データサイエンティストの関わり方について「データサイエンティストとアナリストはお互いが歩み寄っていかないといけません」小川卓氏が語るアナリストの関わり方

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今回は、小川氏とデータアナリスト 田宮 直人氏の対談をお届けいたします。

小川 卓 氏
アマゾンジャパン株式会社 Mass Mechant Manager。
デジタルハリウッド大学大学院 客員准教授。
ウェブサイトやサービスの分析を長年携わる。
個人でアクセス解析に特化したブログ 「リアルアクセス解析」 を2008年より運営し、
著書に「ウェブ分析論」「ウェブ分析レポーティング講座」など。
「リアルアクセス解析」: http://d.hatena.ne.jp/ryuka01/

田宮 直人 氏
サイバーエージェントでシステム責任者を担当後、アナリストに転身。
現在はフリーランスのエンジニア兼アナリストとして、株式会社DMM.comラボをはじめ、複数企業の解析周りのプロダクトの導入提案、構築を行っている。
MarkeZine寄稿:
「連載【大事なことは4つのみ!数値を見てサイトを改善する方法】」
「見えない敵と戦っていませんか?ウェブの数値を見るときに大切な4つの手順」

田宮:よろしくお願いします。小川さん、早速ですが先日a2iで大内さんの【アナリティクスに取り組む人々で意見が違ってきている?】と言うメルマガを拝見しました。で、小川さんがカウンターポストしていましたよね。大内さんの記事も小川さんの記事も非常に納得しますし、自分も実感しています。で、今回はその記事に関連してお話していきたいと思います。

小川:ああー!数日前くらいのやつですね。

田宮:そうです。転職サイトの求人を見ても、データアナリストは【先進層】と【経験層】に綺麗に分かれているなと感じます。どちらかというと僕も小川さんも、大内さんの記事で言うところの【経験層】であって、統計学にとびきり明るいと言う訳では…

小川:じゃないですよね。Webマーケティングよりの人間ですし。

田宮:そうですよね。今回は同じ【経験層】の立場として、そのブログに絡めてお話させてください。

1. 既存の経験層と、新しい流れ【先進層】との最適な関わり方とは

田宮:僕は先進的なグループ、つまり統計学者がプロジェクトにジョインするストーリーは2つあるのかなって思っているんですよ。1つがトップダウンで「ビックデータの潮流に乗り遅れるな」ということで人を入れてしまう…

小川:はいはい、とりあえず採用しましょうといって採るパターン。

田宮:そうです。もう1つは検索を改善したい、リコメンドを自社で作りたい等のニーズに対して、今まで外部の仕組みを使っていたけど、限界を感じて自社で何とかしようとしているパターンと。

小川:そのためのロジックを考える人として採用しましょうというパターンですね。

田宮:フリーランスになり、様々な企業や現場の担当者と会って実感するのが、この解析周りについてです。

「周りがデータを使って改善に成功しているからうちも」と「現場で必要となり突き上げていくパターン」と企業の関わり方も2種類あると感じています。
先日、某BIツールの営業の方とお話を聞いた時に、「こういうツールは現場メリットを考えて導入というよりも、トップダウンで導入を決めてしまっていることが多い」と伺いました。

僕が以前参加していたプロジェクトでは、とても優れたデータサイエンティストの方がジョインされたことがありました。ただ僕含め現場全員が「この方が何をしてくれるのか」を理解できず、データサイエンティストの役割が曖昧になってしまったことがあります…。
それはどちらかと言うと、前者の「とりあえず採用しよう」というパターンでした。

小川:なんか凄い人が来たぞと、分析が凄いできるらしいぞと。でもどういう分析をして、どう何をお願いすればいいのかが思いつかない、と言う状況ですかね?

田宮:はい、仰るとおりです。

小川:データサイエンティストの方々は、仮説や課題などをこちらから与えなくても「きっと凄い結果を出してくれるんだろうなあ」という間違った期待を持たれがちですよね。

でも、やっぱり仮説や前提が無いと、いくら凄いデータサイエンティストでも結果を出すことは難しいと思いますよ。現場とデータサイエンティストで求めることがかみ合わないと、現場は何を依頼すればいいかわからない、データサイエンティストも何を分析すればいいかわからない。お互いにこう見合っちゃうんですよね。

2. データサイエンティストと付き合う3つのパターン

田宮:僕は個人的に、解析系って最終的に施策に落として価値が出るものと思っています。なので、データのみで「こういう傾向がある」じゃダメだと思うんですよ。

で、昨今の「とりあえず統計学に明るい人!」という条件でデータサイエンティストを採用した場合、データである傾向がわかったとしても、サイト上でどんな打ち手があるのか、何ができるのかわからない。
お互いその通訳みたいなものが、どうしても必要なんじゃないかなと考えているんですよ。

小川:そうなんすよね。この問題に対応するには3つパターンがあると思います。

1つ目は、データサイエンティストとサイトディレクターの間に入って、お互いの言語を通訳してコミュニケーションの手助けをする、分析と施策が両方とも分かる人を用意するというパターン。

私自身は、この通訳という役割を目指したいと考えております。
また、こういう人が今後増えてくるのではと考えています。これがパターン1。

パターン2は、通訳がいないので、お互いに歩み寄って一緒に考えようというパターンです。
こちらが、ケースとしては一番多いのではないでしょうか。

最後のパターンが、データサイエンティストの方に目的だけ提示し、後は極力自由に分析をしてもらうというパターン。このパターンは、上手くはまれば、パフォーマンスが最も発揮されるんではないかと、個人的には思っています。

田宮:僕からしてみれば、データサイエンティストって先進的かつ新しいカテゴリーなので、どう付き合えばいいのかは結構手探りなんです。

小川:そうですね、お互い手探りですよね。

田宮:データサイエンティストさんの意見も聞いてみたいですよね。

小川:データサイエンティスト側の意見も当然聞いてみるべきだと思うし…。

田宮:今度、R社に行ったO氏とお話してみましょう!

3. 【今から層】における「データとWeb担当者の業務範囲」について考える

田宮:では、今度は大内さんのいう【今から層】について小川さんの意見を聞かせてください。

今はGoogleアナリティクスが非常に一般的なツールになっていますよね。そして【今から層】の方々と話すと、割と皆さんGoogleアナリティクスから入ります。

しかし、Googleアナリティクスを導入しなくても、apacheアクセスログやサービスのデータベースには、購買データや商品データが山ほどあるわけで、エンジニア主導ならまずその辺から入ってもいいですよね。

しかし、これから数値を見ようと言う段階で、あんまりエンジニアを参加させるという話は聞きません。
それってどうしてなんですかね。

小川:いや、楽だからじゃないですかね。

まず実装が難しくない。Googleアナリティクスだったら、頑張れば自分でも入れられるじゃないですか。

で、自分の好きなタイミングで操作して、レポートを見ればいいわけです。
一方で、サービスのDBから始めようとすると、まずデータすら出せないじゃないですか。

なので、データ出してくれってところからお願いする必要がありますよね。

ただ、もしかしたらWeb担当者によってはここまで深いデータは、売上については関係ないと思ってる可能性もありますよね。

田宮:確かに、ECサイトのWeb担当者であれば商品のラインナップ、転職サイトであれば求人の種類に関してはコントロールできないところはありますね。

小川:そして、結局Webサイトのサイト内行動や集客のデータとなった瞬間に、既存のログの仕組みやデータベースの値は、それらを明らかにする前提で作られていないですよね。

理想はWebサイトの行動のログと、その後に発生するオフラインのコンバージョンのデータなどは、両方見るべきで紐付けて見たいですよね。
でも、会員ID等が無い限り、綺麗に紐付けることは難しい。
だからWeb担当者はどうしてもGoogleアナリティクスを見ちゃうんですよね。

要するにオフラインの部分や、掲載されている情報のラインナップは、自分がコントロールできない。Web担当者がGoogleアナリティクスに寄るのはなんか凄く自然な気がしますよね。

田宮:確かに。僕は元々エンジニアなので、その辺を解決すべきだと思うし、どうやれば見れるかを考えてDBなりログなりを設計する、というマインドになるんですけどね。

売上データなら、ただデータベースから引けばいいじゃんと思うのですが、何ができて何ができないのか、その辺の切り分けができない人も結構多くて。

小川:多いでしょうね。

田宮:GoogleアナリティクスでもECのデータなどは送れますよね。Googleアナリティクスでは、他にもイベントの送信とか、たくさんのメソッドがあるのに、大抵は一番最初に提示されるタグを埋めておしまい、みたいな。もうちょっとドキュメントを漁れば、より深く見れたりもするんですけどね…

小川:でも、そこは自分でできないんですよね。
決まったタグをWebページに入れるのにスキルはいりません。
しかし結局、ユーザーの行動に応じてセットしてかないとってなると、エンジニアの協力がやっぱり必要になります。

そこでどうしても難しくなってしまうのでしょう。
あるいは、自分ができる範囲でとれるものからちゃんとやっていこうっていう、考え方なのかもしれません。

僕も気持ちはわかるんですけどね。

4. データベースを見るべきシーンと組織課題とは

田宮:どこから始めればいいかという点においては、行動に関してはGoogleアナリティクスの方がいいですよね。ただその売り上げや、営業の結果と絡めてだと…。

小川:まあ商品の分析をやりだすと、やはりデータベースですよね。

田宮:そうですね。売れ筋の分析、購買の時期による変動なんかはデータベースで簡単に解決できますよね。

小川:要は立場ですよね。
結局Webサイト担当者がその商品の仕入れや在庫に口出しができるんだったら、ありだと思うんですよ

施策につなげることを考えると、データベースにある在庫データや時期による売れ筋の変動とユーザーの行動を繋げるべきと思います。が、「難易度高そう」と感じてしまうこともわかる気がします。

田宮:確かに、Googleアナリティクスのポチポチでぱって出てくると、SQLを書く・頼むのとでは、後者の方がハードルが高くはあります。
でも、避けちゃいけない部分でもあるような気がするんですよね。
むしろ、日頃の負荷状況を監視しているエンジニアの方が、鋭い視点を持っていたりすることもありますし。

小川:そこはこのデータを見たら、こういうメリットがあるということを誰かが伝えてあげなきゃだめでしょうね。

田宮:ああー、確かにエンジニアの持っているER図を、マーケターが持ってることはないですよね。僕はログ設計する際に、サービスをぱぱっと見て、「ER図ください」ってエンジニアに言うんです。ER図を見た方がいろいろ捗るんですよ。

小川:マーケターがER図を持っていることは少ないですし、多くのマーケターは意味が分からないです。
こういう風にテーブルがあって、こういう風につながっていて、これがプライマリキーでホニャララホニャララ…。分かんないですよ。
何が出せるの、何に使えるのって言うコミュニケーションを取らないと。
「こんないっぱいデータがありますよ」「こんな風につながってますよ」と言われても、ちょっと想像しにくいでしょうね。

5. 人をつなげられる通訳こそが分析者

小川:ウェブアナリストの進化系がデータサイエンティストだと僕は思っていませんし、データサイエンティストの方もウェブアナリストとは違う職種というか、職能だと認識しているのではないでしょうか。
データサイエンティストという職種やデータ分析の統計的な世界はもともとありました。アクセス解析の世界もこれまでありました。
これまでは、それぞれが関わらずに生きてきたんです。

これまでのデータサイエンティストはアクセス解析のログではないところのデータ、例えば、売り上げのデータや、ユーザーのアンケートの統計などのデータを扱ってきました。

昨今はHadoopに代表される分散型ファイルしてステムの進化などにより、大量のデータの取得と保持が可能になりました。今までは集計された結果をアクセス解析ツールで見ていたところを、データそのものの分析が可能になりました。その分析を行なうためにデータサイエンティストという職種が重要性を増してきたのではないでしょうか。

これを大内さんがメールマガジンにかかれていた【先進的】と見るのか、「データサイエンティストによる違う視点でのアプローチが生まれた」と見るべきなのか。どちらなのかは私がわかりませんが、個人的にはウェブサイト改善のための分析に関わる人が増えるという意味においても、昨今の動きは大歓迎です。

しかし、データサイエンティスト・ウェブアナリスト・サイトディレクターの間で目標を共有し、お互いの期待値をあわせながら、分析を進めていかないと、価値を発揮出来ないまま終わってしまうのではないでしょうか。

データサイエンティストの方はウェブサイトの運営や施策を行った経験を持っている方が少ないかもしれません。逆にサイトディレクターの方は分析モデルやその違い、制限などを理解されている方が少ないかもしれません。お互いに「分からない」からと諦めるのではなく、行いたいこと・出来ること・出来ないことをしっかり整理することが大切なのではないでしょうか。その時にウェブアナリストというのは、両方の立場や状況を理解しやすいと思うので、間を繋ぎやすいと思うんですよね。

田宮:すると【経験層】であるアナリストの価値は、データサイエンティストとの通訳ができたり、あるいはエンジニアとどういうデータがあるのかとか話し合える。さらには、Webの企画担当者ともコミュニケーションをとったり、みんな歩み寄っていける…

小川:そこですよね。やっぱりその通訳。分析と施策のハブになれるのが、ウェブアナリストだと思いますし、そこに価値を見いだせるのではと考えています。

6. 「レポートを出すが、報われていないと感じる人」に聞いて欲しい

小川:今回ヒカ☆ラボで話すのですが、講演を一番聞いてもらいたいのは何かしらデータを出してレポートを作ってるけど「なんか自分報われてないな」って思ってる人なんですよ。

レポートは作るだけだと売り上げに直接つながらない。
レポートを作って終わりだと、結局ビジネスに貢献できないということはよくあると思います。

ですので、今回はレポートから次の施策を考える、次の方向性を決められる、というレポートの作り方や考え方、コミュニケーション手法をお話する予定です。
その中でいかに伝えやすく、わかりやすく伝えるというところは、事例を交えながらお話できればと思っております。

田宮:日次データの積み上げを週次・月次の報告会で共有とかよく見るパターンですよね。
それだと正直、意思決定にまでなかなか辿り着けないですからね。良いレポートが増えれば意思決定を迅速に行えますからね。良いことです。

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