- 組み込みエンジニアの現状と将来性
- 組み込みエンジニアがキャリアパスを考える重要性
- 組み込みエンジニアがキャリアプランを考える際の2つのポイント
- 組み込みエンジニアの主なキャリアパス
- キャリアアップに役立つスキルと資格
- まとめ
組み込みエンジニアの現状と将来性
自動車や家電、医療機器などあらゆる製品に組み込み技術が活用される中、まず現在の市場動向を分析します。加えて、IoTやAIの普及によって生まれる、組み込みエンジニアの新たな活躍の場について解説します。
組み込みエンジニアの需要と市場動向
組み込みエンジニアは、自動車・家電・医療機器など多様な分野で活躍しており、その需要は年々高まっています。
例えば自動運転技術の開発が進む自動車業界では、組み込みシステムを扱える人材が欠かせません。医療業界でもAI搭載の診断装置や患者モニタリング機器の開発が進んでおり、専門知識を持つ組み込みエンジニアの需要が高まると考えられます。
さらに産業用ロボットを採用している製造業、スマートメーターを活用するインフラ業界でも組み込み技術の導入が進んでおり、ニーズのある業界はさらに広がるでしょう。
複雑な技術領域をカバーする人材の供給が追いつかず、今後も売り手市場が続くと見込まれます。
IoTやAIの普及による活躍の場の拡大
IoTやAIの技術革新により、組み込みエンジニアの活躍の場は大きく広がると考えられます。
例えばスマートスピーカーや自動調整エアコン、食材を管理する冷蔵庫など、生活に身近なIoT機器はすでに一般化しつつあります。これらの機器はネットワーク通信やAIによる判断機能を備えており、組み込み技術の進化がなければ成立しません。
こうした動向を背景に、組み込みエンジニアは今後もあらゆる業界で必要とされる存在であり続けるでしょう。
組み込みエンジニアがキャリアパスを考える重要性
技術の進化が加速する昨今、組み込みエンジニアには変化への対応力と将来を見据えたキャリア設計が必要です。本章では、技術革新に対する意識と多様なキャリアを早期に把握することの重要性を解説します。
技術革新への適応
組み込みエンジニアは、常に進化する技術に柔軟に対応する力が求められます。IoTやAI技術の進展により、ネットワークやデータ処理、判断ロジックの実装が必要となり、組み込みエンジニアの役割も変化しています。
自動運転車やスマート家電など新しい技術領域へ対応する際には、キャリアパスに則して、必要なスキルを習得することが効果的です。
多様なキャリア選択肢の認識
組み込みエンジニアは、早期からキャリアパスを意識することで自身の可能性を広げることができます。なぜなら、組み込み技術は多くの分野で応用可能なスキルだからです。
組み込み開発の経験は、ソフトウェアエンジニア、プロジェクトマネージャー(PM)、QAエンジニア、インフラ系エンジニアなど幅広い職種に活かすことができます。どの方向に進むかを考えることで、必要なスキルや経験の優先順位も明確になります。
開発業務を経験した後、QAエンジニアにキャリアチェンジするケースもあれば、マネジメントスキルを高めてPMに転身する例もあります。
自身の価値を高めるには、早い段階から多様なキャリアの可能性を見据えた行動が重要です。
組み込みエンジニアがキャリアプランを考える際の2つのポイント
重要なのは、自身のスキルと方向性を客観的に見極めることです。本章では「スキルの棚卸し」と「ジェネラリストかスペシャリストか」の視点からキャリア設計を解説します。
自身のスキルセットの整理と目指す方向性の明確化
キャリアプランを立てる第一歩は、現在の自分のスキルや経験を整理し、強みと弱みを把握することです。これにより、どの分野で専門性を高めるべきか、新たに習得すべきスキルは何かが明確になります。
例えばプログラミング言語の習熟度、ハードウェアに関する知識、プロジェクト管理の経験など、自身の持つスキルを棚卸します。
自己分析を通じて、将来目指す方向性を具体的に定めることが重要です。
ジェネラリストとスペシャリストの選択
キャリアの進路として、幅広い知識を持つジェネラリストと特定分野に特化したスペシャリストのどちらを目指すかを検討する必要があります。
ジェネラリストは多様な技術やプロジェクトに対応できる柔軟性が求められ、マネジメント職への道も開かれます。一方、スペシャリストは特定の技術や分野で経験を積み、深い知識を得て高度な専門性を発揮します。
興味や適性、市場の需要を踏まえて、自分に合った道を選択しましょう。
組み込みエンジニアの主なキャリアパス
経験を積んだ組み込みエンジニアには、多様なキャリアの選択肢があります。本章では代表的な6つのキャリアパスとそれぞれの役割や必要なスキルを解説します。
システムアーキテクト
平均年収 | 794万円 |
中央値 | 700万円 |
想定年収 | 400~1,600万円 |
システムアーキテクトは、システム開発における上流工程(システム企画、要件定義、基本設計など)を担当します。単なるプログラミングや開発作業にとどまらず、クライアントの要望をヒアリングし、最適なシステム全体像を構築するのが主な役割です。
組み込みエンジニアとしての経験は、ハードウェアとソフトウェアの両面を理解している点で非常に役立ちます。特に組み込み系のプロジェクトにおいては、実現可能性を見据えた現実的なアーキテクチャ設計が期待されるでしょう。
組み込み分野はシステム全体の構造を深く理解する必要があるため、アーキテクトへの適性が高く、論理的思考や構成力を活かせます。
関連記事:システムアーキテクトとは?具体的な仕事内容や求人市場を解説
プロジェクトマネージャー
平均年収 | 809万円 |
中央値 | 722万円 |
想定年収 | 400~1,700万円 |
プロジェクトマネージャー(PM)は、プロジェクト全体を統括する役割を担います。プロジェクトの目的や進め方を定め、必要な人材を確保し、スケジュール管理を行いながら最終的な成果物の品質にも責任を持ちます。
組み込みエンジニアからPMを目指す場合、開発経験を活かして現場感のあるプロジェクト計画を立てられる点が強みです。
PMは、スケジュールの現実性や技術的なボトルネックへの配慮など、実務を熟知したうえでの判断が求められます。
クライアントとのコミュニケーション能力やチームビルディング力も必要であり、幅広いスキルの習得がキャリアアップの鍵になります。
組み込み開発は他部門との連携が密接です。全体管理のスキルが自然と養われ、PMとしての素地を培いやすい点がキャリアパスとなる理由です。
関連記事:プロジェクトマネージャーとは?仕事内容や役割、年収などを解説
IoTエンジニア
平均年収 | 708万円 |
中央値 | 725万円 |
想定年収 | 330~1,400万円 |
IoTエンジニアは、あらゆる機器をネットワークでつなぐ「IoT(Internet of Things)」システムの開発を担います。組み込みデバイスの開発からネットワーク構築、さらにはセキュリティや遠隔操作用のアプリケーションまで幅広い領域に対応する必要があります。
組み込みエンジニアとしてのスキルは、センサー制御やマイコン開発などの分野でそのまま活かせます。スマートスピーカーやウェアラブルデバイスなど、IoT機器の中核には必ずといっていいほど組み込み技術が用いられているため、非常に親和性の高いキャリアです。
IoT製品は組み込み技術を前提に設計されており、基礎知識がそのまま応用できるため、自然なステップアップ先として位置づけられます。
IoTエンジニアへの転職を検討したい場合、以下の記事も併せてご確認ください。
関連記事:IoTエンジニア向け資格4つを試験内容や難易度で徹底比較
AIエンジニア
平均年収 | 826万円 |
中央値 | 820万円 |
想定年収 | 350~1,800万円 |
AIエンジニアは、機械学習やディープラーニングなどを活用して、AIシステムの開発やデータ分析を行います。AIによる予測モデルの構築や自動運転、音声認識などの最先端技術にも関わることができ、今後さらに需要の拡大が期待されています。
組み込みエンジニアとしてPythonやR言語に触れた経験があれば、AI開発でも大いに活用できるでしょう。特に、AIを組み込んだエッジデバイス(例:自律移動ロボットや監視カメラ)の開発では組み込みとAIの融合が求められるため、両方のスキルを持つ人材は非常に貴重です。
また、AI開発には統計や数学の知識、データ分析力も必須です。さらなるスキル習得がキャリアの分岐点となるでしょう。
近年は組み込みAIの需要が高まっており、AIエンジニアは、組み込みスキルを活かしながら最先端領域に進出できる魅力的なキャリアです。
関連記事:AIエンジニアとは?仕事内容やなるために必要なスキル、年収を解説
ソフトウェアエンジニア
平均年収 | 731万円 |
中央値 | 625万円 |
想定年収 | 413~1,600万円 |
ソフトウェアエンジニアは、PCやスマートフォン、タブレットなどで利用されるソフトウェアの設計・開発・保守を担う職種です。操作画面のUI設計や機能設計、リリース後のバグ修正やアップデート対応まで、一貫してソフトウェアライフサイクルに携わります。
組み込みエンジニアとしてC言語やC++を使ってきた経験は、ソフトウェアの論理設計やアルゴリズム構築で大いに活かせるでしょう。特にデバイス制御やリアルタイム性が求められる場合、組み込み分野で培った知見がそのまま通用することもあります。
組み込み開発でのロジック構築力はソフトウェア開発でも重宝されるため、スムーズに転身しやすい有力なキャリアパスです。
関連記事:ソフトウェアエンジニアになるには?システムエンジニアとの違いも解説
QAエンジニア
平均年収 | 805万円 |
中央値 | 800万円 |
想定年収 | 420~1,100万円 |
QAエンジニアは、開発されたシステムやソフトウェアが仕様通りに動作するか、また品質が一定の水準に達しているかをチェックするエンジニアです。テスト計画の立案、テスト自動化の設計、不具合の報告にも携わります。
組み込みエンジニアとしての知識は、ハードとソフトが密接に連携する製品の品質検証に役立ちます。特に物理デバイスとの通信や動作検証を行う際に、内部構造への理解が深いQAエンジニアは貴重です。
組み込み製品はハードウェア依存のテストが多いため、製品仕様や制御の知識がある組み込み出身者は即戦力になり得ます。
関連記事:QAエンジニアとは?仕事内容や役立つ資格、年収・求人例などを解説
キャリアアップに役立つスキルと資格
キャリアの幅を広げるためには、技術スキルに加えてマネジメント力や対人スキルも不可欠です。本章では、習得しておきたい【対人】スキルと、取得が推奨される資格について紹介します。
役立つスキル
キャリアを伸ばすには、広い視野やチームを動かす力も必要です。まず、キャリアアップに直結する技術力以外のスキル領域を3つ解説します。
上流工程のスキル
上流工程とは、システム開発における要件定義や基本設計など、プロジェクトの初期段階を指します。このフェーズでは、クライアントの要望を正確に把握し、適切なシステム設計を行う能力が求められます。
具体的には、顧客のニーズを引き出すヒアリング力や要件を明確に文書化するドキュメンテーションスキルです。
上流工程のスキルを習得することで、プロジェクト全体の構造を俯瞰でき、品質やスケジュールの最適化にも役立てることができます。
マネジメント能力
プロジェクトを成功に導くためには、チームの作業量やスケジュールを適切に管理するマネジメント能力が不可欠です。
特にプロジェクト全体の進捗を把握し、リソースを効果的に配分するスキルが大切です。また、問題発生時の迅速な対応やチームメンバー間の調整能力も重要となります。
マネジメント力を高めることで、リーダーシップや課題解決能力も同時に養うことができます。
ヒューマンスキル
ヒューマンスキルとは、対人関係を円滑に進めるための能力を指し、以下の要素が含まれます。
-
・コミュニケーション能力:相手の意見や感情を理解し、自分の考えを明確に伝える能力
・リーダーシップ:チームをまとめ、目標に向かって導く能力
・ネゴシエーション能力:交渉を通じて双方にとって最適な解決策を見つける能力
これらのスキルを磨くことで、チーム内外の関係構築が円滑になり、プロジェクトの成功率も高まります。
役立つ資格
技術力の証明やスキルの可視化に関しては資格が有用です。ここでは、組み込みエンジニアの成長に有効な資格とその概要、証明できるスキルを紹介します。
資格 | 概要 | 証明できるスキル |
---|---|---|
エンベデッド システムスペシャリスト 試験 |
・独立行政法人情報処理推進機構(IPA) が実施する国家試験 ・組み込みシステムの設計 ・開発に関する高度な知識と 技能を評価す |
・組み込みシステムの要件定義、 設計、開発、評価に関する高度な知識 ・実践的な技能を有していること |
ETEC (組込みソフトウェア 技術者試験) |
・一般社団法人組込みシステム技術協会 (JASA)が運営する試験制度 ・組み込みソフトウェア技術者の知識 レベルを評価する |
・組み込みソフトウェア開発に関する 基礎的な知識 ・プログラミング作業を遂行できる能力 |
OCRES (OMG認定組込み 技術者資格試験) |
・OMGが実施する国際的な資格試験 ・組み込みシステムの設計や 開発能力を評価する |
・組み込みシステムの設計 ・開発における国際的な標準に基づく知識 ・SysMLやUMLを活用したモデリング能力 |
JSTQB認定テスト 技術者資格 |
・ソフトウェアテストに関する知識と 技術を証明する国際的な資格 ・レベルごとに求められる スキルセットが異なる |
・ソフトウェアテストの基礎知識を 有していること |
LinuC (Linux 技術者認定) |
・Linux技術者としてアーキテクチャ設計 から運用管理までのスキルを 証明する資格 |
・Linuxシステムの操作や管理に関する 知識と技術を有していること |
まとめ
組み込みエンジニアは、IoTやAIなどの技術進展を背景に、今後も多くの業界で活躍が期待される職種です。
一方で求められるスキルは高度化・多様化しており、将来のキャリアを明確に描くことがより重要になっています。
自身の強みを理解し、時代に応じたスキルを磨くことで、充実したキャリアを築いていきましょう。
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