院内SEはやめとけと言われる4つの理由
院内SEは、医療機関のシステムの管理や運用を担当するIT技術者のことです。医療の現場で必要不可欠な存在ですが、「やめとけ」と言われることも少なくありません。
具体的には、以下の4つの理由からやめとけと言われています。
一つずつ解説します。
最新のITスキルが身につきにくい
院内SEの仕事では、最新のITスキルを習得する機会が限られています。その理由は、医療機関では安定性と信頼性を重視するため、実績のある従来のシステムを長期間使用する傾向にあるからです。
たとえば、多くの医療機関では電子カルテシステムやレセプトコンピュータなど、専用のパッケージソフトを導入しています。これらのシステムは、一度導入すると5年程度は使い続けることが一般的です。そのため、最新技術に触れる機会が少ないのが現状です。
また、システムの保守や運用が主な業務となるため、新しい開発手法やプログラミング言語を実践的に学ぶ機会も限られています。結果として、IT業界全体で見たときに、市場価値の高いスキルを身につけにくい環境だと言えます。
技術知識のない人への説明が大変
院内SEの仕事では、医師や看護師など、IT技術に詳しくない医療従事者に対してシステムの使い方を説明する機会が多くあります。
たとえば、システムの不具合が発生した際、その原因や対処方法を医療従事者に説明する必要があります。また、新しいシステムやツールの導入時には、多忙な医療従事者に対して効率的な研修の実施が必須です。
さらに、医療現場特有の緊張感や忙しさもあり、システムに関する質問や要望を落ち着いて聞く時間を確保することが難しい場合が多いです。このような状況で、円滑なコミュニケーションを図りながら業務を進めていく必要があり、ストレスを感じる方は少なくありません。
システム関連以外の業務も任せられることがある
院内SEは、本来のシステム管理業務以外にも、さまざまな業務を任されることがあります。たとえば、以下のような業務の遂行を求められることがあります。
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・職員のPC操作研修
・プリンタの調達やトラブルシューティング
・病院内のWifiの管理や調整
このように、ITに関連する業務全般を一手に担わされることで、本来注力すべきシステム管理や改善の時間が取れなくなる可能性が高いです。また、予期せぬ業務が突発的に発生することで、計画的な業務遂行が難しくなることもあります。
トラブル対応によって夜間帯まで残業することがある
院内SEの業務では、システムトラブルへの対応が避けられず、夜間帯まで残業を行うことがあります。医療機関のシステムは24時間365日稼働している必要があり、重大な障害が発生した場合は即座の対応が求められます。
たとえば、以下のようなケースで緊急対応が必要です。
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・電子カルテシステムの動作不良
・ネットワークの接続障害
・サーバーのダウン
・セキュリティインシデントの発生
・データのバックアップ不具合
これらの問題は、診察や手術などの診療行為に支障をきたし、患者の生命に関わる可能性があります。そのため、発生時刻に関係なく迅速な対応が必要で、休日や深夜であっても呼び出しを受けることがあります。
このことから、ワークライフバランスを重視する方にはおすすめできないと言われているのです。
院内SEが向いている人の特徴
院内SEが向いている人の特徴は、以下のとおりです。
これらの特徴に当てはまる方は、前述した「やめとけと言われる理由」のケースに直面しても、精神的なストレスを感じずに仕事を行える可能性があります。それぞれの特徴について解説します。
医療系業界のシステムに関心がある人
医療系業界のシステムに関心を持っている人は、院内SEとして活躍できる可能性が高いです。医療システムは人命に関わる重要な役割を担っており、その特殊性や専門性に興味を持って取り組める人が求められています。
また、院内SEは病院内のシステムの問い合わせ対応やIT機器の整備、社内PCのセットアップがメイン業務です。
そのため、たとえば電子カルテシステムやオーダリングシステムなどの医療特有のシステムについて学ぶ意欲がある人は、業務を通じて専門知識を深めることができます。
このように、院内SEは基本的には病院内で働くことが多いため、医療系のシステムや病院そのものに興味がある人が向いていると言えます。
複数の業務を同時に進められる人
院内SEには、さまざまな業務を並行して処理する能力が求められます。システムの保守管理だけでなく、資料作成といった事務作業や突発的なトラブル対応など、複数の業務を同時にこなす必要があるためです。
以下のような特徴を持つ人は、院内SEの業務に適性があると考えられます。
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・優先順位を適切に判断できる
・突発的な業務にも柔軟に対応できる
・複数のタスクを効率的に管理できる
・時間管理が得意である
また、医療現場では予期せぬ事態が発生することも多く、計画通りに業務が進まないことがあります。そのような状況でも冷静に対応し、必要に応じて業務の優先順位を変更できる柔軟性も重要です。
人命を扱う医療現場のシステムに責任感を持てる人
院内SEが管理するシステムは、患者の生命に直接関わる可能性があるため、強い責任感を持って業務に取り組める人が向いています。具体的には、システムの不具合や障害が、診療業務に重大な影響を及ぼす可能性があることを常に意識する必要があります。
たとえば、以下のような意識や姿勢を持っている人は、院内SEとして活躍できる可能性が高いです。
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・医療安全に対する高い意識がある
・システムの安定性を重視できる
・慎重かつ確実な作業を心がけられる
・予防保守の重要性を理解している
・医療従事者との良好なコミュニケーションを築ける
このように、技術面だけでなく、医療現場特有の責任の重さを理解し、真摯に向き合える人が院内SEに向いているといえます。
院内SEの仕事に就くメリット
院内SEの仕事に就くメリットは、以下のとおりです。
それぞれ解説するので、院内SEに興味があるものの、業務内容や待遇などに不安がある方はぜひ参考にしてください。
残業が少ない
院内SEの仕事は、一般的なIT企業のSEと比較して残業が少ない傾向にあります。院内SEの仕事はシステムの安定稼働が目的であり、納期やプロジェクトの進捗管理に追われることが少なく、トラブルが発生しなければ定時で帰れることが多いためです。
ただし、システムトラブルなどの緊急時には対応が必要となることがある点は把握しておきましょう。
出向や出張がほとんどない
院内SEの仕事では、特定の医療機関に常駐するため、出向や出張の機会がほとんどありません。一方で、通常のSEでは以下のような状況が発生することがありますが、院内SEではこれらの心配が少なくなります。
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・顧客先への長期出張
・プロジェクト単位での転勤
・突発的な出張対応
また、通勤時間や勤務地が固定されることで生活リズムが安定し、家族との時間や自己啓発の時間を確保しやすくなります。育児や介護との両立を考えている方にとっては、この点は重要なメリットです。
雇用が安定している
院内SEが働く医療機関は、景気の影響を受けにくいため、雇用が安定している特徴があります。加えて、医療機関のシステムは診療に不可欠なものであり、継続的な運用・保守が必要です。
また、医療機関のシステム化は今後も進んでいくと予想され、院内SEの需要は継続的に存在すると考えられます。さらに、医療情報システムの専門知識を持つ人材は限られているため、一度習得したスキルや経験は、長期的なキャリア形成における武器となります。
院内SEに関するよくある質問
最後に、院内SEに関するよくある質問を紹介します。
院内SEの待遇や必要なスキルを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
Q1. 院内SEの年収は?
院内SEの年収は、およそ400万円が相場です。ただし、テクニカルサポートやヘルプデスクの実務経験、プログラミング言語やクラウドのスキルによっては、500万円以上の求人も多数あります。
院内SEの求人は、以下からご覧ください。
院内SEの求人・転職情報>
Q2. 院内SE・社内SEに必要なスキルは?
院内SE・社内SEに必要なスキルはさまざまですが、エンジニア経験者の場合、以下のスキルが求められます。
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・コミュニケーション能力
・医療システムや機器の知識
・SEに関する知識
それぞれのスキルの詳細は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:社内SEのメリット・デメリットは? 院内SEも含めて解説
まとめ
院内SEは、医療機関のシステム管理や運用を担う重要な職種です。この記事では、「やめとけ」と言われる理由や、向いている人の特徴、仕事のメリットについて解説してきました。
院内SEはさまざまな理由で「やめとけ」と言われていますが、安定した環境で働きたい方にとっては、魅力的なキャリアパスと言えます。
院内SEのキャリアを選択する際は、本記事で紹介した内容を十分に理解し、自身の志向や生活スタイルに合っているかを慎重に検討してみてください。
※本記事は2025年4月時点の情報を基に執筆しております。