- エンジニアとして10年後のキャリアプランを考える重要性
- 10年後のキャリアプランを考える具体的なステップ
- エンジニアキャリアパスの3つの方向性
- キャリアパスを考えるときの注意点
- エンジニアのキャリアプランに関するよくある質問
- まとめ
エンジニアとして10年後のキャリアプランを考える重要性
この記事では、キャリアプランとキャリアパスを以下のように定義し、解説していきます。
-
キャリアプラン:個人が考える将来の理想のキャリアを実現するために立てる中長期的な計画キャリアパス:企業や組織が従業員に対して示す、特定の職位や職務に就くための標準的な道筋
エンジニアにとって10年後を見据えたキャリアプランを考えることは、自身の成長と目標達成のために重要です。
近年、AI技術の急速な発展などにより、エンジニアを取り巻く環境の変化は大きいです。そのため、具体的な職務内容やスキルセットを細かく定めることは困難を極めます。しかし、「フリーランスエンジニアとして年収○○万円を目指す」「技術顧問として複数の企業をサポートする」といった、大まかなキャリアプランを持つことは有効です。エンジニアが10年後のキャリアプランを考えるメリットとして、具体的に以下が挙げられます。
以下で、具体的な内容について見ていきましょう。
主体的なキャリア形成を目指せる
キャリアプランを考えると、自分の意思で必要なスキルや経験を選択し、獲得していくことが可能です。自主的なスキル習得は、市場価値の向上や技術の変化への適応に役立ちます。
たとえば、「10年後にAIエンジニアのリーダーになる」という目標があれば、現在のプロジェクトでAI関連の業務を積極的に担当したり、関連する資格取得を目指したりするなど、具体的な行動に移せます。また、業界のトレンドや求められるスキルの変化に対応し、自己啓発の方向性を調整することも可能です。
さらに、キャリアプランがあることで、日々の業務や学習に意味を見出しやすくなり、モチベーションの維持にも繋がります。
長期的な視点を持って逆算して行動できる
10年後の目標から逆算して行動することで、効率的なキャリア形成が可能です。たとえば、開発部門の管理職を目指す場合、まずは基礎的な開発スキルの習得と業務理解から始め、徐々にプロジェクトリーダーとしての実績を作り、チームリーダーとしての経験を積むといった具体的なステップを描くことができます。
段階的な目標を設定することで、現在取り組むべきことが明確になります。また、キャリアの進捗状況を定期的にチェックし、必要に応じて軌道修正することも容易です。将来の可能性を広げるための準備として、学習計画や副業の検討なども計画的に進められます。
正しいキャリアの方向性を判断できる
エンジニアのキャリアには、マネジメント系、スペシャリスト系、コンサル系という3つの主な方向性があります。マネジメント系は組織やプロジェクトの管理運営を担当し、スペシャリスト系は特定の技術分野で専門性を追求します。一方、コンサル系は技術的な知見を活かしながら、クライアントの課題解決を支援する役割です。
これらの選択を迫られたとき、事前にキャリアプランを考えていないと、周囲の影響や一時的な状況で判断してしまう可能性があります。早い段階でキャリアプランを考えることで、必要な準備を計画的に進められ、後悔のない選択が可能になります。また、市場環境の変化に応じて柔軟に計画を修正することも重要です。
キャリアの方向性に関する解説は「エンジニアキャリアパスの3つの方向性」の章で解説します。
10年後のキャリアプランを考える具体的なステップ
エンジニアとして10年後のキャリアプランを考えるには、段階的なアプローチが効果的です。その後、中間目標を設定し、定期的な見直しを行いながら実行していくことが重要です。具体的には、以下の5つのステップでキャリアを考えていくことをおすすめします。
以下で、詳細について見ていきましょう。
1. 理想の10年後をイメージする
キャリアプランを考える第一歩として、10年後の目標を明確にすることから始めます。この際、収入や働き方、携わりたい業界、専門としたい技術領域など、さまざまな観点から理想の姿を描きます。たとえば「年収1,000万円のAIエンジニアとして、リモートワークを中心に働きながら、技術書の執筆活動もしている」といった具体的なイメージを持つことが大切です。
また、プライベートな目標を含めて考えることも有効です。「週4日勤務で子育てと両立している」「毎年海外旅行に行く」など、ワークライフバランスを含めた理想像を描くことで、より現実的な計画を立てられます。なお、このゴール設定は固定的なものではなく、状況に応じて見直していく前提で考えることが重要です。
2. 現在のスキルと経験を棚卸しする
目標設定後は、現在の状況を正確に把握するための自己分析が必要です。技術スキル、業務経験、コミュニケーション能力など、現在持っている能力を客観的に評価します。たとえば、「Pythonでの開発経験が3年ある」「小規模チームのリーダー経験がある」「技術記事の執筆経験がある」などの経験です。
また、得意分野や苦手分野、やりがいを感じる業務などを整理することで、今後の方向性が見えやすくなります。この分析では、上司や同僚からのフィードバック、過去の実績評価なども参考にすると、より客観的な自己理解が可能です。市場での自分の立ち位置を知ることは、今後のキャリア選択において重要な指針となります。
関連記事:エンジニアの転職で欠かせない自己分析のやり方とは
3. 必要なスキルや経験をリストアップする
理想と現状が明確になったら、その差を埋めるために必要なスキルや経験を具体化します。たとえば、転職サイトの求人情報や、目標とする立場の人のキャリア履歴を参考にすると、必要な要素が見つけることが可能です。「機械学習の実務経験」「クラウドインフラの設計・構築スキル」「プロジェクトマネジメントの資格」など、具体的な項目として整理します。
また、技術スキルだけでなく、ビジネススキルも含めて考えることが重要です。エンジニアとしてのキャリアの幅を広げるビジネススキルとして、以下が挙げられます。
-
・英語でのコミュニケーション能力
・予算管理の知識
・プレゼンテーションスキル
これらは、優先順位をつけて段階的に習得していく計画を立てる基礎になります。
関連記事:IT技術者(ITエンジニア)に必要なスキルとは?
4. 3・5年ごとの中間目標を設定する
長期的なキャリアプランを実現するためには、3年後や5年後といった中期的な目標設定が重要です。これにより、10年という長いスパンの目標を、より実行可能な単位に分解できます。
目標設定の際には、SMART原則を意識することで、より具体的で達成可能な計画を立てることができます。SMART原則とは、「Specific(具体的)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Relevant(関連性がある)」「Time-bound(期限がある)」の5つの要素の頭文字をとった言葉です。たとえば「3年以内にフロントエンドからフルスタックエンジニアへのキャリアチェンジを実現する」という目標であれば、毎月1冊のバックエンド関連の技術書を読む、半年以内にサイドプロジェクトでバックエンド開発を経験する、といった具体的なアクションプランに落とし込めます。
このように段階的な目標を設定することで、日々の行動指針が明確になり、着実に成長を実感できる環境を作ることが可能です。また、目標達成度を定期的に確認することで、モチベーションの維持にも繋がります。
5. 行動しながら定期的に目標を見直す
キャリアプランは固定的なものではなく、技術トレンドの変化や自身の興味関心の変化に応じて柔軟に修正していく必要があります。半年から1年ごとに目標の進捗状況を確認し、必要に応じて軌道修正を行うことが望ましいです。
たとえば、新しい技術の台頭により市場ニーズが変化した場合や、実際に業務を経験する中で自分の適性や興味が変わってきた場合には、キャリアプランの見直しを検討します。その際、経験豊富な先輩エンジニアやキャリアアドバイザーに相談することで、より客観的な視点からのアドバイスを得ることが可能です。
また、定期的な振り返りを通じて、自分では気づいていなかった強みや新たなキャリアの可能性が見えてくることもあります。このような気づきを積極的に取り入れ、より良いキャリアプランへと発展させていくことが重要です。
自分一人でキャリアプランを考えることに不安や疑問がある場合は、レバテックキャリアなどの転職エージェントを活用するのもおすすめです。
エンジニアキャリアパスの3つの方向性
エンジニアのキャリアパスは、具体的に以下の3つの方向性があります。
それぞれのキャリアパスの特徴を理解し、自分に合った方向性を見極めることが重要です。以下で、具体的な内容について見ていきましょう。
マネジメント系
マネジメント系は、技術的な知識を活かしながら、人や組織を管理し、目標達成に導くキャリアパスです。具体的には、以下の職種例が挙げられます。
テックリード
・チームの技術的な方向性を決定し、メンバーの技術指導を行う
プロジェクトマネージャー
・プロジェクト全体の計画、実行、管理を行う
エンジニアリングマネージャー
・複数のチームを統括し、エンジニア組織の戦略策定や人材育成を行う
このキャリアでは、技術的な課題解決だけでなく、チームメンバーの育成やプロジェクトの進捗管理から部門間の調整まで、幅広い視点が必要です。エンジニアとしての経験を基盤としながら、リーダーシップを発揮したい人に適しています。また、組織全体の成長や目標達成に貢献したいという意欲も重要です。
関連記事:
テックリードとは?役割や仕事内容、必要なスキルについて解説
プロジェクトマネージャーとは?仕事内容や役割、年収などを解説
エンジニアリングマネージャーとは?目指し方や仕事内容、必要スキルを解説
スペシャリスト系
スペシャリスト系は、特定の技術分野や領域において、深い専門知識と高度なスキルを追求するキャリアパスです。具体的には、以下の職種例が挙げられます。
AIエンジニア・データサイエンティスト
・機械学習や深層学習、データ分析の専門家
クラウドエンジニア・SRE
・クラウドインフラの設計・構築・運用や、システムの信頼性・可用性向上を担当
セキュリティエンジニア
・情報セキュリティ対策の専門家
ITアーキテクト
・システム全体の設計や技術選定を担当
このキャリアは、複雑な技術課題の解決や特定技術の社内外への普及が主な役割です。技術そのものへの探求心が強く、特定分野での専門性を極めたい人に向いています。常に新しい技術動向をキャッチアップし、専門分野での価値を高め続ける姿勢が必要です。
関連記事:
AIエンジニアとは?仕事内容やなるために必要なスキル、年収を解説
クラウドエンジニアとは?資格や年収・需要・向いている人を紹介
セキュリティエンジニアとは?仕事内容や必要なスキルを解説
ITアーキテクトとは?仕事内容や役割、資格、年収などを紹介
コンサル系
コンサル系は、エンジニアリングの知識や経験を活かし、顧客や企業のビジネス課題に対して技術的な視点から解決策を提案・実行支援するキャリアパスです。具体的には、以下の職種例が挙げられます。
ITコンサルタント:企業のIT戦略立案やシステム導入支援
技術顧問・アドバイザー:特定分野の専門知識を活かし、企業やプロジェクトに技術的な助言を提供
プリセールスエンジニア:顧客に対して自社製品やサービスの技術的な説明、提案を行う
プロダクトマネージャー:顧客のニーズを理解し、技術とビジネスの両視点からプロダクトの企画・開発をリードする
このキャリアは、特定のプロダクト開発に直接携わるのではなく、広範な技術知識とビジネス理解を武器に、企業の変革や成長をサポートする役割です。技術力に加えて、コミュニケーション能力や課題解決能力が重要になります。エンジニアとしての技術的なバックグラウンドを持ちつつ、ビジネスの課題解決に直接貢献したい人に適しています。
関連記事:
ITコンサルタントとは?仕事内容や必要なスキル・年収を紹介
プリセールスの役割は?仕事内容や求められるスキル、資格も解説
プロダクトマネージャーとは?業務内容や年収、必要なスキル解説
キャリアパスを考えるときの注意点
企業から提示されるキャリアパスを選択する際には、自身のキャリアプランに合わせて冷静に判断することが重要です。具体的には、以下の3つの観点に注意を払う必要があります。
これらの要素を意識することで、より柔軟で実現可能なキャリア形成が可能になります。以下で、詳しい内容について紹介します。
自分のキャリアプランとの整合性を見極める
企業が示すキャリアパスは、必ずしも個人の理想とする将来像や価値観と一致するとは限りません。たとえば、会社がマネジメント職への昇進を推奨している一方で、自身はスペシャリストとしてスキルを極めたいと考えているケースがあります。
このような不一致を避けるためには、提示されたキャリアパスと自分の目指す方向性を慎重に比較検討することが必要です。具体的には、働き方の自由度、専門性の追求、収入面での期待値など、さまざまな観点から両者の整合性を確認します。その結果、大きな違いが見つかった場合は、企業との交渉やキャリアチェンジなどを検討することも大切です。
視野を狭めすぎない
会社が提示するキャリアパスに固執しすぎると、自身の可能性や選択肢を制限してしまう危険性があります。たとえば、Webアプリケーションのエンジニアとして入社したものの、データサイエンスに興味を持った場合、既存のキャリアパスにとらわれず、新しい分野にキャリアチェンジする選択肢も考慮することがおすすめです。
特に、IT業界では技術トレンドや市場ニーズが急速に変化します。そのため、一つのキャリアパスに縛られすぎず、新しい技術や職種にも目を向け、柔軟に対応できる姿勢を持つことが重要です。場合によっては、副業や転職といった選択肢も視野に入れることで、より幅広いキャリア形成が可能になります。
定期的な見直しと軌道修正をする
キャリアパスは、一度設定したら終わりではありません。自分の価値観や興味の変化、会社の状況、社会情勢の変動などにより、当初想定していた道筋が最適でなくなることがあります。たとえば、新しい技術の登場により市場ニーズが変化したり、ライフステージの変化により働き方の優先順位が変わったりすることがあります。
そのため、半年や1年といった定期的なタイミングで、現在のキャリアパスが自分の目標や価値観と合致しているか見直す習慣を持つことが重要です。必要に応じて軌道修正を行い、より良いキャリアの実現を目指します。この過程で、メンターや同僚との対話を通じて新しい視点を得ることも有効です。
エンジニアのキャリアプランに関するよくある質問
エンジニアのキャリアプランに関するよくある質問を紹介します。紹介する質問は以下の2つです。
類似の疑問を持つ方は参考にしてみてください。
Q1. キャリアプランとキャリアパスの違いは何ですか?
キャリアプランとキャリアパスは、似て非なる概念です。キャリアプランは、個人が主体的に設定する長期的なキャリア目標とその実現計画を指します。一方、キャリアパスは、組織が従業員に提示する一般的な昇進・昇格の道筋を指します。
Q2. キャリアプランはどれくらい先まで考えると良いですか?
キャリアプランを考える際の一般的な目安として、10年後まで考えておくことがおすすめです。ただし、IT業界では技術革新のスピードが速く、市場環境も急速に変化するため、10年先の具体的な職務内容やスキルセットを細かく定めることは現実的ではありません。そのため、やや抽象的な目標設定がおすすめです。
まとめ
本記事では、エンジニアとして10年後のキャリアプランを考える重要性やステップについて解説してきました。
エンジニアのキャリアプランを考える際には、10年後の理想の姿を描き、そこから逆算して具体的な行動計画を立てることが重要です。大きな目標をもとに、自分の現在の状況を見据え、そこにたどり着くまでに必要なことを洗い出していきましょう。具体的には、理想の将来像のイメージ、現状の棚卸し、必要なスキルの洗い出し、中間目標の設定、定期的な見直しという5つのステップでキャリアプランを作成します。
キャリアプランは個人の主体的な計画であり、キャリアパスは組織が示す一般的な道筋とは違います。このことを理解した上で、自身の理想とする将来に向けて、計画的かつ柔軟にキャリアを築いていくことが大切です。
エンジニアとして将来のキャリアプランに不安を抱える人は、この記事を参考に10年後のキャリアプランを考え、具体的な行動計画を立ててみてください。
※本記事は2025年5月時点の情報を基に執筆しております