データベーススペシャリストの勉強を始める前に確認すべきこと
まずは、データスペシャリスト試験の勉強を始める前に確認すべき4つの項目について説明します。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
データベーススペシャリスト試験とは
データベーススペシャリスト試験は、データベースの設計・構築・運用に関する高度な知識と技術を評価する試験で、IPAが主催する情報処理技術者試験の高度試験の1つです。略して「デスペ」と呼ばれることがあります。
データベーススペシャリスト試験の概要は以下のとおりです。
実施時間 | 9:30~16:30 |
実施回数 | 年1回(10月) |
申込期間 | 7月~8月 |
受験料 | 7,500円 |
難易度 | ITSSレベル4 |
難易度はITスキル標準(ITSS)のレベル4で非常に高いです。
データベーススペシャリストの試験形式
データベーススペシャリストの試験の形式は、午前は四肢択一、午後は記述式問題となっています。試験区分それぞれの形式は、以下の表のとおりです。
午前1 | 午前2 | 午後1 | 午後2 | |
---|---|---|---|---|
試験時間 | 9:30~10:20 (50分) |
10:50~11:30 (40分) |
12:30~14:00 (90分) |
14:30~16:30 (120分) |
出題形式 | 多肢選択式 (四肢択一) |
多肢選択式 (四肢択一) |
記述式 | 記述式 |
出題数 ・解答数 |
出題数:30問 解答数:30問 |
出題数:25問 解答数:25問 |
出題数:3問 解答数:2問 |
出題数:2問 解答数:1問 |
ただし、午前1に関しては、以下の条件のいずれかを満たしている場合免除となる。
-
1. 応用情報技術者試験(AP)に合格
2. 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格
3. 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前1試験で基準点以上の成績をとる
なお、すべての区分において100点中60点以上得点する必要があり、一部だけ高得点でもほかの区分が基準点に達していない場合は不合格となります。また、試験内容は実務に即した問題が多く、単なる知識の暗記だけでなく、実践的な応用力が問われます。
デスペの学習メリットはDB知識を体系的に学べること
データベーススペシャリスト試験合格に向けた学習の主なメリットは、データベースの知識を体系的に学べることです。データベーススペシャリスト試験は単なる知識の暗記ではなく、データベースの設計や構築、運用など、実務で必要となる知識を網羅的に学べるように構成されています。
データベーススペシャリスト試験合格のメリットは、ほかにも存在します。メリットは、以下の表のとおりです。
データベースの知識を 体系的に学習できる |
・データベースに関する幅広い知識を習得できる ・実務で必要な理論的背景を理解できる |
キャリアアップに つながる |
・資格手当の対象となることがある ・昇格/昇給の条件を満たすことがある ・転職時の評価材料になる |
技術者としての 成長につながる |
・専門性の証明になる ・自信につながる |
データベーススペシャリスト試験に合格すると、企業によっては昇格や昇格、資格手当の対象となる場合があります。ただし、資格取得が直接的な年収増加に繋がるとは限りません。この試験は、あくまでデータベースに関する体系的な知識を習得するためのものであり、実践的なスキルは実際の業務経験を通じて身につける必要があります。
デスペの合格率は約16%程度
データベーススペシャリスト試験の合格率は、例年13~18%程度で推移しており、約16%程度です。平成30年度以降の実施状況は、以下の表のとおりです。
開催 | 応募者数 (名) |
受験者数 (名) |
受験率 (%) |
合格者数 (名) |
合格率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
平成30年度 | 17,165 | 11,116 | 64.8 | 1,548 | 13.9 |
平成31年度 | 16,831 | 11,066 | 65.7 | 1,591 | 14.4 |
令和2年度 | 9,468 | 6,536 | 69.0 | 1,031 | 15.8 |
令和3年度 | 10,648 | 7,409 | 69.6 | 1,268 | 17.1 |
令和4年度 | 12,399 | 8,445 | 68.1 | 1,486 | 17.6 |
令和5年度 | 13,121 | 8,980 | 68.4 | 1,664 | 18.5 |
令和6年度 | 14,549 | 10,120 | 69.6 | 1,744 | 17.2 |
※引用:情報処理推進機構(IPA)「統計資料(令和7年度)」(2025年5月19日)
令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響として、春期試験は中止となり、秋期試験であるデータベーススペシャリスト試験の受験者数は大幅に落ち込みました。しかし、合格率は変わらず約16%を維持しており、難易度が高い水準で維持されていることが分かります。
データベーススペシャリストの効率的な勉強方法
データベーススペシャリスト試験合格に向けた効率的な勉強方法は、まずは参考書を使いデータベースについて体系的に学習したあと、過去問を周回することです。データベーススペシャリスト試験は専門性が高いため、いきなり演習問題に取り掛かるよりも基礎知識の習得を優先することが重要となります。
過去問を使った学習を進める際のポイントは以下の2つです。
-
・通勤時間や休憩時間などのスキマ時間に午前問題対策を行う
・まとまった学習時間は記述式の午後問題対策に重点的に取り組む
四肢択一の午前問題は比較的短時間で解答できるため、スキマ時間を有効活用して学習するのがおすすめです。一方、午後問題は記述式で解答には長時間を要するため、ある程度まとまった時間を確保する必要があります。このように確保できる時間によって学習内容を変えることで効率的に学習できます。
基礎知識の習得後に、午前問題と午後問題とで時間を使い分けながら過去問を繰り返し解き、試験形式に慣れていくことが重要です。
具体的な試験対策の手段について、以下の章で解説します。
データベーススペシャリストの試験対策
データベーススペシャリスト試験に合格するためには、体系的な学習計画が必要です。
それぞれのステップについて、効果的な学習方法を詳しく説明していきます。
参考書によるDBの基礎知識の網羅的な学習
データベーススペシャリスト試験の学習を始めるにあたり、まずは参考書で基礎知識を固めることが重要です。参考書は試験で問われる重要なポイントを整理して解説しているため、効率的に合格に必要な知識を身につけることができます。
参考書を選ぶ際には、自分の学習スタイルに合った教材を選ぶことが大切です。ここでは、特におすすめの教材を2冊紹介します。
『情報処理教科書 データベーススペシャリスト 2025年版』(翔泳社、ITのプロ46、三好 康之)
通称「三好本」と呼ばれ、多くの受験者に支持されている定番教材です。体系的な説明と豊富な演習問題が記載されているのが特徴で、データベース初学者でも理解しやすい構成となっています。
『徹底攻略 データベーススペシャリスト教科書 令和7年度』(インプレス、株式会社わくわくスタディワールド 瀬戸美月)
この教材の特徴は、全文のPDFと単語帳アプリが付属している点です。スマートフォンでの学習を重視する方には、この教材がおすすめです。
まずはこのような参考書を活用し、データベースの基礎知識をしっかりと身につけることから始めましょう。
DB試験の午前対策(多肢選択式)
デスぺ試験の午前試験対策の効果的な方法は、スキマ時間を活用した過去問演習です。問題を解き、間違えた箇所をテキストやインターネットで調べることで、知識を定着させることができます。
午前問題は、多肢選択式の問題です。午前1は応用情報技術者試験の午前問題と同等の問題が出題されるため、応用情報の午前対策を活用すると良いです。また、午前2は主にデータベース関連の問題が重点的に出題されるため、午前1対策とは別に準備する必要があります。
過去問周回には、「過去問道場」という勉強サイトがおすすめです。
-
・午前1対策:応用情報技術者試験過去問道場
・午前2対策:データベーススペシャリスト試験過去問道場
過去問道場は、PCやスマホ、タブレットなどさまざまなハードで利用できるため、場所を選ばず学習に取り組めます。また、選択肢がランダムに並び替えられる機能があるため、単なる暗記ではなく、本質的な理解を促し、確実な知識の定着を図ることができます。
これらの学習サイトを活用し、スキマ時間を効果的に利用して午前試験対策を進めていくことがおすすめです。
DB試験の午後対策(記述式)
デスペ試験の午後試験対策には、集中できる時間を確保し、過去問を繰り返し解くことが重要です。午後1も午後2も、実務をモデルにした問題が出題されるため、知識だけでなく、問題文を理解し適切に解答を導く問題解決能力が必要です。また、午後問題の解答時間は長時間ですが、体感的には時間が足りないと感じることが少なくありません。そのため、過去問を繰り返して実践に慣れる必要があります。
過去問は、IPAの「過去問題」のページにて解答例や講評とあわせて無料で公開されています。そのため、「参考書と過去問を1冊の本で利用したい」などの理由がない限り、特別に購入する必要はありません。
過去問を解く際のポイントは以下のとおりです。
-
・時間を計りながら問題を解く
・解答後はすぐに採点し、解説で振り返る
・間違えた問題は別途ノートなどにまとめる
・目安として過去問5年分と、間違えた問題を2~3周解く
特に重要なのは、解答の記録を残すことです。解答用紙をファイリングするか専用のノートを作成し、後から見直せるようにしましょう。このようなポイントを意識し、集中して過去問演習を重ねることで、問題への対応力と解答力を高めることができます。
データベーススペシャリストに関するよくある質問
データベーススペシャリスト試験に関するよくある質問と回答を紹介します。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
Q1. データベーススペシャリストの勉強時間の目安は?
データベーススペシャリスト試験に合格するための勉強時間の目安としては、午前1免除の場合で約200~300時間程度ですが、状況により異なります。より詳しい状況別の勉強時間については、「【状況別】データベーススペシャリスト合格の目安勉強時間と難易度を解説」の記事で詳しく解説しています。
Q2. データベーススペシャリストの難易度は高いですか?
データベーススペシャリスト試験は、ITスキル標準(ITSS)でレベル4に位置づけられており、難易度は高いといえます。また、実際の合格率は例年13~18%程度で推移しており、平均して約16%程度であることからも、難易度の高さが分かります。
まとめ
この記事では、データベーススペシャリスト試験の概要から具体的な学習方法まで、試験合格に必要な情報を詳しく解説しました。
データベーススペシャリスト試験の学習は、参考書で基礎を学んだあと、過去問を繰り返し解くのが効果的です。午前対策は「過去問道場」などを利用してスキマ時間を活用し、午後対策はまとまった時間で過去問に取り組むことをおすすめします。午後問題は5年分程度を2~3周解き、時間を計って実践練習することが大切です。
データベーススペシャリスト試験は難易度の高い試験ですが、計画的な学習と効率的な時間活用により、着実に合格への道を進むことができます。この記事で紹介した学習方法を参考に、ご自身の状況に合わせた学習計画を立てて、試験合格を目指してください。
※本記事は2025年5月時点の情報を基に執筆しております