- SREエンジニアとは
- SREエンジニアへのロードマップ
- SREエンジニアに求められる知識・スキル
- SREエンジニアに資格は必要?おすすめ資格5選
- SREエンジニアにおすすめの書籍
- SREエンジニアを目指すならレバテックキャリアへ
- まとめ
SREエンジニアとは
SREエンジニアは、サイトの信頼性を高めることを専門とするエンジニアです。開発と運用の両方の視点を持ち、安定性と効率性を追求する役割を担います。ここでは、SREエンジニアについて、以下の3つの観点から解説します。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
SREの定義
SREとは、「サイト・リライアビリティ・エンジニアリング(Site Reliability Engineering)」の略称です。DevOpsの概念をさらに発展させ、システムの信頼性を数値化して管理する手法で、Google社が提唱・実践したことをきっかけに、多くの企業でSREの導入が進んでいます。
SREは、開発と運用の密接な関係を保ちながら、継続的な開発とリリースを安定して供給するために、クラウドなどの技術を駆使して信頼性を維持・制御することが目標です。
たとえば、システムの可用性を99.9%に保つというような目標を設定し、それを達成するために必要な施策を立案・実施していきます。
SREの考え方は比較的新しいアプローチですが、システムの信頼性向上に効果的なため、注目されています。
SREについてさらに詳しく知りたい方は、Google社のSteve McGhee氏とJames Brookbank氏による『SREエンタープライズロードマップ SREを導入し継続する方法』(O'Reilly、James Brookbank、Steve McGhee)をご覧ください。
SREエンジニアの仕事内容
SREエンジニアの主な仕事は、運用の自動化・効率化を通じてサイトの信頼性向上を図ることです。具体的な業務内容を、以下の表にて紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
エラー バジェット |
・許容できる障害やダウンタイムの長さ、 見込み障害数などを数値化し、 信頼性と開発スピードのバランスをとる |
SLI・ SLO |
・エラーバジェットを計測するための指針として、 ユーザー視点に沿ったSLI/SLOを設定する |
監視・ 可観測性 の担保 |
・監視により既知の問題に迅速/ 適切に対処する ・システムを継続性にモニターし、 過去との比較や比較から未来予測を行い、 異常を起こさないように先手の対応をする |
自動化・ 効率化 |
・自動化によりトイルを削減する ・ドキュメントやランブックを整備する |
リリース エンジニアリング |
・リリーススケジュールや リリースサイクルを管理する ・リリース判定基準を整備する |
オンコール 対応 |
・障害発生時に調査 ・復旧作業を行う |
このように、SREエンジニアはサイトの信頼性の向上のために、システムの設計から運用、障害対応まで幅広く関与します。
特に重要なのが「トイル」と呼ばれる作業の撲滅です。トイルとは、長期的な価値を生まない作業や、自動化可能なのに手作業で行っている作業のことを指します。トイルの削減は、人的エラーと作業のオーバーヘッドの除去に繋がるので重要です。
また、ほかの職種との違いなど、SREエンジニアの詳細については「SREエンジニアとは?DevOpsとの違いや役割について解説」を参考にしてください。
SREエンジニアの形態
SREエンジニアの組織形態は、企業の規模や目的によってさまざまです。主に以下の3つの形態があります。
Pure SRE (専任型) |
・SREに特化したチームを構成 ・全社的なシステム信頼性を担当 ・専門性の高い業務に集中できる |
Embedded SRE (埋め込み型) |
・各開発チームにSREが所属 ・チーム固有の課題に対応 ・開発者との密接な連携が可能 |
役割としての SRE(兼任型) |
・開発者がSREの役割を兼務 ・小規模組織向け ・柔軟な運用が可能 |
これらの形態には、それぞれ特徴があるため、企業の状況や目標に応じて適切な形態を選択することが重要です。
SREエンジニアへのロードマップ
SREエンジニアへのロードマップを紹介します。SREエンジニアを目指すには、主に以下の取り組みが必要です。
SREエンジニアは、開発と運用の両方の経験が必要な職種です。段階的にキャリアを積み、スキルを習得していくことをおすすめします。
システムエンジニアとして開発経験を積む
SREエンジニアのロードマップの第一歩は、システムエンジニアとしての開発経験を積むことです。SREエンジニアには開発と運用の両方のスキルが欠かせません。そのため、開発現場での実務経験を通して、以下の知識やスキルを身につけることが望ましいです。
プログラミング 言語の習得 |
・PythonやGo、Javaなどの開発言語 ・シェルスクリプトなどのスクリプト言語 ・SQLなどのデータベース言語 |
開発プロセス の理解 |
・開発手法(ウォーターフォール、 アジャイル) ・バージョン管理(Git)・CI/CD |
システム設計 の基礎 |
・アーキテクチャ設計 ・データベース設計 ・APIの設計と実装 |
これらの経験は、今後運用に視野を広げたり、各分野の専門性を深めるための足がかりとなります。また、将来的にシステムの信頼性を向上させる施策を考える際の重要な基盤にもなります。
結論として、SREエンジニアを目指すにあたり、初期段階ではシステムエンジニアとして開発経験を積むことが重要です。
関連記事:システムエンジニア(SE)におすすめの資格一覧!難易度やメリットも紹介
エンジニア専門職として深い知識と経験を積む
SREエンジニアを目指すためのロードマップとして、システムエンジニアとしての基礎を固めた後は、SREに必要な専門知識とスキルの習得が必要です。SREには開発と運用の両方の視点が必要です。その上、信頼性や可用性を設計・改善する高度な役割を担うため、インフラや自動化など広い分野での深い理解と経験が求められます。
たとえば、クラウドエンジニアやネットワークエンジニアなどのインフラエンジニアや、セキュリティエンジニアに必要な知識やスキルを身につけ、経験を積むことが必要です。また、企業によってはQAエンジニアがSREを兼任していることもあるため、自動化や効率化の経験を積める可能性があります。
SREエンジニアを目指すには、まずシステムエンジニアとして経験を積んだ後、特定の専門分野に特化したエンジニアへとキャリアチェンジすることが望ましいです。
また、各専門職への入職方法については「インフラエンジニアになるには?必要なスキルや資格とは」や「セキュリティエンジニアになるには?必要なスキルや知識も紹介」をご確認ください。QAエンジニアについては「QAエンジニアとは?仕事内容や役立つ資格、年収・求人例などを解説」を参考にしてください。
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SREエンジニアに転職する
必要なスキルと実務経験が揃えば、いよいよSREエンジニアへの転職活動に踏み出しましょう。転職活動に向けて準備を十分に行うことで、希望する企業へ入社できる可能性が高まります。
転職を成功させるためには、以下のステップを丁寧に進めることが重要です。
スキルの棚卸し | ・保有する技術スキルの整理 ・実務経験の整理 ・取得資格の確認 |
ポートフォリオ の作成 |
・過去のプロジェクト実績 ・自動化や効率化の成果 ・技術ブログやGitHubなどの活動 |
企業・業界研究 | ・SREを導入している企業のリストアップ ・求人内容の精査 ・企業文化との相性確認 |
必要書類と 面接の準備 |
・履歴書/職務経歴書の作成 ・志望動機の整理・面接対策 |
ポートフォリオに関しては、過去の成果物の中から、アピールしたいスキルや経験が伝わりやすいものを選んで掲載すると良いです。また、自動化や効率化の成果を掲載する場合は、表やグラフを使用し、見やすくする工夫も求められます。
万全の準備を整えることで、SREエンジニアへの転職は成功しやすくなります。
また、効果的なポートフォリオの作成方法については「ITエンジニアのポートフォリオとは?作り方や参考例を紹介」や「システムエンジニアの転職で効果的なポートフォリオとは?」で紹介しています。また、履歴書、職務経歴書の書き方については「転職時の参考に!履歴書・職務経歴書の書き方まとめ」を参考にしてください。
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SREエンジニアに求められる知識・スキル
SREエンジニアには、技術的なスキルからコミュニケーションスキルまで、さまざまな能力が求められます。SREエンジニアに必要とされる主な知識・スキルは以下の5つです。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
Webサービスの開発/運用に関するスキル
SREエンジニアには、Webサービスの開発と運用の両面でのスキルが求められます。これは、SREがWebサービスの信頼性を高める役割を担っており、開発から運用まで、サービス全体を理解する必要があるからです。
具体的には以下のスキルが必要です。
-
・プログラミング言語の理解
・コードレビューの能力
・運用に関する深い知識と経験
SREエンジニアは開発者としてコードを書く機会もあるため、プログラミングスキルが必要です。また、障害発生時には迅速な対応やランブックの作成・更新などを行うため、運用への理解も求められます。
そのため、SREエンジニアへのロードマップを辿るあいだに、Webサービスの開発と運用、両方の知識とスキルを身につけることが大切です。
クラウドに関するスキル
SREエンジニアにはクラウドに関する知識とスキルが求められます。現代のシステム基盤はクラウド上に構築されているものが多いです。可用性や拡張性、パフォーマンスを確保する上で、クラウドの特性やサービスを理解しておくことが必要です。
具体的には、以下のようなスキルが求められます。
-
・主要なクラウドプロバイダー(AWSやGCP、Azureなど)のサービス理解
・インフラをコードで管理するIaC(Infrastructure as Code)ツールの活用スキル(TerraformやCloudFormationなど)
・監視や可観測性、オートスケーリングの設計/運用スキル
特に、IaCはインフラの構成をコードとして管理・自動化できるため、システムの再現性や変更履歴の管理がしやすくなり、SREの業務効率を向上させる点で重要です。
このように、クラウド技術はSREの実践において中核をなす要素の1つなので、クラウドに関するスキルはSREエンジニアに必要です。
ネットワークに関するスキル
SREエンジニアには、ネットワークに関する知識とスキルが欠かせません。ネットワークの設計・運用は、サイトの可用性やパフォーマンスに直結するため、SREエンジニアにはネットワークに関する深い知識が必要です。
具体的には、以下のようなスキルが求められます。
-
・基本的なネットワークプロトコルの理解(TCP/IPやHTTPなど)
・DNSやロードバランサなど、ネットワークコンポーネントの理解と運用経験
・ネットワークのトラブルシューティング能力
特に、ネットワークトラブルの原因を迅速に特定し対応する「トラブルシューティング能力」は、システム障害の復旧時間(MTTR)を短縮する上で重要です。pingやtraceroute、tcpdumpなどの基本的なコマンドの活用スキルや、問題の箇所を的確に見極め、適切な対応を選択できる能力が求められます。
SREエンジニアは、サービス全体を正しく理解しサイトを安定して運用するために、ネットワークに関する知識とスキルが必要です。
自動化/効率化に関するスキル
SREエンジニアには、自動化や業務の効率化に関するスキルが必要です。SREの目的の1つは、信頼性を維持・向上するために、手作業による運用負荷を最小限に抑えることにあります。トイルと呼ばれる「自動化可能なのに手作業で行っている業務」や、人為的ミスのリスクを減らすには、自動化の仕組みを整えることが不可欠です。
具体的には、以下のようなスキルが必要です。
-
・定形業務と障害対応プロセスを自動化/効率化する設計力
・CI/CDパイプラインの構築と運用スキル(Github ActionsやJenkinsなど)
・モニタリング自動化に関する実装/活用力(アラート設定やログ分析など)
特に、CI/CDパイプラインの構築と運用スキルは、コードの変更を安全かつ迅速に本番環境に反映する上で重要なポイントになります。テストやビルド、デプロイといった工程を自動化することで、開発と運用のサイクルが高速化し、信頼性の高いリリースが可能になります。
このように、SREエンジニアには「人が手を動かさなくても、正確かつ効率的に運用が進む仕組み」を設計・実装するために、自動化/効率化に関するスキルが必要です。
説得スキル
SREエンジニアには、技術的なスキルに加えて、チームメンバーにSREの必要性を伝えるための説得スキルが必要です。
SREエンジニアはサイトの信頼性向上のために業務に取り組みます。しかし、SREが比較的新しい考え方であることや、取り組みにより運用方法が変更になるといった理由から、ほかのエンジニアから消極的な声が上がることがあります。そのため、チーム内で目的意識や必要意識を共有するための説得スキルが必要になるのです。
チームメンバーが自発的にSREに取り組むためには、データに基づいた提案や視覚的な資料作成に加え、新しい運用方法の具体的なサンプルを提示することが効果的です。これらは、チーム全体の生産性を向上させ、プロジェクトの成功に大きく寄与するため、SREエンジニアには説得スキルが求められます。
SREエンジニアに資格は必要?おすすめ資格5選
SREエンジニアになるために必須の資格はありませんが、技術力を証明する手段として資格取得は有効です。以下におすすめの資格を5つ紹介します。
No. | 資格名 | 概要 |
---|---|---|
1 | Professional Cloud DevOps Engineer |
・Google Cloudが提供する資格の1つ ・DevOpsの実践に必要な知識を証明できる資格 |
2 | AWS認定 | ・Amazonが提供するAWSに関する認定資格 ・複数の種類が存在し、難易度別に4つの カテゴリーに分かれている |
3 | Microsoft Azure認定資格 |
・Microsoft社が提供するMicrosoft Azureに 関する認定資格・資格試験の種類が豊富 |
4 | CCNA認定 | ・Cisco社が提供するネットワーク分野の グローバル認定資格 ・ルーティングやスイッチング、IP接続、 セキュリティの基本など、ネットワークに 関する幅広いスキルを体系的に学べる |
5 | CompTIA Security+ |
・情報セキュリティ分野のグローバル認定資格 ・アクセス制御やリスク評価、暗号化、脆弱性管理、 インシデント対応など、実践的な知識を段階的に学べる |
SREエンジニアの業務では、DevOpsやクラウド、ネットワークなどの幅広いスキルと知識が必要です。そのため、SREエンジニアへのロードマップを進むあいだにこれらの資格を取得していくことで、転職する際に役立ちます。
また、各専門分野の資格の詳細については、以下の関連記事も参考にしてください。
関連記事:
クラウドの資格17選!初心者向けの難易度解説や取得の利点
ネットワークエンジニアにおすすめの資格一覧!難易度や取得順番も紹介
セキュリティエンジニアにおすすめの資格一覧!難易度や取得順も解説
SREエンジニアにおすすめの書籍
SREエンジニアとして必要な知識を体系的に学ぶためには、専門書を読むことをおすすめします。
ここでは、多くのITエンジニアから支持されているオライリーの技術書の中から、SREの専門書を2冊紹介します。
『SRE サイトリライアビリティエンジニアリング ―Googleの信頼性を支えるエンジニアリングチーム』(オライリージャパン、Betsy Beyer、Chris Jones、Jennifer Petoff、Niall Richard Murphy 編、澤田 武男、関根 達夫、細川 一茂、矢吹 大輔 監訳、Sky株式会社 玉川 竜司 訳)
SREの基本概念と実践方法を詳しく解説した書籍です。SREの考え方や実装方法を包括的に理解するのに役立ちます。Googleでの実践例が豊富に紹介されているため、実務での応用する際に参考にしやすい点が特徴です。
『SREの探求 ―様々な企業におけるサイトリライアビリティエンジニアリングの導入と実践』(オライリージャパン、David N. Blank-Edelman 編、山口 能迪 監訳、渡邉 了介 訳)
大規模なプロダクションシステム運用における、さまざまな企業や組織によるSREの実践事例が紹介されています。特に、既存の組織にSREを導入する際に参考になります。
両書とも、オライリー社から出版された信頼性の高い技術書であり、SREを学ぶ上で重要な情報源となります。理論から実践まで段階的に学習を進めることができるため、おすすめです。
SREエンジニアを目指すならレバテックキャリアへ
SREエンジニアを目指したい方・興味がある方は、一度レバテックキャリアへご相談ください。SREエンジニアへのキャリアチェンジには、幅広いスキルと経験が必要です。そのため、SREエンジニアをより効率的に目指すためのロードマップは個人の経験や目標によって異なります。IT特化型の転職エージェントであるレバテックキャリアでは、あなたに合った最適なキャリアプランを提案します。
レバテックキャリアのキャリアアドバイザーは、IT業界の最新動向や求人市場に精通したプロフェッショナルです。個別のカウンセリングや書類作成のサポートなどを通し、効率的なキャリアチェンジをサポートします。転職活動を始める前の相談も大歓迎です。お気軽にレバテックキャリアまでご連絡ください。
まとめ
この記事では、SREエンジニアの定義や具体的なロードマップ、必要なスキル、おすすめの資格や書籍などを詳しく解説しました。
SREエンジニアを目指すには、まずシステムエンジニアとして開発経験を積み、その後インフラやネットワーク、セキュリティなどの専門性を深めていくことが望ましいです。また、自動化や効率化のスキル、さらにはチームを導くための説得スキルを身につけることも重要です。
資格取得や専門書での学習を通じて知識を深めながら、段階的にキャリアを構築していくことで、着実にSREエンジニアへの道を進むことができます。キャリアプランの具体的な相談は、レバテックキャリアのキャリアアドバイザーが親身になってサポートいたします。
IT業界では、システムの信頼性がますます重要視されており、SREエンジニアの需要は今後も高まっていくことが予想されます。SREエンジニアを目指す方は、ぜひこの記事を参考に、最初の一歩を踏み出してみてください。
※本記事は2025年4月時点の情報を基に執筆しております