金融系SEがつらいと言われている7つの理由
金融系SEとは、銀行や保険会社、証券会社などの金融業界のシステム開発や設計を担当する職種のことを指します。他のSEと比べ、金融業界特有の繊細で重要な情報を扱うため、ミスが許されず神経をすり減らす場面が多く、つらいと言われがちです。
そこで、金融系SEがつらいと言われている理由を7つ紹介します。
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7. 厳しい納期やスケジュール
以下で詳しく説明します。
1. 金融に関わるシステムのためミスが許されない
金融系SEの仕事がつらいと感じる理由の1つ目として挙げられるのは、ミスが許されない環境で働くことです。金融系システムは社会インフラとして機能しており、小さなミスが重大な影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、ATMシステムの不具合で預金残高が正しく表示されない場合、多くの利用者に影響を与え、金融機関への信頼を損ないかねません。また、株式取引システムのエラーは、取引の遅延や誤った価格での約定につながり、莫大な損失を招く可能性があります。
このように重要なシステムを扱うため、常に緊張感を持って作業する必要があり、精神的な負担は大きいです。
2. 残業が多く働き方が不規則になる
金融系SEの仕事がつらいといわれる2つ目の理由は、不規則な勤務体系と長時間労働です。
金融系システムには24時間稼働しているものもあり、担当するシステムによってはシフト制での夜勤対応が必要となるため、生活リズムが乱れやすい傾向があります。
たとえば、ATMシステムやインターネットバンキング、株式取引システムなどは、深夜や早朝も含めて常時稼働しています。そのため、システムのメンテナンスや更新作業は、ユーザーへの影響を最小限に抑えるために、夜間や休日に実施されることが一般的です。
また、金融系システムは本番環境でのバグやエラーが許されないため、開発段階での品質管理が極めて重要になります。システムの完成度を高めながらリリース期限を守るために、納期前は残業も多くなりがちです。特にリリース直前の時期は、想定外の不具合への対応や最終チェックのために、連日の残業が避けられないこともあります。
このような不規則な勤務体系と長時間労働は、プライベートの時間を確保しづらいだけでなく、心身の健康にも影響を及ぼします。
3. 最新の技術を使う機会が少ない
金融系SEがつらいと感じてしまう3つ目の理由には、最新技術に触れる機会が限られていることが挙げられます。金融システムは社会インフラとして重要な役割を担っているため、安定性と信頼性が重視され、実績のある既存システムを利用することが一般的です。
たとえば、銀行の基幹システムでは、30年以上前から使用されているCOBOL言語が現在でも広く採用されています。新しい開発言語やクラウドサービスは、実績が十分でないという理由で採用が見送られることもあり、従来の技術を継続して使用するケースがほとんどです。
このような環境では、市場で注目を集めている新しい技術やツールを実務で使用する機会がなかなか得られません。その結果、エンジニアとしての市場価値を高めることが難しく、今後のキャリアに不安を感じる人もいます。実際に、より先進的な技術に触れられる環境を求めて、転職を選択するエンジニアも一定数存在します。
4. 高度な専門性を有する必要がある
金融系SEがつらいと感じられる4つ目の理由には、高度な専門性が求められることが挙げられます。金融業界には独自の専門用語や複雑な業務プロセスが数多く存在し、システム開発にあたってはこれらの業界知識を深く理解していることが必要不可欠です。
専門知識の習得には相当な時間と労力が必要になります。プログラミングスキルだけでなく、金融業務の知識も併せて身につけなければならないため、一人前のエンジニアとして活躍できるようになるまでに長期間かかることが一般的です。
さらに、金融業界は法改正や制度変更が頻繁に行われるため、継続的な学習も欠かせません。新しい規制や制度に対応するためのシステム改修も多く、常に最新の業界動向をキャッチアップしておく必要があります。このような高度な専門知識の必要性は、金融系SEの業務負担を重くする要因の一つです。
5. 顧客との密なコミュニケーションが必要となる
金融系SEがつらいと感じる5つ目の理由は、顧客や関係者との密接なコミュニケーションが求められることです。金融システムは複雑で専門的な内容を含むため、要件の確認や仕様の調整に多くの時間と労力が必要となります。
システム開発の現場では、顧客の要望を正確に理解し、それを技術的な仕様に落とし込むことが必要です。金融業務は複雑な処理や厳密なルールが多いため、顧客との綿密な打合せなど細かな確認作業が欠かせません。
企業によっては、営業担当者が窓口になるケースもあります。この場合、営業担当者を介して顧客の要望を理解する必要があり、技術的な内容を非エンジニアにも分かりやすく説明する能力が求められます。さらに、営業担当者から伝えられる情報を正確に理解し、システムの仕様に反映させることが必要です。
また、金融システムは多くの部門や担当者が関わる大規模なものが多いため、プロジェクト内でのコミュニケーションも重要になります。開発チーム内での情報共有はもちろん、テスト担当者や運用担当者との連携も欠かせません。このように、多岐にわたるコミュニケーションの負担も、つらいと感じる要因となっています。
6. セキュリティに関して高い意識が必要となる
金融系SEがつらく感じられる6つ目の理由は、セキュリティへの高い意識が常に求められることです。金融システムは顧客の資産情報や個人情報など、極めて重要な機密データを扱うため、セキュリティ対策には特別な注意を払う必要があります。
たとえば、インターネットバンキングのシステムでは、不正アクセスや情報漏洩を防ぐための堅固なセキュリティ対策が必須です。システムの設計段階から、暗号化技術の採用や多要素認証の実装、不正検知の仕組みなど、さまざまなセキュリティ要件を考慮しなければなりません。
日常的にセキュリティを意識して開発を進める必要があります。
さらに、サイバー攻撃の手法は日々進化しているため、最新のセキュリティ脅威や対策にかかる知識のアップデートも必要です。このような継続的な緊張感と学習の必要性も、金融系SEの精神的な負担を増加させるものになります。
7. 厳しい納期やスケジュール
金融系SEがつらく感じられる7つ目の理由は、納期が厳しく徹底したスケジュール管理が求められることです。金融業界では、市場環境の変化や法規制の改正に合わせてシステムの大規模な変更が必要となることが多く、これらの対応には明確な期限が設定されます。
たとえば、税制改正に伴う金融商品の課税方式の変更や、新しい金融商品の取り扱い開始、国際的な取引ルールの変更など、システム改修が必要なイベントが度々発生します。これらの変更は法律や規制の施行日に合わせて必ず対応を完了させる必要があり、期限の延長は基本的に認められません。
このような状況下で、システムの品質を確保しながら厳格な期限を守るという、難しい要求に応えることが必要です。特に大規模な改修の場合、複数のシステムが連携して動作することも多いため、関連する全てのシステムの改修と検証を限られた時間内で完了させる必要があります。
さらに、システムトラブルのリスクを最小限に抑えるため、本番環境への反映作業は休日や深夜に実施されることが一般的です。このため、リリース直前は休日出勤や深夜残業が発生しやすく、開発担当者の負担が増大します。
金融系SEがつらいと感じない人の特徴
金融系SEの仕事は、高度な専門性と正確性が求められますが、人によってはつらさを感じにくく、むしろ力を発揮できる仕事となります。ここでは、金融系SEの仕事をつらいと感じにくい人の特徴を紹介します。
以下で詳しく説明します。
責任感があり正確な作業が苦にならない人
金融系SEにおいて、正確に作業をこなす力は必要不可欠になります。些細なミスが重大なトラブルに発展する可能性があるため、常に細心の注意を払って業務を遂行することが必要です。
たとえば、証券取引システムでのタイミング制御の誤りは、取引の成立に支障をきたす恐れがあります。このように、常に緊張感を持って作業することが重要です。
正確な作業が苦ではなく、責任感を持って作業に取り組める人は、このような大きなプレッシャーを感じやすい場面でも、つらさを感じすぎず、力を発揮できる可能性が高いです。
問題解決能力が高く物事を進められる人
金融系SEは、大規模で複雑なプロジェクトに携わることが一般的なため、さまざまな課題に直面しながらもプロジェクトを前に進められる問題解決能力が重要となります。
システム開発の現場では、技術的な課題やスケジュールの制約、予算の制限など、さまざまな課題を抱えながらも業務を遂行しなければなりません。このような状況下でも、冷静に状況を分析し、チームメンバーと協力しながら解決策を見出していける人は、金融系SEの仕事に適性があるといえます。
特に、困難な状況でも論理的に考え、優先順位をつけながら着実に問題を解決できる人は、業務の負担を過度に感じることが少ない傾向です。また、複雑な課題を解決することで得られる達成感や、チームでの協力を通じた成長実感が、仕事のモチベーションにもつながります。
関連記事:システムエンジニア(SE)の働き方や仕事で必要なスキルを紹介
成長意欲やストレス耐性の高い人
厳しい納期や複雑な要求に直面する機会が多い環境であっても、それを成長の機会として前向きに捉えられる人は、つらさを感じにくい傾向です。
たとえば、金融システム開発では、システムの安定性と新機能の追加という要求に応えなければならないケースも少なくありません。このような状況下でも、プレッシャーを建設的なエネルギーに変換できる人は、業務を円滑に進められます。
さらに、困難な課題に直面した際も、それを学びの機会として捉えられる姿勢が重要です。たとえば、新しい金融商品に対応するシステム開発では、商品の仕組みや規制について深く学ぶ必要があります。このような状況を、専門知識を広げるチャンスとして積極的に受け止められる人は、業務を通じて着実に成長していくことが可能です。
このように、ストレスフルな環境を成長の糧とし、困難を乗り越える達成感を楽しめる人は、金融系SEに適性があるといえます。高いストレス耐性と学習意欲を持ち合わせることで、業務上の課題を前向きに捉え、キャリアの発展につなげることも可能です。
つらいだけではない!金融系SEのやりがいや魅力
金融系SEの仕事は、確かに高い専門性と責任が求められ、時として大きな負担を感じることもあります。しかし、その一方で、他の職種にはないやりがいや独自の魅力も存在することも事実です。
ここでは、金融系SEのやりがいや魅力について紹介します。
以下で詳しく説明します。
併せて、SEのやりがいも知りたい人は以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:システムエンジニア(SE)のやりがい10選!大変なことも解説
将来性/需要のある職種
金融系SEは、高い専門性と責任が求められる一方で、将来性と需要の面で魅力的な職種です。近年、経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題により、その重要性は一層高まっています。
「2025年の崖」問題とは、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れによって、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性を指摘したものです。この背景には、既存ITシステムの老朽化とIT技術者の不足という深刻な課題があります。
特に金融業界はこの問題の影響を受けやすいです。金融機関は失敗が許されない伝統的な業界であり、セキュリティを最優先するため、情報システムのガラパゴス化が進んでいます。これは、自社の業務システム維持を困難にし、ビッグデータの活用やDXの推進を妨げる要因となっています。
さらに、最先端のデジタル技術開発に充てる人材に余裕がないことで、業界全体としてDXの波に乗り遅れるリスクも高いです。
このような状況下で、金融系SEの需要は今後さらに高まると予想されます。
出典
経済産業省「DXレポート (サマリー)」(2018年9月7日)
関連記事:SEの将来性と市場需要!経済産業省のデータをもとに考察
自分が作ったシステムが人のためになっていることを感じやすい
金融系SEの魅力の1つに挙げられるのは、自分が開発や運用に関わったシステムが、多くの人々の生活に直接役立っていることを実感できる点です。金融システムは社会インフラとして機能しており、日常生活に密接に関わるサービスを提供しています。
たとえば、ATMシステムの開発に携わった場合、多くの人が日々利用する現金の入出金や振込サービスを支えていることを実感することが可能です。また、インターネットバンキングのシステム開発では、人々の生活をより便利にする新しい機能の実装に関わることができます。
このように金融系SEは、目に見える形で社会貢献を実感することが可能です。
利用者から感謝の声が届いたり、自分が関わったシステムが多くの人に活用されている様子を見たりすることで、仕事の意義ややりがいを強く感じることができます。
複雑なプロジェクトに携われるのでスキルが高くなる
複雑で大規模なプロジェクトを通じて、幅広いスキルを習得できる点も魅力です。
金融システムの開発では、技術力だけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクトマネジメント力など、ビジネスパーソンとして必要不可欠な能力を身につけることができます。
金融システムの開発では、業務部門やシステム部門、営業部門など、さまざまな立場の人々と協力して仕事を進めることが必要です。それぞれの部門が持つ専門知識や要望を理解し、コミュニケーションを取りながらプロジェクトを前に進める経験を通じて、高度なコミュニケーション能力が培われます。
また、複数のシステムが連携する大規模プロジェクトでは、進捗管理やリスク管理、スケジュール調整など、プロジェクトマネジメントのスキルも自然と身についていきます。
これらの能力は、金融業界に限らず、どのような業界でも高く評価される汎用的なスキルです。
金融系SEとして経験を積むことで習得できるスキルは、将来的なキャリアの選択肢を広げる重要な資産となります。
責任感のある環境で自分を成長させられる
金融系SEの仕事は責任が重い反面、自己成長を実感することが可能です。
責任の重い環境で働くことは精神的な負担を伴いますが、それは同時に自己成長の機会でもあります。プロジェクトを成功に導いた時の達成感や、困難を乗り越えた時の自信は、今後のキャリアを支える大きな糧にすることが可能です。
また、責任ある立場で仕事をこなした経験は、将来的なキャリアアップを目指す際にも役立ちます。金融系SEとして培った責任感と問題解決能力は、管理職やプロジェクトリーダーとして活躍する際の重要な基盤となるのです。
金融系SEへの転職で後悔しないためのポイント
金融系SEへの転職で後悔しないためには、職場環境や業務内容を事前に理解し、自分に合った職場を慎重に選ぶことが重要になります。一口に金融系SEといっても、実際の業務内容は顧客となる金融機関の種類や、担当するシステムによって大きく異なるためです。業務内容の違いは、必然的に働き方にも影響を与えます。
そのため、転職を検討する際は、金融業の種類や担当する業務内容、それに伴う働き方をしっかりと把握することが重要です。この事前確認を怠ると、「想像していた仕事内容と違った」といった後悔につながる可能性があります。
職場情報を正確に把握するためには、転職エージェントの活用が効果的です。特にIT業界に特化したエージェントは、金融系SEの現場について詳しい情報を持っており、求職者の希望や適性に合った職場を紹介することもできます。こうしたサービスを利用しながら入念な事前調査と適切な情報収集を行うことで、転職後の不満や後悔を最小限に抑えることが可能です。
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SEについて詳しく知りたい人は以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:システムエンジニアとは?仕事内容や年収を分かりやすく解説
まとめ
金融系SEは、金融業界特有の重要な情報を扱うため、他のSEと比べてミスが許されず神経をすり減らす場面が多いことからつらいと言われがちです。
一方で、金融系SEとして業務に従事することで、問題解決能力やストレス耐性を高めることができることや、業界の将来性に期待できるなどの魅力もあります。
また、社会インフラを支える重要な役割を担っているため、目に見える形で社会貢献を実感することができ、やりがいを感じるシーンも多いでしょう。
本記事では、金融系SEがつらいと言われる理由を説明したうえで、つらさを感じにくい人の特徴や金融系SEのやりがいや魅力についても紹介しました。
金融系への転職を目指す人は、職場環境や業務内容を事前によく理解し、自分に合った職場を慎重に選ぶことが後悔しないための秘訣になります。
正確な情報収集をするために、転職エージェントを活用することが効果的な手段の一つです。
ぜひ本記事を参考に、金融系SEは自分に合った仕事か判断してみてください。
※本記事は2025年3月時点の情報を基に執筆しております