SESは突然契約を切られることがある
SES(システムエンジニアリングサービス)では、契約が突然切られるリスクがあります。SESの契約形態により、派遣先からの契約解除が可能です。また、契約解除は、派遣先企業との関係だけでなく、所属するSES企業との関係においても発生する可能性があります。ここでは、SESの契約解除に関する重要な情報を詳しく解説していきます。
以下で、具体的な内容を確認していきましょう。
派遣先からの契約解除される場合
SESの契約形態である準委任契約には、契約解除のリスクがあります。民法第651条1項では、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」と定められており、この規定は準委任契約にも適用されます。つまり、派遣先企業のニーズやプロジェクトの状況によって、契約期間満了やプロジェクト終了に伴い契約が終了する可能性があるのです。
一般的には契約更新時期の前に更新しない旨が伝えられます。ただし、所属するSES企業によっては、次の案件を紹介してくれる場合もあります。そのため、日頃から所属企業との良好な関係を築いておくことが重要です。
出典
e-GOV 法令検索「民法」
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所属しているSES企業から契約解除される場合
SES企業との雇用契約においても、正当な理由がある場合は契約解除される可能性があります。ただし、労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。
このため、所属企業から契約解除される前に、事前の警告や改善の機会を与えられることが一般的です。契約解除の際には、正当な理由と適切な手続きの遵守が必要不可欠です。
出典
e-GOV 法令検索「労働契約法」
契約解除に至る4つの理由
SESの契約解除に至る前に、評価面談などで業務に関する課題が指摘されることがあります。契約解除の理由は、エンジニア側に問題がある場合とクライアント企業側の事情による場合があります。具体的には以下のとおりです。
以下で、具体的な内容を確認していきましょう。
スキルのミスマッチ
求められる技術レベルとエンジニアの実力に差があり、期待される成果を出せない状況が続く場合、契約解除のリスクが高まります。たとえば、新しい開発言語やフレームワークへの対応が遅れる場合や、担当業務に必要な知識が不足している場合などが該当します。
このような状況を避けるためには、案件参画前に求められるスキルレベルを正確に把握することや、必要に応じて学習期間を設けることが重要です。
プロジェクトの終了や縮小
これは主にクライアント企業側の事情によるものです。開発フェーズが完了したり、予算の見直しによってプロジェクト規模が縮小されたりすることで、契約の継続が困難になることがあります。
この場合、エンジニアの能力とは関係なく契約が終了することもあります。突然の契約終了に備えて、常に市場価値を維持し、次の案件に移れる準備をしておくことが大切です。
クライアント企業との相性
業務プロセスや進め方に対する考え方の違いが、契約解除につながることがあります。たとえば、クライアント企業の開発手法や品質基準に適応できない場合や、チームの方針と個人の開発スタイルが合わない場合、契約解除になる可能性があります。
このような問題を防ぐためには、クライアント企業の文化や方針を理解し、適切に対応することが重要です。また、早期に課題を認識し、改善に向けた取り組みを行うことも求められます。
勤怠やコミュニケーションの問題
勤怠不良や必要な報告・連絡・相談の不足などの問題が改善されない場合、契約解除に至る可能性が高くなります。チーム内での協調性を欠く言動は、契約先企業からの信頼を著しく損なう要因です。
勤怠の問題が改善されない場合、契約解除に至る可能性が高くなります。基本的なビジネスマナーを遵守し、積極的なコミュニケーションを心がけることが重要です。
これらの問題を未然に防ぐためには、定期的な自己評価や上司との面談を通じて、課題の早期発見と改善に努めることが重要です。
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派遣先からSES契約が切られそうな場合の対処法
SES契約が切られそうな状況に直面した場合、冷静に状況を分析して適切な対応をとることが重要です。具体的には、以下の3つのステップで対処していくことをおすすめします。
早めの行動が、その後のキャリアを左右する重要な要素となります。以下で、具体的な内容を確認していきましょう。
所属するSES企業へ相談する
派遣先からSES契約解除される可能性を感じた場合、まず所属するSES企業の担当者に相談することがおすすめです。派遣先での業務評価や今後の見通しについて、率直な意見交換を行うことで、状況の正確な把握が可能です。また、SES企業側も契約継続のために派遣先と交渉したり、改善策を提案したりする機会を得られます。
早期の段階で相談することで、突然の契約終了を防げる可能性もあります。さらに、契約終了が避けられない場合でも、次の案件を探す時間的余裕を確保できる部分が利点です。担当者との信頼関係を築いておくことで、スキルに合った次の案件を紹介してもらえる可能性も高まります。
法的観点の確認
契約解除の話が出た場合、その手続きが適切なものかどうかを法的な観点から確認することが重要です。契約内容や解除条件に目を通し、不当な契約解除でないかを確認する必要があります。
この際、自分とSES企業との契約形態、そしてSES企業とクライアント企業との契約形態を正確に把握しておきましょう。契約書類は所属するSES企業に依頼すれば確認可能です。契約形態によって適用される法律や保護される権利が異なるため、これらの情報は今後の対応を検討する上で重要な判断材料となります。
次の仕事を探す
契約解除の可能性が高まった場合、並行して次の仕事を探し始めることが重要です。ただし、その方法は状況によって異なります。派遣先との契約終了が決定的な場合、まずはSES企業に相談して新しい派遣先を探すのが一般的です。多くのSES企業は、豊富な取引先ネットワークを持っているため、スキルや経験に合った案件を紹介してくれる可能性が高いです。
一方、SES企業自体を退職する選択をする場合は、自身で次の就職先を探す必要があります。この場合、転職エージェントの活用や求人サイトでの検索など、さまざまな手段を組み合わせて探すのがおすすめです。また、現在の経験やスキルを活かせる職場を選ぶことで、スムーズな転職が可能になります。
転職活動を始める際は、自身のスキルセットや市場価値を客観的に評価し、希望する条件との擦り合わせを行うことが重要です。また、面接対策や職務経歴書の準備なども並行して進めることで、効率的な転職活動が可能となります。
転職活動を自分で進めるのが難しい場合は、レバテックキャリアなどの転職エージェントを活用するのもおすすめです。
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SES契約が切られるのを防ぐための対策
SES契約の継続を確実なものにするためには、日頃からの準備と努力が重要です。主な対策として、以下の3つが挙げられます。
これらの要素を意識的に強化することで、契約解除のリスクを軽減し、安定したキャリアを築くことができるでしょう。
スキルアップの継続
SES契約解除の対策として、継続して技術力の向上を行うことが重要です。業務時間外でも積極的に技術学習に取り組むことで、プロジェクトでの価値を高めることができます。たとえば、オンライン学習プラットフォームの活用や技術書の購読、ハンズオン形式の学習などが効果的です。
また、資格取得に計画的に取り組むこともおすすめです。資格は技術力を客観的に証明できる手段となり、契約継続や次の案件獲得時にアピールできる強みになります。特に、プロジェクトで使用している技術に関連する資格を優先的に取得することで、即戦力としての評価を高められます。
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コミュニケーション力の向上
SES契約を切られる可能性を少しでも下げる方法として、コミュニケーション力の向上に力を入れるのも1つの手段です。進捗報告を定期的かつ正確に行うことで、プロジェクトマネージャーやほかのメンバーとの信頼関係を構築でき、スムーズに業務を進められます。
積極的にコミュニケーションをとる姿勢は、チームの一員としての価値を高め、継続的に業務を任せたいと思ってもらえることにつながります。
市場価値の維持・向上
IT業界では技術の進歩が速いため、市場価値を維持・向上させる姿勢が重要です。最新技術のキャッチアップは、技術ブログやニュースサイトの定期的なチェック、技術カンファレンスへの参加などを通じて行うことができます。
また、技術ブログの執筆や情報発信も、市場価値を高める効果的な方法です。自身の技術的な知見や経験を発信することで、専門性をアピールできるだけでなく、知識の整理や深化にもつながります。さらに、副業やOSS活動への参加を通じて、実践的なスキルを磨くことも有効です。ただし、これらの活動は現在の契約や所属企業の規定に違反しないよう、事前に確認することが必要です。
これらを継続的に実施することで、エンジニアとしての価値を高め、安定した契約継続を実現できます。また、万が一の契約終了時にも、次の案件を獲得しやすい状況を作ることができます。
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SES契約更新を自ら断ることはも可能
SES契約において、クライアント企業側からの契約解除だけでなく、エンジニア側から契約更新を断ることも可能です。この場合、一般的に1ヶ月前までにクライアント企業やSES企業への通知が必要となります。これは法律で定められたものではありませんが、業界の商習慣として定着しています。なお、契約書に解約通知の期限が明記されている場合もあるため、事前に契約内容を確認することが重要です。
契約更新を断るケースとしては、主に以下の3つが挙げられます。
以下で、具体的な内容を確認していきましょう。
現場の環境に不満がある場合
職場環境への不満は、内容によって契約更新を断る正当な理由となりえます。過度な残業や休日出勤の要請、職場でのハラスメント、曖昧な指示や要件定義など、働く環境に関する問題が該当します。
ただし、業務の難しさや仕事量の多さを理由に契約更新を断る場合は、慎重な判断が必要です。たとえば、業務が大変に感じる原因を分析し、作業の効率化や必要なスキルの習得によって状況が改善できる可能性もあります。すぐに環境を変えるのではなく、まずは現状の改善を試みることをおすすめします。
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スキルアップが見込めない場合
キャリア形成の観点から、現在の案件でスキルアップが見込めない場合も、契約更新を断る理由となります。単純作業や新しい技術に触れる機会が限られている状況が続く場合などが該当します。
特に、自身のキャリアプランと現状の業務内容に大きなギャップがある場合は、自身のキャリアを早めに見直すことが重要です。IT業界では技術の進歩が速いため、長期間にわたってスキルアップの機会がない環境に留まることは、市場価値の低下につながる可能性があります。SESでは、理想のキャリアを実現するため、契約更新を断り、よりスキルアップできる案件を希望をすることができます。
より良い条件の案件が見つかった場合
より魅力的な条件の案件が見つかった場合も、契約更新を断る理由として一般的です。給与や待遇の向上が見込める案件や、より先進的な開発環境・技術スタックに携われる機会は、キャリアアップの重要な転機となります。
ただし、新しい案件に移る際は単に条件面だけでなく、プロジェクトの安定性や職場環境、キャリア形成の可能性なども総合的に判断することが重要です。また、契約更新を断る際は、引き継ぎなどの必要な手続きを適切に行い、良好な関係を維持することも忘れないようにすることが大切です。
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まとめ
本記事では、SES契約が切られるケースや契約解除の主な理由、対策などについて解説してきました。
SES契約は準委任契約であるため、派遣先からの契約解除リスクが存在します。契約解除の主な理由としては、スキルのミスマッチ、プロジェクトの終了や縮小、クライアント企業との相性、勤怠やコミュニケーションの問題が挙げられます。
契約が切られそうな場合は、まず所属するSES企業へ相談し、法的な観点から契約内容を確認することが重要です。同時に、次の仕事を探す準備も始めることをおすすめします。一方で、エンジニア側から契約更新を断ることも可能です。
契約解除のリスクを軽減するためには、日頃からスキルアップを継続し、コミュニケーション力を向上させ、市場価値を維持・向上させることが重要です。これらの取り組みは、安定したキャリア形成にもつながります。IT業界では技術の進歩が速いため、常に技術のキャッチアップを怠らない姿勢が必要です。
SES契約で働く上で不安を抱える人は、この記事を参考に契約解除のリスクを理解し、スキルアップや信頼関係の構築などの対策をしてみてください。
※本記事は2025年5月時点の情報を基に執筆しております