「仕訳とか簿記の知識おある程度持っているある人たちが使っているソリューション」になっているんですね。

その反対側にいる、簿記や会計の知識に明るくない方々、こういった「カジュアルスタイル」にどうリーチを打っていけるかっていうところを、クラウドアプリケーションを新たに作って潜在市場を開拓しようと考えております。

そこで、「やよいの白色申告オンライン」と、「やよいの青色申告オンライン」という、第2第3のクラウドアプリケーションを2014年の1月と10月にリリースしました。もちろん、クラウドアプリケーションをただ作っているわけではなく、デスクトップアプリケーションもこれから既存の仕様で販売し続けていきます。

ここに対してどう付加価値を与えられるのかというのが弥生の中ではテーマになっています。そこで、外部アプリケーションとデータを連携する「YAYOI SMART CONNECT」という仕組みを使って、デスクトップアプリケーションにもクラウドアプリケーションにも自動で仕訳が取り込めるようにしています。

 

UX改善事例:「やよいの青色申告オンライン」

それではここで、今日の本題であるUXについて「やよいの青色申告オンライン」を例にとってお話させていただきます。
「やよいの青色申告オンライン」では「かんたん」で「やさしい」4つの機能があるのですが、その中でも「かんたん取引入力」っていう機能のUI・UXの取り組みについて説明します。

ここでの課題は事業の取引を会計ソフトにどうやって簡単に入れるかっていうことなのですが、先ほど「やよいの青色申告オンライン」は基本的に会計の知識が全くない人たちに触ってもらうことをターゲットにしているとお話ししました。
ということは、いかに簡単に入力してもらうかっていうことに主眼をおいてUXをデザインしなきゃいけないわけです。

また、よくユーザーインタビューで聞かせていただくんですけども、やはり毎日記帳作業をする人っていないんです。毎日やってたらそもそも困らないわけで。

やっぱり記帳っていうのは、みなさん会計事務所の人にお願いする方たちが多いのですが、こういった人たちを「自計化」させる、要は自分達で会計をちゃんとつけて経営を見れるようにっていう、そういったことを我々は「自計化」という風に呼んでるんですけども、そういう風になってほしい。だから、毎日は記帳しない人たちがまとめて入れられるよう、「同じ取引を続けて登録」っていうチェックボックスをつくりました。

このチェックボックスにチェックを入れて仕訳を登録すると、金額のみクリアになって続けて同じ勘定科目が登録できるようになっています。これで、数日分の取引をまとめて入れられるようになっています。

 

弥生の品質へのこだわり

ここまでは製品のUXのお話を中心にしてきましたが、ここからはそれを支える品質の話をしたいと思います。

まずはじめに、弥生が品質にこだわる理由には120万人という多くのお客さまに製品をお届けしている前提がある、ということと、「かんたん、やさしい」「一番売れてます」ということをスローガンとして掲げている、ということがあります。

これらの理由を元に、弥生では工夫している点が2点あります。

工夫その①下流工程でいかにバグを削減するか

工夫その①下流工程でいかにバグを削減するか

一般に、テスト駆動開発では実装とテストの順番を、テストを先に作ってそれに対して実装して、という手順で行うことが多いかと思います。弊社ではこれを上流から行っています。その結果として、下流で些細なバグがでるケースを減らしています。

その②「かんたん、やさしい」をいかに追求するか

その②「かんたん、やさしい」をいかに追求するか

「かんたん、やさしい」の追求。これはですね、長い歴史の中でずっと探求しているんですけど、まだまだ模索が続いています。

たとえば「かんたん、やさしい」って言っているものの、実際ユーザにとって「かんたん、やさしい」じゃなかった、ということがたまにあります。

◆うまくいかなかった事例:ライセンス認証

弥生は、製品そのものだけでなく、同時にユーザのサポートにもこだわっています。 お客様が製品に関してお困りになられた際、電話でのお問い合わせを受け付けているのですが、もし、機能が使いづらい、分かりづらいとなると電話が殺到します。
しかしサポートセンターの方の電話の数にも限りがありますので、その数を超えると電話が繋がらなくなります。すると、電話応答率が下がり、お客様満足度の低下につながります。

そこで、オンラインでお問い合わせただければ電話かかってくる数も減らせますし、最小コストで対応できる。そういうことで「ライセンス認証」という機能を導入したんですが、選択肢や必須入力項目が非常に多く、結局使いづらかった。
その結果、想定以上の電話が集中してコールセンターがパンクしてしまったことがありました。「かんたん、やさしくなかった」例ですね。

この教訓を活かして、文字ばかりでなくてアイコンを使って選びやすくして、必要最小限の項目を入力すれば基本的には認証を完了できるよう、見直しをしました。

 

まとめ

今日のメッセージとしては、まず弥生は今後も進化し続けるということです。
「弥生会計」筆頭にパッケージ製品あけでなくクラウドサービスをどんどん作っています。
新しいものもどんどん出していく予定あので、これからも進化にご期待いただければなと思っています。

そして、弥生は「UX」と「品質」を第一に考えてきたということ。
長い歴史の中の取り組みというものは、この点はパッケージもクラウドも変わらないですね。
当然、今後親会社が変わったとしても同じスタンスでやってまいります。※
ありがとうございました。

(※2014年12月22日より、弥生株式会社はオリックス株式会社のグループ企業になりました。)

いかがでしょうか。
失敗を経験しながらも試行錯誤を繰り返してきた弥生。
時代を越えて選ばれ続けるサービスの裏には、その時々のニーズにあったUX・品質の進化があるのですね。
オリックスグループとして新たなスタートを切る弥生の今後の進化に期待です!

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