AIエンジニアがいらないといわれる理由
AIエンジニアは、なぜ「いらない」といわれているのでしょうか。はじめに、AIエンジニアがいらないといわれる主な理由を見ていきましょう。
AIエンジニアの役割を把握できずいらないと勘違いされる
AIの仕組みを正しく理解していない人は「AIは自動で学習して成長するもの」「ワンクリックで何でもやってくれる」といった誤ったイメージを抱きがちです。また、AIエンジニアは「AIを上手に扱う仕事」と勘違いされているケースもあります。
このようにAIエンジニアの役割を正確に把握できないため「AIエンジニアはいらないのでは?」という誤解につながっています。
実際のAIエンジニアは、ビジネス課題の抽出・定義やAIモデルの設計・学習・評価など、さまざまな役割を担っています。
AIの開発費用が高く費用対効果の面でいらないと感じる
AIの開発では学習用の大規模データなどを準備するため、高額な費用がかかるケースがほとんどです。経済産業省は、2024年4月に発表した「経済安全保障推進法に基づくクラウドプログラムの安定供給確保に係る供給確保計画の認定等について」の中で、KDDIをはじめとする国内5社に対し、AI開発で必要なスーパーコンピューターの整備に最大725億円を補助する方針を打ち出しました。
この事例から、AI開発には高額な開発費用が必要になるケースが多く、簡単に導入できるものではないことがわかります。AIの運用経験が乏しい企業では、「AIの開発費用は高い」「費用対効果がわからない、もしくは効果が出るまでに時間がかかる」→「AI導入は見送ろう」→「そもそもAIエンジニアはいらないのでは?」といった流れで「AIエンジニアはいらない」と誤解するケースが考えられます。
市場の成長が早く活躍できるエンジニアが限られている
AI市場は急速に成長しており、技術トレンドや求められるスキルも日々変化しています。市場の変化や新しい技術に対し、すべてのAIエンジニアが対応できるとは限りません。継続的な学習やスキルアップを怠ると、期待された成果を出せなくなるリスクがあります。
企業側からすれば「期待した成果が出ない」「ビジネス価値を創出できない」といった評価につながり、結果として「AIエンジニア=いらないのでは?」というネガティブな印象を持たれるのです。
一方で、新しい技術やトレンドを学び続け、成長し続けられるAIエンジニアは高く評価されるでしょう。
AIエンジニアは今後も需要が高い職種
AIエンジニアは「いらない」という意見は一定数あるものの、実際には今後も高い需要が見込まれています。その高い需要の根拠について解説していきます。
AI市場の規模は拡大し続けている
総務省の「令和6年版 情報通信白書|第Ⅱ部第1章第9節 AIの動向 1 市場概況」によると、日本のAIシステムの市場規模は、2023年に6,858億7,300万円(前年比34.5%増)となっており、今後も成長を続けた場合、2028年に2兆5,433億6,200万円まで拡大すると予測されています。また世界の生成AI市場に関しても、2023年が670億ドルだったのに対し、2032年は1兆3,040億ドルと大幅な拡大が見込まれているのが現状です。
つまり、AI市場を支えるAIエンジニアの需要は今後も高いことが推察できます。
AIエンジニアは参入障壁が高いからこそ重宝される
AIエンジニアは、Pythonやフレームワーク・ライブラリを用いた開発スキルに加え、機械学習・ディープラーニングの知識など高度な知識が求められます。これらのスキルを習得するためには、多大な時間と労力が必要です。
経済産業省の平成30年度「- IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書」によると、2030年時点でのAI人材の需給ギャップは12.4万人に達し、2018年の約4倍に拡大すると予測されています。
深刻な人材不足に対応するため、大学におけるAI人材の育成カリキュラムの強化や、企業による社内AI人材リスキリングといった対策を講じているのが現状です。
つまり、AIエンジニアは国が施策を講じるほど人材確保が難しく、高い専門性が求められているのです。誰でも簡単になれる職種ではないからこそ、AIエンジニアは希少性が高く、今後も企業から重宝されるでしょう。
AIエンジニアの求人動向
近年、AI技術の活用は特定の分野にとどまらず、製造、医療・介護、金融、物流、小売など、あらゆる業界に広がっています。レバテックキャリアでは、データ基盤の整備・改善を担うエンジニアやAI・データ分析を担うプロジェクトリーダーなど、多種多様なポジションで人材募集が行われています。
また、内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局の「デジタル田園都市国家構想(デジタル人材の育成・確保)」では、2026年度末までに「デジタル推進人材(専門的なデジタル知識・能力を有し、デジタル実装による地域の課題解決を牽引する人材のこと)」を230万人育成する取り組みが発表されています。この取り組みに伴い、AIエンジニアの求人も今後さらに増加する可能性があるでしょう。
AIの普及による役割・仕事の変化
生成AIの普及により、これまでAIエンジニアが手作業で行っていたデータの前処理などを自動化できるようになりました。その結果、AIエンジニアの役割・仕事はより戦略的なものへと変化しつつあります。現代のAIエンジニアは、ビジネス課題を解決するために、AIをどのように活用するかを考える重要な役割を担っているのです。
AIエンジニアに必須のスキル・持っておくと良いおすすめのスキル
AIエンジニアの仕事は多岐にわたり、さまざまなスキルが求められます。ここでは、下記の2つに分けてAIエンジニアに求められるスキルを見ていきましょう。
必須で持たなければならないスキル
AIエンジニアが持たなければならない主なスキルは下記の5つです。
【Pythonやライブラリを用いた開発スキル】
AIエンジニアの開発現場では「Python」を使用するケースが多く見られます。また、AIの実装ではさまざまなライブラリを使用するため、ライブラリに関する知識も必須です。代表的なライブラリとしては、NumPyやPandas、scikit-learnなどが挙げられます。
【機械学習・ディープラーニングの知識】
機械学習とは、データからパターンを学習し、予測や決定を行う分野のことです。ディープラーニングの理解を深めるには、画像認識や自然言語処理などに使われるニューラルネットワーク(CNNやRNNなど)の構造や特徴を理解する必要があります。
【データ処理・解析のスキル】
AIモデルの学習精度は、入力データの質で大きく変わります。AIエンジニアには、データ整備のスキルに加え、データの傾向や相関を把握してモデルに反映させるスキルが必要です。
【数学や統計学の知識】
数学では、線形代数や微分積分、確率論などに関する知識が必要です。統計学の知識は、データ解析やモデル評価などで必要になります。
【データベースに関する知識】
AIエンジニアは、日常業務で大量のデータを収集・加工します。そのため、SQLの読み書きやデータベースを操作するスキル・知識も欠かせません。
AIエンジニアに必要なスキルや仕事内容を詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
関連記事:AIエンジニアとは?仕事内容やなるために必要なスキル、年収を解説
持っておくと良いおすすめのスキル
AIエンジニアが持っておくと良いおすすめのスキルは下記の2つです。
【ビジネスシーンにおけるAI活用事例の知識】
AIエンジニアの仕事は、解決すべきビジネス課題を正しく理解し、AIでどのようなアプローチができるかを考えることです。ビジネスシーンにおける活用事例を多く知っていれば、多角的な視点で課題解決につながるアプローチを提案できます。
【非エンジニアと円滑にコミュニケーションを図る能力】
AI開発では、データエンジニアやインフラエンジニア、業務部門の担当者など、多くのメンバーと関わることになります。関係者が多いほど、認識のズレが発生したり役割分担が曖昧になったりするため、AIエンジニアにはマネジメントスキルも必要です。
各工程の進捗管理・調整はもちろん、現場の担当者や経営層に対して、専門用語をかみ砕いてわかりやすく伝えることが求められます。
いらないといわれないAIエンジニアを目指すために
需要の高いAIエンジニアを目指すためには、下記の2つに重点的に取り組むと良いでしょう。
AIエンジニアとしての知識・スキルを証明するために資格を取得する
AIエンジニアの業務に関連した資格を取得すれば、自身のスキル・知識を客観的に証明できます。代表的な資格は、一般社団法人日本ディープラーニング協会が主催する「G検定」と「E資格」の2つです。これらの資格を取得すれば「AIに関して一定のスキル・知識がある人材」と企業に認識してもらいやすくなります。
G検定は機械学習やディープラーニングに関する基本的な知識の検定試験であり、E資格ではこれらの知識を実装する能力が問われます。
関連記事:ディープラーニングの資格!G検定とE資格の勉強法や取得のメリット
ビジネス課題を正確に理解し、最適なAIを設計する力を身につける
AIエンジニアには、ビジネス課題を正しく理解し、どのようなAIを活用すべきかを設計する必要があります。例えば顧客の問い合わせ対応を自動化・効率化したい場合、生成AIチャットボットを導入するなど、目的に応じて最適なAI技術・モデルを選ばなければなりません。
最適なAIを設計できるAIエンジニアは企業から高く評価され、需要の高いAIエンジニアとして重宝されるでしょう。
まとめ
「AIエンジニア=いらない」という意見は誤解であり、実際にはAI市場の拡大や技術進化に伴い、今後も高い需要が見込まれています。AIエンジニアを目指すには、まずAIエンジニアの現状や求人動向、求められるスキルなどを把握することが重要です。
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