社内SEを辞めたい人の6つの退職理由
社内SEは、企業内のIT環境を支える重要な職種の1つです。しかし、さまざまな理由で退職を考える人がいます。ここでは、社内SEが退職を考える主な理由を6つ紹介します。
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてください。
1. 社内問い合わせ対応の負担が大きいから
社内SEの退職理由の1つとして、社内からの問い合わせ対応による負担が挙げられます。
社員のパソコンのトラブル対応や、システムの使い方の質問など、IT関連の問題の多くは社内SEに集中する傾向があります。
中には、「印刷できない」「メールが送れない」「パスワードを忘れた」など、初歩的なトラブルの問い合わせもあるでしょう。社員から「IT関係のなんでも屋」として認識され、本来の業務に支障が出るほどの問い合わせを抱える場合も少なくありません。
このような状況では、システム開発やインフラ整備といった、エンジニアとしての専門性を活かした業務に時間を割くことが難しくなります。その結果、技術力を十分に発揮できないというストレスを感じ、退職を考えるきっかけとなりえます。
2. 庶務が多くやりがいが感じられないから
庶務的な業務が多くなりがちなことも、社内SEの退職理由の1つです。社内SEの業務には、技術的な仕事以外にも多くの庶務的な作業が含まれます。これらの作業が多過ぎると、エンジニアとしてのやりがいを見出せなくなることがあります。
日常的に発生する庶務作業の例は、以下のとおりです。
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・PCやソフトウェアのライセンス管理
・備品の発注や在庫管理
・各種マニュアルの作成や更新
・社内システムの利用権限の設定
・ベンダーとの契約書類の作成や管理
これらの作業は必要不可欠です。しかし、プログラミングやシステム設計といった専門的なスキルを活かせる機会よりも庶務的な業務の割合が多くなってしまうことで、技術者としての成長を実感できなくなります。
このように、庶務の多さによりやりがいを感じられなくなることも、社内SEを辞める要因の1つです。
3. 技術面でスキルアップするのが難しいから
ITエンジニアとしてのスキルアップがしづらいことも、社内SEの退職理由として挙げられます。技術的なスキルアップが難しい具体的な要因としては、以下のような背景があります。
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・既存システムの運用/保守業務が主な業務
・大規模な開発はベンダーに依頼するため実際のコーディング経験が限られる
・開発の機会があっても不具合修正や小規模な機能追加が中心
業務において技術的なスキルが必要になる機会が少なく、スキルアップが難しいことも、社内SEの退職理由の1つです。
4. 成果を出しても評価されづらいから
社内SEの、成果を出しても評価をされづらい状況も、社内SEの退職理由の1つです。社内SEの業務は、成果を可視化しにくく、適切な評価を受けづらい状況にあります。これは多くの社内SEが感じている悩みの1つです。
評価されにくい理由として、以下のような点が挙げられます。
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・システムが正常に動作することが当たり前と考えられる
・トラブル防止や業務効率化の効果が数値化しにくい
・予防保全作業の重要性が理解されにくい
・社内コストとして見られがち
業務の成果が評価されにくい一方で、システムトラブルが発生した際には即座に対応を求められ、責任を問われることもあります。このような「責任は重いが評価は低い」という状況が、モチベーションの低下につながり、退職を決意する原因となるのです。
5. ひとり情シスで激務になりがちだから
「ひとり情シス」で激務になりがちなことも、社内SEの退職理由として挙げられます。中小企業を中心に、1人で情報システム部門を担当するひとり情シスは、過度な業務負担になることも少なくありません。
ひとり情シスの主な課題は以下のとおりです。
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・緊急時の対応に縛られる
・業務の属人化が進みやすい
・休暇中でも呼び出されることがある
・システム障害時の精神的負担が大きい
・代替要員がいないプレッシャーがつらい
このような状況は、ワークライフバランスを著しく損なう可能性があり、長期的なキャリア形成の観点からも課題となっています。ひとり情シスで激務になる状況も社内SEが退職する要因の1つです。
6. コミュニケーション能力や調整力が必要だから
高度なコミュニケーション能力と調整力が求められることも、社内SEの退職理由の1つです。技術的なスキルだけでなく、これらの能力が必要とされることに負担を感じる人もいます。
社内SEに求められるコミュニケーションの例は以下のとおりです。
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・経営層への提案や報告
・現場社員からの要望のヒアリング
・ベンダーとの折衝や進捗管理
・複数部門間での利害調整
・技術的な内容の分かりやすい説明
特に、異なる部門間での要望の違いや予算の制約などにより、板挟みの状況に置かれることも多く、精神的な負担になりやすいです。技術者としての本来の業務以外に橋渡しのような役割も求められることが、退職を考えるきっかけとなることがあります。
社内SEを辞めて良いのか迷っている場合の対処法
社内SEを辞めたいと考えている方は、すぐに退職を決断するのではなく、段階的な検討をすることがおすすめです。ここでは、退職を考えている方向けの具体的な対処法を紹介します。
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてください。
辞めたいと感じる理由を明確にする
社内SEを辞めたいと思った際に、まず最初に行うべきことは、社内SEを辞めたいと感じる理由を具体的に整理することです。感情的な判断を避け、客観的に状況を分析することで、より良い決断につながります。
理由を明確にする際のポイントは以下のとおりです。
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・現在の不満点を箇条書きで書き出す
・それぞれの不満がどの程度深刻か評価する
・一時的な感情なのか、継続的な問題なのか区別する
・具体的な事例や状況を記録する
ポイントをおさえて整理することで、本当に退職が最適な選択なのか、ほかの解決策がないのかを冷静に判断できるようになります。また、転職活動を行う際にも、自分が求める環境や条件を明確に伝えられるようになります。
辞めたい原因を解消できないか検討する
退職を決断する前に、現在の環境で問題を解決できないか検討することが重要です。
原因を解決することで、今の職場に残る選択肢が増えるだけでなく、転職するにしても焦らず好条件の求人を探す余裕ができるなどのメリットがあります。また、辞めたい理由を深堀りすることで、自分が本当はどのような働き方をしたいのか、どのような環境が合うのかを考えるきっかけにもなります。
社内SEがよく直面する問題とその改善策は以下のとおりです。
主な原因 | 考えられる改善策 |
---|---|
問い合わせ対応の負担 | ・FAQの整備 ・マニュアルの充実化 |
技術的なスキルアップが困難 | ・社外研修の活用 ・資格取得支援制度の利用 |
庶務作業の多さ | ・作業の自動化 ・業務の棚卸し |
ひとり情シスの負担 | ・チーム体制の提案 ・属人化の解消 |
これらの改善策を実行することで、現在の環境でもより良い働き方を実現できる可能性があります。
上司に相談する
現状の課題について上司に相談することで、新たな解決策が見つかる可能性があります。次のような要件を相談をすることで、業務負担の分散などが図られます。
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・業務分担の見直し
・増員や体制の見直し
・部署異動の検討
・社内制度の活用(時短勤務、資格取得支援制制度など)
上司との相談は、単なる愚痴や不満の表明ではなく、具体的な改善案を持って臨むことが重要です。建設的な対話を通じて、より良い職場環境を築ける可能性があります。
社内SEとして働くメリットを再確認する
退職を決める前に、社内SE独自のメリットを再確認すると良いです。退職を考えていると、どうしても今の仕事の不満ばかりに目が向きがちです。しかし、社内SEのメリットを再確認することで、本当に辞めるべきかどうか冷静に判断できます。
たとえば、社内SEには以下のようなメリットがあります。
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・高度なスキルを求められない
・さまざまな業務分野(人事、会計、在庫管理など)の知識が身につく
・上流工程でのビジネス視点が身につく
・ベンダーマネジメントのスキルが身につく
これらのメリットを再確認しておくことで、転職において「どのメリットを優先するか」を整理しやすく、より納得のいく判断ができます。
関連記事:社内SEのメリット・デメリットは? 院内SEも含めて解説
退職する場合のキャリアプランを検討する
社内SEからの転職を決断する場合は、綿密なキャリアプランの検討が必要です。進路の検討が不十分のまま退職すると、後悔するリスクが高まります。特に、次の仕事の目途が立たないまま辞めると、焦って希望に合わない職についてしまい、転職を繰り返してしまう事態になりかねません。
キャリアプランを検討する際には、転職エージェントへの相談が効果的です。レバテックキャリアはIT業界に特化した転職エージェントです。専門のキャリアアドバイザーがカウンセリングを通して希望条件の具体化やスキルの棚卸しなど、転職活動を一貫してサポートします。転職に関する些細な相談だけでも構いませんので、お気軽にご相談ください。
関連記事:
レバテックキャリアは相談だけでも利用できる!キャリア相談会など働き方をサポート
レバテックキャリアのカウンセリングの流れやメリット・登録方法を紹介
社内SEから転職したほうが良い3つのパターン
転職の判断を誤らないために、社内SEから転職したほうが良いパターンとして以下の3つを紹介します。
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
現状に改善の余地がない場合
社内の環境や制度に改善の余地がない場合、転職を検討する価値があります。改善が見込めない環境で働き続けることは、モチベーションの低下や心身の健康に影響を及ぼす可能性があるためです。
改善が難しい状況の具体例は以下のとおりです。
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・マニュアル整備などの改善提案が通らない
・属人化した業務の見直しができない
・既存システムの刷新が認められない
・経営層のIT投資への理解が乏しい
・情シス部門の重要性を理解してもらえない
このような状況で、複数回の改善提案や相談を行っても変化が見られない場合は、転職を検討する適切なタイミングといえます。
スキルの停滞に不満を感じている場合
スキルの停滞に不満を感じている場合も、社内SEからの転職を検討することがおすすめです。社内SEの業務では、技術的なスキルアップの機会が限られていることが比較的多いです。この状況を変えるためには、ほかの職種への転職が有効な場合があります。特に以下のような状況に該当する場合、転職を検討する価値があります。
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・運用/保守業務が中心で新規開発案件が少ない
・最新技術に触れる機会がない
・外部ベンダーへの依存度が高い
・技術研修や勉強会の機会がない
・激務により自己成長の時間が確保できない
このような環境では、市場価値の高いスキルを習得することが困難であり、スキルが停滞してしまいがちです。ITエンジニアとしての技術力の向上を目指す場合には、社内SEからの転職を視野に入れることをおすすめします。
明確にやりたいことがある場合
具体的なキャリアプランや目標が見えている場合は、積極的に転職を検討することをおすすめします。転職は、自分の理想に近い環境を見つけ、新たなキャリアパスを築くチャンスとなります。
転職を考える際は、以下の点を整理すると良いです。
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・短期的な目標と長期的なビジョン
・必要なスキルと資格の洗い出し
・希望する働き方や環境
・年収などの条件面
これらを明確にすることで、転職先を検討する際に、本当に自分がやりたいことを実現できる環境かどうかを見極めやすくなります。やりたいことが明確になっている場合は、キャリアを充実させるためにも転職を検討してみましょう。
関連記事:社内SEのキャリアパス!具体例やキャリアアップ転職のコツを解説
社内SEからのおすすめの転職先4選
社内SEの経験を活かして転職する際、特に相性の良い職種があります。社内SEの経営視点でのIT戦略立案経験や、インフラ環境の管理・運用経験などが幅広いITエンジニア職で重宝されるからです。
社内SEからのおすすめの転職先は、以下の4つです。
おすすめの職種 | おすすめの理由 |
---|---|
インフラエンジニア | ・サーバーやネットワークの構築/管理の経験が活かせる ・システム全体を見渡せる視点が役立つ |
セキュリティエンジニア | ・情報セキュリティや脆弱性対策の経験が活かせる ・セキュリティインシデント対応の経験が評価されやすい |
ITコンサルタント | ・社内システムの導入経験や、IT戦略などの知識が活かせる ・業務改善の提案経験が役立つ |
自社開発企業のSE | ・受託開発よりも比較的スキルアップしやすい ・ビジネス視点を開発に活かしやすい |
これらの職種へは、社内SEの経験を活かして比較的スムーズなキャリアチェンジが期待できます。さらに、自社開発企業にはスキルアップできる環境が整っている場合が多いため、社内SEでスキルの停滞に不満を感じている人は特におすすめです。
また、これらの職種への転職を考える際は、資格を取得しておくと効果的です。
SEのおすすめの資格については、「システムエンジニア(SE)におすすめの資格一覧!難易度やメリットも紹介」をご覧ください。また、ITコンサルタントにおすすめの資格については、「ITコンサルタントの資格16選をスキル別に紹介します」をご確認ください。
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まとめ
この記事では、社内SEを辞めたいと考える方に向けて、退職を考える主な理由とその対処法、転職先の選択肢について解説しました。
社内SEを辞めたいと感じる理由として、社内問い合わせ対応の負担や庶務業務の多さ、技術的なスキルアップの難しさ、評価されにくい環境などが挙げられます。
退職に迷ったときは、まずは現状の改善可能性を探ることが重要です。辞めたい理由を明確にし、上司への相談や業務改善の検討を行うことで、より良い環境を作り出せる可能性があります。社内SEならではのメリットを再確認することも大切です。
改善の余地がない場合や、スキルの停滞に不満を感じている場合、明確なキャリアプランがある場合は、転職を検討する良いタイミングといえます。仕事を辞めたいと感じている社内SEの方は、ぜひ本記事を参考に検討してみてください。
※本記事は2025年3月時点の情報を基に執筆しております